E資格という言葉を耳にすることも多くなってきたかと思いますが、今回はE資格がどんな資格なのか、E資格の概要と勉強方法について解説します。
また、E資格の過去問の有無や勉強に便利な問題例についても解説します。
E資格を受けてみたいけど具体的にどんな資格なのか、何に活かせるのかを知りたい人はぜひ参考にしてください。
まず「E資格」とはどんな資格?
3分でこの記事の概要を掴みたい方は、こちらの動画をご覧ください。
まずE資格とは、「AIエンジニアを育成するための民間の資格試験」です。
E資格の「E」はエンジニア(Engineer)の略であり、ディープラーニングを実装するためのエンジニアの技能を認定するという意味が込められています。
JDLAの公式サイトには、「ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを認定する」と記載がありますが、具体的にどのような知識やスキルを身に着けることができるのか見てみましょう。
「E資格」と「G検定」の違い
E資格 | ディープラーニングに基づく技術開発や、実装能力を持つエンジニアの創出を目指して作られた資格。 |
G検定 | ディープラーニングの基礎知識をもって、適切にAIを事業に活用する能力や知識を有しているかを検定する試験。 |
JDLAでは、AI技術の中でも特に重要視されているディープラーニングについて、知識や技術を持っている人材の創出を目指して様々な取り組みを行っています。
昨今のAI技術の進展と社会の課題解決への応用の必要性を考慮すると、AIに関する専門知識を持って取り扱える人材が必要になっていると言えるでしょう。
JDLAではE資格の他に「G検定(ジーケンテイ)」という検定の認定も行っており、こちらもディープラーニングに関わる知識や技術を持っている人に対して与えられています。部署や役職、文系・理系を問わず、広く一般の社会人向けで、AIを使ったビジネスを展開できる人材を育てることを目指しています。
E資格はディープラーニングの技術を実装できるエンジニアとして働きたい方向け、G検定はAIをビジネスに活用したいビジネスパーソン向けの資格・検定と言えるでしょう。
G検定については、下記の記事で詳しく説明していますので、興味がある方はこちらもご確認ください。
E資格の受験者数・合格者数
開催年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2022 #2 | 897 | 644 | 71.79% |
2023 #1 | 1,112 | 807 | 72.57% |
2023 #2 | 1,065 | 729 | 68.45% |
2024 #1 | 1,194 | 867 | 72.61% |
2024 #2 | 906 | 600 | 66.23% |
E資格の受験者は2018年の第1回から徐々に増えており、コロナ禍以降は受験者数が1,000人前後になることもしばしばあります。
E資格の合格率としては、受験者の70%前後が合格している資格になります。
決して合格率がすごく高いわけではありませんが、3人に2人は合格している資格だと思って良いでしょう。
E資格を取得する目的
E資格は、AIをただ理解しているのではなく、AIを使った技術や製品の開発ができるエンジニアの創出を目標として作られています。基本的な情報技術についての知識があるエンジニア向けの資格で、E資格の試験に合格した人が認定を受けることができます。
E資格を取得すると、AIを使った開発に携わるための基礎的なAIに関する知識、また、それを実装するためのAIプログラミングに必要な知識を一通り身につけていると判断してもらえるようになるのが魅力です。
つまり、E資格の取得を通して、実践的にAI技術を使った開発に専門的に取り組める力を身につけることができます。AIエンジニアとして就職や転職を考えている方や、すでにエンジニアとして勤務していてディープラーニングについてもっと深く理解したい方に人気の資格試験です。
これからAIエンジニアとして活躍していきたい人にとっては、一人前と自他共に認める人材になるための登竜門とも言えるでしょう。今後のAIへの期待も大きくなっていることから、エンジニアの間でも人気が高い資格の一つです。
E資格の試験概要
ここからは実際にE資格の試験がどのようなものかを詳しく見てみましょう。
受験資格 | JDLAの認定プログラムを試験日の過去2年以内に修了していること |
開催日 | 年2回/2月・8月(2024年現在) |
申込み可能日 | 受験日前日の午後11時59分まで |
試験会場 | 全国の指定試験会場から会場を申し込み時に選択 |
試験時間 | 120分 |
試験問題 | 100問程度 公開シラバスの中から認定プログラム修了レベルの問題を出題
|
受験料(税込) |
|
合格基準 | 非公開(目安として正答率65%程度で合格) |
E資格の受験資格
E資格試験を受験するには、JDLAが認定したプログラムの受講を修了する必要があります。
E資格に受かりたい!と言って受験しに行っても、JDLA認定プログラムを受けていないと試験を受けることさえできません。なぜこのようなプログラムの受講が必要なのでしょうか。
JDLAでは、E資格を実務でAIを活用できるエンジニアを育成する目的で行っています。
そのため、単純な暗記問題を解けることよりも、正しい知識を正しく理解し、実践力のあるエンジニアを育てるために「認定プログラム」を用意しています。
いわば、自動車免許のための教習所のような役割だと言えるでしょう。
現在は、20社前後が「認定事業者」として登録されており、その中のどれかを選択して受講し、修了認定を受けないとE資格の受験資格が得られません。
E資格の講座の受講は時間がかかるため、仕事をしながら転職活動やE資格の講座を受講するのはなかなか大変な一面があります。
また、認定プログラムを修了すれば永続的にE資格の受験資格が得られるわけではありません。
E資格の受験資格には、
- 終了日試験日から遡って2年以内にJDLA認定プログラムを受講している
という条件がついていて、不合格となってしまったときには2年以内に再受験することが可能ですが、時間がたてば再度認定プログラムの修了が必要です。
これは、日進月歩で新しい技術・アルゴリズムが出てくるAI・機械学習において、2年前の知識が役に立たなくなる可能性が大きいため、このような仕組みにされています。
E資格の開催日
E資格試験は、2024年現在、1年に2回のペースで開催されています。
通常、2月開催と8月開催の2回で、それぞれ試験開催年と年ごとの連番で呼ばれています。
2023年2月開催: 2023 #1
2023年8月開催: 2023 #2
2024年2月開催: 2024 #1
2024年8月開催: 2024 #2 など
過去の回では、2020 #2が、新型コロナウィルス感染予防措置のため、開催延期されており、欠番となりました。当初は1日開催の試験でしたが、2021 #1より金曜日と土曜日の2日開催、2022 #2より金、土、日曜日の3日開催となっております。
3日にはなったものの、試験自体は1日(120分)で終わるため、平日と土曜、日曜の都合の良い日程で受験することが可能です。120分という試験時間のため、3日間とも受験する時間帯を選択することができます。
試験のために丸一日潰れることがないので、早めに申し込めば家庭の都合も考慮した受験ができそうですね。
E資格の試験時間
E資格の試験時間は、120分です。
120分と聞くと試験時間は多いようにも感じますが、前回、前々回ともに105問という、約100問の問題が出題され、時間内に解かなければなりません。
1問に1分くらいしか時間を割けないことになるため、スピードを要求される点で難易度が高いことがわかります。更に、設問の中には数式の計算をする必要があるものや、長めのプログラムを読まないといけない部分があるため、1問にかけられる時間はさらに短くなります。
そのため、専門用語や機械学習特有の単語など試験に出やすい知識を定着させ、即答できるようにしておくことが重要です。
E資格の試験会場
試験会場は、全国に100箇所近くあり、試験申込時に近くの会場を選んで受験することができます。
2024年現在、試験の運営や申込みはピアソンVUEが利用されています。
ピアソンVUEは、CBT(コンピュータ・ベースト・テスティング)と呼ばれる、コンピュータを使用した試験方式を活用したシステムで、受験申込から合否通知までの試験工程が全てインターネット上で完結するということが特徴です。
E資格の過去問はある?
いざE資格を勉強したいとなったら過去問を調べて勉強したいところですが、JDLAの公式では過去問の発表がありません。
ただ、過去問のような例題を提供している講座はあるので、このような講座を受けて問題傾向を掴むことが大切です。
また、株式会社VOSTが提供しているAIスキルチェックテストでE資格の模擬問題に無料で挑戦することができます。
実際のE資格の試験難易度に近いレベルで力試しをすることができますので、興味のある方は下記ページから模擬問題を解いてみてください。
E資格を受験するメリット4選
多くの時間を使って勉強をしてE資格を取得するからには、E資格に合格していることで受けるメリットを理解しておかなければなりません。
ここでは、E資格を受験するメリットを4つご紹介します。
①社内評価や就職・転職に役立つ
E資格を持っていることは、AIに関する広く深い知識を持っているということを意味します。
そのため、社内では経営企画部やDX部、AI開発部などの最前線の職場で働くきっかけとなったり、今働いている部署内でのAI活用に向けたプロジェクトのメンバーとして活躍できる可能性が高くなるでしょう。また、技術レベルを対外的にも示せるため、就職や転職にも役立つことになります。
E資格の合格者は、2024年9月で、累計の合格者が8,485名であるため、資格を持っている人材は希少です。現時点で「E資格を持っていることが就職や転職をするための必須条件」としている企業は少ないかもしれませんが、今後のAIの普及により、付加価値の高い人材を現す指標としてE資格が見られるようになることが予想されます。
ですから、今後さらに就職や転職活動でもE資格は有利になるでしょう。
企業内におけるE資格のメリットはこちらの記事でも解説しています。
②AIに関する網羅的な深い知識が身につく
E資格で問われるのは、数学的基礎・機械学習・深層学習の基礎・深層学習の応用・開発・運用環境という幅広く深い知識です。AIで使用される様々なアルゴリズムの種類や、それぞれの特徴・短所を理解している必要があるため、網羅的に広く深い知識を身につけられます。
アルゴリズムの中でどのような計算がされているかを、数式を用いて理解することで、最新の論文などを読んで業務に活用する際にも役立てられるでしょう。
③AI作成の実践的な知識が身につく
E資格を受ける最大のメリットはAI作成において実践的な知識が身につくことです。
E資格の受験には、認定プログラムの受講が受験条件になっています。
認定プログラムでは、数学的基礎や機械学習、深層学習などの知識の他に、Pythonを使用したプログラミングの実践的なスキルを身につけることが可能です。
履歴書の資格欄にE資格を記載しておけば、採用担当者にAIプログラミングに関しての知識があるとすぐに理解してもらえます。
④合格者コミュニティでスキルアップができる
E資格に合格すると、9万人以上の日本最大AIコミュニティである「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)」に参加できます。
E資格合格者であるCDLEメンバーには、Slackとコミュニティサイトβ版の2つの公式コミュニケーションツールが提供され、業界の他社AIエンジニアと情報交換やサークル活動、イベントに参加できるなど人脈が広がり、転職など自身のキャリアアップにも役立ちます。
また、E資格の取得を通して、講座で人脈を広げることができるのも大きなメリットです。
E資格の試験問題内容
試験問題は、4択または5択程度の選択問題が出題されます。
なお、記述問題やプログラミングをする問題は出題されません。
プログラミング問題は、プログラムの一部が隠されており、少しずつ記述が異なるプログラムコードが4択で出題されるイメージです。
E資格のシラバス
E資格の試験範囲は毎回JDLAからシラバスが発表されているため、把握するのが比較的簡単です。
- 数学的基礎
- 機械学習
- 深層学習の基礎
- 深層学習の応用
- 開発・運用環境
の大項目に分かれていて、毎回少しずつ細かな内容は変更されています。AIの分野は成長速度が速く、新しい知識の取得が求められますし、新しい問題に直面することが多いです。
そのため、JDLAとしても項目を固定するのが難しく、ディープラーニング技術の進展に伴って柔軟に変更しています。
毎回のようにシラバスが変更されているわけではありませんが、E資格を受験する予定のある方は、逐一シラバスをチェックしておくことが大切です。
E資格のシラバスは改定される
E資格のシラバスは定期的に改訂があります。主に
- あまり使われなくなってきたアルゴリズムの削除
- 深い理論の理解を必要としていたが、実務レベルで深い知識は不要と判断された箇所の削除
- 新しく世の中で使用されているアルゴリズムの内容を追加
といったことが多いです。シラバスの変更があると、今まで学んだことが無駄になってしまう、と不安に思われる方も多いかもしれません。しかしご安心ください。
新しいシラバスに則った内容に全認定プログラム事業者が講習内容の変更作業を行い、JDLAの内容チェックに合格した認定プログラムのみが提供される予定になっています。
過去の受講者への対応は各社異なる可能性はありますが、基本的には新しいシラバスに則った内容です。
E資格の難易度と合格率
E資格の難易度を知る上では合格率がどの程度かが参考になります。
E資格の試験は毎年1回~2回(近年では2回)行われていますが、合格率については60~70%台を推移しています。2021年の1回目の試験については合格率が78.44%で過去最高の水準になりました。
合格率が高くなった要因として、受験者数も多く、E資格が始まってから年月も経ったので、しっかりと勉強した人の受験が目立ったことが考えられるでしょう。
リモートワークの推進の影響もあり、受験対策の勉強をしやすくなったのも合格率の上昇を後押ししています。
E資格の難易度は非常に高いとの意見もありますが、平均的な合格率は70%台と見ていいでしょう。ただし、受験資格を得るためには、一定の基準を満たさないと受験資格が得られない認定事業者もあるため、受験資格を得るためにはある程度の学習時間の確保が必要です。
E資格の合格基準
合格基準は公開されていませんので、何割正解すると合格になる、ということは言えないと思います。弊社にて認定プログラムを受講していただいた過去の受講者さんにアンケートを取った結果を踏まえると、60%~70%程度の正解率で合格できていそうです。
ただし、数学的基礎、機械学習、深層学習の基礎、深層学習の応用、開発環境といった単元ごとに正解率が出されているため、一部の単元のみ極端に低い場合などは、不合格となる可能性があると言えるでしょう。
E資格の勉強方法3選
E資格に効率よく合格するには最適な勉強方法を知っておくことが大切です。ここでは、E資格の勉強方法についていくつか解説していきます。
①無料のE資格模擬テスト
まず、E資格の過去の問題例を実際に解くことのできる「E資格模擬テスト AIスキルチェック」です。現在の実力がどの程度あるかを試せるので、受験資格を手に入れるためにもおすすめです。
E資格を書籍で学習したい方には、E資格のおすすめ参考書についてまとめた記事も参考にしてみてください。
E資格の合格に必要な知識は、基本的には認定事業者が提供するプログラムで全て網羅することができます。しかし、人によってはプログラムの内容が難しく感じたり、事業社が提供する一定基準をクリアするのにハードルを感じる方もいるのも少なくはありません。
そのため可能な方は、認定事業社のプログラムと並行して、以下の書籍で学習してみると良いでしょう。
②ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装
Pythonが初めての方も、スクラッチでディープラーニングが0から構築できるようになります。フレームワークを使わずに0から構築することによって、ディープラーニングの仕組みを理論と実装の両面から理解することができるので、一度学習しておくと良いでしょう。
数学に苦手意識のある方は以下を学習してみると良いでしょう。
③最短コースでわかる ディープラーニングの数学
機械学習を理解する上での必要となる、ベクトルや行列、微分積分についての考え方が一通り習得できます。まず、これらの参考書と事業者の認定プログラムを並行していきましょう。
余力のある方はフレームワーク毎の対策やPythonの知識を深めていきましょう。実際に書店に足を運び、自分が読みやすい本を選んでみるのも良いでしょう。
E資格が有利になる転職・就職先
ここでは、E資格を持っていると書類選考や面接で有利になりやすい企業の特徴を紹介していきます。
AIエンジニア・AIプログラマーを積極的に採用している企業
E資格を持っていることで優遇されやすいのは、AIエンジニアやAIプログラマーを採用している企業です。ですので、AIエンジニア・AIプログラマーになりたい人はE資格を取っておくと良いでしょう。
データサイエンティスト・マーケターを積極的に採用している企業
E資格を所持していると、AI系の職種だけでなくデータサイエンティストやマーケターを採用している企業でも興味を持ってもらいやすいです。
データサイエンティストやマーケターが多い企業は、AIで作業を効率化できる人材を欲していることが多いです。ポートフォリオや面接時に、AIを使って効率化を図りたいことをアピールすると良いでしょう。
E資格の申込みは早い方がいい?
E資格試験の受験申し込みは、試験日の約2ヶ月前から可能です。
申込締切りは、受験日前日の午後11時59分までと、かなりギリギリまで申し込みができるようになっています。ですが、受験申し込みは以下の理由から余裕をもって、なるべく早く済ませておくといいでしょう。
1.試験会場の予約が必要だから
理由の1つは、試験会場の予約が必要であることです。
受験申し込みをする際に、全国の会場から自宅や職場に近い試験会場を選ぶことができるのですが、ターミナル駅の近くなど受験者数が多くなる地域では、試験会場の定員がいっぱいになってしまうことが多々あります。
試験日の約1ヶ月前頃には、埋まる会場が出てくるため、できるだけ早いタイミングで予約をすることをおすすめします。
2.「修了者番号」の取得までが長いため
理由の2つ目に、認定プログラムの完了時期を考慮する必要があることです。
認定事業者は、自社のプログラムを受講して修了された方の情報をJDLAに通知し、JDLAより「修了者番号」を受け取ります。
試験の申し込み時には、この修了者番号を入力する必要がありますので、余裕を持った認定プログラムの受講と、試験申し込みをすることが大切です。
3.E資格の受験資格期間は少ないから
3つ目に、E資格の受験資格期間を有効活用するためにも、早めに申し込みをすることです。
前述の受験資格により、認定プログラムを受講してからE資格を受験できるチャンスは修了者番号取得から2年間(約4回)と限られています。
万が一、1回目で不合格となった際も、再チャレンジをするために、なるべく早くから受験していただくことをおすすめします。
E資格についてまとめ
今回はE資格について、試験概要や受けるメリットなどさまざまな観点から徹底解説しました。
E資格を受けようと思っている方はぜひこちらの情報を参考にしてください。
JDLA認定 E資格対策短期集中講座では4日間で試験合格に必要な知識を効率よく習得できますので、合わせて是非チェックしてみてください。