この記事では、E資格について費用面から考えています。
E資格は、AI領域の技術的な証明として有用な資格ですが、その費用対効果はどうなのでしょうか。いくつかのトピックについて考えていきます。
E資格について
E資格とは、日本ディープラーニング協会(JDLA)が認定する、ディープラーニングの基礎知識と実践能力を持つ人材を育成することを目的とした資格です。
E資格を取得することで、ディープラーニングのスキルを客観的に証明することができます。
E資格試験の受験資格
E資格には受験資格があり、JDLAが認定した教育プログラムを受講を完了することが必須となっています。JDLA認定プログラムは、JDLAが定めるディープラーニングのカリキュラムや評価基準に沿って作成された教育プログラムです。
E資格対応講座は、E資格試験の出題範囲に対応した講座で、ディープラーニングについて体系的に学ぶことができます。受講終了の条件は、認定事業者によって異なりますが、講座の受講に加えて、実技課題の提出を修了の条件としているセミナーがほとんどです。
こうした条件を満たすことでのE資格の受験資格を得ることができます。
講座の修了から2年間の間、試験を受けることができます。
認定事業者及び認定講座の確認は、JDLAの公式ウェブサイトから行うことができます。
E資格取得までの費用
資格取得を目標とする場合、受験料や講座の費用は重要ですね。
E資格の受験費用はE資格のJDLA認定講座の受講費用は、33,000円(学生は22,000円)と高めの受験費用です。他のIT系資格の受験費用と比べると、
- 基本情報技術者(国家資格):7,500円
- Python 3 エンジニア認定基礎試験:10,000円
- オラクルマスター:34,300円
と資格試験の中では高額な受験料となっています。
講座の料金は、認定事業者によりまちまちで、対面講座かあるいはオンライン受講なのか、オンデマンド講座なのかによっても費用が変わります。平均的には1回の受験料セミナーの受講料を合わせて25万円〜35万円の間の費用が必要になるのではないでしょうか。
受験費用や講座の受講料について、学生であれば学割が適用できるので、学生の方は1度受験を検討してみることをおすすめします。
高額費用をかけてE資格を取得する理由
E資格を取得するまでには高額な費用が必要になる場合もありますが、それに見合ったメリットもあります。E資格を取得することで、どのようなメリットがあるのか説明していきます。
AI・ディープラーニングの専門知識を得られる
E資格の試験範囲は、
- 数学的基礎
- 機械学習
- 深層学習の基礎分野
- 深層学習の応用分野
- 開発・運用環境
の5つの分野にわたります。
ディープラーニング単体でも非常に奥が深く、学ばなければならないことが膨大にありますが、機械学習や数理最適化などAI分野全体となると非常に幅広く、深い学習が要求されるため、何をどこまで学べばいいのかは、特に学びはじめの方に判断がつきにくのではないかと思います。
その点、認定講座などを利用し、E資格の取得に向けて学習をすることで、AI分野の理論と実装の両方を体系的に効率よく学ぶことができます。
また、E資格の認定講座の中には、講座修了の条件として、モデルの作成・提出が必須になっているものもあり、実際のディープラーニングのプロジェクトのようなAIプロダクト開発と同等の体験することも可能です。これらの知識と経験は、AI・ディープラーニングのエンジニアとしてのスキルを高めるのに役立ちます。
就活・転職活動で優遇される
E資格は、日本ディープラーニング協会が認定する、日本で初のAIエンジニアの資格です。
E資格を取得することで、ディープラーニングの実装力を客観的に証明することができます。
これは、就活や転職活動での自己PRや面接でのアピールポイントになります。
従来的なITエンジニアからAIエンジニアやデータサイエンティストに転職を希望している方は、まだAIプロダクトの開発経験が浅い方が多いと思います。
経験不足を補い、学習意欲や知識レベルが十分であることをアピールするためには、E資格の獲得は有効に働き、AI・ディープラーニングに関心の高い企業やそのような企業の求人にアクセスしやすくなります。
E資格は、AI・ディープラーニングの人材不足に悩む企業にとっても、優秀なエンジニアを選ぶ指標の1つとなります。
高収入の仕事に就ける
E資格を取得することで、高収入の仕事に就く可能性が高まります。
AI・ディープラーニングは、現在の社会において、様々な分野で活用されており、その需要は今後も増えていくと予想されます。そのため、AI・ディープラーニングのスキルを持つエンジニアは、市場価値が高く、高い報酬を得ることができます。
E資格は、そのスキルを証明する資格として、高収入の仕事に就くための強力な武器になります。受験料や講座の費用はやや高めですが、費用に対する投資回収効率は比較的いいのではないでしょうか。
JDLA認定プログラムと費用
JDLA認定プログラムとは、JDLAが実施するエンジニア資格(JDLA Deep Learning for ENGINEER、以下E資格)の受験資格を得るために修了が必要となる教育プログラムです。
JDLAは、ディープラーニングを中心とする先端IT技術の普及や日本の産業競争力の向上を目指す一般社団法人です。
JDLA認定プログラムは、JDLAが定める最新のシラバス内容を網羅しているかなどが審査され、JDLAから認定された講座を指します。
2023年時点では、19種類の認定プログラムが用意されており、提供事業者により「学習内容」「学習期間」「費用」が異なります。認定プログラムの一覧はこちらからご覧いただけます。
JDLA認定プログラムの受講方法は、各事業者のウェブサイトで確認してください。一般的には、オンライン受講や対面受講、ハンズオン形式などがあります。受講期間はプランによって異なりますが、3か月から6か月が目安です。受講費用は10万円から20万円が相場です。受講を修了すると、受講終了から2年間の間、E資格の受験が可能になります。
JDLA認定プログラムは、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を身につけるためのプログラムです。E資格は、その能力や知識を有しているかを認定する資格試験です。JDLA認定プログラムを受講することは、E資格の取得だけでなく、AIエンジニアとしてのキャリアアップにも役立ちます。
E資格対応のJDLA認定プログラム講座の比較
E資格を受験するには、JDLAが認定推奨するE資格対応のプログラム講座を受講する必要があります。
それぞれ受講スタイルなどの特色や、費用に違いがあります。以下に認定講座をまとめます。
認定No | 事業者名 | プログラム名 | 受講形式 | 受講料 | 受講期間 | フレームワーク | ||
00001 | 株式会社スキルアップNeXt | 現場で使えるディープラーニング基礎講座 | オンライン | 165,000円 | 3ヶ月 | Pytorch | ||
00002 | 株式会社 zero to one | 機械学習オンライン/ディープラーニングオンライン | オンライン | 165,000円 | 3ヶ月 | Pytorch Tensorflow | ||
00005 | エッジテクノロジー株式会社 | E資格対応パッケージプラン講座(Python + 機械学習 + ディープラーニング) | 対面/オンライン | 229,900円 | 6ヶ月 | Tensorflow | ||
00007 | 株式会社アイデミー | 【給付制度対象】Aidemy E資格対策講座 | オンライン | 298,000円 | 3ヶ月 | Tensorflow Pytorch | ||
00008 | 株式会社AVILEN | 全人類がわかるE資格講座 | オンライン | 182,600円 | 3ヶ月 | Tensorflow Pytorch | ||
00010 | NABLAS株式会社 | 3ヶ月で現場で潰しが効くディープラーニング講座 | オンライン | 要問い合わせ | 3ヶ月 | Tensorflow | ||
00011 | Study-AI株式会社 | 【月額3,300円で学べる個人限定コース】ラビットチャレンジ | オンライン | 3,300円/月 | 3ヶ月 | Tensorflow | ||
00012 | AI研究所 | E資格対策ディープラーニング短期集中講座 | 対面/オンライン | 138,600円/76,780円 | 4日間/2ヶ月 | Tensorflow Pytorch | ||
00014 | 株式会社Fusion One | 実務で使える ディープラーニング講座 | オンライン | 98,000円(税込) | 6ヶ月 | Tensorflow | ||
00018 |
|
| オンライン | ※法人向けのみ | 6ヶ月 | Tensorflow Pytorch | ||
00020 | 中部大学 (社会人向けコース) | CU Synergy Program | 対面/オンライン | 要問合わせ | 要問合わせ | Pytorch | ||
00021 | 学校法人 岩崎学園 情報科学専門学校 ISC | ディープラーニング入門 (E資格対策講座) | 対面/オンライン | 要問合わせ | 要問合わせ | Pytorch |
各講座の特徴や受講料、受講期間などを比較すると、以下のような点が挙げられます。
- 受講形式は、すべてオンライン
※一部の講座では、対面でのハンズオンや個別指導もあり - 受講料は、ほとんどの講座が100,000~200,000円
※一部の講座では、教育訓練給付金の対象となり、最大70%の費用負担が可能
※個人向けの低価格コースもあり - 受講期間は、ほとんどの講座が3ヶ月
※一部の講座では、1週間程度の短期コースや6ヶ月以上の長期コースもあり - フレームワークは、TensorflowとPytorchのどちらか、または両方を扱う講座
※試験では受験者がどちらかを選択して問題を解く必要がある
おすすめの講座や選ぶポイント
おすすめの講座は、自分の目的やレベル、予算に合わせて選ぶことが重要です。
- E資格の合格だけを目指すなら、費用を抑えて最短で学べる講座
- 実務で使えるスキルを身につけたいなら、現場での経験豊富な講師や実践的な演習がある講座
- 転職やキャリアアップを目指すなら、就職支援やメンタリングがある講座
また、講座選ぶ際には、以下のような点に注意することが重要です。
- 内容やカリキュラムが、JDLAが定める最新のシラバスに沿っている
- 受講期間が、試験日の過去2年以内に修了している
- 受講形式やスケジュールが、自分のライフスタイルや学習スタイルに合っている
- 受講料や支払い方法が、自分の予算や経済状況に合っている
- 評判や口コミを参考にして、自分の目的に沿った講座を選ぶ
上記の講座以外にも、東京大学の松尾研究室が毎年開催している、深層学習 / Deep Learning基礎講座は、学生・社会人問わず参加費無料で受講することができますが、定員が決まっており、期間限定募集の講座で、受講者の選抜があります。
費用面でより詳しく検討したいという方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
早期に資格取得するなら「E資格対策ディープラーニング短期集中講座」
ここまで、各社のE資格講座について説明してきましたが、価格と対面講座とオンラインの選択が可能、予備知識の補完やフォローアップまで考慮した、講座全体のバランスでいうと、以下の講座をおすすめすることができます。
E資格対策ディープラーニング短期集中講座
E資格対策ディープラーニング短期集中講座は、AI研究所が提供する短期集中型の講座です。
短い期間に効率よく学習して、早期に資格取得を目指したい、という方に特におすすめです。
JDLA認定プログラムとなっており、この講座を受講すればE資格の受験資格を獲得することができます。受講形式は、「会場受講」「ライブウェビナー」「eラーニング」の3つの受講形式から選ぶことができ、忙しい社会人でも受講しやすい講座です。
会場受講を選択した場合は、全4日間のカリキュラムで学び、講師に直接質問するなどアクティブな学習が可能です。1日目は機械学習の基礎知識、2日目はディープラーニングの基礎、3日目以降は畳み込みニューラルネットワークや自然言語処理などのディープラーニングの応用技術について段階的に学ぶことができます。
さらに、事前オンライン学習により、数学や機械学習、Pythonの基礎知識を身につけることが可能なので、初心者でもE資格にトライすることが可能です。
解説つき問題集やフォローセミナーなども用意されていますので、E資格の受験対策について詳しく知りたい方は、参考にしてみてください。
以下の動画も講座選びの参考にしてみてください。
出典:AIビジネスチャンネル
E資格の費用と効果 まとめ
この記事では、E資格の費用面に焦点を当て、その費用対効果や受験に必要な要件、おすすめの講座について解説しました。
E資格はディープラーニングの基礎知識と実践能力を認定する資格であり、高額な受験料がかかりますが、取得することでAI領域でのキャリアアップや高収入の仕事への就職が見込まれます。
本記事では、JDLA認定プログラムについても紹介し、様々な講座の比較や選び方のポイントを提供しました。E資格の取得に向けた投資をすることで、AI・ディープラーニングの専門知識を得るだけでなく、就活や転職活動での優遇や高収入の仕事への道を拓くことができるでしょう。
費用に対する投資回収効率も高いと思いますので、チャンスがあれば、E資格の取得に是非チャレンジしてみてください。