E資格の独学について

E資格は、AIの実装能力を問う資格で、日本ディープラーニング協会(JDLA)が認定するものです。

この記事では、E資格の受験要件や難易度、合格のポイントについて詳しく解説し、独学のポイントも解説します。AI分野でキャリアを築きたい人にとって、E資格は重要なステップとなるでしょう。

E資格とは?

E資格とは

E資格とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が認定する、ディープラーニングの理論への理解と、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有するかを検定するものであり、AI人材を育成するための資格です。簡単にいえば、AIの実装力を知識を問う資格です。

日本国内では数少ないAIの資格で、2023年11月現在で延べ8,656名が受験し、6,289名が合格しています。日本ディープラーニング協会は、日本のAI研究の第一人者である東京大学の松尾豊教授が理事長を務める、日本国内有数のAI研究の団体です。
そのため、E資格も国内のAI系資格としては最も信頼度の高いものといっていいのではないでしょうか。

E資格の試験は年に2回実施され、受験にはJDLA認定プログラムの修了が必要です。
全体の合格率は約72.2%となっています。また、2023年の受験者数は1,112名で、合格者数は807名であり、2023年の合格率は約72.57%です。

E資格は、ディープラーニングの基礎から応用までをカバーした幅広い内容で、実務で活用できるスキルを身につけることができます。
E資格を取得することで、AIエンジニアとしての自信や信頼を高めることができるとともに、キャリアアップや転職にも有利になる可能性があります。
E資格に興味がある方は、ぜひチャレンジしてみてください。

独学の前にE資格の難易度を確認する

独学の前にE資格の難易度を確認する

プログラミングの学習を始める場合、まずは独学で始める方は少なくないでしょう。
プログラミング学習と同様にE資格の取得を目指す人は、まずは独学での取り組みから始める方が多いのではないでしょうか。

実際、E資格は合格率だけを見ると例年70%を超えており、それほど難しい資格ではないように思えます。

しかしながら、多くの受験者は合格にたどりつくまでにかなり苦労をされているようです。
その要因は、出題範囲の広さや、プログラムの実装に関する問題が多く出題されるなどの点にあるのではないかと考えられます。

E資格合格の難易度については、以下の点を考慮する必要があります。

E資格には受験資格が設けられている

E資格の受験には、JDLA認定プログラムのいずれかを試験日の過去2年以内に修了していることが条件となっています。
JDLA認定プログラムは、ディープラーニングの基礎から実践までを学ぶ講座であり、受験者のほとんどはある程度の知識と経験を持っています。
学習自体は独学で行えますが、E資格の受験には独学だけでなく、認定講座の受講が必須なのが現状です。

E資格は出題範囲が広い

E資格の試験は、

  • 応用数学
  • 機械学習
  • 深層学習
  • 開発・運用環境

の4つの分野から出題されます。試験時間は120分で、問題数は100問前後です。
出題形式は多岐選択式ですが、プログラムの実装を含む穴埋め形式の問題も多く、AIモデルを実装できる技術レベルが求められます。
講座の受講後も独学での学習継続は必須なのですが、独学での学習継続が難しかったり、挫折しがちなのは、試験範囲の広さも関係しているのではないでしょうか。
以下にE資格の出題範囲を示します。

E資格の試験範囲(シラバス)

応用数学確率・統計
情報理論
機械学習機械学習の基礎
実用的な方法論
強化学習
深層学習順伝播型ネットワーク
深層モデルのための正則化
深層モデルのための最適化
畳み込みネットワーク
回帰結合型ニューラルネットワークと再帰的ネットワーク
生成モデル
深層強化学習
グラフニューラルネットワーク
深層学習の適用方法
距離学習
メタ学習
深層学習の説明性
開発・運用環境ミドルウェア
エッジコンピューティング
分散処理
アクセラレータ
環境構築

出題される分野ごとの問題数の割合は大きく変化していませんが、シラバスが改定されたこともあり、旧シラバスに比べてさらに試験範囲が広くなっています。
詳細はJDLAの公式サイトでもチェックしてください。

E資格の受験者は一定のAI技術リテラシーを持っている

E資格の合格率は、2021年の試験では78.4%、累計でも69.4%と高い水準を保っています。
しかし、これは受験者のレベルが高いことを反映しており、数字以上に難易度は高いといえます。

実際に、受験者のアンケートでは7割近い人が応用情報技術者試験(合格率20%前半)と同じかそれ以上の難易度と答えています。合格率は高いですが、そもそも学習を自走できる、独学でやれることが多い人が合格者の中には多いと考えられます。

以上のことから、E資格は非常に高い難易度の資格であると言えます。
合格のためには、JDLA認定プログラムの受講だけでなく、自分でしっかりと対策をして問題に慣れておく必要があります。そういった意味では、国内のディープラーニング関連資格としては最も難易度が高いといえるのではないでしょうか。

E資格の独学について

E資格の独学について

結論から言ってしまうと、認定講座を受講する必要があるという受験資格が設けられている以上、完全な独学はできません。

しかし、E資格講座を受講するだけで良いかといえばその限りではありません。
講座を受けた後も独学による学習の継続、試験対策の実施が必要です。
前述のようにしっかりとした対策を立てなければ合格が難しい資格、逆を言えばしっかりと対策を立てておきさえすれば、合格は難しくないとも言えます。
いずれにせよ、認定プログラムの受講だけでは合格レベルに到達することはできないため、独学の計画をしっかりと立て、新しい情報に対して自分からキャッチアップする積極性が求められます。

では、どのように独学の計画を立てればよいのでしょうか。
合格に向けて必要なことについて説明しながら考えてみましょう。

E資格の認定講座の受講が必須

E資格の受験資格はJDLAが認めた認定講座の受講完了し、2年が経過していないことです。
受講が完了していないか、受講完了から2年が経過している場合は受験ができませんので、ご自身に受験資格があるのかの確認が必要です。

独学で学習プランを自走できること

E資格の受験のみならず、AIエンジニアやデータサイエンティストとして今後活躍していきたいと考える場合、自ら進んで情報収集や学習に取り組む力が必須です。
ITの分野、特に先端IT技術と言われるAI関連の技術分野は次々と新しい技術や情報が発信され、ほんの数年から数ヶ月の単位で、今の技術が古くなってしまいます。

また、実装のテクニックなどは様々なアプローチ方法があり、論文をはじめとする非常に多くの情報が日々発信されています。
その膨大な情報の中から、自分が必要とする情報を選び出す能力や、収集した情報を使って自分で最適な実装方法に取り組むことが必要です。
これはプログラミングスクールでは指導しきれない内容であるため、それぞれの自助努力が非常に重要です。つまり自走する力が非常に重要なのです。

AIプログラミングの基礎を習得している

E資格の講座は基本的にはプログラミングの基礎ができていることが前提としてカリキュラムが組まれていることがほとんどです。
試験にはAIプログラミングの実装問題も頻出しますので、専門的なコーディングの勉強が必要になります。AIモデルの構築にはライブラリが豊富なPythonが使われることが多いのでまずはPythonから学習しましょう。

セミナーのペースについていくためにも、学習を効率的に進めるためにもプログラミングの基礎を習得しておくことをおすすめします。
Pythonプログラミングに自信のない方はこちらの講座をおすすめします。

他にもProgateなどの独学に役立つオンラインカリキュラムなどが独学には有効です。

E資格に合格するまでに最低限必要な独学のポイント

E資格に合格するまでに最低限必要な独学のポイント

E資格の合格を目指すのであれば、シラバスの内容について理解しておく必要があります。
E資格の出題範囲はかなり広く、特定の分野だけを学習しておけば合格できるような試験ではないです。AIを構築するための各分野の技術に対して一定レベル以上の見識が求められます。
そのため、AIについての体系的な知識を効率よく学ぶ必要があります。

そのための以下の点は必ず自覚しておきましょう。

E資格のシラバスの内容を理解している

シラバスに書いてある範囲の内容は最低限、押さえておきましょう。
特に深層学習の分野では、ニューラルネットワークの基本的な理論、画像系のモデルについて、最近重要度が増してきた自然言語処理の分野は重要です。
また、生成AIが盛り上がる中で、GANなどの生成モデルは最新の情報に注意したいところです。
また、シラバス改定後にはDockerが新たに試験範囲に入っています。
環境構築やクラウドに関する技術の重要性は以前よりも高まっていると言えます。

スクラッチ実装を含めた基本的なAIプログラムが実装できること

全てのプログラミングスクールではAIプログラムの実装がカリキュラムに組み込まれており、ベーシックな機械学習からディープラーニング、そして環境構築まで一連の実装能力を身につけていることが合格の条件となっています。
スクールのよっては、プログラミングの実習課題の提出が受講完了の必須要件になっている場合もありますので、必修科目と言って良いでしょう。

応用数学の基本を理解している

E資格は文系出身の方でも合格を狙える資格ですが、数学が苦手な場合は最低限理解が必要な科目があります。ニューラルネットワークの実装には線形代数などの行列計算が必要になります。
実際にプログラムを書けばわかりますが、ニューラルネットワークで実施する計算は、膨大な量の行列の足し算と掛け算の繰り返しなのです。

また、微分など基本的な高校数学の内容も必要になります。
数学の学習は独学で進めやすい分野ですので、深層学習に必要な分野の内容を計画的に学習していきましょう。数学に自信のない方は、この点をよく理解して事前準備をしてください。
プログラミングスクールで実施している数学の講座を合わせて受講するのもよいでしょう。

E資格合格のポイント

E資格の合格までには様々なポイントがあります。
いくつかポイントをあげてご紹介します。

E資格の認定スクールをうまく活用する

JDLAが認定するE資格講座を実施している各プログラミングスクールの講座を受講すれば、体系的な知識を効率よく網羅的に学習することができます。
スクールが認定を受ける以上、JDLAの審査が入りますので、この点でスクールの授業の信頼度は高いです。ただし、ほとんどのスクールがセミナーの内容だけでの合格を保証しているわけではないので、あくまでも合格に必要な土台づくりだと考えておいた方がベターでしょう。
この土台に上乗せする知識は皆さん自身が自学で獲得していく必要があり、これが上積みされることで合格の可能性がグッと上がります。
どんなことに取り組めばいいか迷う時は、スクールのメンターに相談すれば試験までの学習方法を教わることができます。

コミュニティを上手に活用する

E資格を取ろうというくらいの方は、新しいことを習得しようとする意欲のある方だと思います。そのような人を身近に見つけることができればラッキーなのですが、同じようなことを同じモチベーションで取り組んでいる方はなかなか見つけることが難しいのではないでしょうか。

独学する上でも、効率的かつ効果的な学習方法は人により様々です。
より多くの情報を収集して自分に合った学習方法を見つけるためにも、スクールやイベントで仲間を見つけコミュニティをうまく活用することが役に立ちます。
スクールの授業が無くなってしまうと、どうしても学習に気持ちが向かないことが多くなりがちですが、自分以外にも目標に向けて努力している仲間ができれば、それが励みになり途中で挫折する可能性も低くなります。参加したいコミュニティを見つけたらもくもく会などに参加して自走できる力を身につけましょう。
学習の進め方や、独学の方法が確率できれば、もくもく会への参加もより効果的になるでしょう。

独学のための情報収集を怠らない

受験資格を得た後も継続した学習が必要です。前述したように、E資格の合格には独習の時間が重要であり、その質や密度を高めるためには最新情報の収集が鍵になります。
せっかく努力をしていても的外れな、目的にそぐわないことに取り組んでも成果は出ません。
熟練エンジニアや学習サイト、スクールのテックブログなどを活用して情報収集をしましょう。
SNS経由でE資格受験者のコミュニティを探したり、イベントサイトでもくもく会やLT回を探したり、エンジニアのブログからおすすめの書籍やコーディングの情報を得るなど、うまくウェブの情報を活用してみてください。
E資格の攻略法についてはこちらの記事でも紹介しています。

E資格の取得におすすめのセミナー

E資格の取得におすすめのセミナー

前述の通り、E資格の独学は制度面では不可能であり、学習面でもかなり効率よい学習をモチベーションを維持しながら行わなければならず、難しいと言えます。

そこで、プログラミングスクール選びが重要になってきます。
ここでおすすめのスクールをご紹介します。

AI研究所のE資格講座は、E資格合格に必要な数学の基礎知識と応用数学の内容から、AIの仕組みと機械学習アルゴリズムの使い方、PythonのAIプログラミング基礎まで合計8時間以上の基礎講座を受講後に、シラバスの範囲を学習する全4日間のコースを受講できます。
数学に自信のない方や、基礎から学んでから本格的な授業を受けたい方にはおすすめです。
また、4日間に出題範囲の内容を凝縮している点は忙しい社会人が受講しやすいカリキュラムで、費用面でも他者と比較してリーズナブルな点でも、受講しやすい講座です。
講座受講完了後のフォローアップ講座も開講しており、合格に向けた自分の理解度を把握しやすくなり、しっかりとした学習計画が立てられます。
ご興味のある方は、1度受講について相談されてはいかがでしょうか。

まとめ

この記事ではE資格の独学をテーマに、合格へ向けた学習方法などについてご紹介してきました。

結論を言えば、受験資格の問題から認定講座の受講は必須ですので、完全な独学だけでの合格はできません。しかし、自走できる能力がなければ合格は難しいため、どのように独習していくのかが非常に重要になってきます。
闇雲に学習するよりも、スクールで知り合った仲間との情報交換や、SNSなどで学習者コミュニティなどを見つける、もくもく会に参加するなどの機会を通して自分流の独学法を見つけていくことが合格への鍵になります。

相当の学習が必要ですが、合格すればAIエンジニアとして新しい一歩になります。受験してみたいという方は、ぜひ合格に向けて頑張ってください。

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