業務の自動化を目指す企業は年々増えていますが、実際にどうすれば良いのか、どのようなメリットやデメリットがあるのか分からないという人も少なくありません。
こちらでは、業務を自動化する方法や成功事例について見ていきます。
業務の自動化とは?
業務の自動化とは、これまで人が手作業で行っていた業務を、システムやツールを活用して自動的に行えるようにすることです。基本的には、AIやロボットなどのIT技術を導入することになるため、導入した当初はまとまったコストが発生しますし、これらの扱いや新たな作業のルーティーンに悩むことになるでしょう。
しかし、一旦自動化を進めてしまえば、その後の作業は恒久的に大きな負担軽減につながります。実際、多くの業務を自動化することにより、何万時間という単位で作業時間の削減を達成したり、高額の人件費削減に成功したりしているケースも少なくありません。
DXの推進
業務の自動化に関連して、DX推進という言葉も耳にすることが増えています。DXとは、デジタル技術やIT技術を活用して、企業組織やビジネスモデルの変革を行うことです。
業務の自動化もDXの一環であり、日本社会の高齢化による人材不足や燃料、資材などの高騰を解消するのに有益と考えられています。
とはいえ、これまで手作業で行ってきた業務を一度に自動化するのは、従業員への周知やスムーズな新体制への移行、初期コストの負担など様々な問題があるでしょう。また、業務を自動化することで従業員にとっては、仕事を取られてしまうという不安にもつながりかねません。
そのため、まずは業務を自動化する方法やそのメリット、デメリットなどについて理解した上で、できるところからデジタル化を取り入れていく企業が多いです。
業務を自動化する方法
業務を自動化する方法は、いくつかあります。以下の手順にて解説していきます。
- 自動化する業務を判別する
- ツールの選定
- 試行して検証
自動化する業務を判別
まず、自社でどの業務を自動化すると効果的なのかを判断しなければなりません。一般的には、単調な作業ではあるものの、作業量が膨大で時間を取られてしまうようなルーティンワークを自動化すると、自動化した後のチェックもしやすいですし、大幅な作業時間の短縮につながります。
また、業務を自動化した結果、ペーパーレス化が進む傾向がみられるため、画面上で必要な書類をチェックできるように従業員に周知するとよいでしょう。
ツールの選定
どの業務を自動化するかが決まったら、ツールの選定を行わなければなりません。
ツールにはいくつかの種類がありますが、代表的なものとしては以下の4種です。
- 業務に合わせた自動化システムをプログラミングで作成する方法
- ロボットによってパソコンの作業を自動化するRPAツール
- ビジネスツールとして頻繁に利用されるOffice製品でマクロを活用する方法
- AIツールを導入する方法
以上のツールが挙げられます。
いずれも導入する際の難易度や運用、メンテナンスにおける負担、コストなどの違いはありますが、自社にあっているツールを選ぶことで、大幅な作業効率化が達成できるでしょう。
試行して検証
導入すべきツールが具体的に決まったら、小規模な範囲で試行して効果を検証したり、トラブルが発生した時の対応について周知したりしなければなりません。試行の結果、大きな問題がないと判断されたら、本格的にツールを導入する準備を始めます。
導入直後は業務がスムーズに進行する可能性が低いため、余裕を持ったスケジュールを組み、担当者にはマニュアルの徹底や研修の実施などを行って、無理なく移行できるようにしておきましょう。
自動化の身近な成功事例
業務の自動化でどのような変化が見られるのでしょうか。既に自動化を進めている企業の成功事例について見ていきましょう。
三菱UFJフィナンシャルグループ
全国的に、金融機関はRPAツールとの相性がよく、積極的に導入が勧められています。中でも三菱UFJファイナンシャルグループ(MUFG)はRPAの導入が早く、20近い業務を自動化しており、合計で2万時間を超える短縮に成功している事例です。
金融機関は作業の詳細な記録や正確性が求められますが、RPAツールでデータベースや記録へのアクセスを自動化することにより、ミスを防ぐことができます。さらに、煩雑な作業を自動化したことで、社員の仕事の内、7割近くを自動化できました。
三井住友海上火災保険株式会社
保険会社はいつ顧客からの呼び出しがあるか分からない上、対応を求められたときには顧客に寄り添う姿勢が必要になる仕事です。そのため、外交員の労働時間の長さがしばしば問題になっていますが、三井垂共海上火災保険株式会社では、働き方改革を推進する際に作業の自動化にも着手しました。
具体的には、RPAに加えてエクセルのマクロ化を進め、業務の自動化を図ったことで従業員の反復作業を大幅に減らし、接客に専念しやすい環境を作り出しています。これにより、同社では一カ月あたり1200時間の労働時間削減を達成しました。
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
NTT東日本では、通信事業者らしい業務の自動化を行っています。
具体的には、Web会議の導入やテレワークなどのITツールを導入することで、移動時間などのカットにつなげています。また、利用者からの問い合わせにはAIツールを導入し、登録されている質問に対しては自動で回答できるようにしました。
これに加えて時間外労働の時間を変更し、従業員が効率よく働ける環境に整えています。
業務の自動化によるメリット・デメリット
業務を自動化することで、どのようなメリットやデメリットが生じるのでしょうか。以下に、具体的な内容を見ていきましょう。
メリット
業務自動化によるメリットは、将来的に高い確率で発生する労働力不足に対応しやすくなる点です。今後、高齢化が進むことで優秀な従業員の確保が困難になると考えられていますが、業務を自動化することで人材の奪い合いを防ぐことができます。
また、労働環境の改善にもつながるため、優秀な人材を転職で失うリスクが減少し、ノウハウを引き継いでいくこともできるでしょう。
加えて、コストを抑えて生産性を高めるというメリットも考えられます。初期投資は必要ですが、一度自動化すれば恒久的にコストカットができるため、長い目で見れば大きなメリットになるでしょう。
デメリット
一方で、業務を自動化することで労働力の需要が減少し、雇用が減る点はデメリットとして懸念されます。また、既存の従業員も導入したシステムへの移行や適切な運用、システムエラーによる作業のミスへの対応、トラブル時の処理など、新たに学ばなければならないことが増えて一時的に負担が大きくなるでしょう。
機械には任せられないコア業務を行える人材の育成、自動化した作業のチェックを行う体制づくり、専門的な知識を持つ業者へのシステム構築の依頼など、これらのデメリットを改善できる対策を考えていく必要があります。
自社に合った自動化を導入しましょう
このように、業務を自動化する方法は様々ですが、導入時にはコストが発生しますし、業種や企業の規模によってその影響が異なってきます。
自社の作業内容やメリット・デメリットを見極めて、無理のない方法を探しましょう。