日本のビジネスにおいても、日に日にDX(デジタルトランスフォーメーション)が浸透しつつあります。しかし、「どのようなものかがいまいちわからない」という方も多いでしょう。
今回の記事では、DXをまったく知らない方および興味をもっている方に向け、概要をわかりやすく解説します。また、メリット・デメリット、DXを成功させた企業の具体例、成功のポイントもわかるので、新しく始める際の必須の知識として役立つでしょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DXとは「デジタル技術を活用し、ビジネスモデルや仕組み、業務プロセスに変革をもたらすための取り組み」です。その取り組みを行ったうえで、デジタル化で進むビジネス環境の変化に柔軟に対応できるようにすることが、主な狙いです。
DXの実現において欠かせないポイントは、主に以下の5つになります。
- 顧客へ新しい価値を提供すること
- デジタル技術の導入のみならず、顧客の課題や悩みを解決すること
- 下層部や現場でなく、上層部やトップが変革に前のめりになること
- 業務プロセスのみならず、根本となる事業モデルを変えること
- 組織内だけでなく、業界を通じて実践できること
なお、以下の動画も参考になります。
DXを具体的な意味をわかりやすく解説すると
DXの意味をよりわかりやすく説明するなら、「デジタル技術を使ってビジネスモデルそのものを変えること」となります。
組織内の一部の作業を自動化するのではなく、企業ぐるみでビジネスモデルや仕組みそのものを変えるものです。そのため、一般的な「業務効率化」に比べて時間も労力もかかるという特徴があります。
また「現場の長ではなく組織の上層部が動くこと」、そして「社員よりも顧客が満足するものであること」という共通点もあります。
DXとIT化の違い
DXとITの違いは、大きく以下のとおりです。
正式名称 | 対象 | 目的 | |
DX | Digital Transformation (デジタルトランスフォーメーション) | 組織全体 | デジタル化によるビジネスモデルの変革 顧客への新たな価値の提供 |
IT化 | Information Technology (インフォメーションテクノロジー) | 特定の部署や個人 | 業務効率の向上 生産性の向上 |
あくまでIT化は、DX実現のための手段と考えていいでしょう。IT化は特定の部署の業務の一部、DXは企業全体が対象になるので、DXのほうが実現は困難といえます。
なおITの他、「デジタル化」などといった類似語との違いをより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考になります。
DXを推進させるメリット
企業がDXを推進させることには、以下のようなメリットがあります。
- 働き方改革の実現が可能になる
- 新規サービスの開発に取り組みやすくなる
- あらゆる変化に柔軟に対応できるようになる
それぞれ解説します。
働き方改革の実現が可能になる
働き方改革が実現できることは、大きなメリットとして挙げられます。
DXに取り組むということは、デジタル技術による業務効率化が不可欠です。業務効率化が実現することは、社員の作業時間と労力を減らすことにつながり、結果として残業時間を減らせるためです。
また、空いた人員をより重要なタスクに割いたり、小休憩を追加するなどの改革を行えるため、社員のモチベーションにもつながるでしょう。
新規サービスの開発に取り組みやすくなる
新規サービスの開発に取り組みやすくなることもメリットになります。
DX実現に欠かせないデジタル化によって、顧客情報の分析・解析が容易になるためです。具体的にはECサイトにおけるレコメンド機能や、IoTシステムによるデータ収集などが挙げられます。
またデジタル化による業務効率化で社員の時間が空くことで、新規サービス開発における人員リソースを十分に確保することにもつながります。
あらゆる変化に柔軟に対応できるようになる
あらゆる環境変化に強くなることもメリットといえるでしょう。DXに必須の「IT化」や「デジタル技術の導入」は、リモートワーク実現や人員リソースの担保などに大きく貢献するからです。
たとえば自然災害や感染症パンデミックなど、世の中の変化・流れに抗うことはできません。こういった変化に対応できる対策としてDXに取り組むことで、どんな変化にも柔軟に対応でき、事業を継続していくことが可能になります。
DXの現状の課題・デメリット
大きなメリットがある一方、デメリットや課題も存在します。この章では、以下の3つに絞ってご紹介します。
- 企業全体の理解と協力が必須になる
- 長期にわたる地道な運用が求められる
- 導入や運用におけるコストが高い
企業全体の理解と協力が必須になる
「企業全体の理解と協力」が必須になることが、大きな課題といえるでしょう。IT化や業務効率化とは異なり、上層部が主軸となって組織全体で変革に取り組むことが不可欠だからです。
いいアイデアを思いついて提案しても、何らかの理由で反対したり、もしくは非協力的になる人が必ず一定数出てくるものです。そうなると、組織全体で協力する姿勢を継続することは、難しくなるでしょう。
あらかじめ反論への理解を考えておくことや、十分な導入環境の構築を行うことが必要になります。
長期にわたる地道な運用が求められる
長期にわたる地道な運用が必須になることもデメリットといえるでしょう。新たなテクノロジーの導入は即効性を期待されがちですが、実際には組織全体が変革を受け入れ、適応するには時間がかかるからです。
また地道で長期的な運用となれば、社員のモチベーションを維持することも困難になるものです。そのため組織が長期戦に備えるためのビジョンをもち、着実な対策を行うことが不可欠となります。
導入や運用におけるコストが高い
導入、および運用に大きなコストがかかることも、デメリットになるでしょう。DXは業務の一部の効率化ではなく、組織のビジネスモデルや仕組みそのものを根本から変革する取り組みであるためです。
デジタル技術を用いるため、専用のITシステムの開発やツールの導入、またそれらの運用を維持することにもコストはかかります。さらに人材の確保や育成も必要になることから、取り組む前にしっかり予算を考慮しておくことが大切です。
DXを成功させている企業の具体例
現代ではDXを成功させている企業は多岐にわたります。この章では、以下の3つの企業に絞ってご紹介します。
- ANAホールディングス
- トライグループ
- 株式会社ブリヂストン
ANAホールディングス
ANAホールディングス株式会社が成功させたDXへの取り組みは、アプリケーションの開発です。具体的には、以下の2つのアプリを新たに開発・導入しています。
- ANAアプリ
- ANA Pocket
「ANAアプリ」では、渡航書類の事前登録や出発時刻・搭乗口変更などを行えるようになり、搭乗者の利便性の向上に寄与しています。また、移動の度にポイントが貯まるアプリ「ANA Pocket」のリリースによって、顧客におトク感と旅の楽しみを与えることに成功しました。
トライグループ
家庭教師のトライで知られるトライグループは、映像授業サービス「Try IT」のリリースで、DX成功を収めています。
映像で学習できる「Try IT」によって、リモート環境下での学習が容易になり、ユーザーの利便性を向上させました。さらに、生徒の学習傾向の分析も容易になったため、教育の質の向上にも役立っています。
ユーザー、運営側の双方にとってWin-Winな取り組みで、会員登録者数の大幅な増加を実現しました。
株式会社ブリヂストン
株式会社ブリヂストンの取り組みは、「技能伝承システム」の開発です。「技能伝承システム」とは、技術者の熟練スキルの伝承を容易にするものです。
具体的には、モーションカメラやセンサーを用いて、熟練技術者と新人技術者の動きの違いを数値などで見える化。それによって、新人技術者の熟練スキル習得スピードを向上させています。
人手不足解消の術として、タイヤ業界のみならず多くの製造業界で話題を集めました。ここまで紹介した3つの他にも、DXを成功させた企業について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
DXの成功のために重要になるポイント
DXの成功に重要なポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- DXの目的・ゴールを明確にする
- データを有効活用し改善を繰り返す
- DXコンサルティングやセミナーを検討する
それぞれ解説します。
DXの目的・ゴールを明確にする
まずは取り組む前にどんなことを実現したいのか、目的・ゴールを決めておくことが大切です。目的がはっきりしていないと方向性がブレてしまうため、失敗に終わってしまう可能性が高くなります。
見切り発車ではなく、「どんな理念・信念で、どんなIT技術を導入し、どういう結果を実現させたいのか」をあらかじめ決めておき、それに必要な努力やアクションを行っていくことが好ましいでしょう。
データを有効活用し改善を繰り返す
データを存分に活用し、分析や改善を繰り返すことは、DXを成功させるための基本となります。ユーザーの行動パターンや嗜好などの分析を行うことで、本当に求められている潜在的なニーズや課題がわかるためです。
とくにDXは、ビジネスモデルの変革のためにデジタル技術を用います。顧客への新たな価値の提供のためには、やはり顧客のデータの利活用は欠かせません。
DXコンサルティングやセミナーを検討する
これから新しく取り組む場合、コンサルティングを受けたり、セミナーへの参加で知識を深めることも重要です。DXの知見のあるプロに協力してもらうことで、正しい努力と確かな成果を実現できるからです。
今ではあらゆるコンサルティング会社が存在しますが、中でもおすすめなのが、CROSS TECHの「企業向けDX・AI人材育成研修サービス」です。企業のレベルに合わせた「ビジネスを創出する力」「活用のための技術力」「デジタルにおける技術力」を身につけることができ、かつ人材育成のサポート・コンサルティング・トレーニングも提供しています。
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まとめ
以上、DXの概要やメリット・デメリット、具体例や重要ポイントなどを紹介してきました。DXはわかりやすくいうと、「デジタル技術を使ってビジネスモデルそのものを変えるための取り組み」です。
取り組むには組織一丸で協力し合う姿勢が必要になるため、すぐかんたんに実現できるものではありません。周囲の理解や協力を得ること、またDX環境の構築など、小さなことから少しずつ始めていくことが大切です。