IT業界に努めている方、またIT業界へ興味をもっている方であれば、「基本情報技術者試験」という資格を聞いたことがあると思います。そんな基本情報技術者試験の内容や難易度はどの程度で、自分が取得できそうなレベルなのか気になる方は多いでしょう。
今回の記事では、基本情報技術者試験の概要から合格率、学習期間、学習方法について詳しく解説します。本記事を読むことで、基本情報技術者試験がより理解できることから合格率アップが狙えるので、ぜひ参考にしてください。
基本情報技術者試験の概要
基本情報技術者試験は、IPA 独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)が運営する国家資格です。IT業界に関する広範な基礎知識、またあらゆるITサービスやシステムを開発するエンジニアに必要な基礎知識やスキル、実務で役立つ実践力が身につく資格です。
開発エンジニアのみならず、インフラエンジニアを対象にした「サーバー」や「ネットワーク」などの知識・スキルも範囲に含まれているほか、生産管理や経営戦略に関するノウハウも出題されるため、幅広い知識を身に付けることが可能です。
これからIT業界を目指す未経験者の方が挑戦することで、非常に良質かつ網羅的な学びを得られる資格といえます。「IT業界の登竜門」と言われていますが、現役IT従事者でももっておきたいメジャーな資格として広く知られています。
基本情報技術者試験の詳細一覧
基本情報技術者資格の詳細を一覧にまとめると、以下のようになります。
名称 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 |
略号 | FE |
運営 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 |
開催日時 | CBT方式により随時実施 |
試験形式 | 科目A試験(四肢択一) 科目B試験(多肢選択式) |
試験時間と出題数 | 科目A試験 90分間 60問 科目B試験 100分間 20問 |
実施方式 | CBT方式 |
採点方式 | IRT方式 |
合格条件 | 科目A、B試験両方で1000点満点中600点以上 |
合格率 | 約30%前後 |
受験資格 | なし |
受験料 | 7,500円(税込み) |
主な出題範囲 | 基礎理論 アルゴリズムとプログラミング コンピュータ構成要素 システム構成要素 ソフトウェア ハードウェア ヒューマンインターフェイス マルチメディア データベース ネットワーク セキュリティ システム開発技術 ソフトウェア開発管理技術 プロジェクトマネジメント サービスマネジメント システム監査 システム戦略 システム企画 ほか |
基本情報技術者試験の合格には科目AB両方で600点をとる必要があり、どちらかが600点以下であれば不合格となってしまいます。
また、これまで基本情報技術者試験は4月と10月の年2回開催でしたが、2023年(令和5年)4月からCBT方式での随時実施に変更が施されています。そのため受験者は任意の日にち・時間で試験を実施できるようになり、利便性が大きく向上しました。
基本情報技術者試験の概要についてより詳しく知りたい方は、以下の動画も参考になります。
基本情報技術者試験の合格率・難易度
基本情報技術者試験の、年度ごとの合格率を一覧にまとめたものが以下になります。
年度 | 合格率 |
平成21年(2009年)春期 | 27.4% |
平成21年(2009年)秋期(出題ミスのため合格率高め) | 35.4% |
平成22年(2010年)春期 | 22.2% |
平成22年(2010年)秋期 | 23.4% |
平成23年(2011年)特別 | 24.7% |
平成23年(2011年)秋期 | 26.2% |
平成24年(2012年)春期 | 23.7% |
平成24年(2012年)秋期 | 27.1% |
平成25年(2013年)春期 | 23.0% |
平成25年(2013年)秋期 | 22.1% |
平成26年(2014年)春期 | 23.9% |
平成26年(2014年)秋期 | 23.6% |
平成27年(2015年)春期 | 26.0% |
平成27年(2015年)秋期 | 25.6% |
平成28年(2016年)春期 | 30.4% |
平成28年(2016年)秋期 | 23.6% |
平成29年(2017年)春期 | 22.5% |
平成29年(2017年)秋期 | 21.8% |
平成30年(2018年)春期 | 28.9% |
平成30年(2018年)秋期 | 22.9% |
平成31年(2019年)春期 | 22.2% |
令和元年(2019年)秋期 | 28.5% |
令和2年度(2020年)10月 | 48.1% |
令和3年度(2021年)5月 | 49.9% |
令和3年度(2021年)6月 | 39.3% |
令和3年度(2021年)10月 | 46.0% |
令和3年度(2021年)11月 | 38.8% |
令和4年度(2022年)4月 | 45.1% |
令和4年度(2022年)5月 | 38.3% |
令和4年度(2022年)10月 | 39.0% |
令和4年度(2022年)11月 | 34.8% |
令和5年度(2023年)4月(新制度導入) | 56.4% |
令和5年度(2023年)6月 | 52.5% |
令和5年度(2023年)7月 | 49.5% |
令和5年度(2023年)8月 | 48.3% |
令和5年度(2023年)9月 | 47.7% |
令和5年度(2023年)10月 | 42.3% |
令和5年度(2023年)11月 | 44.8% |
基本情報技術者試験は、IT完全未経験者でも入念な対策を行えば十分に合格が狙えることは間違いありません。基本情報技術者試験の合格率は平均約30%前後ですが、新制度導入から現在までは合格率は45%前後と急激に上がっているためです。
CBT方式導入によって受験者の好きなタイミングで受験できるようになったことに加え、その他あらゆる「合格しやすい改定」が施されたことがわかります。
また基本情報技術者試験は、科目A試験が「四択の一問一答形式で60問90分」、科目B試験が「長文読解問題の7~8択形式で20問100分」となっています。両者それぞれに難しさはありますが、科目B試験のほうがごまかしが利かないため苦戦する方が多い傾向です。
基本情報技術者試験の合格に必要な学習期間
基本情報技術者試験の合格に必要な勉強時間ですが、未経験者の場合の目安としておおよそ200時間程度が必要と言われています。つまり1日2~3時間の学習を行ったとして、2ヶ月強~3ヶ月強ほどの学習期間が必要です。
ただ基本情報技術者試験はCBT方式によって好きなタイミングで受験できるため、合格レベルに達するまでじっくり学習に取り組めるのはメリットです。
基本情報技術者試験に合格するメリット
基本情報技術者試験に合格することで、以下のようなメリットが得られます。
- どんなIT企業でも役に立つ知識が得られる
- 未経験からのIT転職で有利になる
- 収入アップが期待できる
それぞれ、順を追って解説します。
どんなIT企業でも役に立つ知識が得られる
どんなIT企業でも汎用的に役に立つ知識を習得できることが、基本情報技術者試験の最大のメリットでしょう。基本情報技術者試験の出題範囲はじつに幅広くITの基礎理論、コンピューター設計、開発およびインフラエンジニアに必須のプログラミング、さらに開発手法や経営戦略のノウハウまで出題されるからです。
非常に範囲が広いため難易度は高いですが、基本情報技術者試験で出題される内容はどの業種・企業でも必ず役に立つ知識ばかり。もちろん合格するに越したことはありませんが、合格に向けて本気で挑むだけでもいい勉強になるでしょう。
未経験からのIT転職で有利になる
実務未経験からIT業界への転職を目指すなら、基本情報技術者試験ほど適した資格はありません。
IT業界への転職する際はどうしても「IT業界での経験」が求められますが、基本情報技術者試験を取得することで十分なIT知識を備えていることが証明でき、未経験という弱みをカバーできるためです。
そのため新卒でIT業界業界へ就職することを目指し、高校生や専門学生の時点で基本情報技術者試験の取得を目指す人も多いです。
収入アップが期待できる
基本情報技術者試験の取得によって、収入アップが期待できます。理由は主に以下のとおりです。
- 企業によっては資格手当や昇給が見込めるから
- キャリアアップ転職の成功確率が上がるから
現役IT従事者でも、資格をまったく持っていない方は多いです。そのため基本情報技術者試験などの取得によって資格手当や昇給制度を設けている企業もあります。
また基本情報技術者試験を取得していることによって権威性が上がるため、キャリアアップとしてより高い収入を実現できる企業に転職できる可能性も上がります。
基本情報技術者試験の効果的な学習方法
基本情報技術者試験合格のための効果的な学習方法には、以下のようなものが挙げられます。
- 書籍などを購入して概要を学ぶ
- 基本情報技術者試験ドットコムを活用する
- 過去問題演習をメインに行う
それぞれ見ていきましょう。
書籍などを購入して概要を学ぶ
引用:Amazon
基本情報技術者試験に挑戦するなら、まず最初に概要を掴むためにもテキストや問題集を購入するのがいいでしょう。基本情報技術者試験は「IT資格の代表格」ともいえる有名な国家資格なので、書店に足を運べば確実に入手できます。
現代では「キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者」のような、イラストや図解がふんだんに使われたわかりやすいテキストがたくさんありますので、自分に合ったものを見つけてみてください。
書籍を購入したら、あまり時間をかけずサラッとひととおり目を通して、なるべく早くアウトプットを行いましょう。
基本情報技術者試験ドットコムを活用する
基本情報技術者試験の対策サイトに「基本情報技術者試験ドットコム」というサイトがありますが、こちらを使わない手はないでしょう。基本情報技術者試験ドットコムは株式会社スタディワークスが運営する試験対策サイトで、平成16年から現在までの過去問題が、科目A・B試験(2023年4月以前は午前・午後試験)ごとすべて網羅されており、完全無料で活用できます。
過去問題演習を本番さながらの形式で行えるだけでなく、間違えた箇所や苦手箇所の分析を行ってくれる点もメリットです。
過去問題演習をメインに行う
基本情報技術者試験の対策は、過去問題演習によるアウトプットをメインに行うのが効率的です。出題範囲がとても広いため、インプットに時間を費やしていてはキリがないためです。
過去問題でアウトプットし、間違えた部分や苦手箇所のみ学習していくやり方で勉強していくことをおすすめします。
まとめ
基本情報技術者試験は「IT業界への登竜門」と言われるほどメジャーな資格で、幅広いIT業種の知識を学ぶことができます。IT業界に欠かせない知識として、受験するだけでもいい勉強になるでしょう。
2023年4月の改定によって合格率は45%前後となり、未経験者でも十分に合格が狙える資格といえます。ただ半数は落ちているので、未経験者はもちろん経験者の方も油断せず、入念な対策のもとで挑戦してください。