人材開発支援助成金とは?企業研修に活用できる助成金を紹介

昨今、「人的資本」や「リスキリング」など人材育成や教育などの分野への注目が非常に高まっており、その分野に対して助成金など拡充傾向にあります。
その施策の一つとして設立された、人材開発支援助成金はご存知でしょうか。

本稿では、企業の人材育成、研修ニーズに応えるため設置された、人材開発支援助成金について説明します。

人材開発支援助成金の概要

人材開発支援助成金を説明するにあたり、人材開発支援助成金の概要と設置されたその背景を説明していきます。
厚生労働省の公式ホームページでも人材開発支援助成金を上記の様な動画で紹介しています。

人材開発支援助成金が設置された背景

令和5年8月に、厚生労働省から公表された概算要求の概要「リ・スキリングによる能力向上支援」にかかる費用として、1,185億円の予算が要求されました。
その中でも、「労働者の主体的なリスキリングを支援する中小企業への賃金助成の拡充等による企業における人材育成の推進」として、人材開発支援助成金に対して、645億円の予算が要求されています。

昨今、リスキリングや人への投資という言葉が注目されていることも相まって、人材育成や能力開発に関する助成金や補助が多くなってきています。
人材開発支援助成金は、その一環として厚生労働省が管轄する助成金で、例を挙げると以下のような施策が対象となっています。

  • 研修を実施した際にかかる経費に対しての経費
  • 研修中の賃金補填、従業員が自発的に研修を受けるための時間を確保するための制度整備にかかる費用
  • 大学院にかかる費用
  • 従業員の知識・技能を向上させるため費用

本稿では、人材開発支援助成金のなかでも、企業研修を行うことで受けられる助成金にフォーカスして紹介します

 人材開発支援助成金のコースの詳細

人材育成支援コース
人材開発支援助成金は、厚生労働省から支給される助成金であり、従業員を雇用する際に支払われる雇用保険を財源としているため、会社が雇用保険の適用を受けており、雇用保険の被保険者が1人以上いることが要件になります。

人材育成支援コース

人材育成支援コースは、労働者の職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、研修費用や研修受講中の賃金の一部を助成するものです。

人材育成支援コースの中でも、さらに種類が以下の3つに分かれています。

人材育成訓練

人材育成訓練は、職務に関連した知識・技能を習得させるための10時間以上の訓練で、業務とは切り離して座学などの方式(OFF-JT)により行う必要があります。詳細は以下の通りです。

対象労働者雇用保険の適用を受ける労働者となります。その他、対象となる従業員の契約形態等によって要件が異なりますが、大きくは訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であることが要件となります。
対象の訓練OFF-JT研修により実施される訓練であること。
助成額・助成率
  • 研修などに要した費用の45%~100%
  • 研修受講中の賃金補填として、760円~960円

有期実習型訓練

有期実習型訓練は、有期契約労働者等に対し、正規雇用労働者等に転換するための訓練で、的確な指導者の指導の下、会社内の業務の中で行われる実務を通じた訓練(OJT)と、OFF-JTの訓練を効果的に組み合わせて実施する訓練です。

対象労働者雇用保険の適用を受ける正社員経験が少ない有期契約労働者等を対象に正規雇用労働者等に転換するための訓練を実施する目的とする制度となります。
単に有期契約労働者等であるだけではなく、キャリアコンサルタント等により、キャリアコンサルティングを受ける必要があるほか、キャリアコンサルティングが行われた日前の5年以内におおむね3年以上の正社員経験がないことなどの要件が必要になります。
対象の訓練研修といっても全ての研修が対象となるわけではなく、以下の要件に加えて、訓練終了後にジョブカードによる評価を実施する事が必要となります。

  • OJTとOFF-JTを組み合わせて実施する研修
  • 研修期間が2か月以上であること
  • 研修時間数が6か月当たりの時間数に換算して425時間以上であること
  • 全ての研修の時間に占めるOJTの割合が1割以上9割以下であること
助成額・助成率
  • 研修などに要した費用の45%~100%
  • 研修受講中の賃金補填として、760円~960円
  • OJT実施助成額として10万円~13万円

(いずれも中小企業の場合)

認定実習併用職業訓練

認定実習併用職業訓練は、前述の有期実習型訓練と同様に、OJTとOFF-JTの訓練を効果的に組み合わせて実施する訓練で、有期契約労働者等以外にも活用することができますが、厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練である必要があります。

対象労働者対象労働者は、次の①から③までのいずれかに該当する15歳以上、45歳未満の雇用保険に加入している労働者になります。

それぞれの状況によっては、キャリアコンサルタント等により、キャリアコンサルティングを受ける必要がる場合があります。

  1. 雇い入れから訓練開始日までが3か月以内の新たに雇い入れた者
  2. 大臣認定の申請前に既に雇用されている短時間等労働者で、引き続き、同じ会社において、通常の労働者に転換し、転換日から訓練開始日までが3か月以内である者
  3. 雇用保険の適用を受ける労働者
対象の訓練認定実習併用訓練とほぼ同様ですが、研修期間や時間数、割合が若干異なっているものの、こちらも訓練終了後にジョブカードによる評価を実施する事が必須となります。

  • OJTとOFF-JTを組み合わせて実施する研修
  • 研修期間が6か月以上2年以下であること
  • 研修時間数が1年当たりの時間数に換算して850時間以上であること
  • 全ての研修の時間に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること
助成額・助成率
  • 研修などに要した費用の45%~100%
  • 研修受講中の賃金補填として、760円~960円
  • OJT実施助成額として20万円~25万円

(いずれも中小企業の場合)

人への投資促進コース

「人への投資」を加速化するため、令和4年~8年度の期間限定助成として、 国民の方からのご提案を形にした訓練コースで5つのコースがあります。

  • 高度デジタル人材訓練
  • 情報技術分野認定実習併用職業訓練
  • 長期教育訓練休暇等制度
  • 自発的職業能力開発訓練
  • 定額制訓練

その中でも本稿においては、企業研修を受ける際に活用することができる「高度デジタル人材訓練」と「情報技術分野認定実習併用職業訓練」を紹介します

高度デジタル人材訓練

このコースは、中小企業における喫緊の課題とされているDX化が進まないという点の解決に焦点をあてた助成金と言えます。

<対象となる会社>

雇用保険の適用を受けている会社であるほか、高度デジタル人材を育成する必要性から、下記の要件のいずれかに該当する会社が対象となります。

  1. 主たる事業が「情報通信業」であること

①に該当しない場合は、下記のいずれかを満たすこと

  • 産業競争力強化法に基づく事業適応計画(情報技術事業適応)の認定を受けていること
  • 独立行政法人 情報処理推進機構のDX認定を受けていること
  • DX推進指標を用いて、自己指標を独立行政法人 情報処理推進機構に提出し、この自己診断を踏まえ「「事業内職業能力開発計画」を提出すること
  • DXを進めるために、企業経営や人材育成の方向性を検討したうえで、て「事業内職業能力開発計画」等の計画を策定していること
<対象労働者>

本訓練の対象となる労働者は以下の要件を満たす労働者となります。

  • 助成金を申請する会社において、被保険者であること
  • 訓練期間中において、被保険者であること
  • 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること
<対象の訓練>

対象となる訓練は前提として、職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練(職務関連訓練)であることが必要となります。それ以外の要件として、以下があります。

  • 実訓練時間数が10時間以上あること
  • OFF-JTの形式であること
  • 以下の①から③のいずれかに該当するもの
    1. 高度情報通信技術資格( ITスキル標準(ITSS)レベル4または3)の取得を目標とする課程
    2. ⅱ第四次産業革命スキル習得講座
    3. ⅲマナビDXの掲載講座のうち、講座レベルが、「ITスキル標準(ITSS)」、「ITSS+」又は「DX推進スキル標準」のレベル4または3に区分される講座
  • 情報科学・情報工学およびそれに関連する分野の大学への入学
<助成額・助成率>

受給できる金額は以下の通りです。(いずれも中小企業の場合)

  • 研修などに要した費用の75%
  • 研修受講中の賃金補填として960円

DXについては、以下の記事が分かりやすく書かれているので参考にしてみるといいでしょう。

【2024】DXとはなに?わかりやすく具体例やメリットをご紹介!

情報技術分野認定実習併用職業訓練

IT分野未経験者に対するOFF-JTとOJTの組み合わせ型の研修を行う場合に研修費用と賃金の一部補填を行う制度です。

<対象となる会社>

対象となる会社は雇用保険の適用を受けている会社であるほか、次のいずれかに該当する事業主であることが必要となります。

  • 主たる事業が日本標準産業分類の大分類の「情報通信業」であること
  • IT関連業務を主に担う組織やDXを推進する組織を有していること
<対象となる労働者>

対象労働者は、次の要件のいずれかに該当する15歳以上、45歳未満の雇用保険に加入している労働者になります。
それぞれの状況によっては、キャリアコンサルタント等により、キャリアコンサルティングを受ける必要がる場合があります。

  • 雇い入れから訓練開始日までが3か月以内の新たに雇い入れた者
  • 大臣認定の申請前に既に雇用されている短時間等労働者で、引き続き、同じ会社において、通常の労働者に転換し、転換日から訓練開始日までが3か月以内である者
  • 雇用保険の適用を受ける労働者
<対象となる訓練>

対象となる訓練の要件は以下の通りです。

  • 情報処理・通信技術者の職種に関連する業務に必要となる訓練
  • 一定のレベル以上のIT関係の資格TSSレベル2以上)取得している者または実務経験が5年以上の者であるOJT指導者により実施されるOJT
  • 以下の①から④までを満たし、大臣認定を受けた訓練
    1. 企業内におけるOJTと教育訓練機関で行われるOFF-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
    2. 訓練実施期間が6か月以上2年以下であること
    3. 総訓練時間数が1年当たりの時間数に換算して850時間以上であること
    4. 総訓練時間数に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること
<助成額・助成率>

受給できる金額は以下の通りです。(いずれも中小企業の場合)

  • 研修などに要した費用の60%
  • 研修受講中の賃金補填として、760円
  • OJT実施助成額として20万円

事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等コースは、下記記事に詳細をまとめていますので、下記リンクからご確認ください。

【人材開発支援助成金】AI助成金、AI人材の育成に使える助成金とは?

 人材開発助支援助成金申請の流れ

人材開発支援助成金申請の流れ次に、人材開発支援助成金の申請の流れを説明します。

ここまでで紹介した制度は、大きな流れとして、下記の流れに沿って進みます。

  • 訓練計画届(又は実施計画認定申請書)の作成・届出
  • 研修の実施
  • 支給申請書の提出

それぞれの各項目において注意すべき点がありますので、順番に説明します。

訓練計画届(又は実施計画認定申請書)の作成・届出

訓練の開始日から起算して1か月前までに計画を出す必要があります。添付書類を整備したうえで提出する必要があるため、訓練開始日から余裕をもって提出するようにしましょう。

研修の実施

OFF-JT研修には、事業内訓練と事業外訓練があります。

事業内訓練

事業内訓練は、自社で企画・主催・運営する訓練計画により、招へいする部外講師・部内講師により行われる訓練等または、事業主が自ら運営する認定職業訓練で、対象となる経費は、講師の謝金、旅費等であり、それぞれ上限が定められています。

事業外訓練

一方、事業外訓練は、社外の教育訓練機関に受講料を支払い受講させる訓練等であり、対象経費は受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代等、あらかじめ受講案内等で定めているものと定めれており、対象となる経費が異なります。

支給申請書の提出

訓練終了日の翌日から起算して2か月以内にと必要な書類一式をそろえて労働局に提出する必要があります。期限を超過すると支給対象外となるため、余裕をもって書類を整備する必要があります。

人材開発助支援成金に活用できる研修

人への投資促進コース
ここまでで紹介した人材開発支援助成金における各コースで活用できるおすすめの研修を紹介します。

AI研究所:企業向けDX・AI人材育成研修サービス

DX・AI人材を育成する本サービスは、人材育成現場で実務をこなすコンサルタントが、直接会社の人材育成の課題を抽出し、会社にあった研修プランを提案します。

また、研修は実施するだけでなく、DXの推進、AI人材の育成が実現することが真の目的です。

AI研究所が実施する企業向けDX・AI人材育成研修サービスは、「ビジネスを創出する力」「DXを活用するための幅広い汎用的な技術力」「デジタルの専門的な技術力」を組織の状態に合わせた研修の提案を行うことで、DX実現を強力にサポートします。

本サービスは、人材育成支援コース、人への投資促進コースの高度デジタル人材訓練、情報技術分野認定実習併用職業訓練、事業展開等リスキリング支援コースにおいて活用できます。

企業向けDX・AI人材育成研修サービスの詳細はこちら

人材開発支援助成金のまとめ

人材開発支援助成金は、会社で働く従業員のスキルアップやリスキリングを補助する制度です。
とりわけ、DXやIT人材の育成など社会情勢的にも必要性の高い分野への進出、事業成長を促進するために高い助成率が設定されているため、この機会に活用するといいでしょう。

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