今回は、JDLA(一般社団法人 日本ディープラーニング協会)が開催している、E資格(エンジニア資格)のシラバスの内容が変わったため、そのシラバス改定についてご紹介していきます。
この記事を読めば、E資格が改定された背景と内容を知ることができ、どの分野を重点的に勉強すれば良いかが理解できます。
E資格のシラバスが改定となった背景
~JDLA公式サイトより引用~
今回の改訂では、ディープラーニング技術の産業活用がさらに拡大する中、以下のAI・ディープラーニング技術を取り巻く現状を踏まえ、より普遍的に必要とされる機械学習並びに深層学習の基礎アルゴリズムの理解に特化したものになっております。
【AI・ディープラーニング技術を取り巻く現状】
- 深層学習に関する最新手法が常に提案され変化している
- 画像処理、自然言語処理、音声処理の分野ごとに技術が細分化している
- 学習フレームワークを用いた実装が前提となっている
出典:jdla
AIは発展が凄まじくどんどん変化しています。
そのため、応用分野よりも基礎分野を固めないと変化についていくのが困難です。
最新技術をキャッチアップしつつ、ある程度実績のついた枯れた技術を利用していくことがAIエンジニアには必要なスキルになってくるため、E資格もそれに合わせて進化をしているということですね!
E資格の難易度について気になる方は、E資格の難易度をまとめた記事も参考にしてみてください。
E資格の新シラバス概要
2024年8月30(金)〜9月1日(日)の「E資格2024#2」より、シラバスが改訂されます。
前回の改訂と比較すると、変更点は軽微なものとなっています。
今回のシラバスの改訂の特徴として、数学や機械学習の一部、音声系の深層学習などが削除されました。その分、深層学習の基礎・応用の問題比率が高まり、より基礎の部分に重点が置かれています。
「生成AI」などの進歩が激しいため、今後は、自然言語処理などの深層学習の出題が多くなると予測されます。しかし、応用分野を理解するためにも、基礎となる知識を固めることが重要であり、しっかりと身に着けておくことで、今後長く活用できる知識を身につけられるでしょう。
フレームワーク問題では、試験開始時にPyTorchかTensorflowのどちらかを選択します。
試験開始後は、一度選択したフレームワークを後で変更することができないため注意が必要です。受験前に予めどちらのフレークワークを選択するか決めておくと良いでしょう。
それでは前回どんな改訂がされたのか、具体的に見て行きましょう!
E資格シラバスの改定内容
2024#2から適用される新シラバスでは、新たに追加された項目と削除された項目があります。
改訂内容を具体的に以下にまとめます。
まずは、今回新たに追加された項目は以下です。(2024#2から適用)
1.【機械学習】
(1)機械学習の基礎
ⅰ.パターン認識
キーワード:kd-tree、近似最近傍、コサイン距離、ユークリッド距離、マンハッタン距離、Lp距離、マハラノビス距離
4.【深層学習の応用】
(1)画像認識
ⅱ.Vision Transformer
キーワード:CLS token、Position embedding
(3)セマンティックセグメンテーション
ⅰ.FCN, U-Net
キーワード:スキップコネクション、アップサンプリング、インスタンスセグメンテーション、パノプティックセグメンテーション(Panoptic Segmentation)
次に、オプション化された項目は以下です。(2024#2から適用)
1.【数学的基礎】
(1)線形代表
i.行列演習
ii.固有値分解・特異値分解
(2)確率・統計
i.一般的な確率分布
2.【機械学習】
(1)機械学習の基礎
iii.教師あり学習①線形回帰
キーワード:ノルム、過少適合、過剰適合、最小二乗法、相関係数、多重共線性、L1正則化、L2正則化
iv.教師あり学習②ロジスティック回帰
キーワード:ロジット、シグモイド関数、ロジスティック関数、ソフトマックス関数、オッズ/オッズ比
v.教師あり学習③サポートベクターマシン
キーワード:サポートベクター、マージン最大化、ハードマージン・ソフトマージン、カーネル法
vi.教師なし学習④決定木
キーワード:分類木・回帰木、CART、Gini係数、アンサンブル、バギング、ブースティング
vii.教師なし学習①次元圧縮
キーワード:主成分分析、寄与率、SNE、Crowding Problem、t-SNE
viii.教師なし学習②クラスタリング
キーワード:k-means、階層的クラスタリング、デンドログラム、ウォード法、群平均法
3.【深層学習の基礎】
(7)汎化性能向上のためのテクニック
i.データ集合の拡張
音声のデータ拡張
キーワード:ノイズ付与(Gaussian Noise)、ボリューム変更、ピッチシフト、MixUp、SpecAuqment
4.【深層学習の応用】
(5)音声処理
i.サンプリング、短時間フーリエ変換、メル尺度
キーワード:サンプリング定理、窓関数、ナイキスト周波数、短時間フーリエ変換、高速フーリエ変換、ケプストラム、メルスペクトログラム、MFCC
ii.WavaNet
キーワード:音声合成(Text-to-Speech)、Dilated Causal Convolution、GTU(Gated tanh unit)、Residual Block、Skip Connection
ⅲ.CTC End-to-Endモデル、ビームサーチ、前向き・後ろ向きアルゴリズム
(8)様々な学習方法
ⅲ.能動学習(Active Learning) Uncertainty Sampling、Least Confident、Representative Sampling
ⅴ.メタ学習(Meta Learning) 初期値の獲得 MAML、Model-Agnostic、メタ目的関数(meta-objective)
5.【開発・運用環境】
(2)分数処理
ⅱ.連合学習(Federated learning)
キーワード:クロスデバイス学習、クロスサイロ学習、Federated Averaging、Local Model、Global Model
注意点として、数学及び機械学習分野で、上記に記載した通り、オプション化された問題があります。しかし、AIや深層学習分野を理解する上で不可欠な分野であるため、一度学習しておくと良いでしょう。
深層学習(基礎・応用編)では、音声処理と音声のデータ拡張の分野、更に能動学習やメタ学習などの分野が削除されました。
画像認識の分野は引き続き幅広く出題され、今後は、自然言語系の深層学習の分野の比率が増えくると予想されます。
機械学習と深層学習の基礎となるアルゴリズムの理解を深めていきましょう。
E資格のシラバス改定まとめ
今回の改定では、数学・機械学習の分野が大きく削除されました。
しかし、確率や統計の知識はAIや深層学習分野において重要性がなくなったという訳ではありません。
AIや深層学習分野では、数学的な知識はある前提で、試験において改めて能力を確かめるものではないといった認識です。
深層学習に関しての新しい手法が常に変化しているので、それに対応できるようにE資格のシラバスが改定されました。
しっかりと基礎力を付けるため、いま一度、AIの本質を意識した学習をしてみてはいかがでしょうか。