生成AI(人工知能)の進化が著しい現在、様々な場所で活用の幅が広がっています。最近では、漫画の制作現場で生成AIの活用が広がっているニュースが報じられました。
生成AIの活用で、線画の作成や着色を自動化した結果、制作期間を10分の1に短縮できる技術も登場したようです。今回は、生成AIが漫画の制作現場で活用される一例やおすすめの漫画アプリやツールをご紹介します。
また、生成AIで漫画を作成するメリット・デメリットなども解説しますのでぜひ参考にしてください。
生成AIが漫画制作現場で活用される一例
現在、漫画の制作現場で生成AIが活用されていますが、生成AIが漫画作成における全ての作業工程を担っているわけではありません。
今回ニュースになった生成AIは、画面に簡単なキャラクターを描いてアップロードを行うと、数十秒後には縁取りとカラーリングを済ませたイラストが複数出来上がる工程でした。
部分的な作業ですが、生成AIの導入により作業時間が大幅に削減でき、作業効率も向上したようです。生成AIは、現在漫画の制作現場において様々な工程で活用されています。
では、生成AIはどのように活用されているのか以下で具体的に解説します。
キャラクターデザインの作成
生成AIはデータベースに蓄積された画像データから、キャラクターデザインの提案をすることが可能です。また、特定の性格などに合わせたキャラクターを生成することもできます。
例えば、外交的なキャラクターであれば大胆な衣装を着せ、内向的なキャラクターには落ち着いた衣装を着せることも可能です。生成AIは常に学習・分析を行っており、トレンドを意識したキャラクターの作画もでき、読者を魅了するキャラクター作りにも役立つでしょう。
生成AIについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ストーリー作成
生成AIは、大量の文学作品や小説・漫画などのデータを用いて学習されており、蓄積されたデータを元に様々なストーリーを生み出すことが可能です。設定やキーワードを入力するとAIが登場人物の関係性やストーリーのプロットを自動で生成することができます。
生成AIの技術により、従来では思いつかなかった様々な可能性を秘めた独創的なストーリーが作れます。
キャラクターの表情の調整
生成AIは入力したテキストに基づいて画像を生成することができます。漫画では、目や口などの微妙な動きにより感情を表すため、細部までキャラクターの表情を調整する必要があります。
生成AIを組み合わせることでより複雑な表情を作り出すことも可能です。そのため、共感を呼ぶキャラクターの表情を作りだすことができます。
カラーリングを自動調整
生成AIはシーンやキャラクターに合った配色を生成することが可能です。例えば、恋愛のシーンでは淡い色を用いてロマンティックな雰囲気を表現する・怒りのシーンでは暖色系の色を用いて激しさを表現します。
また、コマごとで異なる雰囲気や特定の感情を表現することもできます。
生成AI漫画アプリ・ツールのおすすめ
前述したように現在、漫画制作の現場ではAIを用いて部分的な漫画生成の補助を行っています。以下では、漫画の知識がなくても利用できるおすすめの漫画アプリやツールをご紹介します。
World Maker
少年ジャンプ+の編集部が企画し、株式会社カヤックが開発した漫画作成AIアプリ(PCでも一部利用可能)です。漫画が描けない方でも考えたストーリーを漫画形式で視覚化できます。
ユーザーがあらすじやセリフを入力すると自動でコマ割りが可能で、キャラクターや背景・オノマトペなどのパーツを設置すれば漫画の設計図(ネーム)が完成します。
漫画制作はアイデアやストーリーの視覚化が難しく、ハードルが高い側面がありましたが、World Makerは特別な知識がなくても簡単に制作可能です。
使用可能な素材は約600万点以上あり、以下のような素材が豊富に揃っています。
- キャラクターの顔
- 髪型
- ポーズ
- アイテム
- 背景
- マンガ記号オノマトペ
- 素材サイト「いらすとや」から提供の白黒素材
また、上記の素材以外にもスマートフォン内の写真やイラストなどがアップロード可能です。さらに自動翻訳ができるため、作品を海外の方にも共有できます。
World Makerは基本無料で利用できますが、一部有料のパーツなどがあります。作家・監督デビューのコンテストも定期的に開催されるため、漫画家を目指している方はぜひ応募してみて下さい。
YouCam AI Pro
AI漫画のキャラクターを作成できる画像生成AIアプリです。手書きのラフ画をAIにアップロードすると漫画風のキャラクターを出力します。
AIフィルターでジブリ風やポップ・油絵など様々な風合いの色付けも選択できるため、キャラクターデザインに悩む方も安心でしょう。YouCam AI Proは無料で利用可能ですが、キャラクターの生成と保存は有料になり、作成数により金額が異なります。
キャラクター作成数と金額は以下です。
- 50キャラクター 600円
- 100キャラクター 900円
- 200キャラクター 1,200円
YouCam AI Proは、サブスクリプション(700円/週・4,500円/年)があり、2024年2月現在は年額契約で87円/週になる割引も行われていました。年間プランを購入すると7日間の無料期間もあり、無料期間中にサブスクリプションを解約すれば、年額の4,500円はかかりません。
なお、1週間ごとに支払うプランには無料期間がないため注意して下さい。
Frame Planner
AI生成画像ユーザーのじょにがたロボさんが作成したログイン不要でWebページブラウザ上で簡単に利用できる漫画AIツールです。テンプレートから漫画のコマ割りのパターンを選び、コマや行の編集ができます。
画像やふきだし・セリフをドラッグ&ドロップで挿入すると自動で漫画制作が可能です。コマ割りやセリフをAIが自動で配置するため、漫画作成の際に構図に悩むことはありません。
作成した画像をドラッグ&ドロップしてコマに入れることでプロのような漫画が作成可能です。簡易的な漫画ツールですが、思いついたアイデアを最短で視覚化できます。
Comic-Copilot(コミコパ)
アル株式会社のけんすうさんと集英社のジャンプ+の編集部が共同開発した漫画制作を支援するAIサービスです。裏側にChat GPTを使っており、漫画を作成する際に必要なテキスト文(プロンプト)が最初から設定されています。
リリース後10日でユーザー数が25,000人を突破した記録を持ち、SNSでも話題になりました。コミコパでできることは以下になります。
- セリフの生成
- 漫画のテーマやキャラクター名などを考える・アイデア出し
- 作品への客観的なフィードバック
- ユーザーの創作活動を励ます・相談にのる
コミコパは、インターフェースも整えられ使いやすい仕様になっている上に、セリフの調整やタイトル案出し・キャラクターの名前やあらすじの感想などを聞く事も可能です。やる気がない時はAIが励ます心強い機能もあり、作業効率化が図れるでしょう。
Comic AI
誰もが4コマ漫画を簡単に作成できるAIツールです。複雑なコーディングや漫画制作技術を必要としないため、素人の方でも漫画制作を始められますし、クリエイターの方も作業効率化のために使うことができます。
Comic AIは、ユーザーがテキスト入力した内容やシナリオを元に、漫画のキャラクター・背景・構図を生成し4コマ漫画を出力します。また、台本やシナリオの作成もできるため、漫画を作成したことがない素人の方でも安心です。
さらに、幅広いジャンルやファンタジー系・ゴシック系など漫画のスタイルも多数あり、操作性がシンプルで分かりやすいのも魅力でしょう。無料のStarterプランと月額$15のProプランがあり、機能は同じですがイメージの生成数や画像解像度が異なります。
ただし、無料のStarterプランでも月に400枚程作成可能なため、趣味の範囲であれば十分活用できるでしょう。
生成AIでの漫画の作成方法
以下では、上記でご紹介した「World Maker」を利用して生成AIで漫画を作成する方法をご紹介します。漫画の知識や絵心がなくても簡単に作成できるため、ぜひ生成してみて下さい。
1.アプリをインストールする
以下の方法でログインして紐つけることで新規アカウント作成が可能です。
- X(Twitter)
- LINE
- Apple
ご自身の好きな漫画ジャンルを選択します。冒険・ファンタジーやバトルアクション・SF・ラブコメなど複数のジャンルがあります。
2.漫画ネームを作る
新規作成をクリックすると漫画ネームが作成可能です。コマを直接タップすると編集画面に切り替わります。
直感的にキャラクターやポーズセリフなどのパーツを選択し、配置していきましょう。
3.パーツを配置して漫画を作成する
コマをタップすると下記に各パーツが出現します。背景やオノマトペ・効果を挿入して装飾を加えましょう。
セリフは吹き出しをタップすると直接文字入力ができます。
4.漫画ネーム作成のコツでよりプロのような作品に
左下のヒントを表示を開くとネーム作成のコツが表示されます。漫画を作成する上でのポイントが記載されているため、ぜひ参考にしながら漫画作成を進めて下さい。
5.漫画の知識がなくても簡単に漫画を作成できる!
シーンを組み合わせてよりクオリティの高い漫画を作成することもできます。表示される各パーツは最初に選択したお好みのジャンルから反映されるようです。
パーツを組み合わせて装飾を入れることで、漫画作成初心者でも簡単に漫画作成ができます。
生成AIで漫画を作成するメリット
生成AIを用いて漫画を作成するメリットを具体的にご紹介します。
時間やコストを削減し生産性を向上する
AIに漫画を自動生成させることで、従来は手書きで作成していた労力や時間を大幅に短縮可能です。ビジネスで活用する際は、人件費の削減や生産性の向上につながるでしょう。
様々なキャラクターの生成・編集が容易にできる
AIは大量の画像データを用いて学習しているため、様々な画像が生成できます。そのため、幅広いキャラクターや異なるキャラクターの作成が可能です。
手書きに比べ精度の高いキャラクターが作成でき、テキスト入力の追加を行えば修正や編集も容易にできます。
生成AIで漫画を作成するデメリット
生成AIを用いて漫画を作成すると時間やコストの削減や様々なキャラクターの生成・編集が容易に出来ますが、一方でデメリットもあります。以下で具体的に解説します。
著作権が発生することがある
生成AIは大量の画像データを用いて自ら学習し、分析・出力します。しかし、学習に利用される画像データには出典元が分からず、著作権が含まれている可能性もあるAIが存在します。
そのため、出力される画像にも画像の要素が反映されてしまい、著作権法に触れる恐れもあるでしょう。自身で楽しむ分には問題ありませんが、商用利用を考慮する際は注意する必要があります。
生成AIの著作権の問題についてはこちらの記事で解説しています。
手書きに比べオリジナル要素が欠ける
生成AIでのキャラクター生成は、精度の高さや早さがメリットである一方、手書きでキャラクターを作成した際と比べてオリジナル要素に欠ける傾向があります。また、細部が不自然な画像が生成されたり、常軌を逸した画像が出力される可能性もあるでしょう。
漫画制作における今後の生成AIに注目しよう!
今回は、漫画の制作現場での生成AI活用例やおすすめの漫画アプリ・ツール、生成AIで漫画を作成するメリット・デメリットなどを解説しました。生成AIは、イメージした画像を簡単に作り出すことのできる画期的な技術です。
素人の方でも生成AI漫画アプリ・ツールを活用することで簡単にプロのような漫画が作成できます。今回ご紹介した以外にもさまざまな生成AIツール・アプリがあるため、ご自身の使いやすいアプリやツールを選んで下さい。
現在は漫画の制作現場で様々な工程を担っている生成AIですが、進化し続ける生成AIにより今後はさらにできる事が増えるでしょう。今後のAI技術にも期待が膨らみます。