生成AIのアニメの著作権とは?活用事例や生成AIを用いたアニメもご紹介

生成AIの技術の進化でさまざまな現場でAIが活用されていますが、2024年1月にAIやブロックチェーンの専門家達がアニメの分野で著作権を守りながら生成AIの活用を促進する団体を設立しました。国内のAI専門家達が「アニメチェーン」準備委員会を立ち上げ、ブロックチェーンを活用したデータの出典元やコンテンツの著作権・使用履歴を記録します。

今回は、生成AIアニメの著作権についてや生成AIのAI活用事例・生成AIで作成したアニメ等をご紹介します。

生成AIのアニメの著作権とは?

生成AIのアニメの著作権とは?

今回ニュースになった「アニメチェーン」準備委員会では、アニメ制作で生成AIを活用するためにブロックチェーンを活用し、データの出典元やコンテンツの著作権・使用履歴を記録します。これまで、AIが出力するアニメのコンテンツの著作権については、さまざまな議論が行われていました。

アニメというクリエイティブな作業をAIが担当すると、作品の著作権は誰に帰属するかが問題です。生成AIは大量の画像データを学習しており、データの出典元などが不明だと学習データに著作権に触れる画像が含まれる恐れがあります。

そのため、出力データにも著作権に触れるコンテンツが反映される可能性があるのです。アニメチェーン準備委員会は、そのような事が起きないよう、データの出典元やコンテンツの著作権・使用履歴を記録して著作権を守る取り組みを行います。

生成AIのアニメ活用事例

アニメの制作現場において生成AIは、コスト削減や効率化に役立っています。AI技術の進化でクオリティの高いアニメーションを従来よりも少ない人員で同等、それ以上のクオリティのプロジェクトを制作可能になりました。

以下で生成AIのアニメ活用事例を解説します。

セル画への着色業務の時間短縮

東映アニメーションが参画するアニメ自動着色AIは、セル画の前処理から着色までの工程にAI技術を活用し、着色の精度を向上させます。セル画への着色業務を1/10に時間短縮させ、コストも50%以上削減することが可能になりました。

アニメ自動着色AIの活用で、正確でスピーディーな着色と処理枚数の増量も可能になり、効率的にアニメ制作が実現できます。

会話や人物のアクションなどを自動作成

AIを活用したアニメーションサービス「VYOND GO」では、プログラムを入力するだけで、会話や人物のアクション・背景を自動作成します。AIによる動画自動作成もでき、誰でもアニメの動画制作が可能になります。

クリエイターの創作活動としてのパートナー

生成AIは、アニメ制作のツールとしてではなく、クリエイターの創作活動をサポートするためにも活用されています。例えば、クリエイターが予期しなかった物語などの方向性を生み出し、よりオリジナリティ溢れる作品を作成するためのアイデアを提供することが可能です。

また、AIはリアルタイムで分析した視聴者の反応のデータを基にストーリーの展開を変化させることも可能なため、アニメーションにおける表現の幅を広げることもできます。

生成AIを用いたアニメをご紹介

近年は、アニメ制作において生成AIが注目を集めており、大手制作会社はもちろん、個人クリエイターも生成AIを用いたアニメ制作を行っています。生成AIは、大量の画像や動画データを学習することで、新しい画像や動画を生成することが可能です。

現在様々な生成AIを用いたアニメが多数存在しています。ツールの一部としてAIを使用しているものから、様々な最新技術を組み合わせて制作されたもの等、個性が溢れています。

以下では、生成AIを用いたアニメ作品の一部をご紹介しましょう。

Netflix「犬と少年」

生成AIを用いてアニメの背景を作成したアニメーションです。Netflixアニメ・クリエイターズ・ベースとAI企業「rinna」・アニメ制作会社「WIT STUDIO」が共同作成したプロジェクトで、アニメ制作に背景画像生成AIツールを用いています。

rinnaがプロジェクトのためだけに開発したオリジナルのAIで、Open AIのDALL-Eなどと同じTransformerベースの画像生成AIの技術を持っています。Netflixのオリジナル作品で使った背景美術を学習データとして使いました。

「犬と少年」は41カットで構成されており、9割AIが生成して手間が省けたシーンもあれば、AI画像は1割のみで加筆や修正を手作業で入れたシーンもあるようでした。しかし、生成AIの活用で40〜50%程は省略化できたようです。

映画「死が美しいなんて誰が言った」

2023年12月に公開された全編に画像生成AI「Stable Diffusion」を活用して制作された世界初の長編アニメーションゾンビ映画です。AI技術とモーションキャプチャーを組み合わせて作り上げており、少人数のスタッフで制作されました。

キャラクターに命を吹き込むため、「image to image」の変換機能を活用し、リアリティを追求していたようです。Stable Diffusionの活用の難点は、画像の一貫性の維持や特定のキャラクターの適用の難しさでしたが、クリエイティブな工夫で克服し、映像に深みを加えることに成功しました。

生成AIとモーションキャプチャーに加え、VRと実写の映像制作ノウハウを組み合わせた70分の映像体験です。

映画「Mr.Puzzles Wants You To Be Less Alive」

米Netflixが作家・俳優のKeaton Patti氏と協力・制作したAIによるホラー映画です。AIに40万時間分のホラー映画を見せて制作されており、様々なホラー映画を彷彿とさせるシーンが描かれています。

なお、使用したAIの詳細や学習に用いたホラー映画は明らかにされていません。

au「三太郎シリーズ」のお正月新CM

KDDIは、2024年1月にau「三太郎シリーズ」の過去シーンを画像生成AIを用いて、アニメーションにリメイクしました。また、特設サイトではやりたい事とニックネームを入力すると入力内容が反映されたイラストと歌声が作成され、三太郎CMソングに乗せたオリジナルのコンテンツが作成可能です。

  1. 今年のやりたいことやニックネームを入力する
  2. 4パターンからAIボイスを選ぶ
  3. AIがオリジナルの歌詞を生成する
  4. オリジナルムービーのコンテンツが完成する

ちなみに、イラスト生成には生成AI「Stable Diffusion」が活用されています。

「メガノエリカ」

デザイン会社「株式会社K&Kデザイン」とクリエイティブスタジオ「株式会社taziku」の共同制作で、AIアニメプロジェクトの企画としてアニメ制作工程にAI生成を活用した実験的なアニメです。タイトルやシナリオ・設定・キャラクターデザイン等、全てのワークフローでAIを活用しています。

さらに、2023年9月にはデジタルクリエイティブスタジオ「SOPHIE.STUDIO」が参画し、「人か?AIか?人はAIとどう生きるか」を立ち上げ、3社合同プロジェクトも公開しています。このプロジェクトではAIとクリエイターが共創し、今までにない形で著作権のあるキャラクターを生み出すことを目的としており、新しいアニメの可能性を追求します。

生成AIでアニメを制作する際の注意点

生成AIでアニメを制作する際の注意点

生成AIを活用した場合の著作権や活用事例・生成AIを用いたアニメをご紹介しました。生成AIは現在様々なツールが存在しており、誰でも簡単にアニメを生成できるようになりました。

そのため、日本ディープラーニング協会では生成AIを使用する際のガイドラインを公開しています。AIツールでアニメを制作する際は以下の注意点を守り、生成して下さい。

秘匿性の高い情報は入力しない

機密情報を扱うメディア関係者等は、AIに情報を入力する際に個人情報・機密情報・秘密情報を入力しないよう注意が必要です。ユーザーが入力したデータは、AIの学習のためにデータとして用いられることがあります。

そのため、個人情報や機密情報・秘密情報を扱う機会の多い人たちは特に注意して下さい。万が一、情報が漏洩するとサイバー犯罪等に巻き込まれる恐れも指摘されています。

海外では生成AIに会社の機密情報を入力した事例が報告され、大手企業の社員の7.5%の人が会社のデータを入力していたことが判明したようです。中には、内部情報やソースコード・顧客データも確認されました。

生成AIを利用する際は、活用範囲を事前に決めておくことも大切です。

商標権や著作権を侵害しない

日本ディープラーニング協会が公開したガイドラインでは、著作権・商標権・パブリシティー権・意匠権を侵害しないように注意する必要があるとされています。特にAIを用いてイラストやアニメを作成する際は生成したデータが既存のデータ(著作権)と同一・類似している場合、著作権侵害になる恐れがあります。

海外では、自身の作品を許可なくAIの学習に使用されたとして、AIの運営会社を相手に集団訴訟を起こす動きもありました。日本でも権利侵害のアンケートを行った際も俳優や音楽家等から作品の盗用や作成した漫画がデータとして使われた等の声が寄せられていました。

生成AIの進化でアニメ制作が効率的になる!

今回は、生成AIアニメの著作権についてや生成AIのAI活用事例・生成AIで作成したアニメ等をご紹介しました。生成AIを用いたアニメの著作権は、最適な方法で管理・記録し、著作権侵害にならないよう配慮が必要です。

生成AIは、日々新しい発見や使い方・懸念点がユーザーから寄せられており、様々なガイドラインを参考にして慎重に利用することが重要になります。今後も生成AIを用いたアニメは増えていくと考えられますが、ご自身で活用する際もリスク管理を徹底して効率的にアニメを創作していきましょう。

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