ChatGPTの行政での導入方法や活用事例・注意点とは?

人工知能の技術が発達する近年、行政でもその技術が活用されるようになりました。現在、日本各地の自治体でもChat GPTを導入しており、公務員専用のChat GPTも利用されています。

しかし、実際には行政のどのような場面でChat GPTを活用し、業務に役立てられているか気になる方も多いと思います。今回は行政におけるChat GPTの導入方法や活用事例・活用する上での注意点を解説します。

そもそもChatGPTとは?

ChatGPTとは?

Open AI社が2022年11月に開発した対話型生成AIです。ユーザーが入力した疑問や質問のテキストに対する応答やテキスト生成・言語翻訳・クリエイティブな作品生成ができます。

Chat GPTは、大量のテキストやコードのデータセットで学習されており、出力する精度が高いため公開以来、様々な業界やシーンで活用されています。Chat GPTは現在も常に進化している技術であり、今後もより多くのタスク実現が叶うことが期待されます。

行政におけるChatGPTの導入方法

行政におけるChatGPTの導入方法

行政においてChat GPTをどのような場面で導入しているのか具体的にご紹介します。

行政文書・企画書・提案書の作成

行政に関する様々な文章の雛形の作成や文章の自動生成、行政が行う施策や事業の企画書や提案書案や内容を作成することが可能です。市長などの挨拶文やメールの文面・ホームページに掲載する文章なども作成できます。

マニュアルの作成

Chat GPTは、行政における新規事業の立ち上げや導入にあたってマニュアルを作成することが可能です。ゼロから文章を作成する手間が省けるため、従来よりも短時間でマニュアルを作成することができます。

データ分析

市民からの要望や苦情などがあった際はデータの解析を行った上で統計を取り、グラフや表などを作成することが可能です。施策の効果判断や検証など様々なデータ分析ができます。

広報活動

行政の施策や広報活動などの事業に関する広報文を作成します。資料にある専門用語や硬い表現の文章を分かりやすく要約し、SNSなどの投稿文を作成することもできます。

過去に投稿した文章を元に同じ様なテイストの投稿文を作成し、投稿の質を一定にすることも可能です。

アンケート作成

Chat GPTの文章生成機能を活用し、行政における各種アンケートを作成することも可能です。様々なターゲットに対し質問などを変更することができ、対象の市民や職員など様々なアンケートを作成することができます。

カスタマーサービス

AIチャットボットを活用し、市民からの問い合わせを行うことができます。人間が問い合わせ窓口で問い合わせ対応する場合は、24時間365日の対応は困難です。

また、対応の質も職員によりそれぞれ異なる傾向にあります。しかし、Chat GPTを行政のカスタマーサービスに導入することで、24時間365日対応可能となり対応の質も統一することが可能です。

公務員専用Chat GPT マサルくんとは?

行政データ4109ページを追加学習させたChat GPT。一般社団法人デジタル田園都市国家構想応援団により、自治体が行う文章作成を補助する目的で開発されました。

学習データに答えがない場合はインターネット上から情報を取得することが可能で、一般向けのGPT3.5と研究者様GPT4の2種類を提供しています。行政向けの情報に特化しており、全国の自治体が急速に導入し始め、2023年12月現在は210以上の自治体で導入・活用されています。

マサルくんはテキスト入力画面に動画などのマニュアルを組み込み、行政に関する以下のようなコンテンツが分かりやすく作成できる仕組みです。

  • 市長の挨拶文
  • 各種依頼などメール文面の作成
  • 督促書類の作成
  • 募集書類の作成
  • 答弁書の作成
  • 提案書の作成
  • 企画書の作成
  • 施策案の作成
  • アンケート書類案の作成

PCはもちろんスマートフォンでは、LINE経由により利用可能で操作性も簡易的になっています。今後は各自治体の情報を追加学習させ、カスタマイズされた専用のChat GPTの拡大が考えられています。

行政での具体的なChatGPTの活用事例

行政での具体的なChatGPTの活用事例

2023年12月現在Chat GPTを本格導入しており、行政に役立てている活用事例をご紹介します。

農林水産省

農林水産省では補助金申請のマニュアル改訂・修正にChat GPTを活用し、作業の負担軽減に繋げています。従来は業者にマニュアル改訂・修正を委託していましたが、数千ページに及ぶため業者の負担が大きく、一部分かりにくい表現になっていることが課題でした。

Chat GPTの導入で業者の負担を軽減し、利用者に分かりやすいマニュアル作成を目指しています。

デジタル庁

デジタル庁では国会答弁の下書きや議事録作成などにChat GPTを活用し、業務効率化を図っています。さらに2024年には法律を作る際に必要な文書を作成するため生成AIを活用し、職員による負担を軽減させる予定です。

Chat GPTを業務に組み込むため活用を推進しており、2023年8月には「Chat GPTを業務に組み込むためのハンズオン」を公開しています。業務フローやアプリケーションでの利用・データベースに接続するなどを手ほどきする内容です。

デジタル庁の公式noteではワークショップの模様なども公開しています。

神奈川県横須賀市

2023年4月より自治体で初めてChat GPTを導入し、利用状況などの情報発信を行っています。行政にChat GPTを導入することを発表する際には、素案もChat GPTで作成されました。

現在、文書案の作成・分析・アンケート設問案の作成など様々な用途で活用されています。また、情報漏洩リスク防止のためオプトアウトの手続きをした上で、職員に機密情報・個人情報の入力を行わない教育を徹底。

職員の活用スキルを高めるため、AI戦略アドバイザーの配置や定期的な独自研修プログラムを実施し、業務効率の向上に繋げています。他の自治体から問い合わせがあるため、今後Chat GPT導入で得たノウハウを積極的に発信していく方針のようです。

兵庫県神戸市

Chat GPTなど生成AIの利用指針を定めた条例が全国初制定された事例です。個人情報・機密情報などの入力は禁止し、安全性が認められた生成AIのみを業務で活用しています。

2023年6月よりChat GPTの試行利用を実施しました。Chat GPTを利用する際は、Microsoft社のAzure OpenAI Serviceを導入し、安全性を確保した環境下での利用を構築しています。Chat GPTを活用し、アイデア収集・有効活用する知識・経験の蓄積などを目的とし、課題や問題点の収集を行いました。神戸市は2024年1月にも業務でChat GPTを本格利用することを明らかにしています。

三重県伊賀市

2023年5月よりIT企業のFIXERと連携を行い、Chat GPTを活用した行政サービスの実証実験で協定を結んでいます。Chat GPTの導入で、チャットボットでの問い合わせや申請を可能とし、待ち時間の短縮で円滑なサービスが行えるようにしました。

また、過去の議事録や資料から必要な情報だけを提案し、職員の負担を軽減しています。

今後はChat GPTのリスクを念頭に置き、職員とAIが行う市民に対する対応を比較・検証し、実証実験での安全性や有効性について検討する予定です。その結果により、Chat GPTの導入を継続するか判断を行います。

滋賀県彦根市

2023年11月より東武トップツアーズと連携を行い、Chat GPTマサルくんを導入し、彦根市AIチャットをリリースしました。Chat GPTに彦根市に特化した情報を追加学習させ、実証実験を開始します。

学習データは、彦根市の各種計画情報・議事会事録・条例・規則・業務に関する手順などで職員に利用してもらい、効果の検証や修正などの内容を更新する予定です。

行政でChatGPTを扱う上での注意点

Chat GPTは、行政への導入において業務効率化などの様々な利点があります。しかしその一方で、安全に使用するためにChat GPTを導入する上でいくつかの注意点が必要です。

セキュリティ面でのリスクがある

Chat GPTは、インターネット上にある大量のテキストデータやユーザーが入力した情報を元に学習されています。そのため、個人情報や機密情報が学習データに含まれている場合、そのデータが回答として出力されてしまう可能性があります。

Chat GPTを活用する際はオプトアウト申請を行い、個人情報や機密情報を入力しないなどの対策を行いましょう。その上で、個人情報や機密事項が含まれていないかChat GPTの出力データを確認してから使用するようにしましょう。

誤った情報や偏った情報が含まれる可能性がある

Chat GPTは、今なお開発中の技術であり使用される学習データには、事実と異なる誤った情報や学習データに偏りが含まれている可能性があります。

そのため、出力データに誤った情報や偏りが反映されることがあります。Chat GPTを活用する際は、必ず人間がデータの誤りや偏りを確認する必要があるでしょう。

Chat GPTが出力したデータは鵜呑みにせず、他の情報源や資料と照らし合わせるなどの対策が必要です。

Chat GPTは行政での様々な業務効率化を図る

今回は行政におけるChat GPTの導入方法や活用事例・活用する上での注意点を解説しました。個人情報や機密情報を扱う行政において、Chat GPTの活用はリスクが生じますが、セキュリティツールの活用や人の目で確認する事を徹底することで、リスク回避が可能です。

Chat GPTは今後も日々進化していくと予想され、より高度な言語処理や自然なテキスト生成が可能になるでしょう。現在も様々な自治体での導入が進んでおり、今後も行政での業務効率化や各種サービスの改善など様々な実現が期待されています。

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