現在、AI(人工知能)技術は日々進歩を遂げており、様々な分野で注目されています。2024年3月のニュースでは、米アップルのiPhoneにGoogleの生成AI「Gemini(ジェミニ)」を搭載するため、交渉中だと報道されました。
今回はGoogleが開発したGeminiの概要やChat GPTとの違い・種類や特徴・注意点などを詳しく解説します。
生成AI Geminiとは
Gemini(ジェミニ)は、Google AIが開発したマルチな生成AIです。元々はBard(バード)と呼ばれていましたが、現在はGeminiに名称変更しています。
Geminiはテキストや画像・音声を入力すると様々な形式のデータを処理し、文章や画像生成・音声コードなどの生成が可能です。従来のAIとは異なり、複数の種類のデータを同時に扱うことができます。
有名な生成AIにはOpen AI社のChat GPTが良く知られていますが、Chat GPTが過去のデータを基にして回答するのに対し、GeminiはGoogleの最新情報にアクセスできるため、最新の情報を把握できます。
GeminiとChat GPTの違い
GeminiはGoogleが提供するAIモデルのため、Googleアカウントをお持ちであれば、他のGoogleサービスとも連携が可能です。Webブラウザと連携しており、最新の情報にもアクセス可能です。
一方、Chat GPTはインターネット上の膨大なデータを用いて学習しているため、日々の学習や疑問に役立つサービスと言えるでしょう。GeminiとChat GPTはどちらも革新的な生成AIですが、それぞれ「AIモデル」と「サービス」の違いがあり、最新情報にアクセスできるかどうか以外にもそれぞれに強みと弱みがあります。
先述したように、Geminiはマルチな形式が対応可能な生成AIのため、テキスト・画像・音声などに対応可能ですが、Chat GPTはテキストのみに特化しており、画像や音声の処理は苦手です。しかし、Chat GPTは自然な文章の作成に優れていますが、GeminiはChat GPTほど自然な文章作成には特化していない印象です。
GeminiとChat GPTは、それぞれ開発された目的が異なるため、どちらが優れているなどの問題ではなく、それぞれに得意・不得意があるのです。
Gemini(旧Bard) | Chat GPT | |
開発会社 | Open AI | |
AIの種類 | 人工知能モデル | 生成AIサービス |
価格 | 無料(有料版あり) | 無料(有料版あり) |
処理能力 | テキスト・画像・音声など | テキストのみ |
使用用途 | 日常の質問〜リサーチまで幅広く対応 | 日常の質問や学習に活用 |
自然な文章作成能力 | △ | ◯ |
データの取得方法 | Webブラウザと連携 | Web上の膨大なデータ |
最新情報 | ◯ | × |
他のサービスとの連携 | Googleと連携 | × |
生成AI Geminiの種類
Geminiは様々なニーズに対応できるよう以下の3種類に分かれています。
- Gemini Nano
- Gemini Pro
- Gemini Ultra
先述したGeminiは、基盤となる幅広いモデルのGemini Proに該当します。それぞれ特徴が異なるため、ユーザーの使用用途に合わせて選択することが可能です。
Gemini Nano | Gemini Pro | Gemini Ultra | |
モデルの違い | スマートフォンで利用できるモデル | 幅広い分野で活躍できる万能型モデル | 最新の最上級モデル |
特徴 | スマホやタブレットで場所を選ばず利用できる | 幅広い分野で様々な形式のコンテンツが作れる | 膨大なデータの高速処理で高度な生成を行うことができる |
主な用途 | チャットボット・音声認識・自然言語処理など | 小説・音楽・記事・動画作成や教材作成・顧客分析など | 複雑なデータのパターンを解析する・研究開発など |
Gemini Nanoは、スマートフォン(Pixel8など)やタブレットなどに特化しており、省電力かつ高速処理が特徴です。コンパクトなモデルサイズのため、場所を選ばずに活用でき、簡単にGeminiを導入することが可能です。
音声認識による音声アシスタントや翻訳・チャットボット・画像処理などができます。一方、Gemini Ultraは高度な処理能力と学習能力を持っており、膨大な量のデータを高速処理でき、技術開発や科学研究にも用いられます。
Gemini Ultraの利用には、有料のGemini Advancedが必要です。Gemini Advancedを利用するには、Googleが提供するサブスクリプションサービス「Google One」のAIプレミアムプラン(日本円で月額2900円)に加入する必要があります。
ちなみに、AIプレミアムプランに加入するとGemini for Workspaceが利用可能です。Gemini for Workspaceでは、Googleが提供するGmailやカレンダーなどのアプリと連携ができ、メール作成やスケジュール調整・資料作成・データ分析など、ビジネスでスムーズに活用できる機能が利用できます。
生成AI Geminiの特徴
Geminiには、以下のような特徴があります。
- 複数の形式のデータを処理できる
- 高度な生成能力がある
- 様々な分野で活用できる
- 操作性が簡単である
以下でそれぞれの特徴を詳しく解説します。
複数の形式のデータを処理できる
Geminiはテキストだけではなく、画像、音声など複数の形式のデータを処理することが可能です。複数形式の処理は、従来のChat GPTなどのAIでは実現できませんでした。
そのため、ニュアンスを含んだ特徴を理解しやすく、複雑な質問にも回答することが可能になりました。また、文章と画像を組み合わせた説明文の生成・音声とテキストに基づいて動画を編集もできます。
高度な生成能力がある
Geminiはユーザーが入力やアップロードした様々なデータを処理・分析し、高度な文章や画像・音声・コードなどを生成することが可能です。例えば、文章生成では記事や小説・詩・コードなど様々な形式の文章を作成できます。
また、画像生成では写真やイラスト・漫画など様々な形式の画像を作成でき、音声生成ではナレーションや音楽など様々な形式の音声を作成できます。コード生成はウェブサイトやプログラムなど、エンジニアのような知識がなくても様々な形式のコードを自動で作成可能です。
様々な分野で活用できる
Geminiは複数形式のデータ処理能力と高度な生成能力を持つ他に、膨大な量のデータを学習しているため、様々なタスクをこなすことが可能です。また、学習すればするほど精度と汎用性が向上し、幅広い用途に適用することができ、様々な分野で活用することができます。
例えば、以下のような用途で活用できると考えられるでしょう。
- 小説や詩・音楽などのクリエイティブな創作活動
- 記事・広告・動画などのコンテンツ制作
- 教材作成や学習支援などの教育
- 画像診断、治療計画立案などの医療
- 設計やシミュレーション
- 商品開発・顧客分析・マーケティング
操作性が簡単である
Geminiは高度な機能を持つだけでなく、操作性の高さも大きな特徴です。AIの専門知識がなくても、誰でも簡単に使いこなすことができる直感的なインターフェースを採用しており、テキスト入力欄に指示をするだけで利用できます。
難しい専門用語や複雑な設定も一切不要で、専門知識のないユーザーでも簡単に利用することができます。また、誰にでも使いこなせるようサンプル文の入ったコンテンツ作成例も確認できるため、活用アイデアの参考にもなるでしょう。
さらに、Geminiは常にアップデートをされ続けており、性能や機能向上はもちろん、ユーザーからの要望を参考にした改善も行われています。
生成AI Geminiの注意点
生成AI Geminiはテキストや画像・音声など様々なデータを処理して様々なコンテンツを生成できる非常に強力なツールですが、いくつかの注意点があります。Geminiを活用する際は以下の注意点を理解する必要があるでしょう。
- データの偏り
- 著作権侵害やプライバシー侵害・差別的な表現
- 事実とは異なるコンテンツ
- ニーズに合わない情報
- データの悪用
- Geminiへの依存性
以下でそれぞれの注意点を具体的に解説します。
データの偏り
Geminiは他の生成AI同様、インターネット上の様々なデータを用いて学習しており、自ら分析・生成しています。しかし、学習に使用されるインターネット上の様々なデータには、偏りが存在する可能性もあります。
また、Geminiはテキストだけではなく、画像・動画など様々な生成が可能です。生成するデータにより、特定の属性を持つデータが必要になる場合があります。
そのような場合は、データの偏りがコンテンツの生成に影響を与える可能性もあります。学習データ・生成タスク共にデータの偏りがある可能性も考えられるため、生成されたコンテンツに偏ったデータが反映されてしまうのです。
著作権侵害やプライバシー侵害・差別的な表現
Geminiの学習に用いられている様々なデータには、著作権で保護されたコンテンツや差別的な表現も多く含まれている恐れがあります。出典先が不明のデータや著作権フリーと明記されていないデータ・権利関係が不明瞭なデータは著作権侵害のリスクや差別的な表現が生成される可能性が高い傾向です。
また、Geminiにユーザーが入力したデータは、Googleが収集・分析する場合も考えられます。個人情報を入力してしまうとGeminiの学習に個人情報が含まれるデータが利用されてしまうこともあるでしょう。
Geminiのプライバシーポリシーをよく確認し、個人情報の取り扱いについて理解する必要があります。
事実とは異なるコンテンツ
Geminiは悪意のあるユーザーにより、事実とは異なるコンテンツを生成するために悪用される恐れもあります。例えば、フェイクニュースや情報操作のために利用される可能性があるため、生成されたコンテンツは鵜呑みにせず、客観的な視点で書かれているかどうかを確認しましょう。
さらに、他の情報源と照らし合わせて信頼できる情報かどうか確認することも大切です。
ニーズに合わない情報
Geminiにテキストなどを入力する際に、ユーザーのニーズが明確に定義されていないと生成されるコンテンツもニーズに合わないデータが生成される可能性があります。また、指示した文脈や背景をGeminiが考慮していない場合も生成された情報が、ニーズに合わないことがあるでしょう。
データの悪用
Geminiの学習データに個人情報などが含まれている場合、データを悪用される可能性があります。セキュリティ対策が不十分な場合は、特に情報漏洩のリスクが高まり、なりすましや詐欺などの犯罪に悪用されるケースも考えられます。
Geminiに限らず、生成AIに入力する際は個人情報や機密情報を入力しないよう徹底しましょう。
コスト
先述したようにGeminiには3種類あり、無料で利用できるものと有料で利用できるものがあります。それぞれ得意なことが異なるため、利用する前にそれぞれの種類の特徴とコストを比較検討する必要があります。
Geminiへの依存性
Geminiは学習したデータに基づいたコンテンツ生成を行うため、学習内容に左右される恐れもあり、必ずしも正確な情報が生成できるとは限りません。Geminiが生成した情報は、必ず他の情報源と照らし合わせて確認する必要があります。
特に、専門知識などは信頼できる情報源と照らし合わせることが重要になるでしょう。
Geminiは幅広いデータを処理できる汎用性の高い生成AI
今回はGoogleが開発したGeminiの概要やChat GPTとの違い・種類や特徴・注意点などを詳しく解説しました。Geminiは複数の形式のデータを処理できる能力と高度な生成能力により、様々な分野で活用されることが期待されています。
しかし、万能ではないため特性を理解して利用する必要があり、機能や性能が将来的に変更される可能性もあります。Geminiは日々アップデートしており、今後もさらに使いやすく品質も向上していくでしょう。
GeminiはAI技術の新たな可能性を切り開き、社会に大きな変革をもたらす可能性を秘めた技術です。