AIが進化している近年。様々なAIによるサービスが世の中に登場しており、新型コロナウイルスの感染防止対策や人件費の削減のため、AI技術を活用した無人接客も増えています。
レストランでの配膳や受付など飲食業界におけるAI活用の他に、ホテル業界でも人工知能の技術が搭載されたサービスが導入されており、ホテルサービスをより便利なものにしています。
今回は、ホテル業界におけるAI化のメリット、デメリット、活用の具体例をご紹介します。
ホテルのAI導入における活用の参考にしていただければ幸いです。
ホテルのAI化とは?
ホテルのAI化とは、これまで人手に頼っていた多くの業務を適切なAIに任せる事です。
人工知能の技術をホテル運営に活用する事で、人間が行っていた様々な業務の自動化が可能になります。
無人運営のホテルでは受付に従業員がいないため、宿泊客が受付に設置されたITシステムを使用してチェックインを済ませたり、部屋の鍵を受け取ります。
ホテルにおけるAI導入は、運営を円滑に行うための施策なのです。
ホテルのAI導入におけるメリット
ホテルにAI導入を活用すると、ホテルの運営を円滑に行う他に従業員や宿泊者にも利点があります。ホテルのAI導入におけるメリットを解説します。
人件費・業務量の削減
これまで人手が行っていた業務をAIに任せる事で人手が空くため、業務の効率化を図れます。
ホテルでは、日常的に様々な顧客対応が求められる中、顧客からの問い合わせやクレームに対して優先的に対応する必要があります。
しかし、全ての顧客に対応すると、他の業務が円滑に行えなくなる可能性もあるのです。
AIに業務を任せて自動化を行う事で、人間は他の業務に注力が可能になります。
また、業務の効率化ができると、人件費の削減にも繋がるのです。
海外客への対応が円滑になる
AIが持つ技術の1つに、自動で言語を翻訳する機能があります。
多言語に対応しているため、言語能力の高い従業員を雇用する必要がなく、海外からのホテル宿泊客に対しても対応が円滑になるでしょう。
また、AIによる自動応答機能を活用すれば、音声による回答対応も可能です。
海外客とのコミュニケーションが取れるようになり、顧客満足度の向上にも繋がります。
感染症対策が可能
ホテルにAIを導入すると、他人と接触する事なく業務の実行が可能になります。
例えば、フロント業務をAIに任せる事で非対面や非接触が実現でき、感染対策としても有効です。
ホテルには世界中から不特定多数の人々が集まるため、感染症が心配な方もいらっしゃるかもしれません。そのような方が安心して宿泊できるようになる他、従業員も安心して業務に集中できるでしょう。
さらに、感染症対策に取り組んでいるホテルだとアピールできる利点もあります。
おもてなしサービスへの注力が可能
ホテルにおける単純な作業をAIに任せる事で、これまで人間が行っていた業務量が減ります。
そのため、顧客には人間しかできない「おもてなし」に注力する事が出来るのです。
例えば、フロントスタッフにAIを導入し、チェックイン・チェックアウトを自動化すれば、フロント業務に従業員は不必要になります。そのため、従業員は顧客に合わせたお声がけや配慮・お出迎え等のおもてなしに注力する事ができます。
おもてなしとは、マニュアル通りではない相手の心に寄り添い心を汲み取り、喜んでもらえるよう行動する事で、AIには決して出来ない事です。
おもてなしに注力する事で、顧客満足度の向上や新規顧客・リピーターの獲得に繋がるでしょう。
ホテルのAI導入におけるデメリット
ホテルのAI化はメリットもありますが、デメリットもあります。
ここでは、ホテルのAI導入におけるデメリットを解説します。
高額な費用がかかる
AIの技術を搭載したホテルのシステムは、精密機械のため高額な初期費用が必要になります。
また、定期的なメンテナンスも必要になるため、導入や運用にはコストがかかるでしょう。
AIの導入を検討する際は、事前に予算を確保した上で計画的にシステムを導入・運用する必要があります。
臨機応変な対応は不可能
AIを搭載したロボットを導入した接客は、形の決まったマニュアル通りの接客が可能です。
しかし、何かのトラブルが生じた時やイレギュラーな事態が起こった際は、対応が困難になります。
AIロボットが複雑な問い合わせや苦情に対して、臨機応変な対応が出来ないと、コミュニケーションが円滑に行われなくなり、顧客のストレスにも繋がる可能性があります。
そのような初期対応の遅れに備え、AIロボットに任せきりにするのではなく、専用の従業員を配置する必要があるのです。
無機質な対応になる可能性がある
ホテルのフロント業務等、顧客対応にAIを導入する事で、業務効率化が図れる一方、人間ならではの接客が失われるデメリットがあります。
AI導入でフロントチェックインやチェックアウトが円滑に行われるようになりますが、日本特有のおもてなしや温かみのある接客は失われてしまい、顧客によっては物足りなく感じる場合があるかもしれません。
全ての接客に関する業務をAI化するのではなく、AIの導入で利便性が向上した分、人ならではの顧客サービス提供が重要視されます。
人による接客が必要になる場合がある
AIによるマニュアル通りの接客で、臨機応変な対応が不可能な場合やトラブルで顧客対応が困難な場合は、人による対応が求められます。そのため、AIの不具合やトラブルに対応する従業員も事前に配置しておく必要があります。
また、海外からの旅行客には、日本の文化である「おもてなし」が人気です。
全てのホテル業務をAI化するのではなく、ITの利点を活用しながら従業員とのバランスを考慮し、最適な業務に活用する事で、顧客満足度に繋がります。
システム障害やエラー
AIを搭載したホテルのシステムは精密機械のため、予期せぬ不具合やエラーが生じたり、不具合によっては長期化する可能性もあります。
AIのシステム障害やエラーが発生した時に最適な対応が求められるでしょう。
ホテルのAI導入における具体的な事例
ホテルにおけるAI導入には、具体的にどのような活用例があるのでしょうか?
代替が可能な業務とAI導入の具体例をご紹介します。
予約受付
ホテルの予約業務にAIを導入し、予約受付を自動化します。
近年ではインターネットによる予約受付が主流でしたが、予約サイトにAIチャットを搭載する事で、自然言語処理技術を活用し、顧客との予約のやりとりを円滑に行えるのです。
宿泊希望者は、希望日や人数・部屋の選択などをAIとのWebチャットや対話型AIとの電話のみで予約できます。AIの導入で待ち時間もなく、予約の受付を円滑に行えるため、顧客満足度の向上を図れる他、人間による受付が不要となり、人件費削減や従業員の負担の軽減にも繋がります。
さらに、人による電話対応は営業時間が関わりますが、AIによる自動応答システムを導入する事で、24時間365日の受付が可能になるでしょう。予約受付の時間が拡大するため、新規顧客・リピーターの獲得にも繋がるといった利点もあります。
管理業務
AIを導入する事で、ホテルの運営に関する業務を管理できます。
主に以下のような業務管理が可能です。
- 予約管理
- チェックイン
- チェックアウト
- モーニングコール
- 精算
- 領収書等の発行
- 客室清掃や洗濯等に関わる管理
- 在庫管理
ホテルコンシェジュ
AIは、膨大な量のデータを用いて機械学習を行っています。
そのため、AIの持つデータベースを活用する事で、顧客に対して様々な情報を提供する事が可能になります。
例えば、ホテル館内の施設サービスの他、地元の観光情報や飲食店、目的地までの移動手段を提供する等、コンシェルジュのような旅行プランを提案する事もできます。
AIは365日24時間稼働可能のため、人間のように休む事がなくコンシェルジュが不在になる事もありません。
清掃業務
ホテルのロビーや廊下などの清掃をAIに任せる事が可能です。
画像分析機能を用いて効率的に清掃したり、清掃の仕上がり具合を確認します。
大規模なホテルであれば、清掃業務を行う従業員もある程度必要となりますが、AIによる清掃業務の導入を行う事で人件費の削減にも繋がります。
また、カメラを搭載した清掃ロボットであれば、人との接触を防ぐ事も可能です。
データ分析
AIによるデータ解析で様々な在庫管理が可能になります。
過去のデータからホテルの来館者数を予測し、備品や消耗品等の在庫を管理できます。
また、レストランにおいては食材の在庫を管理する事が可能なため、食品ロスを防ぐ対策にも繋がります。
スケジュール管理
AIによるスケジュール管理で、ホテルで働く従業員の業務量の調整が可能になります。
労働環境を改善すると共に、従業員満足度や生産性の向上といったホテルの業務改革も見込めるでしょう。
AIスピーカー
これまで客室の温度管理や照明の明るさなどは、宿泊者がリモコンで操作を行う必要がありました。しかし、ホテルの客室にAIスピーカーを導入する事で、顧客の音声により好みに合わせた室内温度や照明の明るさの調節が可能です。
また、チェックアウトや朝食の時間を答えたり、海外宿泊客に向けた多言語による対応、ルームサービス等の利用もより円滑に行う事が可能になるため、ホテルの宿泊客にとってとても便利です。
https://youtu.be/g5b2VeUDQr8?si=zQBzGsg-y7DNn4p0
おもてなしの日本文化はそのままにAIで代替可能なサービスを
ホテルにおけるAI導入は、人件費・業務量の削減や顧客満足に繋がる可能性があります。
ホテルにおけるAI導入への課題はそれぞれ異なるため、メリット・デメリットや導入費用等を考慮した上で、AIの導入をご検討下さい。
ホテル運営に最適なAIを導入する事により、他社との差別化も図れます。
ホテル運営における全ての業務をAIで賄う事は現時点では困難ですが、人間とAIの業務のバランスを考慮し、適材適所の配置を行えば、よりホテル運営を最適にする事が可能です。
日本特有のおもてなし文化はそのままに、AIが得意な業務は任せてホテル運営を最適化しましょう。