AI 半導体とは?種類や仕組み・注目されている理由を解説

先日、アメリカのアップル(Apple Inc)はMacBook Airに新型の半導体を搭載したMacBook Airを2024年3月に発売すると発表しました。価格は13インチで1,099ドル〜(日本円は税込み16万4800円)になるそうです。

今回発売されるMacBook Airは13インチと15インチの2台で、アップルが自社設計した半導体を採用しており、省電力・高性能でAI機能の活用に最適と言われています。今回は、現在注目されているAI半導体の仕組みや種類・注目が高まる理由などを解説します。

AI半導体とは?

AI半導体とは、AIの処理に特化した頭脳の役割を果たします。半導体の電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の性質を用いて、生成AIをはじめとしたコンピュータの能力の源泉を司っているのです。

生成AIで知られるChatGPTなどは、膨大なデータを同時に高速で処理する必要があるため、AIの処理に特化した半導体を使う必要があります。そのため、​​AIを動かすサーバーでは主にデータ処理に優れる中央演算処理装置(CPU)や画像処理半導体(GPU)が使われるようになりました。

アメリカではAI半導体の市場規模は2027年に1,194億(約18兆円)に拡大すると予測しています。GoogleでもAIを高速化した独自の半導体「TPU(Tensor Processing Unit)」を開発しており、Googleストリートビューの実装に利用され注目を集めました。

Googleは2016年に「TPU」を発表して以来、改良を積み重ねており小型化・省電力化が進んでいます。

AI半導体の種類と仕組み

AI半導体の種類と仕組み

AI半導体にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があるため仕組みも異なります。以下でAI半導体の種類とそれぞれの仕組みを詳しく解説します。

CPU

CPU(Central Processing Unit)は、中央演算処理装置です。CPUは人間の頭脳のような役割でデータ処理作業を行い、システムやアプリなどに命令を出しています。

PCやスマートフォンなどに搭載されており、CPUの性能が高ければ高いほど処理が可能なデータ量が増え、処理する速度も早くなる傾向です。CPUの性能はデバイスの性能を大きく左右するため、高性能なCPUが搭載されているデバイスの金額は高価になっています。

しかし、一方で高性能であればあるほどデータ処理時の消費電力の量が増えるため、デバイスが熱を持ちやすくなる側面もあります。

GPU

GPU(Graphics Processing Unit)は、画像処理半導体を指します。GPUは、元々画像処理を行う半導体で、コンピュータグラフィックで膨大な画像を同時に処理することに特化していました。

GPUがAIの半導体として膨大なデータを処理することが適切と判明したため、AI半導体として注目されるようになり、現在ではGPUが主流です。GPUは難しい作業は困難ですが、膨大なデータを同時進行で処理することができます。

FPGA

FPGA(Field-Programmable Gate Array)は、ユーザーやエンジニアが電子回路の書き換えを行うことができる集積回路です。ユーザーやエンジニアが使いやすさを追求し、仕様変更やカスタマイズが繰り返しできるようになっています。

FPGAは特定の用途に特化していますが、並行計算や大量の同時計算に特化させることや不要な動作を削ることもできるため、需要が高まっており低電力かつ高速処理できる点も評価されています。

ASIC

ASIC(Application Specific Integrated Circuit)はFPGAと同様、ユーザーやエンジニアが使いやすいようカスタマイズされた集積回路です。日本では「特定用途向け集積回路」と呼ばれており、先述したGoogleが開発した「TPU」がASICに該当します。

FPGAは使用するユーザー自身がカスタマイズを行いますが、ASICはユーザーからの注文を受けたメーカー側がカスタマイズを行います。しかし、繰り返しカスタマイズできるFPGAに対し、ASICは修正が効きません。

しかし、ASICは半導体の生産コストや消費電力量が抑えられるため、FPGAで運用を始めた後にASICにするケースもあります。

AI半導体の注目が高まる理由

先述したように、Googleが独自のAI半導体を開発するなどAI技術の進化に伴い、AI半導体の注目度も高まっています。近年、AI半導体の注目が高まる理由を以下で具体的に解説します。

AIの処理能力を大幅に向上させる

汎用性の高いCPUGPUなどの従来の半導体はAI処理に特化していないため、様々な課題がありました。しかし、AI半導体はAI処理に特化していることで、従来の半導体では実現できなかった処理能力が実現可能です。

AIのディープラーニングはニューラルネットワークを活用していますが、運用するには大量のデータを処理する必要があります。そのため、従来の半導体での処理は大量の時間や電力を使っていました。

AI半導体は大量のデータの処理を短時間かつ低電力で行うことが可能なため、処理能力が大幅に向上しました。

電力を低減しながら多くのデータを処理できる

AIの進化とデータ量の増加に伴い、AI処理の負荷はますます高まっています。AI半導体は多くのデータ処理に特化しているため、従来の半導体と比べ消費電力を大幅に抑えながら処理することが可能です。

処理速度などに優れており、データ処理の状況に応じて電力を最適化するため消費電力を抑えることができます。高性能な処理能力かつ低消費電力が叶うため、データ処理の精度の向上などにもつながります。

様々な用途へ応用できる

AI半導体は、生成AIで知られる画像認識・自然言語処理・機械学習・音声認識など様々な用途に活用可能です。現在、スマートフォンやスマートスピーカー・自動運転など、幅広い分野でAI半導体の導入が進んでいます。

そのため、AI半導体の市場規模は今後も拡大していくと予測されており、IT分野だけに留まらず、様々な分野に大きな影響を与えていくでしょう。

AI半導体の導入により、従来は人間の経験や感覚で行っていた作業を、AIが半導体を活用してサポートする動きが考えられています。処理速度も従来より早くなったため、作業の効率化や人件費の削減にもつながるでしょう。

様々なコストを削減できる

AI半導体はAIのデータ処理に特化しているため、従来の半導体と比べると様々なコストを削減することが可能です。AI半導体はチップが小さく消費電力も低いため、システム全体の小型化・軽量化も叶います。

システム全体を小型軽量化するため、材料費などのコスト削減にもつながるでしょう。

AI半導体の活用事例

AI半導体の活用事例

AI半導体の種類や特徴・注目されている理由をご紹介しました。では、AI半導体はどのようにして活用されているのでしょうか。以下で具体的な活用事例を見てみましょう。

自動車の自動運転

自動車の自動運転にはAI半導体が活用されています。自動運転システムは、膨大な量のデータを処理し、高速で正確な判断を下すことができ、人間のミスによる事故を減少させることが可能です。

例えば、周囲の自動車や歩行者・道路標識などを認識し、認識したデータを元に現在の状況を判断することができます。その上で安全運転に必要なハンドルやアクセル・ブレーキなどの操作を行うことが可能です。

AIによる自動運転システムが普及することで、電車や飛行機など運転手の負担を軽減し、様々な交通事故の削減も叶うでしょう。

Chat GPT

Chat GPTは、OpenAI社が開発した人工知能を活用した大規模言語モデル(LLM)です。LLMは、膨大なテキストデータを学習し、ユーザーと自然な会話(チャット)ができるように設計されています。

Chat GPTは、AI半導体の高度なデータ処理能力によりスムーズで自然な会話をすることが可能です。また、AI半導体はChat GPTを省電力で動作させることができるため、スマートフォンなどでバッテリーを最小限に抑えて利用することができます。

今後もAI半導体とChat GPTの進化により、ますます多くのサービスにおいてChat GPTが搭載されることが予想されるでしょう。

メタバース

メタバースは、コンピュータ内に構築された3D仮想空間のことです。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの技術を用いてユーザーがその中で自由に行動でき様々な体験ができます。

メタバースはAI半導体によりユーザーのアバターをリアルタイムで作成し、異なる言語を話すユーザー同士の会話をスムーズにするため自動翻訳の高速化を実現します。AI半導体は、ITシステムをリアルタイムで把握しながら裏方でメタバースのシステムを支える役割を担っています。

AI半導体の進化によりメタバースが多くのユーザーにとって身近になれば言語の障害などを超えて交流できるため、より豊かな交流ができるでしょう。

AI半導体の特徴を理解して最新技術を使いこなそう!

今回は、現在注目されているAI半導体の仕組みや種類・注目が高まる理由などを解説しました。AI半導体はAI処理に特化することで、データ処理の速度や消費電力などを大幅に向上させることが可能です。

AI半導体の市場は、今後も急速に拡大していくと予想されています。AIの進化とデータ量の増加に伴い、性能や機能がさらに向上していくでしょう。AI半導体は、アップル(Apple Inc)やGoogleなどのように自社開発する企業も増えているようにAI半導体の種類も増え、様々な用途に適したAI半導体が開発されることが期待されます。

AI半導体は私たちの身近に活用されつつあり、今後もAI半導体の進化により便利なサービスが増えていくことでしょう。

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