「モノづくり大国」と言われる日本では、製造に関わる仕事がたくさんあります。数ある製造関連の仕事の中でも設計やメンテナンスといった重要な役割を担っているのが「プラントエンジニア」です。今回は、プラントエンジニアの仕事内容を紹介するとともに、年収や適性についても解説していきます。
プラントエンジニアの概要
「プラントエンジニア」とは、工場関係の仕事で使われる設備の総称であるプラントに関わる技術職になります。設備の設計や開発はもちろんのこと、現地での建設、設置後のメンテナンスに至るまで幅広い役割を担っている製造業界に欠かせない職業の一つです。
食品を始めとした製造関係は「機能性」、電気やガスといったエネルギー関連の工場では「安定供給」と「安全面への配慮」などそれぞれ求められる物が違います。エネルギー関連の工場はトラブルが起きて作業が中断すると社会に大きな影響を与えるケースも少なくありません。プラントエンジニアは定期メンテナンスや万が一トラブルが起きた時に迅速に復旧するための技術と知識が求められます。
プラントエンジニアが現場で行う主な仕事内容
プラントエンジニアの仕事内容は設計や開発といった間接的なサポートだけではありません。クライアントと交渉など現場と直接関わる仕事もたくさんあるでしょう。
基本設計
数あるプラントエンジニアの仕事の中でも、比較的重要な作業に位置付けられているのが基本設計です。基本設計とは文字通り、プラントを建設するために必要となる設計作業になります。
数多くの機械部品の集合体であるプラントを建設するには、膨大な時間と労力が必要です。0の状態から一つひとつ作り上げていくと設計だけで数年近く掛かってしまうため、最初に大まかな設計をして細かいプランを立てる形を取ります。使用する原料の温度や圧力を計算するだけでなく、完成後の配置にも気を配りながら設計しなくてはいけません。
詳細設計
基本設計と並ぶプラントエンジニアの大事な仕事の一つが詳細設計です。基本設計で大まかに作ったプラントに必要な設備を取り付けていく作業になります。
ガスや電気などのエネルギー関連のプラントでは熱交換器、ボイラーといった設備の取り付ける場所で供給効率が変わることも珍しくありません。各分野のエンジニアと協力しながら環境への影響やコストを抑えつつ、常に安定供給できる安全性も意識して設計することが求められます。
部品や資材の調達
詳細設計で具体的な案がまとまったら、次に行うことは各メーカーへの見積もり依頼です。通常、開発設計と発注はそれぞれ異なる部署の担当となりますが、プラントの建設ではエンジニアが行います。これは、発注に必要な説明や価格交渉をする時に設計担当者が直接行った方がスムーズにやり取りができるというのが理由です。
同じ機械を作っているメーカーでも金額や依頼から納品されるまでの期間に違いがあります。そのため、複数あるメーカーの中からいくつかピックアップをして、比較検討をした上で条件に合った所を選ばなくてはいけません。そのほかにも、納品された物に間違いがないかの確認をするのもプラントエンジニアの担当業務です。
建築と施工管理
部品や資材が揃ったら、設計書に従ってプラントの建築を行います。建築作業は別の専門職の人が行うためプラントエンジニアが直接関わることはありません。行うことは現場作業員が安全に仕事をするためのリスク管理、スケジュール通りに進行しているかの確認などです。建築基準法を始めとした法令を遵守することが求められるので、現場に足を運んで目視でチェックを行います。
プラントエンジニアの平均年収と収入アップのコツ
キャリアや年齢によって若干の違いはありますが、プラントエンジニアの平均年収は500万円前後と言われています。エンジニア関連の仕事としては平均的ですが、努力次第で収入をアップさせることも可能です。
例えば、年収を上げる有効な手段の一つに資格の取得があります。プラントエンジニアは仕事に関係する資格を取得することで携われる業務の幅が広がる職業です。基本給に加えて別途資格手当が支給されるケースもあるので、業務で活かせる資格の取得することが重要になります。
また、技術関連の仕事は企業によって雇用契約の内容が変わるので、会社選びも収入アップを実現する大事なポイントの一つでしょう。
プラントエンジニアの仕事のメリットやデメリット
これからプラントエンジニアに就くことを考えている人は、下記のような仕事のメリットやデメリットについての理解を深めておくことが大切です。
活躍できる場所がたくさんある
プラントエンジニア業界で働く大きなメリットの一つが選択肢の多さです。プラントエンジニアは開発や設計、メンテナンスといった幅広い役割を担っています。市場が飽和状態となっている日本では新規プラントの建設が難しいため、メンテナンス業務が中心です。
一方で、海外の新興国ではプラント建設が盛んに行われているので、メインとなる設計や開発業務にも携わることができます。グローバルに活躍できるようなチャンスがあるのは、プラントエンジニアならではの魅力です。
雇用が安定している
製造業界におけるエンジニア職は、需要に対して人材が足りていないと言われています。プラントエンジニアも同様に慢性的な人手不足に陥っているため、引く手あまたの状態が続いています。給料を始めとした自分が希望する条件で働きやすいのもメリットの一つです。
転勤や出張が多い
プラントエンジニアは働く環境が変わりやすいというデメリットもあります。プラント業界では転勤や年に数回の短期出張などを言い渡されることも多く、1年の大半を出張先のホテルで暮らすというケースも珍しくありません。せっかく慣れてきたと思ったら別の場所への異動を命じられるなど、その都度環境の変化に対応するのがきついと感じるエンジニアもいます。
家族がいる人は必然的に一緒に過ごす時間が減ってしまうため、予め理解を得ておくことが大切です。
プラントエンジニアに向いているタイプ
建物の建設は一人では行うことができません。プラントの建設も同様に、現場の作業員を始めとした様々な専門分野の人と働くことになります。そのため、プラントエンジニアは仲間と協力して目標を成し遂げるような「チームワーク作業」を好む人向きの職業です。
プラントに限らず、0の状態から物を生み出すのは簡単な作業ではありません。プラントエンジニアに向いている人は、失敗を恐れず試行錯誤を繰り返す「根気」、常識に囚われずに新しい物を生み出す「柔軟な発想力」も持っています。さらに、メーカーへの発注依頼などクライアントとやり取りをすることもあるので、誰とでも円滑にコミュニケーションが取れる「対人スキル」もなくてはならないでしょう。
プラントエンジニアに就くために必要な資格とスキル
職業に就くために必須となる資格はありませんが、プラントエンジニアとして最前線で活躍する上で有利に働くものはいくつかあります。
技術士
「技術士」は科学関係の専門知識技能、応用力などを持つ人が取得できる資格です。エネルギー関連のプラントを建設では設計に科学分野の知識が必要となるケースも多く、企業によっては所有の有無が採用に影響することもあります。
施工管理技士
「施工管理技士」は公共工事や建設現場において必要不可欠な資格の一つです。最低でも1人は資格を所有している人を常駐させることが義務付けられています。国家資格に分類されるため取得の難易度は高めですが、持っていれば現場の施工管理業務に携わることが可能です。
プラントエンジニアに就く人は希望する働き方を明確にしよう
プラントエンジニアは開発から施工管理まで幅広い役割を担っており、それぞれ求められる能力や資質が異なります。新卒や他業種からの転職で仕事に就く人は、自分が何をしたいのかを明確にして必要なスキルを身に着けておくことが大切でしょう。