AWSは、柔軟かつ強力なクラウドサービスを提供する一方で、コスト管理が難しいという課題があります。
本記事では、AWSコストの仕組みを解説し、料金体系の理解から具体的な削減方法、効率的なコスト管理ツールの活用までを詳しく紹介します。AWSを効率的かつ経済的に活用するための第一歩を踏み出しましょう。
AWSコストの仕組み
AWSは、柔軟性やスケーラビリティが特徴的なクラウドサービスですが、料金体系は従量課金制を基本としており、使った分だけ支払う仕組みになっています。
ここでは、AWSのコストがどのように決まるのかを、料金の基本構造、サービス別の料金構成、データ転送やストレージの追加コストといった観点から見ていきましょう。
仕組み①従量課金制の概要
AWSの料金は、使用した分だけ支払う「従量課金制」が基本です。
水道代や電気代に似ており、利用した時間や量に応じてコストが変動します。例えば、仮想サーバーを提供する「Amazon EC2」の場合、1秒単位で料金が計算されます。このため、利用時間を調整したり、使用していないリソースを停止することで無駄なコストを削減することが可能です。
また、利用料金をさらに最適化したい場合には、1年または3年分を前払いして割引を受けられる「リザーブドインスタンス」や「Savings Plans」といった料金プランを活用しましょう。大幅なコスト削減が期待できます。
仕組み②サービスごとの料金構成
AWSの料金は、利用するサービスごとに異なる要素によって計算されます。
以下の表にに、代表的なサービスであるAmazon EC2とAmazon S3の料金構成をまとめました。
サービス名 | 主な料金構成要素 | 具体例 |
---|---|---|
Amazon EC2 |
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|
Amazon S3 |
|
|
Amazon EC2の料金は、インスタンスの性能を示す「インスタンスタイプ」によって大きく異なります。インスタンスタイプはCPUやメモリの構成によって分類されており、利用するアプリケーションや処理内容に最適なタイプを選ぶことがコスト効率の鍵でしょう。
一方で、Amazon S3はデータ保存容量が料金の中心ですが、データへのアクセス頻度が高い場合にはリクエスト数が追加コストとして発生します。このため、利用用途に応じて適切なストレージクラスを選択することが重要です。
仕組み③データ転送やストレージの追加コスト
AWSでは、データ転送やストレージ利用に関連する追加コストが発生する場合があります。例えば、AWS内のデータセンター間でのデータ転送は無料ですが、AWSからインターネットに送信されるデータには料金が発生します。
データ転送の料金例は、以下の通りです
- 最初の100GB/月:無料
- 次の9.999TB/月:0.09 USD/GB
- 次の40TB/月:0.085 USD/GB
Amazon S3の標準ストレージの料金例は以下の通りです
- 最初の50TB/月: 0.023 USD/GB
- 次の450TB/月: 0.022 USD/GB
これらの追加コストを抑えるには、データの利用頻度に応じてストレージクラスを変更したり、頻繁にアクセスするデータをクラウド内に集約するなどの工夫が有効です。
AWSコストを見積もる方法
AWSの利用料金を正確に把握するためには、公式の「AWS Pricing Calculator」を活用するのが効果的です。
このツールは、AWSで利用するサービスの構成や使用条件を入力することで、簡単にコストを試算できます。
例えば、仮想サーバー「Amazon EC2」の場合、インスタンスタイプや使用時間、ストレージ容量、データ転送量を細かく設定することで月額料金が算出されます。また、ストレージサービス「Amazon S3」では、保存データ容量やアクセス頻度を基に料金を計算可能です。
見積もり時には、利用するAWSリージョンやデータ転送量などの要素を考慮することが重要です。特に東京リージョンなど、地域によって料金が異なる点には注意が必要でしょう。さらに、リソースの使用頻度や目的に応じて、必要最低限の構成を選択することで、コストの無駄を防ぐことができます。
AWS初心者の方には、下記の記事に導入手順などをまとめたので、ぜひ読んでください。
AWSコストを削減するための方法
AWSは、使用した分だけ支払う従量課金制を採用していますが、利用状況に応じて無駄なコストが発生することもあります。適切な運用やツールの活用により、コストを効率的に削減することが可能です。
この章では、AWSコスト削減に役立つ手法を探っていきましょう。
方法①未使用リソースの削除
AWSの利用が進むと、不要なリソースが意図せず残ることがあります。
例えば、開発やテスト環境で一時的に使用したインスタンスやストレージが稼働し続けているケースです。未使用リソースには継続的に料金が発生し、知らないうちに高額な請求につながることがあります。
定期的にリソース状況を確認し、不要なリソースは停止または削除することで、無駄な支出を防ぎましょう。AWSの「Trusted Advisor」や「Cost Explorer」などのツールを活用することで、未使用リソースを簡単に特定できます。
方法②リザーブドインスタンスやSavings Plansの活用
AWSでは、リザーブドインスタンスやSavings Plansを利用することで、長期利用を前提とした割引を受けられます。
リザーブドインスタンスは、インスタンスタイプを1年または3年単位で契約し、オンデマンド料金よりも最大72%の割引を実現します。
一方、Savings Plansは、利用量に応じた柔軟な割引プランで、異なるインスタンス間でも割引を適用できるのが特徴です。これらを適切に活用することで、継続的に発生するコストを大幅に削減できます。
方法③Auto Scalingとスポットインスタンスの活用
リソースを効率的に運用するには、Auto Scalingやスポットインスタンスを活用する方法も有効です。
Auto Scalingは、需要に応じてインスタンスの台数を自動的に増減させる仕組みで、過剰なリソースの使用を防ぎます。また、スポットインスタンスは、AWSの余剰リソースを大幅に割引された価格で利用できる仕組みです。
一時的なタスクやバックグラウンドジョブなどに最適なコスト削減が可能でしょう。
ただし、スポットインスタンスは他のユーザーによる需要で停止する可能性があるため、用途を選ぶ必要があります。
コスト管理を効率化するツールと手法
AWSの利用を最適化し、コスト削減を継続的に行うためには、適切なツールと手法を活用した効率的な管理が欠かせません。AWSは、コストを可視化したり、リソースを適切に配分したりするための専用ツールや機能を提供しています。
ここでは、コスト管理を効率化するための具体的な方法として、AWS Cost Explorer、コスト配分タグ、AWS Organizationsの活用について解説します。
手法①AWS Cost Explorerによる可視化
AWS Cost Explorerは、コストを視覚的に把握し、利用状況を分析するためのツールです。
ツールを使用することで、サービスごとのコストや月次の利用傾向をグラフや表で確認できます。また、特定のプロジェクトや期間における詳細なコスト分析も可能です。
例えば、急激に増加しているコストを特定し、原因となるサービスやリソースを突き止めることができるでしょう。さらに、予算を設定してしきい値を超えた場合にアラートを受け取ることで、迅速な対応も可能です。
手法②コスト配分タグの利用
AWSでは、リソースに「タグ」を付けることで、コストの配分を詳細に追跡できます。
タグは、プロジェクト名や部門、用途などをリソースに紐付けるラベルのようなもので、Cost Explorerやレポート機能と連携して使用することで、どのプロジェクトやチームがどれだけのコストを消費しているかを明確にできます。そのため、無駄なリソースや過剰なコストが発生している部門を特定し、改善のための具体的なアクションを取ることが可能でしょう。
タグを組織的に管理し、統一した命名規則を適用することで、コストの可視化と配分管理がより効果的になります。
手法③AWS Organizationsを活用したアカウント管理
複数のAWSアカウントを運用している場合、AWS Organizationsを活用することでコスト管理がさらに効率化されます。
AWS Organizationsは、複数のアカウントを一元管理できるサービスで、統合請求やアクセス制御を簡単に実現できます。統合請求を利用することで、すべてのアカウントの利用料金をまとめて確認できるため、全体のコストを把握しやすくなるでしょう。
また、組織単位でポリシーを設定し、特定のアカウントやリソースの利用を制限することで、無駄な支出を抑えることも可能です。
AWSのツールについて知りたい方は、下記をご覧ください。
持続可能なAWSコスト管理のために
AWSの利用におけるコスト管理は、短期的な削減施策だけではなく、継続的な取り組みが重要です。
ここでは、AWSコスト管理を長期的に成功させるための方法を見ていきましょう。
モニタリングとアラート設定の重要性
AWSでは、コスト管理を効率化するために、モニタリングツールやアラート機能を活用することが推奨されています。
例えば、「AWS CloudWatch」を使えば、リソースの利用状況やパフォーマンス指標をリアルタイムで監視できます。また、「AWS Budgets」を利用することで、予算を設定し、コストが上限に近づいた際にアラートを受け取ることが可能です。
問題が発生する前に対応することができ、予期せぬ高額請求を防ぐことができるでしょう。継続的なモニタリングとアラート設定は、AWSの利用コストを適切に管理するための基盤となるのです。
社内でのコスト意識向上の取り組み
持続可能なAWSコスト管理を実現するためには、組織全体でコスト意識を高める取り組みが欠かせません。利用部門や担当者がAWSコストに対する知識を持ち、日常的にコスト削減を意識できる環境を整えることが重要です。
以下の表に、社内で実践可能な取り組みをまとめました。
取り組み内容 | 具体例 | 期待される効果 |
---|---|---|
コスト管理に関するトレーニング | AWS Cost Explorerの使い方やコスト削減手法を学ぶワークショップを実施 | 担当者がコスト管理ツールを効果的に活用し、無駄を発見・削減できる |
定期的なコストレビュー | 各プロジェクトごとに月次で利用料金を確認し、リソースの適正化を議論する | プロジェクトごとの過剰利用を防止し、予算の透明性を確保 |
社内コスト意識向上キャンペーン | コスト削減成果を社内で共有し、貢献度の高いチームや個人を表彰する | コスト削減に対するモチベーションを高め、全体の意識向上を図る |
こうした取り組みによって、AWSコスト管理はIT部門だけの課題ではなく、全社的な取り組みとして認識されるようになるでしょう。社内での共有や啓発を通じて、全員が効率的なリソース利用を意識することが可能です。
AWSを効率的かつ経済的に活用しよう
この記事では、AWSの料金体系の仕組みや従量課金制の特徴、コスト削減の具体的な方法、さらには効率的な管理ツールの活用法について学びました。知識を活用すれば、AWSを経済的かつ効率的に運用するための基盤を築くことができるでしょう。
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