Amazonが運営・提供するクラウドサービス「AWS」には機械学習サービスも含まれており、自由に実行することが可能です。今回の記事では、AWSの機械学習サービスを一覧で紹介すると同時に、機械学習の実行にAWSを選ぶメリットや最大限に活用するコツ、また活用にあたっておすすめしたい資格などを紹介します。
高い利便性をもつAWSなら、機械学習を手軽かつ柔軟に有効活用できるので、ぜひご一読のうえ、機械学習の導入にお役立てください。
そもそも機械学習とは?
機械学習とは、「コンピューターの自動学習を実現する技術」のことを指します。
具体的にはコンピューターに膨大な量のデータを読み込ませることで、人間が命令を出さなくてもコンピューターが自動で分析や学習を行ってくれます。そして、機械学習を実行するたびに、コンピューターが自発的に精度を向上していくことも大きな特徴です。
いまや機械学習は音声入力や自動運転など、公私共に幅広いシーンで活用されています。なお、機械学習については以下の記事が参考になるので、詳しく知りたい方はご一読ください。
AWSの機械学習サービスは主に2種類
AWSの機械学習サービスは、主に以下の2種類に分けられています。
- 誰でも手軽にAIを活用できる「AIサービス」
- エンジニアが本格的なAIを開発できる「MLサービス」
この章では、上記それぞれのサービス内容を一覧表でご紹介します。
①:誰でも手軽にAIを活用できる「AIサービス」
AWSの「AIサービス」は、あらかじめAmazonが独自に膨大なデータを読み込ませ、すでに学習を行わせた状態でリリースされているのが特徴です。必要に応じて任意のデータを追加するだけでAIが使えるようになることから、機械学習初心者にも簡単に利用できます。
AWSのAIサービスの種類は以下のように多岐にわたるので、自社の職種・目的と照らし合わせて選ぶことが大切です。
分野 | サービス名称 | 内容 |
コンピュータビジョン | Amazon Rekognition | 画像や動画の解析を行える |
Amazon Lookout for Vision | エラー検知および検査自動化を行える | |
Amazon Panorama | 一般的なのネットワークカメラを、スマート監視カメラにアップデートできる | |
データ抽出と分析の自動化 | Amazon Textract | 膨大な量のドキュメントから有益な情報を抽出できる |
Amazon Comprehend | テキストから関係性やパターン、傾向を発見するための自動言語処理(NLP)が可能 | |
Amazon A2I | レビューで役立つワークフロー構築を簡略化する | |
言語 AI | Amazon Lex | 音声およびテキストをもとに、アプリ上に会話型インターフェースを構築できる |
Amazon Transcribe | 聞き取った音声をもとに、文字起こしを自動で行ってくれる | |
Amazon Polly | ディープラーニング技術を駆使し、人間の声に近い音声を合成できる | |
カスタマーエクスペリエンスの向上 | Amazon Kendra | あらゆるデータソースの広範囲な検索を実現する |
Amazon Personalize | 個々のユーザー向けに、リコメンデーションのリアルタイム提供を実現する | |
Amazon Translate | リアルタイム翻訳が実現可能な | |
ビジネスメトリクス | Amazon Forecast | 時系列予測をより正確な精度で提供する |
Amazon Fraud Detector | オンラインにおける不正上位を、自動的に識別・検出する | |
Amazon Lookout for Metrics | 時系列データの異常検出、および原因抽出を行う | |
コードと DevOps | Amazon DevOps Guru | 運用パフォーマンスの測定を簡略化し、アプリのダウンタイム削減を実現する |
Amazon CodeGuru Reviewer | ソースコードの不具合や、推奨の記述法との適合性を判断する | |
Amazon CidiGuru Profiler | アプリのパフォーマンスを最適化する | |
産業向け AI | Amazon Lookout for Equipment | システムの異常動作を検出するモニタリングが実現可能 |
Amazon Monitron | システムの異常検出および予知保全を実現する | |
ヘルスケア | Amazon Healthlake | 健康情報の保管・転送・検索・分析をより安全に行える |
Amazon Comprehend Medical | データベース化できないデータから、医療情報を抽出する |
②:エンジニアが本格的なAIを開発できる「MLサービス」
AWSの「MLサービス」は誰でも簡単に実装できるAIサービスとは異なり、機械学習を開発するエンジニアなど、専門的な知識をもつ方向けとなっているのが特徴です。全部で15種類のサービスが顔を揃えていますが、いずれも「開発者の作業効率化」を目的にしたサービス内容となっています。
サービス名称 | 内容 |
Amazon SageMaker | 多種多様なユースケース向けの機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイが行える |
Amazon SageMaker Canvas | 機械学習による正確な予測をノーコードで実装できる |
Amazon SageMaker Data Labeling | 画像や動画ファイルから、トレーニング用の高品質なデータセットを作成できる |
Amazon SageMaker Data Wrangler | データの品質を自動的検証し、異常検出に役立つデータ品質とインサイトレポートを提供 |
Amazon SageMaker Feature Store | 機械学習モデルの特徴量の保存や共有ができる |
Amazon SageMaker Studio Lab | 無料の機械学習開発環境で、誰でも機械学習を実験できるようにする |
Amazon SageMaker Studio | 統合開発環境としてデータセットや構築、トレーニング、デプロイなど、機械学習の開発に必要なフローをひととおり行える |
Amazon SageMaker Pipelines | 機械学習向けの専用CI/CDサービス |
Amazon SageMaker Debugger | トレーニングエラーの自動的検出、修正警告を行ってくれる |
分散トレーニングライブラリ | 分散トレーニングを最大40%早く開放してくれる |
Amazon SageMaker Model Monitor | 機械学習モデルを長期にわたって正常にに保つことができる |
Amazon SageMaker Autopilot | 機械学習モデル構築などの自動化、ワークフロー簡素化を行える |
Amazon SageMaker JumpStart | アーキテクチャのデプロイをワンクリック化、アプリのデプロイの簡略化ができる |
Amazon SageMaker Edge | エッジデバイスでの機械学習の取り扱いを実現する |
Amazon SageMaker Clarify | トレーニングされたデータとモデル予測のバイアスを検出できる |
機械学習をAWSで実行するメリット
この章では、機械学習をAWSで実行するメリットを解説します。
初期費用が安く抑えられる
一般的に機械学習の開発や実行には、高度なコンピューターやサーバーが必要になるため、初期投資をはじめ大きなコストがかかってしまうものです。
その点AWSは従量課金制なので、使った分だけコストがかかります。月額制のような継続的な支払いが不要で、気軽に機械学習を始めることが可能な点は大きなメリットといえます。
機械学習実行に必要な環境が整っている
本来、機械学習を実行するためには、膨大な量のデータが必要です。そして膨大なデータを扱うためには、十分なスペックの機材を用意し、適切な管理をすることが求められます。
AWSは大量のデータをリアルタイムで取得できるうえ、そのデータを安全に保存・管理・加工できるサービスが充実しています。そのため「機械学習実装への最初の一歩」を踏み出すまでのハードルが極限まで低くなっているのも、機械学習初心者にとって嬉しいポイントです。
変更や連携などに柔軟に対応できる
一般的に機械学習を導入・実行する際は、実行環境などに縛りがあったり、サービスの連携などには複雑なプロセスが必要です。
その点AWSでは、各々の環境に沿ったシステムを実行できる体制が整っているうえ、変更にも容易かつ柔軟に対応できることが大きな特徴といえます。また世界中につながっているデータセンターから、最新情報や技術動向をリアルタイムで習得できる点も、AWSならではのメリットです。
AWSでの機械学習を最大限に活用するポイント
AWSで機械学習を最大限に活用するには、いくつかのポイントを把握しておくことが重要です。この章では、そのポイントを3つに絞ってご紹介します。
AWSの参考書を用いて体系的に学ぶ
AWSの「AIサービス」は、初学者でも比較的かんたんに使えることは事実ですが、初めて実装する方にとってすこし難しい部分もあります。そのため、AWSについての最低限の学習は不可欠です。現代ではAWSは国内でも一般的に使われているクラウドサービスのため、書籍の種類も豊富なうえ、書店などに足を運べばかんたんに手に入ります。
AI以前にはじめてAWSに触れる方は、必要になる部分を書籍でサラッと学習するほうが、効率はいいでしょう。
AWS公式のチュートリアルや教材を活用する
AWSは、公式でチュートリアルや教材を公開しています。チュートリアルではサービスや分野ごとにトピックが細かく分かれているため、各々で実装したいサービスを選んで、使い方を学ぶことが可能です。
さらにAWSではチュートリアルの他に「ラーニングプラン」という形式で教材を提供しています。チュートリアルは使い方などの基本的な知識を学べる一方、ラーニングプランではより応用的な知識を学べるため、機械学習の実装はもちろんキャリアアップを狙う方におすすめです。
なお、公式ではありませんが、AWSの機械学習については以下の動画も参考になります。
AWS関連資格に挑戦する
AWS関連の資格に挑戦することも、有効活用のコツと言えるでしょう。AWS関連の資格取得のために勉強することで、使い方はもちろんロジックや応用的な活用法まで、幅広く学ぶことができるからです。
AWSの資格は全部で11種類と多岐にわたりますが、機械学習を実装するなら次章で紹介する資格「AWS Certified Machine Learning – Specialty」と「AWS Certified DevOps Engineer – Professional」がおすすめとなります。
機械学習で役立つAWS関連資格
ここでは、AWSで機械学習に触れる際、とくにおすすめの資格を2つご紹介します。
AWS Certified Machine Learning – Specialty
「AWS Certified Machine Learning – Specialty」は、AWSの機械学習に関する知見の証明となる資格です。具体的には、AWSの機械学習の基礎、分析、モデル構築などの分野からの出題が多くなっています。
AWSの資格の4つのランク(Foundational・Associate・Professional・Specialty)の中でももっとも上のランクに位置する資格で、難易度が高いため十分な学習が必要になります。
AWS Certified DevOps Engineer – Professional
「AWS Certified DevOps Engineer – Professional」は、機械学習よりもエンジニアとしての知識を証明できる資格です。具体的には、アジャイル開発におけるインフラ構築および運用、テストとデプロイの自動化などが出題範囲となります。
機械学習エンジニアとしてAWSの「MLサービス」を扱うなら、覚えておきたい知識が盛りだくさんなので、ぜひ挑戦したい資格です。
AWSの機械学習サービス一覧まとめ
ここまで、AWSの機械学習サービス一覧、活用のメリットやポイント、おすすめ資格を紹介しました。AWSを使うと、従来のやり方よりも圧倒的にかんたん、かつコストを抑えた機械学習の実装が可能になります。
とくに、これからはじめて機械学習に触れる方なら、初心者向けの「AIサービス」がおすすめです。それだけでなくAWSは、開発者や玄人向けの「MLサービス」も設けているので、さまざまなユーザーのあらゆる用途で重宝するのは間違いありません。