AIが急激な進化と成長を遂げ、ビジネスや私生活においてすっかり浸透しつつある昨今「代三次AIブーム」としてテレビやインターネットをはじめとするメディアでAIが取り上げられる機会が増えています。
そんな中で「機械学習モデル」という言葉を耳にしたことがあるものの、いまいち理解していない方は多いでしょう。
今回の記事は機械学習モデルにフォーカスを当てた内容です。またその代表例やトレーニングの概念、作成フローもわかりやすく紹介しますのでぜひ参考にしてください。
機械学習モデルとは?
機械学習モデルとはAIシステムの心臓部のような存在で、入力データに対する回答を出力するプログラムのことです。
たとえるなら「自動販売機および洗濯機の本体そのもの」のような認識でいいでしょう。自動販売機はお金を受け取り飲み物を返します。そして洗濯機は汚れた服を受け取り、きれいな服を返します。
これとおなじで機械学習モデルも、通常「データを入力→モデルで処理→ユーザーが求める答えを出力」の順で処理が行われています。
そのため「モデル」と聞いたら、機械学習プログラムそのものをイメージしておけば間違いはありません。
機械学習モデルの代表的な例
機械学習の代表的なモデルには、「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3種類があります。この章では、3つそれぞれの特徴や具体例をご紹介します。
特徴 | 代表例 | |
教師あり学習 | 正解データ(教師)をあらかじめ学習させておく手法。 その正解データをもとに、入力データが正解か否か判断する。 | 不良品検知システム 自動運転技術 |
教師なし学習 | 正解データ(教師)を学習させない手法で、コンピューターに与えるのは入力データのみ。 | SNSのレコメンド機能 |
強化学習 | データを活用せず、あらかじめ用意された環境で最善の結果を求める手法。 AI自身が試行錯誤を繰り返し、もっとも高い報酬が得られる結果を目指す。 | 将棋ロボット |
教師あり学習
教師あり学習は「いくつかのパターンの正解データを読み込ませておき、入力した値が正解か否か」を判断する手法です。
代表例となるのが、製造業界で用いられる不良品検知システムです。たとえば正常な製品の形状や形を読み込ませ、合わなければ不良品となります。
なお、教師あり学習の名称の由来は、正解データを「教師」にたとえているためです。
教師なし学習
教師あり学習とは逆で「正解データをはじめに読み込ませない学習手法」です。主に正解がないシステムに用いられます。
代表例になるのがレコメンド機能です。レコメンド機能とはYouTubeやX(旧Twitter)で用いられているような、ユーザーの興味や嗜好を分析してそれに沿ったコンテンツを表示させる機能です。
人それぞれ趣味嗜好はさまざまで正解がないため、入力データのみを与えて分析・提案を任せています。
強化学習
強化学習も正解データを与えず特定の状況で経験を蓄積させ、それをデータとして活用する学習方法となります。
具体例としては、強化学習は将棋ロボットにも活用されます。経験に基づいてパターンを分析して最善の一手を出し「勝利」という利益・報酬を目指しています。
なお、強化学習についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
機械学習におけるモデルのトレーニングとは?
機械学習のモデルについて学習していると「トレーニング」という言葉が出てきます。トレーニングとは、機械学習モデル作成における「継続的な再学習」のことです。
より専門的な言い方をすると「機械学習アルゴリズムを実施して、ネットワークの最適化図ること」。これにより、モデルは新たなルールをデータ構造を得る事ができます。
よく混同される言葉に「学習」がありますが、それぞれ少しずつ意味は異なります。学習とは「機械学習アルゴリズムを実施して、ネットワークモデルの構築を行うこと」です。
また人工知能(AI)のトレーニングについては以下の記事も参考になりますので、興味のある方はぜひご一読ください。
機械学習モデルの作成フロー
機械学習モデルを作成する場合、一般的には以下のような流れで進めていくことになります。
- データを収集する
- データを加工する
- AIモデルを構築する
- 継続的な再学習を行う
それぞれ、順を追って解説します。
手順①データを収集する
機械学習モデル作成における第一ステップは、データ収集です。問題の定義や解決すべき課題に基づいて必要なデータを収集します。
当然AIがまったく知識をもたない状態からのスタートとなるので、根気強く膨大なデータを取り込んで学習を積み上げていかなければなりません。
データはさまざまなソースから取得できるものの、ただ単に学習で数を打てばいいという話ではありません。曖昧だったり誤った情報などを学習させると、モデルの精度にも影響が出てしまうためです。
品質と量に注意を払いつつ、収集と学習を行わせましょう。
手順②データを加工する
データの収集・学習がひととおり終わったら、次に「それらのデータの加工」フェーズに入ります。データの加工とはわかりやすくいうと、さまざまな形式のデータに対して「タグ付け作業」を行うようなイメージで問題ないでしょう。
タグが付いたデータをもとにアルゴリズムを学習していくからこそ、AIははじめて精度の高い処理が可能になります。逆にタグがなければ、著しく精度の低いAIシステムができ上がってしまうのです。
なお、このタグ付け作業は、一般的に「アノテーション」という名称で呼ばれています。
手順③AIモデルを構築する
必要データの収集、データ加工(アノテーション)が終了したら、第三ステップとして「実際にAIモデルを構築していくフェーズ」に入ります。
ひとえにモデル構築といっても画像認識に特化したものや音声認識を得意とするものなど、モデルの種類はじつに多種多様。そのため、目的意識をもって最適なものを選ぶことが重要になります。
手順④継続的な再学習を行う
AIモデルは決して、完成させることがゴールではありません。AIモデル構築後も、継続的な再学習を行っていく必要があります。
完成後も世の中の常識やトレンドは絶え間なく変化していくことから、放置すればモデルの精度が落ちてしまうからです。
運用していくうえでユーザーデータを分析のうえ、どのような部分にニーズがあり逆にどの部分を削っていいかを見極め、アップデートしていくことが大切です。
なお前章で紹介した「モデルのトレーニング」も、主にこのフェーズで行うことになります。
機械学習モデルを選ぶ際に注目すべきポイント
機械学習モデルを選ぶ際、注目しておきたいポイントは主に以下の3つです。
- 素早い計算処理ができるか
- 出力結果がわかりやすく表示されるか
- 予測の精度は高いか
それぞれ、順を追って解説します。
ポイント①素早い計算処理ができるか
機械学習モデルを選択する際は、計算処理の速さには着目したいところです。とくに大規模なデータセットや高度なモデルを使用する場合、計算処理の速さはトレーニングや推論の効率に直結します。
素早い計算に役立つ手法として「主成分分析」や「ナイーブベイズ」が挙げられます。またモデルの複雑さやパラメータ数も計算処理に影響を与えるため、選択するモデルが実行可能な範囲内であることの確認も重要です。
ポイント②出力結果がわかりやすく表示されるか
「出力の結果がわかりやすく表示されるか」にも注目しましょう。いくらハイスペックなAIが自動生成した結果でも、最終的にそれを見て良し悪しを判断するのは人間であることに変わりはありません。
出力結果が直感的かつ解釈が容易であれば、モデルの性能や挙動を把握しやすくなります。また回帰タスクの場合も、予測結果と実測値の比較が容易な形式で表示されるほど、モデルの性能を評価しやすくなるものです。
またモデル開発においては、誤った回答に対し「どんなロジックで、なぜこの結果が出たのか」が明確にたどれると非常に使い勝手がいいといえます。
ポイント③予測の精度は高いか
言わずもがな「予測の精度の高さ」は、モデルのもっとも重要な要素になります。
シンプルに精度が高いほど信頼が生まれてより使いたくなりますが、逆に精度が低ければ信頼はなくなってしまうためです。モデルを選ぶ際はまず「精度」最優先で選べば、大きな失敗は防げるでしょう。
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セミナーを受講すれば機械学習モデルを選ぶ際にも専門的な知識に基づいた選び方ができるようになり、より正確な見極めが可能になるでしょう。基礎から実装まで短期間で学びたい方は、ぜひご検討ください。
機械学習におけるモデルとアルゴリズムの違いは?
アルゴリズムは「モデルを学習させるための手順や考え方」のこと。一方モデルは「入力データに対する答えを出力するプログラムそのもの」です。
アルゴリズムはどんな優れたシステムやプログラムにも必ず必要になるものです。たとえば本記事で紹介している機械学習モデルも、一般的に「入力→モデルの内での処理→出力」の順で処理されますが、モデル内での処理のフェーズはアルゴリズムがもとになっています。
機械学習モデルまとめ
機械学習モデルとはAIシステムの心臓部のような存在で、入力データを受け取って処理を行い、回答を出力するプログラムのことです。具体例として主に「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3種類があります。
「機械学習モデル」と聞いたら、プログラムそのものや内部をイメージしていただければいいでしょう。
また機械学習モデルを選ぶ際は高い精度で素早い計算処理ができるか、また出力結果がわかりやすく表示されるかに着目することが大切です。