監視カメラ動画をAIでリアルタイムに分析するモニタリングソリューションをご紹介!

こんにちは!AI研究所の石川です。
本日のtopicは、AIによる3次元空間認識技術とIoTプラットフォームを活用した、モニタリングソリューションのプロトタイプをご紹介します。

SREホールディングス株式会社(以下SRE HD)およびSRE AI Partners株式会社(以下SRE AIP )とソニーネットワークコミュニケーションズスマートプラットフォーム株式会社(以下SNCSP)は、3次元空間認識技術とIoTプラットフォームを活用し、監視/見守りにおいてデータ通信量を1/100以下に削減しながら、性能も向上させられるモニタリングソリューションのプロトタイプを開発しました。

開発背景

実環境におけるAIとIoTを組み合わせたDXソリューションが台頭し広がりを見せる中、不動産事業およびAIソリューションを展開するSRE HD及びSRE AIPと、IoT回線プラットフォームMEEQを展開するSNCSP は、実環境におけるデータ収集と収集データに基づく実環境へのAIサービス展開に向けて、2020年8月に戦略的提携を行い、それぞれの技術/サービスの開発や拡充を進めるとともに共同でのソリューション創出に取り組んできました。
実環境へのIoTの展開とAIサービスの提供においては、データ通信量の増大が課題の一つとして挙げられ、とくに監視/見守り領域においてはネットワークカメラを監視カメラに用いる際、膨大な容量の映像データが通信回線をひっ迫することが、これまで導入の障壁となっていました。
こうした中、3社は上記課題の解決に向けた概念実証(PoC)に取り組み、この度、映像から3次元空間情報を抽出し、映像そのものの通信を行うことなく、分析に活用できるデータのみをクラウド上のサーバに送信するソフトウェアのプロトタイプを開発しました。

「モニタリングソリューション」概要

まず、RE HD及びSRE AIPのAIソリューションにおいては、これまで様々な領域におけるデータ分析ソリューションを展開してきましたが、さらなる業種/場面における応用を見据え、コンピュータービジョン分野の技術開発を進めています。今回、自律ロボットなどに使われる画像情報を入力として位置特定と地図作成を同時に行う技術である、Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を活用した3次元空間認識技術を開発しました。
そして、SNCSPのIoT回線プラットフォームに関しては、「MEEQ(ミーク)」というIoT事業者向けの回線およびその管理プラットフォームがあり、IoT事業で使いやすいSIMから、デバイスから上がってくるデータの蓄積・処理サービスまで、ワンストップで提供していきます。

本ソフトウェアは、以下の処理を実行することで、入手容易な小型端末で実行可能な3次元空間認識を実現します。
1.   ステレオカメラまたは深度センサーを用いることで、入力映像から3次元空間情報を取得し、細かいキューブで構成される3次元空間マップを生成する。(図1)
2.   3次元空間マップの変化から動的物体の場所を特定する。
3.   構成した3次元空間マップの差分を抽出しクラスタリング、ノイズ除去処理を行うことで動的物体を個体ごとに検出する。
4.   検出された各動的物体の3次元空間上の体積、位置、速度等を観測する。

図1. (a)従来の監視映像ではデータ量が膨大であり、奥行きの測定は困難  (b)また、3次元空間マップを 生成することで、データ量を削減しながら人物(赤い領域)と入口の距離や大きさの関係を把握

「モニタリングソリューション」特長

これまで、監視カメラの映像全てをクラウド上に保存することは、膨大な通信コストを要するため現実的ではありませんでした。本ソリューションでは、AIが映像から必要な情報のみを抽出するため、全ての映像を送る必要がなくなり、通信量を1/100以下に削減できます。例えば、監視カメラ側のAIが検知を行い、侵入者などの異常が観測された一定時間のみ映像を送ることが可能です。この際、MEEQを用いることで、多数あるIoTカメラで観測された映像や抽出された3次元空間情報などのデータを安全に集約し管理できます。

メリットについて

以下の利点により、物体認識などの従来型の画像認識AIを用いた監視ソリューションと比べ、監視/見守りの利便性を向上させることが可能です。

1. 夜間の監視でも性能が劣化しません。AIを用いた監視では、夜間は赤外線・高感度カメラを利用する場合が多く、侵入者などの特定の動的物体を検知するAIの性能が、日中に比べ劣化することが一般的でした。しかし、本技術では暗所でも情報を取得できる深度センサーで取得可能な3次元空間情報を基に動的物体を検知しているため、夜間も監視を行うことが可能です。

2. 高価な専用機器を必要としません。従来型のリアルタイム物体認識AIと比べ、必要とする計算量を90%以上削減できるため、入手容易な小型端末を利用できます。こうした端末は片手で持ち運ぶことができ、扱いが容易です。導入にかかる費用/手間を抑えながらも、リアルタイムで動物体情報を認識します。

3. AIの学習データの準備が不要なため、容易にAI監視カメラを導入できます。従来の画像情報を用いた機械学習では、人間や動物、車などの動的物体を画像から検知するために、対象の学習データの準備が必要ですが、本技術では監視場面と体積の情報を活用することで、学習データなしに動的物体を検知することが可能です。

今後の展望

監視/見守り用途においては、ショッピングモールや病院、工場などの不動産施設のモニタリングのほか、介護施設や在宅介護での見守り等への活用を推進していきます。
物流業界においては、倉庫やトラック荷台の充填率を測定することで、業務支援にも活用可能です。従来のRFIDタグを用いた管理では、庫内にある在庫の種類と体積はわかるものの、どのように配置されているかを補足することは困難でした。本技術により庫内の空き空間等の3次元空間情報をリアルタイムで検知することが可能となります。
3社は、本プロトタイプのプロダクト化に向けたさらなる機能拡充を進め、幅広い産業における監視/見守りのデジタルトランスフォーメーション(DX)に貢献していく方針です。

 

AIによる3次元空間認識技術とIoTプラットフォームを活用した、監視/見守りにおいて従来の1/100以下の通信量で性能向上を実現する、モニタリングソリューションのプロトタイプに注目です!

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