【2025】DX成功事例を34社紹介!業界別・中小企業・海外の成功戦略を徹底分析

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」。

この言葉は、今DXを進めなければ、2025年以降、最大で年間12兆円もの経済損失が日本全体に及ぶ可能性があるという深刻な問題を示唆しています。つまり、DXはもはや先送りできない、企業の存続を左右する喫緊の課題なのです。

そこで本記事では、DXの成功事例を業界別に34社ご紹介します。さらに、中小企業や海外での成功事例も取り上げ、それぞれの戦略や取り組みを徹底分析しました。「本気でDXに取り組みたい」とお考えの経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

DXとは?

DXとは、データとデジタル技術を使って、ビジネスモデルや働き方を根底から変革する全社的な取り組みです。

業務効率化や新技術の導入に留まらず、企業が抱える課題解決や顧客の潜在ニーズに応え、「今までになかった良いこと」を創出することを目指します。

なぜDXが注目されるのか

なぜ今、DXがこれほど注目されているのでしょうか。その背景には、大きく分けて3つの流れがあります。

①ビジネスを取り巻く環境が大きく変化

スマートフォンやパソコンが普及し、インターネットが社会インフラとなった現代において、顧客との接点や競争の場はデジタル空間へと移行しました。

この変化に対応し、デジタル技術を駆使して新たな価値を生み出す企業が、市場で優位性を確立しています。デジタル技術を基盤とする新興企業が台頭し、既存の勢力図を塗り替える動きが加速する中、企業の生き残り戦略としてDX化に注目が集まっています。

②既存ITシステムの老朽化問題

経済産業省も指摘するように、長年にわたり改修を重ねてきたシステムは複雑化し、担当者が不在となるなどブラックボックス化しているケースも少なくありません。

このようなレガシーシステムは、保守・運用コストの増大を招き、2025年以降に国内で巨額の経済損失が生じる可能性も指摘されるなど、DX化の推進に拍車をかける一因となっています。

③労働人口の減少

少子高齢化の影響で、深刻な人手不足が進んでいます。これにより、人手を増やして成長を目指す従来の「労働集約型」のビジネスモデルには限界が見えはじめてきました。

今後も経済成長を維持していくには、一人当たりの生産性を高めることが欠かせません。その手段として、デジタル技術の活用による業務の効率化、付加価値の高いサービスの創出を支えるDXに注目が集まっています。

DXの誤解

DXのよくある誤解として、「アナログなものをデジタルにする=DX」という考えがあります。しかし、それはDXのプロセスにおける一つの手段(デジタル化)に過ぎません。DXの定義は広範であるため、正しく理解していない企業の担当者が多いのも事実です。

例えば、「御社で進めるDXの内容は?」という質問に対して、「書類を全部スキャンしてデジタル化しています」と回答した場合、それだけでは不十分といえるでしょう。

つまり、この回答はDXの一つの手法を実践しているだけで、DXの本質的な取り組みである「ビジネスの在り方そのものの変革」を実現していないのです。

DX人材育成に最適!企業向けDX・AI人材育成研修サービス

真のDXを推進し、ビジネスを変革していくためには、それを担う人材育成が必須です。

企業向けDX・AI人材育成研修サービスは、短期研修から中長期プランまで、御社に最適な人材育成を提案しています。ビジネス創出力、DX活用技術、専門技術を、組織の段階や部署に応じて最適に育成し、DX実現に向けた企業のトータルサポートを行うサービスです。

DX化を推進・導入するDXエンジニアについては以下の記事で解説しています。DXエンジニアの必要性、企業での育成方法について解説しているので、DXを内製化したい企業の担当者の方はぜひご一読ください。

業界別のDX成功事例

業界別のDX成功事例

ここでは、経済産業庁が選定した「DX銘柄 2025」(日本の産業界におけるDXの模範的企業)の31社を取り上げ、その成功事例を業種ごとに区分し表形式でお伝えします。

なお、DX銘柄の業種区分は、「東証業種分類」を基準にしています。

  1. 陸運業・海運業
  2. 情報・通信業
  3. 建設業・不動産業
  4. 食料品・繊維製品
  5. 化学・医薬品
  6. 石油/石炭製品・ゴム製品・ガラス/土石製品
  7. 鉄鋼・機械
  8. 電気機器
  9. 輸送用機器
  10. 小売業・サービス業・その他製品
  11. 倉庫・運輸関連業・卸売り
  12. 銀行業・その他金融業

①陸運業・海運業

陸運業では、佐川急便で有名なSGホールディングス、「曳船DXプロジェクト」で人材不足解消を目指す日本郵船がDX銘柄に選出されました。

SGホールディングスは、今回2社選出されたDX銘柄グランプリ企業のひとつであり、DX成功事例の最たる企業といえるでしょう。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
SGホールディングス
  • 物流業界全体の複雑化と競争激化

  • グローバル対応・越境ECへの対応

  • レガシーシステムと技術的負債

  • 労働力不足による人的業務負荷

  • 他企業との連携

  • 内製開発

  • アジャイル強化

  • 採算管理と適正運賃の実現
  • 人手不足への対応と生産性向上
  • データ連携による物流最適化
日本郵船
  • 労務管理の煩雑さ(手当の多様性、不規則な勤務時間)
  • 点検記録の紙管理による情報共有の遅れ
  • 労務管理のアプリ化
  • 紙帳票の電子化・クラウド化
  • 労務データ共有迅速化
  • 作業負担の軽減
  • 配乗管理・育成にDX展開予定

参照:SGホールディングス日本郵船

②情報・通信業

情報通信業から選ばれたDX銘柄は、大手電気通信事業社・ソフトバンク株式会社、「au」ブランドで知られるKDDI株式会社の2社でした。

ソフトバンク株式会社はDXグランプリ企業の一つであり、DX銘柄の中でも特にチェックしおきたい成功事例です。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
ソフトバンク株式会社
  • DX推進における人材育成
  • ガバナンス体制の整備
  • 社会全体のデジタル化への貢献
  • 生成AIの安全な導入と社会実装
  • DX教育プログラムの導入
  • 分散型AIデータセンターの構築
  • スマートビル事業
  • 国産LLM開発
  • 安全・安心な生成AI利活用
  • 新規事業での社会課題解決
  • デジタルインフラの基盤強化
KDDI株式会社
  • 日本全体の人口減少
  • 社内の労働力不足
  • エネルギーコスト上昇
  • DX推進本部の新設
  • 戦略子会社の設立
  • IoT・5G技術を活用
  • 各業界への支援
  • 自動車業界での通信プラットフォーム展開
  • ガス業界での自動検針システム導入
  • パートナーとしての信頼性向上

参照:ソフトバンク株式会社日本経済新聞「KDDI株式会社」

③建設業・不動産

建設業・不動産業から選ばれたDX銘柄は、スーパーゼネコン5社のひとつ・大成建設株式会社、総合不動産デベロッパーとして名高い三菱地所株式会社でした。

では、これら大手2社のDX成功事例を見ていきましょう。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
大成建設株式会社
  • 前中期経営計画の未達成
  • 社内外の連携不足
  • 縦割による業務効率低下
  • デジタル活用の浸透不足
  • DX戦略部の新設
  • 統合プラットフォーム構築
  • DXアカデミーによる教育推進
  • 作業所業務の標準化・可視化
  • 連携強化(2026年見込み)
  • スマートシティ事業(2030年目標)
三菱地所株式会社
  • ビジネスモデルの再構築
  • 顧客接点のオンライン化
  • IT基盤とガバナンスの整備
  • グループ全体の業務効率化
  • 共通認証IDの導入
  • 顔認証サービス開発
  • パーソナライズド体験提供
  • ITインフラ強化
  • 顧客体験の向上
  • 業務効率化・労働時間削減
  • 社員のデジタルスキルの底上げ

参照:大成建設株式会社三菱地所株式会社

④食料品・繊維製品

食料品・繊維製品のDX銘柄 2025に選ばれたのは、「味の素」で知られる味の素株式会社、インナーウェアで有名な株式会社ワコールホールディングスの各1社でした。

これらの企業は、長年の実績とブランド力を基盤に、独自のDXを推進した成功事例の一つです。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
味の素株式会社
  • 縦割り組織による連携不足
  • DX推進の個別対応と分散化
  • 社会課題と経済価値の両立
  • パーパス経営への転換グ
  • ローバル展開と横連携の強化
  • 社内のデジタルリテラシー向上
  • 全社一体型の変革推進

  • 事業モデルの変革

  • 社会的リーダーシップの発揮

株式会社ワコールホールディングス
  • 顧客データがチャネルごとに分断
  • ブラジャー選びにおけるストレス・接客への抵抗
  • 顧客データの統合と活用
  • 3Dボディスキャナーの利用
  • AI接客を活用
  • ストレスフリーな採寸・接客体験の提供
  • ロイヤルカスタマー化
  • 新規顧客獲得

参照:味の素株式会社株式会社ワコールホールディングス

⑤化学・医薬品

化学分野では、大手総合化学メーカーであり、多角的な事業展開を行う旭化成株式会社と富士フイルムホールディングスの2社がDX銘柄に選出されています。医薬品分野からは、老舗の製薬会社である第一三共株式会社が選ばれました。

これらの実績ある企業も、それぞれの分野でDXを推進し、着実に成功事例を生み出しています。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
旭化成株式会社
  • DX推進の戦略部門と機能別部門の分散
  • 組織内でのデータ共有と協力体制の欠如
  • デジタル共創本部の設置
  • デジタル共創ラボのオープン
  • デジタル人財4万人化計画
  • 新ビジネスモデル創出

  • 新素材開発のスピード向上

  • 国際的パートナーシップ強化

富士フィルムホールディング
  • DX専門人材の育成
  • 従業員のデジタルスキル向上
  • 業務プロセスのデジタル化
  • 短期集中講座の実施
  • 業務プロセスのデジタル化
  • 医療現場でのAI支援技術の導入

  • クリエイティブ業務へのシフト

  • 働き方の変革

第一三共株式会社
  • 製薬バリューチェーン全体のデジタル化の遅れ
  • 患者ごとの最適医療提供の実現難
  • データドリブン創薬
  • 開発環境の整備
  • グローバルDXガバナンス構築
  • 創薬~販売までの基盤構築
  • 医療機器DTxの開発着手
  • 生成AI活用による業務効率向上

参照:旭化成株式会社富士フィルムホールディング第一三共株式会社

⑥石油/石炭製品・ゴム製品・ガラス/土石製品

続いて、石油やゴム、ガラスなど、地球由来の資源を加工する産業では、コスモエネルギーホールディングス株式会社、株式会社ブリヂストン、AGC株式会社の3社がDX銘柄に選出されています。

これらは、各々の事業領域で顕著なDX成功事例を創出している企業ばかりです。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント(目標)
コスモエネルギーホールディングス株式会社
  • 石油需要の減少と脱炭素社会への対応
  • DX推進の遅れ
  • 社員のデジタルスキルの底上げ
  • データ活用基盤の強化

  • DX人材育成

  • DX推進体制整備

  • データ活用コア人材900名育成目
  • DX Hubによる施策60件目標
株式会社ブリヂストン
  • 鉱山車両用タイヤの熱起因による故障
  • メンテナンスのタイミング不明確
  • 運行コストの増加
  • AI×現場データを用いた耐久予測アルゴリズムの構築
  • 「iTrack」システムでリアルタイム監視
  • 車両のダウンタイム低減
  • 生産性向上
  • CO₂排出抑制
AGC株式会社
  • 製造プロセスの複雑化と属人化
  • 品質管理の効率化
  • IoT・AIを活用したスマートファクトリー化
  • データ可視化による現場支援
  • 不良品率の低減
  • ノウハウのデジタル化による技術継承の促進

参照:コスモエネルギーホールディングス株式会社株式会社ブリヂストンAGC株式会社

⑦鉄鋼・機械

鉄鋼・機械でのDX銘柄は、JFE商事傘下のJFEホールディング株式会社、ダイキン工業株式会社、三菱重工株式会社の3企業です。これらの企業は、それぞれの分野でデジタル技術を積極的に導入したDX成功事例です。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント(予定)
JFEホールディング株式会社
  • 2025年問題
  • 労働人口の減少
  • 全社員に向けた教育実施
  • 社内向け情報ポータル開設
  • 論理性、革新性、発展性の醸成(DX成果発表会)
ダイキン工業株式会社
  • IT人材が大幅に不足
  • 外部人材の確保も困難
  • 社内AI・IoT分野の人材育成を目的に「ダイキン情報技術大学」を設立
  • 1,500名規模のデジタル人材育成予定
  • 幹部層や若手リーダー輩出
三菱重工株式会社
  • カーボンニュートラルの実現に向けた技術・システム転換
  • 高効率ガスタービン導入
  • アンモニア混合燃料や水素燃料への転換
  • 統合制御プラットフォーム展開
  • 2024年DXグランプリ
  • 2025年DX銘柄選出

参照:JFEホールディング株式会社ダイキン工業株式会社三菱重工株式会社

⑧電気機器

電気機器のDX銘柄は、三菱電機株式会社、日本電気株式会社(NEC)です。我が国を代表する大手電気メーカーでは、どのようなDX戦略で成功事例を収めているのでしょうか。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
三菱電機株式会社
  • 統合ソリューションの迅速な創出
  • 事業・業務の最適化
  • データ活用の強化
  • Web API連携基盤
  • データ分析基盤の整備
  • 共通データ整備
  • データドリブン経営の実現に向けた基盤整備
  • データの相互活用促進
日本電気株式会社
  • 社内の抜本的な変革
  • 非効率な運用体制

  • 社員の生産性向上

  • 制度・組織・IT・人の統合改革
  • 自社に先行適用しノウハウ蓄積
  • 働き方・業務の高度化

  • 業務効率の向上

  • レジリエンス向上

参照:三菱電機株式会社日本電気株式会社

⑨輸送用機器

輸送用機器のDX成功事例では、DX銘柄に選ばれた株式会社デンソー、株式会社アイシンを紹介しましょう。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
株式会社デンソー
  • 安心・安全な社会やモビリティの実現に向けた新たな価値創造

  • 食品のトレーサビリティ確保

  • 全社的なDX戦略の推進(AI活用含む)

  • QRコードを活用した食のトレーサビリティシステムの構築

  • 「DX注目企業2024」に初選定

  • 熊本県産アサリのトレーサビリティにおいて、ほぼ100%の導入

株式会社アイシン
  • 電動化への迅速な対応
  • 社会課題の解決に資する新規事業の創出
  • 全社的なDX推進体制の整備
  • 全社横断の体制構築
  • 全従業員対象のデジタル教育
  • 新サービスの開発
  • 一部製品で開発期間を前モデル比50%短縮
  • ソリューション型の新規事業の創出

参照:株式会社デンソー株式会社アイシン

⑩小売業・サービス業・その他製品

小売業のDX銘柄はアスクル株式会社、サービス業はH.Uグループホールディングス株式会社、その他製品では株式会社アシックスでした。それぞれの成功事例は以下の通りです。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
アスクル株式会社
  • バリューチェーン全体の最適化
  • 人材育成と社内DXスキルの強化
  • 社外との連携によるビジネスモデル進化
  • AI・ロボティクスによる物流自動化推進
  • 独自の社内教育プログラム実施
  • 外部との連携・投資
  • 2年連続で「DX銘柄」に選定
  • 広告ビジネスなど新規価値創出
H.Uグループホールディングス株式会社
  • 経営変革の推進
  • 新デジタルヘルスケアの実現
  • 「H.U.デジタルVision」策定
  • リーンオペレーションと個別価値創造の2軸でDX推進
  • 人材・技術革新基盤の構築
  • 2023年に「DX認定事業者」初取得、2027年まで更新認定
株式会社アシックス
  • デジタル時代における企業価値向上の推進
  • 顧客と直接的なコミュニケーションの強化
  • デジタル活用によるブランド体験価値向上
  • データ経営による見える化
  • サプライチェーン強化
  • 「DXグランプリ2024」に選定(3年連続選出)

参照:プレスリリース「アスクル株式会社」プレスリリース「H.Uグループホールディングス株式会社」株式会社アシックス

観光産業でのDX成功事例は、サービス業と深く関連しています。小売り・サービス業のDX戦略をより深く理解したい企業の担当者の方は、ぜひ以下の記事をご一読ください。

【2025】観光DXとは?業界を変える10の最新デジタル戦略と成功事例

⑪倉庫・運輸関連業・卸売り

倉庫・運輸関連業で選ばれたDX銘柄は三菱倉庫株式会社、卸売りでは双日株式会社、株式会社ミスミグループ本社が選出されました。これらの企業のDX成功事例はどのような内容なのでしょうか?

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
三菱倉庫株式会社
  • 業務効率化
  • 新規ビジネスの創出
  • 「MLC2030ビジョン」に基づくDXの推進
  • 10年間で500億円のDX推進予算確保
  • 医薬品物流プラットフォームの構築

双日株式会社
  • 全社的な意識改革
  • デジタル人材の育成
  • 「Digital-in-All」戦略の導入
  • デジタル人材育成プログラムの実施
  • AI活用でのDX事業創出への注力
  • デジタル人材育成の進展
  • 迅速な意思決定と進捗管理
  • AI・DX共創ビジネスの加速
株式会社ミスミグループ本社
  • 短納期・多品種対応
  • 特注品調達のリードタイム
  • サプライチェーンの柔軟性
  • 「デジタルモデルシフト」戦略の推進

  • AI・ITを活用した「meviy」導入

  • サプライヤー情報を統合した基幹システムの刷新

  • 特注部品の調達時間を約9割削減

  • 「meviy」が国内外で17万ユーザーを獲得、業界No.1

  • 数量対応力8倍、利用者7万超

参照:三菱倉庫株式会社双日株式会社株式会社ミスミグループ本社

⑫銀行業・その他金融業

銀行業のDX銘柄は株式会社三井住友フィナンシャルグループ、株式会社ふくおかフィナンシャルグループの2社でした。その他金融業では、プレミアグループ株式会社、株式会社クレディセゾンです。

では、この4社のDX成功事例を見ていきましょう。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
  • デジタル化の遅れ
  • 既存ITの維持と新技術導入の両立
  • サイバーリスク
  • 次世代勘定系システムの構築
  • DXスキル研修
  • IT投資強化
  • コスト削減等のKPI設定
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
  • 金融業界における新規参入企業との競争
  • 業務プロセス・意思決定方法の見直し
  • データ利活用体制の構築
  • アジャイル開発体制の整備
  • BaaSの展開検討

  • 長崎県でのデジタル化支援試行

  • システム開発子会社の設立

  • 大学との教育連携

プレミアグループ株式会社
  • アナログ業務の残存(紙・FAX、KKD依存)
  • レガシーシステムとデータ活用の未成熟
  • DX人材の不足と教育体制の未整備
  • RPA・AI導入による業務自動化
  • 生成AIやノーコード開発の活用
  • DX専任組織の設置と教育体制整備
  • サイト開設と機能拡充
  • AIによるクレジット審査自動化
  • 故障保証のオンライン申込開始
株式会社クレディセゾン
  • 外部依存の高いIT開発体制
  • 全社的なDX推進体制の未整備
  • 内製化推進
  • 生成AI・ノーコードツールの活用
  • 会議の設置と全社員の巻き込み
  • 開発コストを61.8%削減
  • 79万時間分の業務を自動化
  • コピー用紙使用量削減

参照:株式会社三井住友フィナンシャルグループ、株式会社ふくおかフィナンシャルグループプレミアグループ株式会社株式会社クレディセゾン

中小企業のDX成功事例

中小企業のDX成功事例

先ほど紹介したDX銘柄には、日本の各業界を代表する大手企業が名を連ねていました。しかし、大企業のDX成功事例は、中小企業の私たちにはそのまま当てはまらないのではないか…そうお考えの担当者の方もいらっしゃるかもしれません。

そこでここでは、DX銘柄を主催する経済産業省が選出した中小企業のDX成功事例に焦点を当ててみました。

中小企業がどのような課題に直面し、それをどのように乗り越えて成功を掴んだのか、その戦略を徹底的に分析したのでぜひご一読ください。

企業名主な課題点主な対応策主な成功ポイント
西機電装株式会社
  • 製品設計時の情報抜け漏れ、共有不足、手戻り頻発
  • コンコルド効果によるDXへの不信感
  • サイボウズによるスモールスタート
  • 各部署でのアプリ導入
  • 社員の自発性アップ
  • 製品制作時の効率性向上
  • 地域でDXコンサルティング展開
株式会社みらい蔵農業界が直面する様々な課題解決促進顧客価値向上を主とした製品開発農業従事者への価値提供

①53名で挑むDX!失敗からの脱却からDX成功への道のり

まずは、愛媛県新居浜市に本社を置く製造業企業・西機電装株式会社のDX成功事例を見てみましょう。

こちらの企業は53名の社員で、造船所や製鉄所、港湾などで使用される大型クレーンの電気室・制御盤の設計・製作を手掛ける同社は、顧客ごとにカスタマイズした製品を提供しています。そのため、製造過程で生じる設計変更の際、情報の抜け漏れや共有不足、手戻り作業が頻発するという課題を抱えていました。

この課題解決のために生産管理システムパッケージを導入しましたが、計画変更が日常茶飯事となる同社のビジネスモデルとは相性が悪く、結果は大失敗。投資した費用や時間への未練から、効果が見込めないシステム改修に投資し続ける「コンコルド効果」の状態に陥っていました。

DX成功へ向かったのは、サイボウズの「kintone」との出会いでした。同社はスモールスタートの戦略を採用し、まずは人事台帳など間接系のアプリから開発を始めました。社員の心理的抵抗を減らすため、弁当発注アプリなど身近で効果が実感しやすいものから導入。製造現場ではICカードやQRコードで簡単に操作できるIoTデバイスも自社開発し、物理的ハードルも下げました。

この地道な取り組みにより、社員から自発的な改善アイデアが次々と生まれる好循環を作り出し、現在では製番ごとの損益計算がリアルタイムで把握できるまでに進化。さらに、「地域で助け合う自己解決型DX」と掲げ、自社の成功体験を活かし、地元愛媛で中小企業向けのDXコンサルティング事業も展開しています。

②20名で実現する農業DX!「ソイルマン」開発と顧客本位の経営

続いて、農業資材小売業のDX成功事例として、大分県豊後大野市に本社を置く農業資材小売業・株式会社みらい蔵を見てみましょう。

こちらの企業は、従業員数20名、1997年創業という比較的新しい企業で、農業資材販売や米穀集荷、農産物検査、土壌分析などを手がけています。同社はITコーディネータ(ITC)による伴走型支援を受けながら、農業の現場が抱える問題、例えば高齢化による人手不足や、肥料などの価格高騰、自然災害の増加に対して、デジタル技術を使って解決しようとしました。

具体的な取り組みとして、「土づくり」に注目し、「ソイルマン」というシステムを開発しました。これは、土の分析結果に基づいて、どんな肥料をどれくらい使えば良いかを提案するものです。これによって、農家の方は経験や勘だけでなく、科学的なデータに基づいて土づくりができるようになりました。その後、さらに進化した「ソイルマンシステムⅡ」も開発しています。

みらい蔵のDX成功事例の特徴は、「農業者への奉仕と提案」という考え方を大切にし、単に業務を効率化するだけでなく、お客様である農家の方にとっての価値を高めることを中心に考えている点です。また、毎年、売上高の1%をIT化や人材育成に投資する計画を立て、経営方針を発表する場ではDXの進捗状況を共有するなど、常に改善を続けていく仕組みも構築しています。

参照:経済産業省「中堅・中小企業等におけるDX取組事例集

海外のDX成功事例

海外のDX成功事例

国外ではどのようなDX成功事例があるのでしょうか?ここでは、デジタル先進国として知られる「デンマークの行政サービス」のDX成功事例をお伝えします。

ICT先進国として世界をリード!市民目線の行政デジタル化

デンマークは行政のデジタル化で世界をリードする国として知られています。

デンマーク政府ICT(IT+通信技術)管理課のカレン・エイェルスボ・ルベルセン氏は、約20年間この分野に携わってきました。カレン氏は、真新しいテクノロジーを追い求めるのではなく、既存システムの適切な活用と管理を重視する姿勢を重視しています。これは、まさに持続可能なDXの本質を突いた視点といえるでしょう。

デンマークの行政DX成功は徹底した「ユーザーファースト」の姿勢からも見て取れます。国民は一つの市民ポータルから全ての行政手続きにアクセスでき、多くはプッシュ型で自動化。開発には「参加型デザイン」を採用し、実際のユーザーを巻き込んだテストを繰り返すことで、真に使いやすいシステムを作り上げました。

この成功事例は一朝一夕ではなく、1968年からの個人番号導入や80年代の経済危機を契機とした政党を超えた合意形成など、長い歴史の積み重ねの上に成り立っています。また、国・地方自治体・銀行が連携して基盤を整備してきた点も特徴的です。

デンマークのDX成功事例が示すのは、テクノロジー自体よりも「市民の時間を大切にする」という価値観の重要性です。行政手続きの効率化は、特に「時間の貧困」に直面する女性たちをエンパワーメントする力を持っているのです。

参照:グラファー

DX成功事例に共通する要素

DX成功事例に共通する要素

このように、多くの企業がDXを推進する中で、成功事例となった企業には共通する取り組みが見られます。以下では、業種や規模の異なる様々な企業のDX成功事例を分析し、そこからいくつか見られる共通の要素をリスト形式でお伝えしましょう。

  • 明確な課題認識と目標設定
  • ユーザー中心の視点
  • スモールスタートと段階的な推進
  • 現場の巻き込みと協力体制
  • 継続的な改善サイクル
  • 生成AI・ノーコードツールの活用
  • 経営層の理解とコミットメント
  • データドリブンな経営
  • 内製化の推進
  • 人材育成と組織改革
  • パートナーシップや連携

これらの共通要素を参考に、ぜひ自社の状況に合わせてDXを推進していきましょう。

DX成功事例についてまとめ

DXの成功事例から感じられたのは、DXの成功には、明確な目標設定、ユーザー視点の重視、さらには生成AIやノーコードツールの戦略的な活用、人材育成など複合的な要素が必要であることです。

今後も、大手企業から中小企業、海外企業までその動向を注視しながら自社の変革に活かしていきましょう。

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