深層学習はビジネスや私生活など、あらゆるシーンで活かせる汎用性の高い技術として注目を集めており、今もなお積極的に開発が進められています。しかし「深層学習」という言葉は一般の方々にはあまり馴染みがなく、「聞いたことはあるけどどういう意味かはわからない」という方は少なくないでしょう。
今回の記事では、深層学習の概要から特徴、ビジネスに導入する際のポイントなどをご紹介します。ぜひご一読いただき、これから深層学習を導入したり、新しく学ぶ際のヒントにしていただければ幸いです。
深層学習(ディープラーニング)の概要
深層学習はディープラーニングという名称でも呼ばれています。機械学習(AI)の技術のひとつで「たくさんのニューラルネットワークを使用して複雑なパターンや特徴を学習する手法」のことです。
ニューラルネットワークとは、「人間の脳のようなロジックでパターン認識および処理を行う技術」のことを指し、画像や音声の認識で用いられています。
大量のデータと計算リソースが必要ながらも高い表現力から幅広い応用が期待され、研究およびあらゆる産業の分野で優れた成果を上げています。なお深層学習については、以下の動画もぜひ参考にしてください。
深層学習の主な特徴
この章では深層学習の主な特徴を、以下のトピックでご紹介します。
- ニューラルネットワークの進化系
- 特徴量の設計が不要
- 機械学習(AI)との違い
ニューラルネットワークの進化系
深層学習は、ニューラルネットワークの進化版と考えて差し支えありません。ニューラルネットワークは「人間の脳のようなロジックでパターン認識および処理を行う技術」のことです。
どのように進化しているかというと、以下の図のとおり「中間層」が増えています。これにより、従来よりもさらに複雑な解析や処理をスピーディーに行えるようになりました。
引用:markezine
ちなみにディープという単語は「多層」という意味をもっていることから、ディープラーニングという名称で呼ばれています。
特徴量の設計が不要
特徴量とは、データの分析や解析に必要な情報のことをいいます。たとえば音声認識の場合だと声質やトーン、話し方が数値化されて特徴量となります。
これまでの機械学習(AI)には、この特徴量の設計が必要不可欠でした。どの数値をどう扱うかを事前に人の手で設定しなければならなかったのです。
しかし深層学習では、ニューラルネットワークの多層技術により重要な特徴量を自動で判別する能力が備わっています。設定する手間が省けるうえ、人間よりも正確な特徴量に着目してくれるため、利便性が大きく向上しています。
機械学習(AI)との違い
機械学習(AI)とディープラーニングの違いは、主に以下のとおりです。
- 機械学習(AI)…「人間の学習知能を再現する技術」全般の総称。
- ディープラーニング…機械学習(AI)技術のひとつ。特徴量を自ら学習できる。
どちらも「人間の脳の学習機能を実現しているモデル」である点は共通しています。ディープラーニングは、「機械学習(AI)技術をさらに発展させた進化系」と考えて差し支えないでしょう。
なお機械学習の概要については、以下の記事も参考になるのでご一読ください。
深層学習の活用例
深層学習はその解析技術と利便性の高さから、あらゆる業界で活用されています。この章では深層学習の代表的な活用例を、以下のトピックでご紹介します。
- 医療現場におけるITシステム
- 自動運転技術
- IoT・AIを搭載した家電製品
- WebサイトやECサイトの提案システム
医療現場におけるITシステム
代表的な活用例のひとつ目が、医療現場におけるITシステムです。深層学習の画像解析技術によって、がん細胞の早期発見や適切な医療法の提案に役立てられています。
画像解析は過去の膨大なデータが参照されることから、優秀な人間の医師以上の精度で診断を行ってくれるのが現状です。ゆくゆく医療関連では、人間の手でないとできない仕事以外は順調にAIが代替していくことが予想されています。
自動運転技術
自動運転技術も、深層学習の代表的な活用例として挙げられます。センサーが歩行者や障害物などの物体を察知し、ブレーキなどの制御を行う機能はまさに深層学習によるものです。
その他にも以下のように、現代の自動運転の進化は留まることを知りません。
- 向かってくる光の当たり方でハイビームを解除する
- 白線に合わせてハンドルの向きを自動制御する
- スイッチひとつで車線変更を自動で行う
実際に東京では無人バスが導入されたりと、今後もさらなる発展が期待されています。以下の記事では自動運転の仕組みをはじめ、機械学習アルゴリズム「強化学習」についても言及していますので、ぜひ参考にしてください。
IoT・AIを搭載した家電製品
IoTおよびAIを搭載した家電製品も、深層学習の活用例となります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 音声で応答ができるカーナビ
- スマホで操作できるエアコン
- スマートスピーカー
- ロボット掃除機
- 中の材料でレシピを提案する冷蔵庫
IoTとは「モノとインターネットの融合」のことです。従来無縁だった「モノ」と「インターネット」をかけ合わせることで、利便性を高めたものを指します。
このように深層学習は、すでに私たちの生活の身近な存在として浸透しつつあります。
WebサイトやECサイトの提案システム
深層学習の活用例に、WebサイトやECサイトの提案システムも挙げられます。
たとえばYouTubeやTikTokなどのSNS、AmazonなどのECサイトにて、自分の興味に基づくコンテンツがトップ画面に表示されるのは、深層学習によるものです。この機能を「レコメンド」といいます。
ユーザー側としては自分の興味に基づいたコンテンツが自動で出てくるので、探す手間が省けるうえ閲覧体験が楽しいものになります。また運営側としても滞在率向上や販売促進が期待できるため、双方にメリットがあります。
事業に深層学習を導入する際のポイント
現状、深層学習をビジネスに取り入れることを検討している方も少なくないでしょう。この章では、深層学習をビジネスに導入する際のポイントを以下のとおり紹介します。
- 十分な量のデータを準備しておく
- 費用対効果を意識して導入する
- ブラックボックス化による影響を考慮する
十分な量のデータを準備しておく
深層学習を事業に導入する鍵となるのは、十分なデータの用意です。十分な量のデータを用意できないと、深層学習は本来の性能を発揮できないためです。
実現したい機能を明確にしたうえで、必要な量のデータを整理して揃えておくことが鍵になるでしょう。またデータの量のみならず品質も重要で、品質が良質なほうがモデルの汎化性能が向上します。
導入の際は、データの整理や準備の手間も念頭に置いておくことが大切です。
費用対効果を意識して導入する
「深層学習の導入によって得られる費用対効果」を考えることも、導入のポイントのひとつです。深層学習の導入には、あらゆるコストがかかります。
たとえば深層学習を実施するには、膨大なデータを処理・解析するだけの高性能なコンピューターの用意が必須です。それだけでなく、前述したように膨大なデータの準備の手間なども必須となります。
時間やお金などのコストをかけてでも、深層学習を導入すべきかを慎重に検討しましょう。
ブラックボックス化による影響を考慮する
ブラックボックス化とは、「AIがどんなロジックや分析でこの答えを出したのか?」がわからなくなってしまう状態のことを指します。深層学習は使えば使うほどより複雑な解析を行うようになるので、ブラックボックス化は避けられないのが現実です。
とはいえこのブラックボックス化は、使用用途によっては大きな問題となります。
たとえば日常で使うスマートスピーカーやロボット掃除機の場合、ブラックボックス化してもとくに大きな問題はないでしょう。しかし医療システムや自動運転など、人の命を預かる局面でトラブルがあった際「なぜAIがこの判断をしたかわからない」では済みません。
そのため導入前に、ブラックボックス化しても問題ないか考えておくことが大切です。
深層学習(ディープラーニング)を学ぶ方法は?
深層学習の今後の発展を見越し、実装する側になりたいと考える方も多いでしょう。この章では、深層学習を学ぶ手段を以下のとおり紹介します。
- 書籍を購入して独学で学ぶ
- インターネットや動画で学ぶ
- ITスクールを活用する
書籍を購入して独学で学ぶ
書籍を用いた独学も、深層学習を学ぶ手段のひとつです。現代では深層学習の人気が高まっていることから、書店などでもさまざまな種類の書籍が充実しています。
自分に合った書籍を選ぶことで安価ではじめられるうえ、自分のペースでじっくり学ぶことが可能になります。ただ不明点を自分で噛み砕いて理解する必要があるため、挫折率が高いことがネックです。
おすすめの書籍については以下の記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
インターネットや動画で学ぶ
インターネットや動画で学ぶのも、深層学習の代表的な学習法になります。ピンポイントで知りたい情報にたどり着けたり、動画形式でわかりやすく学べることがメリットです。
体系的に学ぶとうよりも「書籍で体系的に学び、不明な点が出てきたらインターネットを利用」といったやり方がベストでしょう。インターネット環境さえあれば無料で活用できるため、使わない手はありません。
ITスクールを活用する
効率よく深層学習を学びたいなら、ITスクールも賢明な選択肢です。書籍やインターネットに比べるとお金はかかりますが、不明点を講師が対面で教えてくれるので、独学では考えられないような時間短縮を実現できます。
教えてもらうことで理解も早まるので、「とにかく早く深層学習エンジニアとして稼ぐフェーズに入りたい」という方にはベストな手段となるでしょう。
なお深層学習を学ぶなら、Proskillの「Pythonセミナー」がおすすめです。深層学習に欠かせないプログラミング言語「Python」を、初心者向けのカリキュラム、AI研究所最高技術責任者による徹底講習で効率よく学べます。
まとめ
深層学習は現段階でも数え切れないほどの活用事例があり、私たちの生活やビジネスにおいて大きく貢献してきたことがわかります。
しかし深層学習はまだまだ発展途上です。今後さらなる進化や発展を遂げながら、ますます便利になっていく将来の技術に大きく寄与していくことは間違いありません。
深層学習をビジネスで有効に活用していくためには、最新の技術動向に着目・学習を行い、正しい知識のもと積極的に導入していく姿勢が大切になります。