日本語は非常に複雑かつ困難であることから、これまで「日本語・英語間の自動翻訳は難しい」とされてきました。
しかし現代ではAIおよびディープラーニングの性能が著しく向上している背景から、非常に高い精度の日本語自動翻訳ツールが次々と登場しています。
そんな数ある翻訳ツールの中でも、とくに高い性能と知名度を誇るのが「DeepL」です。
今回はそのDeepLの概要やメリット、Google翻訳との比較や使用の際の注意点などをくわしく紹介していきます。
ディープラーニング翻訳ツール「DeepL」とは?
DeepLとはドイツのケルンに本拠地を置く「DeepL SE社」が運営を行うディープラーニング翻訳サービスです。
ディープラーニング技術を用いていることが最大の特徴で、膨大なデータセットを元に高精度かつ自然な翻訳を提供していることから、普段の生活やビジネス、さらには研究の分野でも広く活用されています。
数ある翻訳サービスの中でも代表的な存在となっている理由は、翻訳精度の高さ。日本語の絶妙なニュアンスすら汲み取ってくれる点が高い評価につながっています。
DeepLの仕組みとは?
前述のとおりDeepLはニューラルネットワークを用いた機械翻訳サービスです。入力されたテキストを単語や文のレベルで理解し「教師あり学習」というアルゴリズムで高品質な翻訳を生成しています。
このアルゴリズムは大規模な言語データセットを用いてトレーニングされていることから、言語の意味や文脈をより正確に理解する精度を実現しています。
そしてディープラーニングによって使うたびに学習を続け、より進化していく仕組みなのも魅力です。
ディープラーニングによる翻訳精度、そしてDeepLの仕組みについてより詳しく知りたい方は以下の記事でも紹介していますのでぜひご一読ください。
DeepLで翻訳できる言語一覧
DeepLでは以下のとおり30もの言語に対応しています。そして言語の組み合わせは800を超えるなど、幅広い使い方が可能です。
- アラビア語
- ブルガリア語
- 中国語
- チェコ語
- デンマーク語
- オランダ語
- 英語
- エストニア語
- フィンランド語
- フランス語
- ドイツ語
- ギリシャ語
- ハンガリー語
- インドネシア語
- イタリア語
- 日本語
- 韓国語
- ラトビア語
- リトアニア語
- ノルウェー語
- ポーランド語
- ポルトガル語
- ルーマニア語
- ロシア語
- スロバキア語
- スロベニア語
- スペイン語
- スウェーデン語
- トルコ語
- ウクライナ語
引用:DeepL公式サイト
英語や中国語といった需要の大きい代表的な言語から比較的マイナーな言語まで対応しているため、不満を感じることはまずないと言えそうです。
DeepLの有料版と無料版はどう異なる?
DeepLは基本的に無料で使用できますが、より高機能な有料版も存在します。無料版と有料版の違いを一覧にまとめると、以下のとおりです。
料金 | 文字数上限 | ファイル翻訳数 | サイズ上限 | |
無料版 | 無料 | あり | 月3ファイル (編集不可) | ~5MB |
有料版(Starter) | 1,000円/月 | なし | 月5ファイル | ~10MB |
有料版(Advanced) | 3,167円/月 | なし | 月20ファイル | ~20MB |
有料版(Ultimate) | 6,250円/月 | なし | 月100ファイル | ~30MB |
大きな違いは文字数制限や同時翻訳、アップロードサイズやセキュリティなどが挙げられます。長文を翻訳したり、ファイル単位での翻訳が必要なビジネス用途などでしたら、有料版を使うのが得策です。
DeepLの評判・口コミ
DeepLは数ある翻訳サービスの中でもとくに評価が高く、以下のようなものがあります。
なんといってもGoogle翻訳やChatGPTといった他の翻訳ツールとは一線を画す精度が魅力的
バックトランスレーション(一度翻訳した内容を再度もとの言語に変換すること)をワンクリックで行えるのが助かる
微調整したい単語をクリックするだけで候補が出るなど、機能性がすばらしい
引用:ITreview
またDeepL翻訳は低評価が非常に少ないことも大きな魅力ですが、あえて一部を挙げると以下のようなものがあります。
強いて言うならアラビア語やヒンディー語みたいな、よりマイナーな言語に非対応であること
無料版で特定の回数使用すると、広告が出てくるのが気になりました
引用:ITreview
DeepLとGoogle翻訳ならどちらがおすすめ?
どちらも非常に精度が高いので一概に言うのは難しいですが、大きな違いは言語数や細かなニュアンスなので、それを基準に選ぶのがいいでしょう。
DeepLとGoogle翻訳の違いやおすすめな人をまとめると、以下のようになります。
対応言語数 | 翻訳精度 | おすすめの用途 | |
DeepL | 30ヵ国語 | 非常に高い |
|
Google翻訳 | 132ヵ国語以上 | 高い |
|
なお上記の表の「翻訳精度」についても、両者は大差ありません。たとえば「作業が完了したので、ご確認をお願いします」という日本語を翻訳すると、DeepLの場合以下のようになります。
DeepL:
Please confirm that the work has been completed.
一方、おなじ条件でGoogle翻訳に通すと、以下のような結果になります。
Google翻訳:
The work has been completed, so please check it.
どちらもほとんど同じ意味ではあるものの「please」という単語が冒頭か末尾かによるニュアンスの違い程度です。またヒューマンサイエンスが実施した翻訳精度の調査では以下のような結果が出ています。
DeepLの翻訳精度が優れているビジネスジャンルの方が多いという結果ではあるものの、以下のような記述があります。
IT日英や医療英日、契約書英日などあらゆるジャンルでDeepLが優れているものの、言語の方向性や分野次第ではGoogle翻訳のほうが優れていることも事実。用途で使い分けるのがおすすめです。
参考:ヒューマンサイエンス
なお上記で比較したDeepLとGoogle翻訳以外にも、AIを用いた翻訳ツールは多岐にわたります。以下の記事でも紹介していますので、興味のある方はご一読ください。
DeepLを活用することで得られるメリット
DeepL活用で得られるメリットは、大きく以下のとおりです。
- ローコストで高精度な通訳を利用できる
- とっさのタイミングでもスピーディーかつ気軽に使える
- 翻訳後の文章を直接リライトできる
それぞれ解説します。
ローコストで高精度な通訳を利用できる
ローコストで高精度な通訳を利用できる点が、最大のメリットとなるでしょう。
通常の翻訳機能なら無料で十分使えるにもかかわらず、人間による翻訳と同等以上の精度を実現しています。翻訳のために人間を雇ったケースに比べると、かかる費用には雲泥の差が出てくるでしょう。
とっさのタイミングでもスピーディーかつ気軽に使える
DeepLはブラウザベースの翻訳サービスなのでスマホやタブレット、PCなどのデバイスから気軽にアクセスが可能です。さらにスマホ・タブレットであれば、iOSとAndroid向けのアプリも用意されています。
必要なときにサッとデバイスを取り出してスピーディーに翻訳できるため、いざというシーンで心強い存在になること間違いありません。
翻訳後の文章を直接リライトできる
翻訳後の文章を直接リライトできることも、ありそうでない大きなメリットといえるでしょう。
DeepLは以下のように、翻訳前の文章はもちろん翻訳後の文章も直接編集できます。さらに単語を選択するだけで文字候補が出てくるため、編集もスムーズです。
他のアプリの場合、翻訳後の文章を編集する際はすべてコピペのうえ別の何らかの箇所に貼り付けて編集する必要がありましたが、その必要性がなくなったことで大きな生産性アップを実現しています。
DeepLのデメリットおよび注意点
DeepLのデメリットおよび注意点を挙げるなら、以下のとおりです。
- 主語の省略は翻訳精度に大きく関わる
- ビジネスなどの重要文書は人間の確認が不可欠
それぞれ見ていきましょう。
主語の省略は翻訳精度に大きく関わる
他言語へ翻訳する場合は、「主語」がとても重要になります。日本語は主語を端折っても通じることはありますが、他言語の場合、意味が大きく変わってしまうことがあるためです。
いくら精度の高いDeepLとはいえ、主語の省略は避けることをおすすめします。
ビジネスなどの重要文書は人間の確認が不可欠
ビジネスなどの重要文書をDeepLに通す場合、人間の確認はやはり不可欠になるでしょう。DeepLは人間にも劣らないかなり高い精度ではあるものの、まだ「完全無欠」とはいえないからです。
意訳と直訳の違いだったり日本語特有の非常に細かなニュアンスの差異などはどうしても生じるものであり、そもそも翻訳の内容が間違ってる可能性も否めません。重要文書であれば、英語に精通した人間による確認を行いましょう。
ディープラーニングを学ぶならAI研究所へ!
DeepLにも使われているディープラーニング技術を効率よく学びたいなら、AI研究所が提供する「AIプロフェッショナル人材育成コース」がおすすめです。
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実務ですぐに使えるノウハウを凝縮したカリキュラムとなっているので「就職後の即戦力」になることが可能です。競合がまだまだ少ない今のうちに、将来性の高いスキルを学んでみてはいかがでしょうか。
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ディープラーニング翻訳についてまとめ
以上、ディープラーニング翻訳のDeepLの概要やメリット、Google翻訳との比較や注意点などを紹介してきました。
AIおよびディープラーニングの技術力が加わったことで、DeepLを筆頭に翻訳ツールのクオリティは日に日に増して着実に向上しています。
とはいえそれはまだ「以前に比べて」という話でもあり、現段階では人間による目視確認および訂正は必要不可欠であることは否めません。
ただ、これからも引き続き翻訳ツールのクオリティが上がることで英語の本を読破できたり、海外旅行のハードルが下がるなど、私たちの生活の利便性を大きく変えてくれるでしょう。
翻訳が人間の仕事ではなくなる日もそう遠くはないかもしれません。