企業向けの電子マニュアル作成ソフトを提供しているスタディスト株式会社は、2024年6月に撮影した映像から多言語の動画マニュアルを自動生成するAI機能「Teachme AI」をリリースしました。従来、人の手で約2時間かかっていた字幕生成や編集作業を、AIが15分程度に短縮します。
スタディスト株式会社が開発したAIによるマニュアルは、日本語や英語、ベトナム語、タイ語の音声を自動認識し、字幕生成や映像を作業工程ごとに自動分割し、見やすい動画マニュアルに編集するようです。2025年2月末までに200社への導入を目指しています。
今回は、マニュアルをAIで作成する方法や無料と有料のマニュアル作成AIツール、AIでマニュアルを作成するメリット、デメリットをご紹介します。
マニュアルをAIで作成する方法とは?
マニュアルは口頭での説明と比べて、業務全体の流れや仕組みをより正確に伝達できます。また、繰り返し同じ指導を行う必要がなくなるため、業務内容の統一化や効率化にも貢献することが可能です。
しかし、マニュアルの作成には時間と労力がかかり、作業工程の洗い出しやわかりやすい文章作成などが負担となるケースが多く、後回しにされてしまいがちです。そこで、近年注目されているのがAIによるマニュアル作成です。
マニュアル作成にAIを活用することで、従来のマニュアル作成にかかっていた負担を大幅に軽減し、効率的な作成を実現できます。AIでのマニュアル作成には、主に以下の2つの方法があります。
生成AIを使用する
生成AIを部分的に使用し、マニュアルを作成する方法です。生成AIは、マニュアル作成の様々な工程を自動化し、作業負荷を大幅に軽減することができます。
AIにテーマや構成を指示するだけで、AIが文章を自動生成・要約するため、下書きした文章をAIに読み込ませれば、内容の要約や編集、校正まで行えます。これらの作業をAIに任せることで、執筆にかかる時間を大幅に削減できるのです。
また、専門性の高い知識や経験がなくてもAIが基本的な内容を自動生成するので、スムーズにマニュアル作成を始められます。しかし、データ量が乏しい場合や独自性が高い場合は、誤った情報や不十分な情報が生成される可能性があります。
マニュアル作成自動化ツールを使用する
近年、注目を集めているのがAIと連携したマニュアル作成ツールです。AIと連携することにより、従来のマニュアル作成の課題を克服し、効率的かつ高品質なマニュアル作成を実現します。
従来のマニュアル作成では、作成者によって表記ルールや書式、レイアウトが異なり、見にくく分かりにくいマニュアルになってしまうことが多い傾向にありました。しかし、AIと連携したマニュアル作成ツールを使えば、テンプレートに沿って作成を進めるだけで、フォーマットが統一されたマニュアルを作成することが可能です。
また、マニュアル作成は、膨大な時間と労力が必要な作業です。しかし、AIと連携したツールであれば、AIが自動的に文章を生成してくれるため、作成時間を大幅に短縮できます。
【無料】マニュアル作成自動化AIツール
マニュアル作成は、AIツールを活用することで、効率的で高品質なマニュアルが期待できます。以下では、無料で利用できるマニュアル作成AIツールをご紹介します。
ChatGPT
ChatGPTは、OpenAIが開発したAIツールです。膨大な量のデータを学習しており、人間が書いたような自然な文章を生成することができます。
例えば、マニュアル作成においてはユーザーの指示に従い、構成や内容、文章を自動生成するため、マニュアルのたたき台を作ることが可能です。出力された土台を修正したり、追記したりすることで、マニュアル作成にかかる時間や労力を大幅に削減できるでしょう。
ちなみに、ChatGPTは無料版でも十分な機能を備えていますが、出力文字数に制限があります。より高精度な文章生成を行う場合は、有料版の「ChatGPT Plus(GPT-4)」の導入を検討することをおすすめします。
ChatGPT Plus(GPT-4)については以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
Gemini
Gemini(旧:Bard)は、Googleが開発した対話型AIツールで、マニュアル作成を効率化することができます。プロンプト入力欄に質問を入力すると、リアルタイムの検索データと連携し、最新の情報を基に回答を生成し、生成された回答には参照元URLが表示されます。
情報源を確認することができるため、信頼性の高い回答を生成することが可能です。また、マニュアルの構成を作成できるので、作業効率を大幅にアップできるでしょう。
Googleアカウントがあれば無料で利用できるので、気軽に試すことができます。ただし、質問内容によっては回答できないこともあり、専門的な分野に関する利用には適していない場合があります。
Geminiについては以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
【有料】マニュアル作成自動化AIツール
次に、AIと連携したマニュアルを作成するツールをご紹介します。有料ですが、AIを搭載したツールはよりマニュアル作成に特化した高度な編集機能などを備えているため、短時間で高品質なマニュアルを作成することができます。
ManualForce
ManualForceは、Webブラウザ上での操作からマニュアルを自動生成できるツールです。画面操作を録画するだけで簡単にマニュアルを作成できます。
さらに、ChatGPTを搭載したAIサジェスト機能で、誰が作っても質の高いマニュアルを作成することができます。具体的には、以下のような機能です。
- タイトルや説明文を自動生成
- 録画した画面内容を分析
そのため、マニュアル作成のアイデアや構成を考える手間を大幅に削減できます。ManualForceには、無料プランと有料プランの2種類がありますが、AI機能を利用するには、有料プランに登録する必要があります。
月払いと年払いがあり、年払いにすると20%お得です。
プラン | PRO (個人向け) | ENTERENTERPRISE (法人向け) |
料金(月払い) | 3,500円/月 | 要問い合わせ |
料金(年払い) | 2,800円/月 | 要問い合わせ |
トースターチーム
トースターチームは、AIアシスタントによる自動生成と直感的な操作で、誰でも簡単にマニュアルを作成できる点が特徴です。マニュアルのタイトルを入力すると、AIアシスタントが構成や文章、図表などを自動で生成します。
以下の3つの形式に対応しているため、様々なニーズに応えることができるでしょう。
- テキストによる業務マニュアル
- パソコン画面の録画による動画マニュアル
- 登録した社内用語や専門用語を活用した用語集
さらに、スマートフォンで撮影した動画をアップロードして編集できるため、手軽に動画でのマニュアルを作成可能です。14日間の無料トライアルがあります。
プラン | ライト | スタンダード | ビジネス |
初期費用 | ¥100,000 | ¥100,000 | ¥100,000 |
料金(年間契約) | 35,000円/月 | 60,000円/月 | 120,000/月 |
特徴 | 50名まで利用可能 | 標準プラン | FC店舗や全社導入など |
マニュアルをAIで作成するメリット
マニュアルをAIで作成すると以下のようなメリットが期待できます。
- 作成する負担を大幅に軽減できる
- マニュアルの質を均一化できる
- 検索性や利便性が向上する
それぞれのメリットを詳しく見てみましょう。
作成する負担を大幅に軽減できる
マニュアル作成は、多くの時間と労力が必要です。例えば、関係者からのヒアリングや情報収集、文章構成や内容の整理、デザインやレイアウトの作成など様々な工程をこなす必要があります。
しかし、AIツールでマニュアルを作成すれば、これらの時間のかかる作業を大幅に効率化することが可能です。
AIは文章生成はもちろん、構成提案や画像生成などの作業を高速かつ高精度に行うことができるため、従来のマニュアル作成と比べ圧倒的なスピードでマニュアルを作成することができます。
マニュアルの質を統一できる
マニュアル作成の課題として、内容のムラが挙げられます。特に複数の人が携わる場合、書き方や表現、用語の使い方がバラバラになりやすく、読み手にとって混乱を招く可能性があります。
しかし、マニュアル作成にAIを活用することで、マニュアルの質を統一することができます。AIは、膨大な量の文章データを学習しているため、誤字脱字や表記ゆれ、言葉遣いの誤りなどを自動的に検知することが可能です。
従来のマニュアル作成では、複数の人による目視確認が必要でしたが、AIツールを使えば、漏れなく効率的にチェックすることができ、作業負担を大幅に軽減できるでしょう。
検索性や利便性が向上する
従来、マニュアルは、作成後も活用されずに宝の持ち腐れになってしまうケースが多くありました。しかし、AIの進化により、マニュアルの活用を活性化すれば、社員の業務効率と生産性を向上させることが可能になるでしょう。
また、従来のマニュアルは膨大な量の情報が掲載されているため、必要な情報を見つけるのが大変という課題がありました。しかし、AIによる提案により、社員は必要な情報だけを短時間で探し出すことができ、業務の効率化に貢献することができます。
マニュアルをAIで作成するデメリット
マニュアルをAIで作成する際は、メリットがある一方で、デメリットも存在します。事前にデメリットを理解し、適切な対策を講じることが重要です。以下でデメリットを見ていきましょう。
AIのみでマニュアルを作成することはできない
AIは膨大なデータから学習し、文章を自動生成することができますが、AIのみでマニュアルを作成することはできません。AIは誤った情報や不適切な表現を自ら判断して修正することはできないため、AIを活用したマニュアル作成には、必ず人の目で内容と表現をチェックする必要があるためです。
誤った情報や不適切な表現が含まれていないか、専門用語や業界用語が正しく使われているかなどを確認する必要があります。しかし、AIは学習機能を持っているため、修正箇所をフィードバックすることで、徐々に精度が向上していき、修正箇所も少なくなっていくでしょう。
情報漏洩のリスクがある
AIはマニュアル作成などの業務効率化に役立てられている一方で、情報漏洩のリスクも懸念されています。一般公開されている生成AIツールは、入力されたデータを学習する特性上、他のユーザーにも利用できるようにインターネット上で公開することがあります。
そのため、自社の業務ノウハウや取引先情報、社員の個人情報などが漏洩する恐れもあります。AIに入力するデータは、顧客情報や機密情報が含まれていないことを確認しましょう。また、社員に対して情報セキュリティに関する教育を行うことが重要です。
AIを搭載しているとコストが高くなる
AI搭載のマニュアル作成ツールは、従来のツールに比べて初期費用やランニングコストが高くなる傾向があります。そのため、導入を検討する企業にとっては、コスト面の負担がネックとなる場合があるでしょう。
しかし、AI搭載ツールを導入することで、マニュアル作成業務における時間や労力などのコストが削減できる可能性があります。導入コストと間接的コストを比較検討することで、AI搭載ツールの費用対効果を判断することが大切です。
マニュアル作成にAIを活用して業務効率化を図ろう!
今回は、マニュアルをAIで作成する方法や無料と有料のマニュアル作成自動化AIツール、マニュアルをAIで作成するメリット、デメリットをご紹介しました。マニュアル作成には、工程の整理や関係者へのヒアリング、構成設計、文章作成など、時間と労力を要する作業が多数存在します。
しかし、AIをマニュアル作成に活用することで、これらの課題を克服し、マニュアル作成業務を効率化することができます。ぜひ、自社のニーズに合ったAIを選び、業務効率化や生産性向上につなげましょう。