韓国のサムスン電子が発表した2024年4月から6月期の決算は、半導体市況の回復により大幅増益となりました。特に半導体事業が好調で、営業利益は前年同期比16倍と過去最高を記録したようです。
しかし、生成AI向けの高性能チップでは競争が激化しており、収益化が課題となっています。サムスン電子は状況を打破するため、エンジニアの採用を拡大し、開発力の強化を進めています。
そこで今回は、今注目されている半導体エンジニアに必要なスキル、向いている人、有利な資格や勉強法を詳しくご紹介します。また、半導体エンジニアの将来性についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
半導体エンジニアとは
スマートフォンや自動運転車など、私たちの生活を豊かにする製品の内部には、高度な機能を実現するための半導体といわれるチップが搭載されています。半導体エンジニアは、製品の心臓部となる集積回路を設計し、製品化までの様々な工程に関わる仕事です。
AIやIoTなどの最新技術が加速する現在、半導体エンジニアの需要はますます高まっているため、社会に貢献できるやりがいのある仕事なのです。半導体エンジニアは、以下の3種類に分類されます。
設計エンジニア
半導体設計エンジニアは、電子機器の「心臓部」ともいえる集積回路(IC)の設計を担う専門職です。一般的に、半導体エンジニアと呼ばれているのは、設計エンジニアを指すことが多く、製品の企画段階から参画し、製品の性能や機能を決定づける重要な役割を担います。
回路シミュレーションやレイアウト設計など、高度な設計ツールを駆使し、性能や消費電力、コストなど多岐にわたる要求を満たしつつ最適な回路設計を行います。
半導体プロセスエンジニア
半導体の性能やコストは、製造プロセスに大きく左右されます。プロセスエンジニアは、設計エンジニアが設計した回路を実際に製品として作り出すための橋渡し役です。
具体的には、製造装置の最適化や工程管理など、半導体製造の全工程に関わります。また、半導体製造プロセスにおけるデータ分析を通じて、問題点の原因を究明し、適切な対策を講じることで、製品の品質向上につなげます。
半導体製造装置メンテナンスエンジニア
半導体製造装置メンテナンスエンジニアは、半導体製造プロセスにおける多様な装置の保守や保全を行います。定期的なメンテナンスの実施や故障時の迅速かつ正確なトラブルシューティング、装置の性能評価など幅広い業務を担当する仕事です。
また、新しい製造技術の導入に伴う装置の改造や性能向上にも積極的に取り組む必要があります。半導体製造装置メンテナンスエンジニアは、製造現場の「縁の下の力持ち」なのです。
半導体エンジニアの将来性
先述したように、IoTやAIの急速な発展によりスマートフォンはもちろん、自動車の自動運転やスマートシティなどの新たな市場も生まれています。これらの分野では、高性能な半導体が大量に必要とされます。また、5G通信の普及も半導体市場の拡大に貢献しています。
半導体への需要が爆発的に高まっているため、高度な機能を持つ半導体開発には、専門性の高いエンジニアが不可欠なのです。半導体エンジニアの求人も年々増加しており、今後もその傾向は続くと予想されています。
AI半導体の活用事例については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
半導体エンジニアに向いている人
半導体エンジニアとして活躍するためには、以下のような人が向いています。
- モノづくりへの情熱
- テクノロジーに対する強い探究心
- 高いコミュニケーション能力
半導体はスマートフォンやパソコンなど、私たちの生活を支える様々な製品の心臓部です。半導体エンジニアは、そうした製品の開発に深く関わり、新しい技術を生み出すことに貢献するため、モノづくりが好きで、新しい技術に興味があるという方は、この仕事に大きなやりがいを感じることができるでしょう。
しかし、先述した半導体エンジニアの種類があるように、半導体の開発は一人で完結するものではありません。設計や製造、評価など様々な工程で多くの関係者と連携する必要があります。そのため、円滑にコミュニケーションを取れる能力は、半導体エンジニアにとって不可欠でしょう。
半導体エンジニアに必要なスキル
半導体エンジニアは、その役割によって求められるスキルは異なりますが、共通して求められるスキルがいくつかあります。以下で、半導体エンジニアに必要なスキルをご紹介します。
電気・電子工学の知識
半導体エンジニアの仕事は、電気や電子工学の知識を基盤としています。回路設計やシミュレーション、製造プロセスなど、あらゆる業務において電気・電子工学の知識が活かされるでしょう。
大学や専門学校などでこれらの基礎をしっかりと学ぶことは、将来、半導体エンジニアとして活躍するための第一歩となります。
プログラミングスキル
集積回路の設計は回路図を描くだけでなく、コンピュータ上でシミュレーションや検証を繰り返すことが不可欠です。これらの作業には高度なプログラミングスキルが必要となり、C言語やC++などのプログラミングの知識が求められます。
また、設計図を作成したり、回路をシミュレーションしたりする専用のソフトウェアを使いこなす能力も重要です。
プログラミングが無料で学べるサイトについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
英語力
半導体業界はグローバル化が進み、最新情報は英語で発信されることが大半です。英語力があれば、最新の論文を速読したり、世界の技術動向をいち早くキャッチアップしたりできるでしょう。また、海外企業との共同開発や海外拠点への異動も視野に入るため、英語力は身に付けておくと有利になります。
常に最新情報を入手する姿勢
半導体エンジニアには、論文や技術資料を読み解く能力だけでなく、多様な情報源から必要な情報を集め、分析する能力が求められます。新しい製品や技術に関する情報を積極的に収集し、自身の知識や経験と結びつけることで、より良い製品開発に貢献できるでしょう。
常に新しい知識を学び、最新の技術動向を把握することが半導体エンジニアとして長く活躍するための鍵となります。
積極的なコミュニケーションスキル
半導体エンジニアは設計から製造はもちろん、顧客への納品など様々な部門の人々と連携して仕事を進めます。そのため、専門外の関係者と円滑なコミュニケーションを取ることも求められます。
様々な部門の人々と協力し、プロジェクトを成功させるためには専門用語を避け、分かりやすく説明する能力が求められます。また、積極的にコミュニケーションを取り、多くの関係者と信頼関係を築くことで、問題が発生した際にもスムーズに解決へと導くことができたり、新たなアイデアが生まれ、より良い製品開発につながることもあるでしょう。
半導体エンジニアとなるために有利な資格
半導体エンジニアになるために、必ず取得しなければならない資格はありません。しかし、業務に必要な知識を深め、キャリアアップを目指したりする上で、専門知識を証明しキャリアアップにつながる可能性が広がります。
また、企業によっては資格取得を支援する制度を設けている場合もあります。以下で、半導体エンジニアとなるために有利な資格をご紹介します。
半導体技術者検定
半導体技術者検定は、半導体に関する幅広い知識を評価する資格試験です。入門レベルの3級から、エンジニアに向けた2級、高度な知識を問われる1級まで、3つのレベルがあります。
半導体の製造だけでなく、半導体を使う製品を作る企業側の知識も求められるため、半導体に関する総合的な能力を証明できるでしょう。
半導体製品製造技能士
半導体製品製造技能士は、半導体製造の知識や技術を証明する国家資格です。集積回路チップの製造や組み立てに関する知識と技術を問う試験に合格することで取得可能です。
半導体製品製造技能士の試験は、「集積回路チップ製造作業」と「集積回路組立作業」の2種類があり、それぞれの試験では半導体製造に関わる様々な知識や技術が問われます。
試験には2級、1級、特級があり、以下の受験資格が必要になります。
試験の種類 | 受験資格 |
2級 | 2年以上の実務経験 |
1級 | 最大7年の実務経験あるいは、2級取得後2年以上の実務経験 |
特級 | 1級取得後5年以上の実務経験 |
必要な実務経験年数は、職業訓練歴や学歴によって短縮される場合があります。また、1級以上の半導体製品製造技能士試験は難易度が高く、合格率が40%を下回る年が多いことから、ある程度の経験を積んだ上で、さらなるスキルアップを目指す方におすすめの資格です。
ディジタル技術検定
ディジタル技術検定は、文部科学省後援の国際文化カレッジ主催の1972年から続く歴史ある検定試験です。情報処理から制御技術まで、幅広いデジタル技術の知識が問われます。
4級から1級までの4段階で、1級・2級では情報部門と制御部門に分かれており、より専門的な知識を評価されます。ディジタル技術検定は、デジタル機器を扱う様々な分野で活躍したい方におすすめです。
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験は、CADの設計スキルを証明する資格です。CAD(Computer Aided Design)はコンピュータ支援設計の略で、コンピュータを使って設計図を描くためのソフトのことを指し、建築や機械設計だけでなく半導体設計など、様々な分野で利用されています。
CADを使うことで設計の効率が上がり、より正確な図面を作成することができます。2次元CADと3次元CADがあり、設計図面作成の能力を評価されます。
半導体設計の仕事にも役立つため、転職活動でも有利に働くでしょう。学生から社会人まで、幅広く受験できます。
半導体エンジニアとなるための勉強法
半導体エンジニアは進化していく技術に対応するため、継続的な学習が不可欠です。しかし、半導体に関する知識は非常に広範囲にわたっており、全てを網羅することは現実的に難しいと言えるでしょう。
そこで、限られた時間の中で効率的に学習を進めるための戦略が求められます。以下で、半導体エンジニアとなるための勉強法を解説します。
独学で学ぶ
半導体エンジニアとして活躍するためには、まずデバイスの動作原理や特性といった基礎知識を固めることが不可欠です。半導体デバイスの基礎的な構造やそれらがどのように動作し、どのような特性を持つのかを深く理解する必要があるでしょう。
これらの知識を習得する上では、関連書籍の活用が非常に有効です。初学者向けの入門書から専門的な内容を扱った書籍まで、幅広いラインナップが揃っています。テキストや問題集を用いて繰り返し学習することで、知識の定着を図ることが可能です。
先述したように、半導体の最新情報やより詳細な情報は、英語の文献や資料に多く掲載されています。英語の学習も併せて行い、より幅広い情報にアクセスするのもおすすめです。
セミナーで学ぶ
書籍だけでなく、オンライン講座やセミナーなど、様々な学習方法を組み合わせることで、より効率的に知識を習得することができます。セミナーは、短期間で効率的に知識を深め、業界の専門家と交流できる絶好の機会です。
ぜひ、セミナーを活用し、半導体エンジニアとしてのキャリアを築いてください。以下でおすすめのセミナーをご紹介します。
AutoCAD基礎セミナー講習
BIZROADのAutoCAD基礎セミナー講習は、2日間という短い期間で、AutoCADの基本操作から応用までを幅広く学ぶことができます。実務でよく使うAutoCAD機能やテクニックに重点を置いているため、受講後すぐに仕事に活かすことができるでしょう。
3次元CAD利用技術者試験2級対策講座
BIZROADの3次元CAD利用技術者試験2級対策講座は、先述したCAD利用技術者試験合格を最短で目指せることを特徴としています。BIZROADは、長年のCAD教育経験とノウハウを活かし、効率的な学習カリキュラムを提供しています。
e-ラーニングでの受講形式なので、パソコンやスマホ、タブレットに対応しており、いつでもどこでも学習可能です。8時間という短期間で、CAD初心者でも合格を目指せるのが特徴です。
半導体エンジニアは技術革新の最前線で活躍できる
今回は、今注目されている半導体エンジニアに必要なスキルや向いている人、有利な資格や勉強法、半導体エンジニアの将来性を解説しました。AIなどの先端技術の発展に伴い、高性能な半導体に対する需要はますます高まっているため、半導体エンジニアの活躍の場を広げており、需要は今後も拡大するでしょう。
半導体エンジニアとして活躍するためには、常に最新の技術動向を学び、自己研鑽を怠らないことが重要です。その上で、技術的な専門性を深める道や管理職、プロジェクトマネジメント層へとキャリアアップする道など多様なキャリアパスを選択することもできるでしょう。