【2024】AIが検品作業を加速!メリットやデメリット・事例を徹底解説

鶴弥がAIを活用した検品システムを導入し、瓦製造における品質管理を一段と強化しました。このシステムは、これまで人の目で確認していた瓦の外観検査を自動化し、瓦に傷や変形などの不具合がないか、AIが自動で判別するものです。

新たに阿久比工場の一部の生産ラインに導入されたシステムは、4台のカメラで瓦を全方位から撮影し、AIが画像データを解析することで、傷や変形などの不適合品を自動で判別します。既存の変形検知装置との連携により、高精度な検品が可能となり、不適合品は自動的に排除される仕組みです。

鶴弥は、このAI検品システムを他の生産ラインにも順次導入し、さらなる品質向上を目指す予定です。また、AIの学習機能を活用して精度を高め、将来は製品の品質改善に繋がるデータ分析も行いたいと考えているようです。

今回は、AIで検品を行うメリットやAIで検品が活用されている業界、AIを活用した検品事例を解説します。

AIによる検品とは?

AIによる検品とは?

AIを活用した検品は、大量の画像データから学習することで、不良品の特徴を自動的に抽出し、判定モデルを構築します。このモデルを用いることで、高速かつ高精度な検品が可能となり、人による作業に比べてばらつきが少なく、安定した品質管理が可能になるのです。

AIによる画像認識には、教師あり学習と教師なし学習があり、教師あり学習と呼ばれる手法が一般的です。

AIによる画像認識教師あり学習教師なし学習
特徴データに付与された正解データを参考にする自ら正解へ近づこうとする

教師あり学習は事前に、良品や不良品などの正解ラベルが付与された大量の画像データをAIに学習させることで、AIが画像の特徴を捉え、新しい画像に対する判断を学習していく方法です。AIによる画像認識の中でも、深層学習は近年特に注目されている技術です。

深層学習は、人間の脳の神経回路を模倣したニューラルネットワークと呼ばれるモデルを用いて、画像の複雑な特徴を自動的に抽出します。従来の画像認識では、人が特徴量を設計する必要がありましたが、深層学習ではAIが特徴量を学習するため、より高精度な認識が可能になりました。

深層学習については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】機械学習と深層学習は何が違う?関係性や活用事例を紹介!

AIで検品が活用されている業界

AIの進化に伴い、瓦製造以外にも製造業をはじめとする様々な業界で、従来人手で行われていた検品作業が自動化されつつあります。AIによる画像認識技術を活用することで、より高精度かつ効率的な検品が可能となり、生産性の向上や品質管理の強化に貢献しています。

以下で詳しく解説します。

食品製造業界

食品製造業では、製品の形状や色に個体差が生じることや基準が明確でないことが、従来の自動化の大きな障壁となっていました。しかし、AI技術の発展により、これらの課題を克服し、新たな可能性が開けてきています。

AIは、従来のプログラミングでは難しかった複雑なパターンを学習することができます。この特徴を生かし、食品の形状や色の微妙な違いを捉え、人間の目視と同等、もしくはそれ以上の精度で不良品を検出できるようになったのです。

物流業界

物流業界では、入荷や出荷時の検品作業において、商品ごとのバラエティやイレギュラーな状況が多く発生するため、従来は人による目視が中心でした。しかし、近年、倉庫内の自動化やバーコード管理が進展する中で、画像認識AIを活用し、商品の外観から自動的に判別するシステムが導入され始めています。

電子機器業界

電子機器業界では、パソコンやタブレットなどの基板に搭載されるコネクターの接続不良は、製品の品質に直接影響するため、厳密な検品が求められます。従来は、熟練の担当者による目視が行われていましたが、近年では、画像認識AIを活用することで、より高精度かつ効率的な検品を実現する事例が増えています。

AIを用いて検品を行うメリット

AIを用いて検品を行うメリット

AIによる検品は、以下のような幅広いメリットをもたらします。

  • 生産性が向上する
  • ヒューマンエラーを防止する
  • コストを削減する

以下では、AIを用いた検品を行うことによって得られる具体的なメリットを詳しくご紹介します。

生産性が向上する

AIによる自動検品システムは、24時間365日稼働が可能であり、常に一定の品質基準で検査を行うことができます。そのため、人的要因による検査結果のばらつきを排除し、製品の品質を安定的に維持することが可能です。

また、自動検品システムは、検査結果をリアルタイムでフィードバックできるという特徴もあるため、製造ラインで不良品が検出された場合、即座に情報を関係者に伝え、迅速な対応を可能にします。これにより、不良品が次の工程に流れてしまうことを防ぎ、生産ラインの効率化に貢献することが可能です。

自動検品システムは、人手による検品に比べて大幅に高速な検査を行うことができるため、生産性を向上させ、リードタイムの短縮にもつながります。

ヒューマンエラーを防止する

従来、製品の検品作業は人の目で一つ一つ確認を行うため、作業者の疲労や経験によって品質にばらつきが生じたり、見落としが発生するリスクがありました。しかし、AIを活用した検品システムの導入により、これらの課題を克服し、より高品質な製品を安定的に供給できるようになりました。

AIは、事前に学習したデータに基づいた客観的な基準で製品を評価します。そのため、人による主観的な判断が入り込む余地がなく、製品の品質が均一になります。人間の目では見つけにくい微細な傷や汚れも検出することもできるため、不良品が市場に出回ることを防ぎ、製品の信頼性を向上させます。

コストを削減する

画像認識を用いた自動検品システムの導入は、コスト削減に大きな貢献を果たします。高精度な画像認識により、製造過程における微細な不良を早期に検出し、不良品の出荷を防止するため、製品の品質向上だけでなく、顧客からのクレームや返品といったコストを大幅に削減できます。また、不良品の発生を減らすことで、製品の再加工や廃棄にかかる費用を削減することができるでしょう。

繰り返しの検品作業の自動化や24時間の稼働で、夜間や休日の人件費も削減できます。特に、人手不足が深刻な業界では、この効果は大きいでしょう。

AIを用いて検品を行うデメリット

AIによる検品は、幅広いメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。

  • 膨大なデータが必要になる
  • 手順がブラックボックス化される
  • 維持コストがかかる

以下で、それぞれのデメリットを詳しく見ていきましょう。

膨大なデータが必要になる

AIを用いて不良品を正確に検出するためには、大量かつ多様な画像データが必要不可欠です。一般的に、数百から数万単位の画像データを学習させることで、AIモデルは不良品の特徴を正確に捉え、高い精度で不良品を判別できるようになります。

しかし、必要なデータ量が不足していたり、データの質が低い場合、AIモデルの性能は期待通りに発揮されない可能性があるのです。

AI(人工知能)のトレーニング方法については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

人工知能のトレーニング方法とは?AI人材の育成方法も解説

手順がブラックボックス化される

AIは高度化する一方で、「なぜその結論に至ったのか」という根拠を明確に説明できないという問題が浮上しています。AIは、複雑なアルゴリズムに基づいて判断を行うため、過程が人間には理解しにくいブラックボックス化しているためです。

ブラックボックス化とは、業務の内容や進め方、状況などを特定の関係者しか把握しておらず、周りからは業務の実情が伺い知れない状態のことを指します。まるで、黒い箱(ブラックボックス)の中で業務が行われているかのように、詳細が見えないことからブラックボックス化と呼ばれているのです。

製品の品質や安全性が直接関わるため、AIの判断に根拠がなければ、関係者からの信頼を得ることが困難でしょう。例えば、AIが不良品と判定した製品について、「なぜこの製品が不良品だと判断されたのか」という疑問が生じ、最終的な判断を人間が行う必要が出てくる可能性があるのです。

維持コストがかかる

AIによる検品システムの導入は、初期投資だけでなく、運用面でのコストも発生します。アルゴリズムの定期的なメンテナンスやAI画像認識ツールのライセンス費用などが必要となるためです。

そのため、人件費削減とイコールで捉えるのではなく、トータルのコストバランスを慎重に検討する必要があります。特に、小規模な企業にとっては、初期投資に加えて、継続的な運用コストが負担になる可能性も考えられるでしょう。

AIを活用した検品事例

以下に、AIが検品業務でどのように活用されているのか、具体的な事例をご紹介します。それぞれの事例を通して、AIが現場にもたらす変化について詳しく見ていきましょう。

異物混入の防止

食品メーカーにとって、製品の品質確保は最も重要な課題の一つです。特に、異物混入は消費者の信頼を失うだけでなく、企業の存続に関わる深刻な問題となりえます。従来、原材料の検品は人手で行われてきましたが、人材確保の難しさや、人的ミスによる見落としといった課題が常につきまとっていました。

この課題を解決するため、ある企業はAIを活用した装置を開発しました。この装置は、従来の画像認識技術では検出が難しかった微細な異物も高精度に検出し、合格品以外のすべてを不良品と判定することで、異物混入のリスクを大幅に低減することに成功しました。

従来の画像認識装置は、高額なことが導入の障壁となっていましたが、従来の装置の10分の1を目標価格として開発され、中小企業でも導入しやすい価格を実現しました。これにより、グループ内の他の食品メーカーへの展開もスムーズに進められています。

離乳食用ポテトの検品

食品メーカー大手のキユーピーは、1日100万個以上のダイス型ポテトを扱う離乳食製造において、AIを活用した革新的な検品システムを導入し、注目を集めています。従来、離乳食に使用されるポテトは、形状や色が均一ではなく、品種も様々なため、目視による検品が主流でした。

しかし、目視による検品は、担当者の疲労によるミスや品質基準の主観的な判断などの課題を抱えていました。特に、茶色く変色したポテトは、人体に害がない場合でも消費者の不安を招く可能性があり、厳密な検品が求められていました。キユーピーは課題を解決するため、AIを活用したプログラムを開発しました。

当初の不良品を特定するアプローチでは、複雑な形状や色の変化に対応できませんでしたが、良品のポテト画像を大量に学習させることで、AIに良品を識別させるという手法を採用したのです。この結果、AIは形状や色などの多様な特徴から良品を正確に判別できるようになり、不良品の選別を効率的に行えるようになったのです。

自動車のクッションゴムの検品

昭和26年創業の老舗ゴムメーカーである新光ゴム工業は、2020年からパトスロゴス社のAI外観検査システムを導入し、自動車用クッションゴムの製造ラインにAIによる検品を導入しました。従来の目視に加え、AIが製品の外観を検品することで、高精度な品質管理を実現しています。

新光ゴム工業では、2015年より外観検査の専用装置を3機種導入していましたが、対象製品が変更になると別の装置が必要となるため、柔軟性に欠けるという課題がありました。一方、AI外観検査システムは、AIを活用することで様々な製品に対応できる汎用性の高いシステムです。

そのため、製品の変更にともなう装置の入れ替えが不要となり、コスト削減と生産性の向上に繋がりました。また、ベテランの担当者だけでなく、経験の浅い新人でも同じ品質レベルで検品を行うことができるため、人材育成の効率化にも貢献しています。

AIでの検品で効率を向上することが可能

今回は、AIで検品を行うメリットやAIで検品が活用されている業界、AIを活用した検品事例を解説しました。AIによる検品作業は、生産性の向上やヒューマンエラーの防止という大きなメリットをもたらす一方で、膨大な量のデータが必要な点や手順のブラックボックス化などの課題も抱えています。

現在のAIは、あらかじめ定められた検査項目に基づいた判断が中心であり、目視による総合的な判断のような柔軟な対応は苦手としています。しかし、今後のAI技術の発展により、より複雑なパターンを学習し、人間の直感に近い判断ができるようになることが期待されています。

AIは今後、検品工程において不可欠な存在となるでしょう。ただし、現時点ではAIの能力には限界があるため、AIと人間の協働がより効率的な生産システムを実現することが重要です。

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