人手不足に悩むスーパー業界において、ライフコーポレーションはAIを活用した需要予測による自動発注システムを全店舗の生鮮部門に導入することを発表しました。従来では需要予測が難しかった消費期限の短い生鮮品も実証店では畜産商品の発注時間を3〜4割削減し、廃棄率を10ポイント改善する成果を上げているようです。
近年では、ライフコーポレーションのように在庫管理システムにAIを導入する企業が増えています。今回は、従来の発注とAI発注の違いやAI発注のメリットデメリット、導入事例などをご紹介します。
AI発注とは?
AI発注とは、AIを活用して商品の発注を自動化するシステムのことです。AI発注は、過去の販売データや在庫状況、顧客情報などを分析して、需要を予測することで、適切な発注量や発注時間の削減などを実現します。
従来の発注とAI発注との違い
従来の発注とAI発注は発注方法や、確認方法、速度や精度など様々な点で大きく異なります。従来の発注とAI発注の違いは、以下の通りです。
発注 | 人手 | AI |
発注方法 | 発注書を作成し、メールやFAXで送信 | 自動化システムで行う |
確認方法 | 過去の注文履歴や在庫状況を人の目で確認 | 過去の注文履歴や在庫状況などを分析し、最適な発注量を自動的に算出 |
処理速度 | 遅い | 速い |
精度 |
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コスト |
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AI発注のメリット
AI発注は需要を的確に予測し、最適なタイミングで最適な量を発注する革新的なシステムです。AI発注により、様々なメリットを実現することができます。
以下で詳しく解説します。
人為的なミスを減らせる
AI発注の大きなメリットの一つは、人為的なミスを減らせることです。従来行っていた人間による発注では、担当者の入力ミスや勘違いなどで、在庫切れや過剰在庫、発注漏れなどの問題が起こりやすいという課題がありました。
しかし、AIによる発注システムでは勘違いや入力ミスが起きないため、このような人為的なミスを大幅に削減することができます。
発注作業が効率化できる
AI発注を導入することで、発注処理の大部分を自動化することができるので、担当者の作業時間を大幅に削減することができます。また、AIは人間と異なり24時間365日の稼働が可能である上に休憩や睡眠の必要もないため、従来は発注作業が行えなかった時間帯にも対応できるようになり、業務全体の処理速度が加速するでしょう。
削減された時間は、より付加価値の高い業務に注力することができます。
在庫が最適化できる
AI発注の大きなメリットの一つに、在庫が最適化できることが挙げられます。従来の人的な発注では、販売データや在庫状況などから発注量を判断していましたが、非常に時間と労力がかかっていました。
加えて、需要の変動に対応しきれず、在庫過多や欠品が発生してしまうこともありました。しかし、AI発注であれば、過去の販売データや需要予測、在庫状況などをリアルタイムで分析し、最適な発注量を自動で判断することが可能です。
そのため、必要以上の在庫を抱えず、在庫管理コストを削減することができます。また、在庫の量が最適化されることで、スペースを有効活用することができるでしょう。
AI発注のデメリット
AI発注は多くのメリットをもたらす一方で、デメリットもあります。以下では、AI発注のデメリットを詳しく解説します。
AI発注システムの導入や運用にコストがかかる
AI発注システムを導入するには、コンサルタントに依頼してシステム導入を支援してもらうことが一般的でしょう。コンサルティング料はスキルや経験、導入システムによって異なりますが、それなりの費用がかかります。
さらに、AI発注システムを稼働させるためのインフラやシステム保守、データ更新費用がかかる上に、システム管理者などの専門的な人件費も必要となるでしょう。
需要予測や発注業務の知識が増えない
AI発注システムを導入することで自動発注を行うため、担当者は発注業務に関わる機会が減少します。そのため、需要予測や発注に関する知識や経験が蓄積されなくなるという問題があるでしょう。
担当者は発注に関する深い知識を身につける機会が少なくなり、AI発注システムが不具合を起こした場合、適切な発注判断を下せなくなる可能性が考えられます。
即精度の高い予測ができるわけではない
AI発注システムは導入しただけでは、十分な精度で需要を予測できません。AI発注システムは、大量の学習データに基づき精度を向上させていくためです。
そのため、導入した初期段階では、十分な学習データが蓄積されておらず、AI発注の予測精度が低い場合があります。
運用するにはノウハウが必要
AI発注システムは、導入すれば自動的に業務が効率化されるわけではありません。AIシステムを効果的に運用するには、AIの仕組みやデータ分析に関する知識、メンテナンスなどのノウハウなどが重要です。
AI発注の担当者を育成するための教育プログラムや、外部コンサルタントの支援が必要になる場合があります。
AI発注の導入事例
AI発注を導入しても効果があるのか不安、と感じる方も多いでしょう。導入事例を見ると、AI発注は様々な業種・規模の企業で驚きの成果を生み出しています。
以下で、いくつかのAI発注の導入事例をご紹介します。
発注時間を最大4割削減
株式会社セブンイレブン・ジャパンは、AIを活用した発注支援システムを全国21,000店舗に導入しています。2020年1月の一部店舗での導入開始以来、AIによる高精度な需要予測と自動発注機能により、発注時間を最大4割削減しました。
セブンイレブン・ジャパンの従来の発注では、担当者が 約2,800種の販売動向を確認し、基準在庫数を設定しており、多くの時間がかかっていました。AI発注の導入で発注に費やす時間を大幅に削減でき、力を入れたい商品を検討することができたようです。
時間とコストを大幅削減
オーストラリアのブランド「メルローズヘルス」の日本代理店である株式会社エムエイチジェイは、1日のうち3~4時間もの時間を費やしたメールでの受発注業務に大きな課題を抱えていました。また、リアルタイムの在庫状況把握が困難で、発注漏れや在庫切れが発生したり、注文情報や在庫情報が散乱したりしていました。
AI発注システムを導入することで課題を解決し、以下の成果を実現しています。
- 受発注業務にかかる時間を1時間以内に短縮し、業務効率を大幅に向上
- リアルタイムの在庫管理で、発注漏れや在庫切れを防止
- 注文情報や在庫情報の一括管理で、データ分析や意思決定を迅速化
- 迅速かつ正確な受発注処理で、顧客満足度を向上
廃棄ゼロと在庫の最適化
アパレル業界を牽引するH&Mは「一切廃棄はしない」という革新的な理念を掲げています。店舗に並ぶ商品は、AIによる分析に基づいて発注されています。
膨大な販売データや顧客情報、トレンドなどから各店舗に最適な商品量を算出し、商品の過剰在庫や欠品を劇的に削減し、廃棄物をゼロに近づけることを可能にしたようです。データが蓄積されるにつれてアルゴリズムが発達するため、さらに精度の高い予測が可能になり、売り上げ向上や在庫の削減につながっているようでした。
AI発注を導入する上で注意すること
AI発注は多くのメリットをもたらしますが、導入すれば必ず成功するわけではありません。AIを導入する前にしっかりと準備をしておかなければ、思わぬ落とし穴にハマってしまう可能性もあるのです。
以下で、導入する上で注意すべきポイントを詳しくご紹介します。
長期的な視点で導入を検討する
先述したように、AI発注システムの精度を向上させ需要を予測するには良質なデータを学習させ、定期的に更新する必要があります。施策をして本格導入するには、多くの時間とコストがかかるでしょう。
そのため、AI発注システムは短期的な効果を期待するのではなく、長期的な視点で導入を検討しましょう。経営層や担当者がAI発注システムのメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。
定期的にシステムを見直す必要がある
AI発注システムは最適な発注量を自動で判断しますが、導入後も定期的にシステムを見直す必要があります。顧客のニーズや市場環境は常に変化しているため、過去の学習データに基づいた需要予測では現在の需要を正確に把握できないためです。
定期的にAI発注システムを見直し、最新の需要データを学習させることで、精度を向上させることができます。また、AI発注システムはデータ量やモデルの複雑さに応じ、精度が向上します。
そのため、データの追加モデルの更新を行う必要もあるでしょう。
補助的なツールとして活用する
AI発注システムは、あくまでも補助的なツールとして活用し、最終的な発注判断は人の経験や知見を活かして行うことが重要です。AI発注システムの精度は、学習データの質に大きく左右されます。
そのため、データに誤りがあったり不足していたりすると、精度が低下する恐れがあるでしょう。また、AIは災害や流行病などの不測の事態を予測できません。
不測の事態が発生した場合、AIの予測結果に基づいて発注を行うと、在庫切れや在庫過多になる恐れがあります。そのため、AI発注システムに任せきりにするのではなく、定期的な在庫状況の確認やイレギュラーな需要が発生した場合は迅速に対応し、発注量を調整する必要があるでしょう。
担当者向けに研修を実施する
先述したように、AI発注システムは人の経験や知見と組み合わせることで、より効果的に活用することができます。人とAIが協働することで、在庫の最適化や業務効率化、利益向上を効果的に実現することができるでしょう。
AI発注システムは、人的な発注とは仕組みが異なるため、担当者はAI発注システムの仕組みや運用の知識、精度を向上させるための方法などを理解することが重要です。研修を実施することで、担当者はAIに関する知識やスキルを習得し、AI発注システムを効果的に活用することができるでしょう。
AI発注を導入するならAI研で知識を深めよう!
AI発注は発注業務の効率化や在庫最適化、売上向上など、様々なメリットをもたらします。しかし、先述したようにAI発注を導入しても知識を持って運用しなければ効果を最大限に引き出すことができません。
そのため、AIに関する知識を深めて正しく理解することが不可欠です。しかし、何から学べばいいのかわからない、という方もいらっしゃると思います。AIの知識を深める方法は様々ありますが、専門家から直接学ぶことができるセミナーがおすすめです。
AI研究所では、AIに関するセミナーを定期的に開催しています。AIの基礎知識から実践的な活用方法まで、幅広いテーマを開催しているため自社のニーズに合ったセミナーを見つけることができるでしょう。
また、専門知識がなくても理解できるよう丁寧に解説するため、AIに関する知識がない方も安心です。以下でAI研究所のおすすめのセミナーをご紹介します。
DX完全攻略ハンズオンセミナー
AI研究所のDX完全攻略ハンズオンセミナーは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の知識と技術を実践形式で習得可能です。未経験でも1日でDXについて理解することができ、会場受講はもちろん、オンラインでも学習できるので、いつでもどこでも学べます。
DX完全攻略ハンズオンセミナーは、実務に即した課題をトレーニングするため、DXを実現していく実装方法を習得できます。DXの基礎知識や作業自動化ロボットの作成方法など、1日で完全制覇できるため、受講後はすぐにDXを業務でご活用いただけるでしょう。
AIプロフェッショナル人材育成コース
AI研究所のAIプロフェッショナル人材育成コースは、AIの基礎知識から応用スキルまでを体系的に学べる短期集中型の学習プログラムです。未経験でも3日間でAIプログラミングについて理解することができます。
AIに関する必要な知識はもちろん、プログラミングの手法や学習モデル、実践的なAIプログラムの実装まで学ぶため、受講後はAIを業務で利用できるでしょう。AIプロフェッショナル人材育成コースは、e-ラーニング形式の受講はないものの、会場受講やライブウェビナーがあり、講師とチャットや音声通話で質問やレクチャーなどのやりとりが可能です。
また、講師が受講者の操作画面を見ながら操作のサポートをするため、初めての方でも安心して受講いただけます。
AI発注は今後普及していくことが予想される
今回は、従来の発注とAI発注の違いやAI発注のメリットデメリット、導入事例などをご紹介しました。AI発注システムは従来の人の手による発注と比べて、多くのメリットがあるため、今後ますます普及していくことが予想されます。
しかし、メリットもある一方でデメリットもあるため、理解した上で、適切に導入することが重要です。AI発注システムを有効活用すれば、企業の利益向上と業務効率化につなげることができるでしょう。
AI発注システムの導入には、AIに関する知識を深めて正しく理解することが不可欠です。AI研究所では、今回ご紹介したセミナー以外にも多くのセミナーを提供しています。
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