【2025】言語モデルとは?生成AIとの違いや仕組み・活用事例を詳しく解説

日立製作所は、企業が自社の業務に最適なAIを導入できるように、「業務特化型LLM構築・運用サービス」を開始しました。規模や業種を問わず、幅広い企業のAI活用を支援します。例えば、金融機関のコールセンターでは、専門用語などの特別な知識をAIに学習させることで、複雑な顧客の問い合わせにもスムーズに対応できるようになるようです。

また、情報システムの障害発生時にもAIがシステムの設計図や技術者の知識に基づき、的確な対処策を提示できるようになるなど様々な業務の効率化が期待されます。日立はこれまでに自社の様々な事業分野で生成AIを活用し、多くの事例を蓄積してきました。従業員が日々生成AIを活用することで、多くのノウハウが蓄積されており、このノウハウを顧客にも提供していくようです。

今回は、言語モデルの概要や生成AIとの違い、仕組みや活用事例を解説します。

言語モデルとは

言語モデルは、コンピュータが理解した人間の言葉を使って会話するための「教科書」のようなものです。私たちが学校で英語を学ぶ際には、文法や単語を学習し、多くの英文を読むことで英語を習得するように、コンピュータも同様に膨大な量のテキストデータを学習することで、どの単語がどの後に続くのか、自然な文章を学ぶことができます。

例えば、スマートフォンで文章を入力している際に予測される単語が表示されるのも、言語モデルの能力です。近年はAIの急速な発展により、学習可能なデータの量が増え、大規模なデータを用いて学習させた言語モデルを大規模言語モデルと呼びます。LLMとも呼ばれる大規模言語モデルは、現代のビジネスにおいて欠かせない存在となっています。

LLMについては以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

LLMとは?仕組みや種類・できることビジネス活用例を紹介

大規模言語モデルと生成AIの違い

生成AIと大規模言語モデルは、どちらもAIのカテゴリに属しますが、機能や得意とする分野に明確な違いがあります。生成AIはその名の通り、文章や画像、音楽など、さまざまな種類のコンテンツを生成できる人工知能のことです。一方、大規模言語モデルは、膨大なデータを学習することで、人間が使う言葉を深く理解し、それに基づいた文章を生成することができます。

生成AI言語モデルを含む広範な概念で、さまざまな種類のデータを生成できる
大規模言語モデル生成AIの重要な一部分であり、自然言語処理に優れている

ちなみに、大規模言語モデルは高度な文章生成などを行うものの、画像や音声、動画などの生成は得意ではありません。

大規模言語モデルの仕組み

大規模言語モデルの仕組み

大規模言語モデルはどのように言語を理解し、テキストを生成するのでしょうか。以下で、大規模言語モデルの仕組みを見てみましょう。

①トークン化する

トークン化とは、テキストデータをコンピュータが処理しやすい数値データに変換することです。この処理では、文章を構成する単語や句読点などの要素を「トークン」と呼ばれる小さな塊に分割します。

コンピュータは、数値で表現されたデータしか処理できないため、テキストデータも数値に変換する必要があります。数値化するためにトークン化を行うことで、文章の意味を理解し、さまざまな自然言語処理タスクを実行できるようになるのです。

②ベクトル化する

文章は単語などのトークンに分割されますが、このトークン自体はまだコンピュータにとって抽象的な表現です。ベクトル化では、各トークンに固有の数値のベクトルを割り当てることで、コンピュータがトークンの意味を数値として捉えられるようにします。この数値化された表現により、単語同士の関係性や文脈を理解し、より高度な言語処理が可能になるのです。

③ニューラルネットワークで特徴を掴む

ニューラルネットワークは、大規模言語モデルの主な要素となる人間の脳のような多層構造を持ちます。テキストデータはニューラルネットワークで段階的に変換され、特徴を抽出・学習するため、単語の出現頻度や単語同士の相互関係や文脈などの言語情報が把握できるようになります。

ニューラルネットワークの学習により、大規模言語モデルは高度な言語処理能力を身につけるため、自然な文章生成や質問への回答が可能です。

④文脈を理解する

大規模言語モデルが言語処理能力を発揮するためには、文脈理解が不可欠です。入力された文章の文脈や背景を深く理解することで、文全体の意味や文と文とのつながりも把握できるようになります。

文脈を理解することで、大規模言語モデルは人間の言語をより深く理解し、質問に対する適切な回答や文章の要約、文章生成など、多岐にわたる自然言語処理タスクを高精度で行えるようになるのです。

⑤デコードして出力する

デコードとは、大規模言語モデルが内部で処理していたベクトル化を人間が理解できる言葉に変換する作業です。大規模言語モデルは文脈から内容を理解し、最も適切な単語やフレーズを選択します。このプロセスを通じて、大規模言語モデルは人間が自然に使うような言葉で表現された文章を生成できるのです。

大規模言語モデルの活用事例

大規模言語モデルは、言語を扱う様々な分野で活用されています。以下で、大規模言語モデルの具体的な活用事例をご紹介します。

カスタマーサポート

従来のチャットボットは、あらかじめ決められたパターンやキーワードに反応するものが主流でした。そのため、複雑な質問や状況に対応することが難しく、ユーザーとの自然な会話は実現できませんでした。

しかし、大規模言語モデルを活用することで、チャットボットはまるで人間と会話しているかのような、より自然で流暢なやり取りが可能です。膨大なデータを学習した大規模言語モデルは、文脈を理解した適切な回答を生成できるため、カスタマーサポートなど、複雑な質問に対応する必要がある場面でも、人間に代わって迅速で正確な回答を提供することができます。

カスタマーサポートに大規模言語モデルを用いたチャットボットが導入されると、商品の使用方法に関する質問やトラブルシューティング、製品に関する意見や要望などの広範囲な問い合わせに対応できるようになります。ユーザーの質問意図を正確に捉え、それに合わせて最適な情報を提供することで、ユーザーの満足度向上につながります。

AIチャットボットについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2025】AIチャットボットの仕組みとは?導入で失敗しないためのポイントも詳しく解説

文章作成

企業や個人がWebサイトやブログなどを作成する際に、大規模言語モデルを活用することで、短時間で高品質な文章を生成できるようになりました。特に、大規模言語モデルはSEO対策が施された記事や読者の興味を引きつける魅力的なキャッチコピーなど、専門的な知識が必要とされるコンテンツの作成にも大きな力を発揮します。コンテンツ作成にかかる時間と労力を大幅に削減し、より多くのコンテンツを効率的に制作することが可能になったのです。

コード生成

大規模言語モデルに聞くだけで、コード例などを得られるため、開発スピードの向上やプログラミングの学習コストが大幅に削減され、多くの開発者が高度な技術に挑戦できる環境が整いつつあります。また、大規模言語モデルは学習済みの膨大なデータに基づき、コード内にある潜在的なバグなどを自動的に検出し、修正案を提示することができます。

しかし、学習に使用されたデータセットに大きく依存するため、非対応のプログラミング言語やフレームワークが存在することにも注意が必要です。

マーケティングや市場調査

大規模言語モデルは、近年、マーケティングや市場調査の分野においてもその可能性を大きく広げています。企業が新たな製品を市場に投入する際、消費者のニーズやトレンドを正確に把握することは、成功の鍵を握ります。従来はアンケート調査などを行っていましたが、大規模言語モデルにより、効率的で精度の高い情報収集が可能になりました。

そのため、ソーシャルメディアなどに投稿されたテキストデータをリアルタイムで分析し、消費者の感情や意見を自動的に抽出することが可能です。企業は、従来のアンケート調査では得られなかったような消費者の生の声を迅速かつ詳細に把握することができるため、製品開発の成功率向上や市場競争力強化につなげることができます。

大規模言語モデルの課題

大規模言語モデルの課題

大規模言語モデルは、人間に限りなく近い自然な文章の生成や理解が可能になりました。しかし、その能力は万能ではなく、克服すべき課題が数多く存在します。

以下で詳しく見ていきましょう。

学習データの量により精度と安定性が左右される

大規模言語モデルは、学習データの量に制限があるため、生成される文章の質は、学習データの質や量に大きく左右されます。専門的な知識を必要とする分野では、まだ人間の専門家には及ばない精度でしょう。

完璧なフィルタリングができない

大規模言語モデルは、その生成能力の高さが魅力である一方で、不適切な情報や偏った意見を生み出す可能性もあります。このような状況を改善するためには、大規模言語モデルの出力を厳密に管理し、望ましくない生成を抑制する仕組みが求められます。

しかし、現段階では、いかなるフィルタリングシステムも完璧とは言い難いのが現状です。

セキュリティ対策を強化する必要がある

大規模言語モデルの安全性と信頼性を確保するためには、ユーザーが安心して利用できる環境を整備することが重要です。具体的には、セキュリティ対策の強化を通じて、大規模言語モデルが生成する情報やサービスの信頼性を高め、不正アクセスやデータ漏洩などのリスクを低減させることが求められます。

大規模言語モデルは多くの分野での活用が期待されている

今回は、言語モデルの概要や生成AIとの違い、仕組みや活用事例を詳しく解説しました。大規模言語モデルはすでに多くの企業が導入し、業務効率化や新たなビジネスモデルの創出などの大きな成果を上げています。

しかし、大規模言語モデルにはまだ解決されていない課題やリスクも存在します。これらのリスクを完全に無視することはできませんが、大規模言語モデルの持つ可能性を最大限に引き出すためには、積極的に導入を検討していく必要があります。大規模言語モデルを導入していない企業は、専門家の知見を借りて、自社のビジネスにをどのように活用できるか、導入にあたって必要なリソースや技術、リスク管理の方法などを検討してみてはいかがでしょうか。

AI研究所では、大規模言語モデル導入に関する無料相談窓口を開設しております。AI研究所の数々の現場をこなすコンサルタントが、貴社の課題や目標に合わせた大規模言語モデル導入戦略をご提案いたします。まだ大規模言語モデルを導入していない企業は、この機会にぜひご相談ください。

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