【2025】デジタルインボイス導入の9つのメリットとは?電子インボイスとの違いや登録が必要ないケース

岐阜県は、中小企業の業務効率化を目的として、デジタルインボイスを活用するためのデータ連携基盤の構築を支援しています。地元金融機関やシステム会社、関係機関と連携し、中小企業でも手軽にデジタルインボイスを導入できる環境を整えることで、県内企業全体のDXを加速させ、地域経済の活性化に貢献することを目指しています。

今回は、デジタルインボイスの概要や電子インボイスとの違い、デジタルインボイス導入の9つのメリット、デメリット、登録が必要ないケースを解説します。

デジタルインボイスとは

デジタルインボイスは、従来の紙の請求書を電子化することで、異なるシステム間でのスムーズなデータのやり取りを実現するものです。これにより、請求から支払い、入金消込までの経理業務を大幅に効率化することができます。

また、従来の紙ベースの請求書発行や受領業務が簡素化されるため、人為的なミスを減らし、企業間の情報共有もスムーズになり、サプライチェーン全体の最適化にもつながると考えられています。デジタルインボイスでは、国際的な標準規格であるPeppol(ペポル)に基づいたシステムが世界中で普及しています。

日本でも、デジタルインボイスの仕様としてPeppolが採用され、企業間の取引で電子的な請求書のやり取りが進められています。デジタルインボイスは、DXを成功させるための土台となる企業のデジタル化を加速させる重要な要素なのです。

DXについては以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】DXとはなに?わかりやすく具体例やメリットをご紹介!

デジタルインボイスと電子インボイスの違い

デジタルインボイスと電子インボイスは、どちらも電子化された請求書を指す言葉として使われることがありますが、厳密には異なる意味を持ちます。

デジタルインボイス電子インボイスの中で標準化されており、システム間での連携が容易なもの
電子インボイス電子化された請求書全般を指す広い意味での概念

電子インボイスは紙の請求書を電子データに変換したもので、PDFファイルなど、さまざまな形式で保存することができます。インボイス制度では、電子帳簿保存法の要件を満たせば、これらの電子データも適格な請求書として認められていますが、電子インボイスには決まった形式がないため、異なるシステム間でのやり取りが難しく、手作業でのデータ入力が必要になる場合もあります。

一方、デジタルインボイスは、電子インボイスの一種であり、さらに高度な標準化が施されたものです。国際的な標準規格に準拠することで、異なるシステム間でもデータのやり取りがスムーズに行えるように設計されているため、請求書の発行から入金確認までの一連の業務を自動化し、大幅な時間とコストの削減ができるのです。

デジタルインボイス導入の9つのメリット

デジタルインボイス導入の9つのメリット

デジタルインボイス導入のメリットには以下の9つのメリットがあります。

  1. 経理業務の自動化ができる
  2. 互換性の問題がない
  3. 保管や管理コストが削減できる
  4. 人為的なミスを防止できる
  5. データの改ざんを防止する
  6. 海外企業との取引がスムーズに行える
  7. 日本の経理業務の慣行に対応している
  8. 資金回収までの時間が短縮できる
  9. リモートワークに対応できる

各項目を詳しく解説します。

①経理業務の自動化ができる

デジタルインボイスの導入は、経理業務の効率化に貢献します。請求書の作成はもちろん、入力や承認、支払までの一連の処理を自動化することで、人為的なミスを防止し、業務時間を大幅に削減できます。また、データの正確性向上により、決算処理の効率化や経営判断の精度向上にも繋がります。

②互換性の問題がない

従来、企業間で異なるバックオフィスソフトを利用していた場合、デジタル文書のやり取りには互換性の問題があり、同じ会計システムを利用する必要がありました。しかし、デジタルインボイスは、国際的なネットワークを通じてやり取りされるため、企業が利用するシステムが異なっていても、互換性を保ちながらデータ交換が可能です。

標準化された仕組みのおかげで、さまざまな企業がスムーズに取引を進め、業務効率化を図ることができるのです。

③保管や管理コストが削減できる

インボイス制度の導入により、売り手・買い手双方に適格請求書の7年間の保存義務が課せられました。紙の請求書を保管するには、大量のスペースが必要でしたが、デジタルインボイスであれば、クラウド上にデータを保存することができるため、物理的な保管スペースはほとんど必要としません。

また、紙の請求書はファイリングや保管、管理などの作業に多くの手間と時間がかかりますが、デジタルインボイスでは、作業が自動化されるため、大幅な時間短縮が可能です。このように、デジタルインボイスは、保管スペースの削減や事務作業の効率化など、様々なメリットをもたらします。

④人為的なミスを防止できる

従来の請求書処理では、経理担当者は膨大な量の数字と向き合い、税率計算や仕訳などの複雑な作業を繰り返していました。 しかし、人の手による作業のため、どうしても入力ミスや計算間違いなどの人為的ミスが発生しがちでした。

デジタルインボイスを導入することで、人為的ミスを大幅に削減することができます。 システムが自動で計算や入力を行うため、人による作業が最小限に抑えられ、ヒューマンエラーのリスクを大幅に低減できるのです。経理担当者は、煩雑な作業から解放され、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。

⑤データの改ざんを防止する

デジタルインボイスには、電子署名を付加することで、一度作成されたデータが改ざんされていないことを証明できるという特徴があります。電子ファイルへのアクセス履歴を詳細に記録できるため、誰がいつどのような操作を行ったかが明確になり、不正利用の防止にも繋がります。

総務省ではデジタルインボイスのセキュリティをさらに強化するため、適格請求書発行事業者情報を付与した電子署名「eシール」の導入をし、デジタルインボイスの信頼性と透明性を高める取り組みをしています。

⑥海外企業との取引がスムーズに行える

デジタルインボイスは、国内の企業間の取引だけでなく、国際的なビジネスにおいても真価を発揮します。 特に、国際的な標準規格に準拠することで、言語や通貨、税制などの国境を越えた課題を克服したスムーズな取引が可能になります。

Peppolは、ヨーロッパを中心に世界40カ国以上で利用されている実績があり、グローバルなビジネス環境で高い信頼性と互換性を持っています。 そのため、海外の取引先との間で、請求書の作成ややり取りにかかる時間とコストを大幅に削減し、業務効率の向上に繋がっています。

⑦日本の経理業務の慣行に対応している

日本の企業では、複数の商品やサービスをまとめてひとつの請求書にする月極の請求書がよく使われています。従来のデジタル化されていない請求書では、対応するのが難しかったのですが、Peppolを日本向けにカスタマイズした「JP PINT」は、日本のビジネス慣習に合わせた月極の請求書にも対応できるよう設計されています。そのため、日本の企業は、世界標準のデジタルインボイスのメリットを受けつつ、従来の業務をそのまま続けることができるようになりました。

⑧資金回収までの時間が短縮できる

従来は請求書の発行後、資金回収までに長期間を要し、企業の資金繰りを圧迫する問題がありました。しかし、デジタルインボイスの導入により、金融機関は迅速な与信判断や融資の実行が可能となり、資金回収期間を大幅に短縮することが期待されます。

従来、1ヶ月から3ヶ月程度かかっていた資金回収が、デジタルインボイスによって早まることで、企業は回収された資金を新たなビジネスへの投資に迅速に回すことができ、経営の効率化に繋がるのです。

⑨リモートワークに対応できる

クラウドサービスを活用したデジタルインボイスシステムを導入することで、場所を選ばずに請求書の作成や送信、保存などの一連の業務がオンライン上で完結できるようになります。そのため、従業員はオフィスに縛られることなく、リモートワーク環境でも円滑に業務を行うことが可能となり、柔軟な働き方ができます。

デジタルインボイス導入のデメリット

デジタルインボイス導入のデメリット

デジタルインボイス導入には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。以下で詳しく解説しましょう。

利用にコストがかかる

メールで請求書を送受信する際は、特に費用を意識せずに済むことが多いですが、Peppolネットワークを利用してデジタルインボイスを送受信する場合には、アクセスポイントと呼ばれる中継地点を経由する必要があります。このアクセスポイントの運営事業者に対して、デジタルインボイスを送信するごとに費用が発生します。

ただし、多くの企業は請求書送信の外部サービスを利用して間接的にPeppolネットワークにアクセスするため、アクセスポイントの運営事業者に直接費用を支払うわけではありません。しかし、利用する請求書送信サービスの料金の中に、Peppolネットワークを利用するための費用が含まれているため、間接的に費用を負担していることになります。

社内ルールの構築や社員教育が必要になる

企業では、デジタルインボイスの取り扱いに関するルールを事前に定め、万が一のデータ消失や情報漏洩を防ぐための対策を講じることが重要です。具体的には、デジタルインボイスの保存システムに不具合が生じたり、担当者のミスによってデータが失われたりしないよう、厳格な管理体制を構築する必要があります。

また、情報漏洩のリスクに備え、データへのアクセスを制限するためのパスワード設定や、社員に対する情報セキュリティ教育の実施も有効です。これらの対策をしっかりと行うことで、法令遵守はもちろん、企業の信用力向上にもつながります。

AI研究所の人材育成カリキュラムは、ヒアリングを通して最適なDX化をご提案するとともに、DX化を推進するために必要なスキルの教育から導入までをサポートいたします。そのため、社員のセキュリティ意識を劇的に向上させることができるでしょう。

DX社内研修の重要性と効果については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】DX社内研修の重要性と効果は?初期準備から成果評価までの方法

取引先によりデジタルインボイスを導入していない場合がある

取引先によっては、デジタルインボイスの導入に消極的で、従来通りの紙による請求書発行を希望する場合があります。このような状況では、企業は紙とデジタルインボイスの両方に対応する必要が生じ、経理業務の負担が増大する可能性があるでしょう。

紙とデジタルインボイスのどちらか一方に絞るか、それとも両方に対応するかは、取引先のニーズや自社の状況を総合的に判断し、最適な方針を決定する必要があります。もし、両方に対応することになった場合は、新たなシステムの導入や業務体制の構築が必要となるため、十分な準備期間を確保することが重要です。また、デジタルインボイスへの移行に際しては、取引先への事前の連絡と同意を得るなど、柔軟な対応が求められます。

デジタルインボイス登録が必要ないケース

インボイス登録は、すべての事業者が行う必要はありません。インボイスの発行が、自社や取引相手にとって必要かどうかが、登録の有無を分けるポイントとなります。

取引相手が仕入税額控除をしない一般消費者や免税事業者が多い場合、インボイスは必要ありません。また、取引相手が簡易課税制度を適用している場合も、インボイスの発行は不要です。簡易課税制度とは、中小企業の事務負担を軽減するため、消費税の納税額を簡単に算出できる制度です。建設業であれば、売上に対する一定の割合(60〜70%)を掛けた金額が、納付する消費税額となります。

インボイス登録が必要ない場合として、以下のような状況が考えられます。

  • 取引相手がインボイスを必要としない個人や免税事業者
  • 競合相手が少ない
  • 仕入税額控置の経過措置がある

ただし、上記の状況はあくまで一例であり、個々の事業者の状況によって異なります。インボイス制度は複雑なため、ご自身の事業に合った判断をするためには、専門家にご相談することをおすすめします。

デジタルインボイスを正しく理解して事前準備しよう

デジタルインボイスを正しく理解して事前準備しよう

今回は、デジタルインボイスの概要や電子インボイスとの違い、デジタルインボイス導入の9つのメリット、デメリット、登録が必要ないケースを解説しました。デジタルインボイスは、データ入力の自動化による人為的なミス防止や、データの改ざん防止などのメリットが期待できる一方で、保存に関するルールの整備や取引先との対応など、導入に際して注意すべき点もいくつか存在します。

また、電子インボイスを導入するためには、電子データの保存に関するルールをしっかりと整備する必要があり、電子帳簿保存法などの法規制を遵守し、適切な保存期間や保存方法を設定することが重要です。電子インボイスの導入は、企業の業務効率化に大きく貢献する可能性を秘めていますが、そのメリットとデメリットを事前にしっかりと理解し、自社の状況に合わせて最適な導入計画を立てることが大切です。

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