生成AIの進化は目覚ましく、生活に浸透しつつあります。 様々な場面でその名前を目にする機会が増えましたが、 今更どうやって使えばいいんだろう、と感じている方もいるかもしれません。
特にIT企業にお勤めの方は、「生成AIを活用して業務効率を上げたい」「最新の技術動向を把握しておきたい」 という思いがあるのではないでしょうか。
そこで、今回は、生成AIを使いこなしたいという方に向けた7Rプロンプトや成果を出すためのコツをご紹介します。
7Rプロンプトとは
生成AIを効果的に活用するためには、適切な指示やプロンプトが重要です。そこで注目されているのが、野口竜司氏によって考案された「7Rプロンプト」というフレームワークです。
7Rプロンプトは、生成AIとの対話において、より良い結果を得るための7つの要素で構成されています。
このフレームワークを活用することで、プロンプト設計を構造化し、生成AIがユーザーの意図を正確に理解し、最適な応答を生成するのをサポートします。
7Rプロンプトの要素
7Rプロンプトは、以下の7つの要素で構成されています。
①Request | 依頼 |
②Role | 役割 |
③Regulation | 形式 |
④Rule | ルール |
⑤Review & Refine | 評価・改善 |
⑥Reference | 参照 |
⑦Run Scenario | 実行シナリオ |
7Rは、上記の各要素の頭文字を取ったもので、これらの要素を意識することで、生成AIに対する指示をより具体的にし、望む結果に近づけることができます。各要素を以下で詳しく見ていきましょう。
①依頼
AIは、与えられた指示に基づいて処理を行うため、依頼内容が曖昧であったり、具体性に欠けていたりすると、意図と異なる応答を生成してしまう可能性があります。
依頼は、AIに対する指示の根幹となる部分であり、具体的なタスクや質問を記述することで、AIが適切な応答を生成しやすくなります。「〇〇について教えて」「〇〇を作成して」のように、生成AIに何をさせたいか具体的な要求を伝えましょう。
②役割
役割は、回答の敬語の使い方や視点に大きな影響を与えます。例えば、「あなたは歴史の専門家です」と指示することで、専門知識に基づいた詳細な回答が得られ、「あなたは友人のような存在です」と指示すれば、親しみやすい言葉遣いで共感性の高い回答が期待できるでしょう。
役割を明確にすることで、AIはより適切な視点で回答を生成し、ユーザーの期待に応えることができます。
③形式
形式とは、出力の形式や内容の長さなどを指定し、プロンプト作成のガイドラインを設定するものです。例えば、「プロンプトは150語以内で具体的な提案を含んで下さい」という指示は、プロンプトの長さと内容に関する形式を指定し、「箇条書きで3つ答えてください」という指示は、出力結果の形式を指定できます。
形式を適切に指定することで、AIはより的確にユーザーの意図を理解し、最適な回答を生成することができます。
④ルール
生成AIを効果的に活用するためには、ルール設定が不可欠です。ルールとは、AIに遵守させるべき具体的な制約やガイドラインのことです。
ルールを設定することで、AIの回答をより正確で意図に沿ったものにすることができます。
⑤評価・改善
生成AIを活用する上で、そのアウトプットを評価し、改善していくプロセスは重要です。このプロセスを経ることで、AIが生成した内容の精度を高め、より目的に沿った結果を得ることができます。
まず、情報が不足していないか、補完すべき点はないか、誤りはないかなどをチェックします。例えば、ブログ記事のアイデアが提案された場合、そのアイデアの斬新さ、実現可能性、ターゲット層への訴求力などを評価します。
評価結果に基づき、ブログ記事のアイデアであれば、「〇〇という観点を加えてください」「〇〇という層に響くような表現にしてください」といった指示が考えられます。
改善指示を踏まえ、再度AIに依頼する際、前回の指示内容を繰り返したり、別の角度からの指示を追加したりすることで、さらに質の高いアウトプットが期待できるでしょう。
⑥参照
生成AIは、与えられた情報に基づいてテキストや画像を生成する能力を持っていますが、その精度は与える情報によって大きく左右されます。特に、事前知識や参照情報を提供することで、より正確で意図に沿った出力を得ることが可能です。
ITエンジニアの場合、JSON形式でのデータ出力を求めるケースが多いと考えられます。そのため、プロンプトの中で「JSON形式で出力してください」と明確に指示することが重要です。
さらに、AIに参照してほしい背景知識や事例を示すことで、AIの理解が深まり、依頼に即したアウトプットを得やすくなります。
⑦実行シナリオ
生成AIを効果的に活用するためには、具体的な指示を与えることが重要です。実行シナリオとは、AIにどのような状況で、どのような行動をしてほしいかを具体的に示すものです。
例えば、「顧客に商品を説明するシナリオ」や「クレーム対応のシナリオ」といった、具体的な設定に基づいた応答をAIに期待することができるでしょう。
実際のシナリオを想定し、それに基づいてプロンプトを作成することで、AIの応答はより具体的で、ユーザーのニーズに合ったものになります。
7Rプロンプトがもたらすメリット
7Rプロンプトがもたらす様々なメリットについて詳しく解説していきます。7Rを理解し、活用することで、AIとの協働をよりスムーズに進め、より良い結果を得られるようになるでしょう。
AIを日本企業で導入するメリットについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
回答精度が向上する
7Rプロンプトを使用することで、AIからの応答はより明確で詳細なものになります。より具体的に指示を出すことで、AIが意図を正確に理解し、より良い回答を生成するためです。
例えば、「〇〇について教えて」という単純な指示ではなく、「あなたは〇〇の専門家として、〇〇について〇〇の観点から説明してください」というように、役割や形式、ルールなどを加えることで、AIはより的確な情報を提供してくれるようになります。
柔軟に適用できる
7Rプロンプトは、特定の状況に限定されず、様々な場面で柔軟に活用できる点が大きな特徴です。ビジネスシーンはもちろん、日常生活においても、その有用性を発揮します。
例えば、ビジネスシーンであれば、企画書の作成やメールの作成、データ分析など、様々な業務において7Rプロンプトを活用することで、AIからのアウトプットの質を向上させることができます。
プレゼン資料制作にAIを活用する方法については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
品質が向上する
7Rプロンプトを活用することで、AIの出力品質を大幅に向上させることができます。評価・改善は、AIの回答を評価し、改善点があれば指示するプロセスです。
AIの回答が期待通りでなかった場合、「〇〇の部分を修正して」「〇〇の情報を追加して」のように具体的な指示を出すことで、AIはより質の高い回答を生成することができます。
このプロセスを繰り返すことで、AIの出力は継続的に改善され、より人間が求める品質に近づいていくのです。
7Rプロンプトで成果を出すためのコツ
7Rプロンプトを使いこなすには、要素を理解するだけでなく、いくつかのコツを押さえておく必要があります。
具体的な指示の仕方を工夫したりすることで、より高品質なアウトプットを得ることが可能になります。最後に、7Rプロンプトを利用する際のコツを解説します。
指示や命令・補足情報を明確にする
7Rプロンプトを活用する際、AIに意図を正確に理解させるためには、指示や命令と補足情報を明確に区別することが重要です。
プロンプトの中で、AIへの直接的な指示と、それを補足する情報を混同してしまうと、AIはどちらを優先すべきか判断に迷い、期待通りの結果が得られない可能性があるでしょう。
例えば、「〇〇について詳しく教えて」というプロンプトの場合、「〇〇について教えて」が直接的な指示であり、「詳しく」が補足情報です。
しかし、「〇〇について〇〇な点も含めて詳しく教えて」というプロンプトの場合、「〇〇について教えて」が直接的な指示であることは分かりますが、「〇〇な点も含めて」が指示なのか補足情報なのか曖昧です。
このような曖昧なプロンプトでは、AIが意図を正確に理解できず、期待通りの回答が得られない可能性があるでしょう。
徐々に他の要素を追加する
7Rプロンプトを初めて使う方は、最初から全ての要素を使いこなすのは難しいかもしれません。そのため、まず以下の3つの要素から始めるのがおすすめです。
- Request(依頼)
- Role(役割)
- Regulation(形式)
これらの要素を組み合わせるだけでも、AIからの回答の質を向上させることができます。3つの要素に慣れてきたら、AIに守ってほしいルールや制約、参考にしてほしい情報や例など徐々に他の要素を追加していきましょう。
これらの要素を追加することで、より詳細な指示をAIに伝えることができ、より質の高い回答を得られるようになります。
さらに、評価・改善と実行シナリオを活用することで、AIとの対話をより深化させることができます。具体的な改善点や具体的なシナリオを伝えることで、より高度なタスクに取り組むことができるようになります。
7Rプロンプトを有効活用するためには、複雑な指示を一度に出すのではなく、まずはシンプルな指示から始め、得られた回答を基に徐々にプロンプトを修正していくアプローチが効果的です。
AIは、ユーザーが意図する内容を完璧に理解してくれるとは限りません。そのため、まずはシンプルな指示でAIの反応を確認し、その結果を踏まえてプロンプトを修正していくことで、より理想的な回答に近づけることができるでしょう。
曖昧な説明や表現を含めない
生成AIは、与えられた情報に基づいて回答を生成するため、プロンプトに曖昧な表現が含まれていると、AIは意図を正確に理解できず、期待通りの回答が得られない可能性があります。
例えば、「〇〇について詳しく教えて」というプロンプトは、具体的にどのような情報を求めているのかが不明確です。AIは様々な解釈をしてしまうため、的外れな回答や情報過多な回答をしてしまう可能性があります。
特に「依頼」と「ルール」の部分は、数値や具体例を用いてできるだけ具体的な指示を与えることが重要です。
逆質問で回答精度を向上させる
さらに回答精度を高めるために、AIからの逆質問を促すのもおすすめです。プロンプトの最後に「このタスクで最高の結果を出すために、追加の情報が欲しい場合は、質問してください」という一文を加えてみましょう。
AIは、与えられた情報だけで完璧な回答を生成できるとは限らず、情報が不足している場合や意図が不明確な場合には、質問をすることがあります。
逆質問を促すことで、AIはより詳細な情報を得ることができ、より正確で有益な回答を生成することが可能になります。また、ユーザーの意図や要求を再確認する機会にもなり、より効果的なプロンプト設計にも繋がります。
生成AIの得意・不得意を理解する
AIを様々な業務に生成AIを活用する企業が増えていますが、プロンプトで指示しても、なかなか思った通りに動いてくれない、と感じている方もいるのではないでしょうか。その原因の一つは、生成AIには得意なことと苦手なことがあるという点を理解していないことです。
生成AIは、大量のデータを学習することで、様々なタスクを実行できますが、得意な領域と苦手な領域が存在します。
例えば、文章の要約や翻訳は得意ですが、複雑な論理的思考や創造的なアイデアの発想は苦手です。また、最新の情報や専門知識を必要とするタスクも学習データにない場合は対応できません。
そのため、生成AIの特性を理解することで、プロンプト改善の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。生成AIの特性を理解するには、以下のようなセミナーを活用し、プロンプト設計のコツや生成AIの活用方法などを学ぶことをおすすめします。
生成AIセミナー
生成AIセミナーは、未経験の方でも生成AIの基礎から応用までを2日間で網羅的に学ぶことができます。セミナーで学べることは以下の通りです。
- 生成AIの種類
- 大規模言語モデル(LLM)の仕組み
- プロンプトの作成方法
- ChatGPTのビジネス活用方法
- Pythonの基礎知識
- 画像生成
- 独自のデータを学習した生成AI作成
- LLM(大規模言語モデル)を活用したサービス開発
本セミナーにご参加いただいた方には、オリジナル教材「生成AI完全攻略セミナーガイド」(PDF版)を配布いたします。受講期間中の復習はもちろん、セミナー終了後も参考書として活用できるでしょう。
7Rプロンプトを使いこなしてAIを最大限に活用しよう
今回は、生成AIを使いこなしたいという方に向けた7Rプロンプトのコツやメリットをご紹介しました。生成AIの能力を最大限に引き出すためには、7Rプロンプトが有効です。
7Rプロンプトは、Request(依頼)、Role(役割)、Regulation(形式)、Rule(ルール)、Review & Refine(評価・改善)、Reference(参照)、Run Scenario(実行シナリオ)の7つの要素で構成されています。
これらの要素を適切に組み合わせることで、より精度の高い実用的な回答を生成AIから得ることができます。AIの進化とともに、プロンプトエンジニアリングの重要性はますます高まっています。
7Rプロンプトを習得し、効果的に活用することで、AIとの協働をより深化させ、新たな価値を創造していくことができるでしょう。
