プレゼンテーションの成否は、事前の準備にかかっていると言っても過言ではありません。特に、何を伝えたいのか、その骨組みとなる構想は、プレゼンの質を大きく左右する重要な要素です。しかし、現代のビジネスパーソンは多忙を極め、じっくりとプレゼンの内容を練り上げる時間を取ることは難しいのが現状です。
そこで注目したいのが、生成AIの活用です。生成AIは、業務効率化に大きく貢献しており、プレゼンテーションの作成においても、強力なツールとなり得ます。今回は、プレゼン資料制作にAIを活用するメリットや最大活用するための注意点を詳しく解説します。
プレゼン資料制作にAIを活用するメリット
プレゼン資料制作にAIを活用すると以下のようなメリットがあります。
- 作業時間を短縮できる
- 他の重要な業務に集中できる
- 専門的スキルを持つ必要がない
それぞれの項目を詳しく解説します。
作業時間を短縮できる
プレゼン資料の作成は、従来、多くの時間を要する作業でしたが、AIによる自動化と効率化が進むことで、プレゼン資料の作成にかかる時間を大幅に短縮できるようになりました。AIは、プレゼンの構成案作成から文章作成や校正、デザインの調整まで、多岐にわたる作業を自動で処理します。
例えば、AIにキーワードやテーマを与えるだけで、論理的な構成のアウトラインを瞬時に生成できたり、文章の作成や校正では、AIが自然な文章を作成し、誤字脱字を検出したりするため、人的なミスを大幅に減らすことができます。さらに、画像やグラフの挿入やデザインの調整もAIが自動で行うことで、より洗練されたプレゼン資料を作成することが可能になります。
他の重要な業務に集中できる
プレゼン資料の作成は、多くの企業において欠かせない業務でありながら、貴重な時間とリソースを消費する側面がありました。しかし、AIを活用することで、資料作成のプロセスは大幅に効率化され、時間的な負担を軽減することができます。
これにより、従業員は戦略立案や顧客対応、プロジェクト管理などのより重要なコア業務に集中できるようになるのです。AIが資料作成のルーティンワークを担うことで、従業員の生産性は飛躍的に向上し、企業全体の競争力強化に繋がるでしょう。プレゼン資料作成のAI化は、時間を節約するだけでなく、プレゼン資料作成にかかるコストも削減でき、限られたリソースをより効果的に活用することが可能になります。
専門的スキルを持つ必要がない
AIの進化により、プレゼン資料の作成は専門的なスキルを必要とせず、誰でも手軽に行える作業へと変化しています。従来、洗練されたプレゼン資料を作成するには、デザインの基礎知識やPowerPointなどのツールの熟練度が不可欠でしたが、AIを活用したツールが登場したことで、ユーザーは自分の好みのテンプレートデザインを選択するだけで、プロが作ったような高品質なスライドを作成できます。
文字の大きさや色、アニメーションなどの細かい調整もAIが自動で行うため、デザインの知識がなくても、見栄えのよい資料を完成させることが可能です。また、ツールによっては、チャットボットがユーザーの質問に回答してくれるため、操作方法に困ることもありません。
専門用語を知らなくてもイメージを言葉で伝えるだけで、AIがユーザーの意図を理解し、思い通りの資料を作成してくれるでしょう。多くの社員が同じレベルでプレゼン資料を作成できるようになることで、会社全体の業務効率が向上し、リスク分散にもつながることが期待できるでしょう。
プレゼン資料が作成できるAIツール3選
AIプレゼン資料作成ツールを用いることで、資料作成にかける時間を大幅に削減し、プレゼンテーションの内容そのものに集中できるようになるでしょう。以下では、数あるAIプレゼン資料作成ツールの中から、特に注目すべき3つのツールをご紹介します。
GPT for Slides
GPT for Slidesは自然言語処理を活用し、スライドの内容を自動生成するツールです。特に、データを多用するプレゼンテーションを頻繁に行う企業にとって非常に便利です。Googleの無料アドオンとしてインストールすることができます。
このツールは、AIが提案するコンテンツを自動生成する機能やユーザーの指示に基づいたカスタマイズ機能、データ駆動型プレゼンテーションのサポート機能などを備えています。
イルシル
イルシルは、日本市場に特化したプレゼン資料作成AIツールとして、国内でビジネスを展開する企業に最適です。日本語に最適化された豊富なテンプレートとフォントを備え、日本のビジネス文化に合致した洗練されたデザインを提供しているのが特徴です。
さらに、ユーザーの要望に応じた柔軟なカスタマイズオプションも用意されており、企業のニーズにきめ細かく対応することができるでしょう。
出典:イルシル
Canva
Canvaは、デザイン初心者でもプロ並みのデザインを簡単に作成できるツールです。特に、デザイン経験が少ない個人やチームにおすすめです。直感的に操作できるため、初心者でもすぐに使いこなせるのが特長です。
豊富なテンプレートやスタイル、レイアウトが用意されているので、デザインの知識がなくても、イメージ通りの作品を制作できるでしょう。さらに、チームでの共有や共同作業が簡単に行えるため、複数人でデザインに取り組む際にも便利です。
出典:Canva
プレゼン資料をAIで作る方法
プレゼン資料をAIで作る方法を以下で解説します。今回は、CanvaのAIスライド機能を用いてプレゼン資料を作成します。
①レイアウトを選ぶ
TOP画面からプレゼンテーションアイコンを選択します。左側に表示されるお好みのデザインを適用すると複数のテンプレートが編集可能になります。テンプレートの土台をベースに、プレゼンテーションの設計図をさらに洗練させていきましょう。
②レイアウトを編集する
レイアウトに写真やイラスト、テキストを追加・編集するだけで、オリジナルのプレゼン資料が作成できます。編集したい部分にカーソルを合わせると編集可能です。
スライドの順番を入れ替えたり、不要な情報を削除したり、不足している情報を追加したりといった作業を行います。
③ポイントを調整していく
最後に、各スライドの文章表現を洗練させて、伝えたいポイントを効果的に強調できるよう調整することで、プレゼンテーション資料は完成へと近づきます。Canvaは、豊富なストックフォトやイラストが用意されたサービスがあるため、視覚的に魅力的な資料を作成することができるでしょう。
弊社では、2日間でCanvaの基礎知識が学べるCanva基礎セミナーを開催しております。Canvaの操作画面に慣れ、デザイン環境を自由に設定できるようになることで、自分のアイデアを表現できるようになります。豊富なテンプレートの中から、目的に合ったものを選び、デザインに合わせた画像やイラストを簡単に検索し、取り込むことも可能です。
図形の作成や着色のテクニック、グラフィックデザイン、写真合成、文字の編集や配色、動画機能を学ぶすることで、オリジナリティあふれるプレゼン資料を作り上げることができるでしょう。
プレゼン資料制作でAIを最大活用するための注意点
AIは、プレゼン資料作成を劇的に効率化しますが、生成された内容をそのまま利用することは危険です。AIの力を最大限に引き出し、より効果的なプレゼン資料を作成するためには、以下のような注意点に留意する必要があります。
正確な指示を与える
AIを活用して質の高いプレゼン資料を作成するためには、AIに与える指示(プロンプト)の質が重要です。プロンプトとは、AIに対して「どのようなものを生成してほしいか」を伝えるための言葉です。このプロンプトが具体的で明確であればあるほど、AIはより正確な情報や適切なデザインを生成することができるのです。
例えば、「売上データを基に、2025年の成長予測グラフを作成してください」というプロンプトであれば、AIは指定されたデータに基づいて、的確な成長予測グラフを生成してくれるでしょう。しかし、「売上データを使って何かグラフを作って」というように、プロンプトが曖昧な場合、AIはどのようなグラフを作成すれば良いのか判断できず、意図した結果が得られない可能性があります。
そのため、AIに指示を出す際は「何を」「どのように」生成してほしいかを具体的に示すことが大切です。
人の手でダブルチェックを行う
AIは大量のデータを学習し、人間らしい文章を生成する能力を持っていますが、生成される文章には必ずしも正確性が保証されているわけではありません。AIが学習したデータに誤った情報が含まれていたり、情報が古くなっていたりする場合、生成される文章にもその誤りが反映されてしまう可能性があります。
特に、数値データや法令・規則に関する情報は、常に変化するため、AIが生成した情報が最新であるとは限らないのです。そのため、AIが生成したプレゼン資料を鵜呑みにせず、必ず人間の目で内容を精査することが重要です。
情報の出所を確認したり、他の資料と照らし合わせたりすることで、情報の正確性を検証する必要があります。AIは便利なツールですが、あくまで人間を補助するものであり、完璧なものではないことを認識しておくべきです。最終的にプレゼン資料を作成するのは人間であるため、生成されたプレゼン資料の内容についての責任を持つ必要があります。
確認を怠り、誤った情報を発信してしまうと、会社の信用を失墜させてしまう可能性があるでしょう。正確な情報を発信するためには、納得がいくまで文章を推敲し、内容の正確性を高める努力が重要です。
自社らしい表現を盛り込む
AIが生成するプレゼン資料は、明快で読みやすい一方で、テンプレートの多用により、他の企業の資料との類似性が生じるリスクも懸念されます。AIは、膨大なデータを基に最適な表現を生成しますが、創造性やオリジナリティなど人間の持つ能力は補えません。
データ収集やロジカルな思考に基づいた内容の補強、説得力のあるストーリーテリングは、依然として人間の役割が欠かせません。AIが生成したプレゼン資料をベースに、自社の強みや特徴を際立たせるような表現を加えることで、より魅力的なプレゼン資料へと昇華させることができるでしょう。
まず、伝えたいメッセージを明確にするため、自社の独自の視点や強みを際立たせ、聴衆の心に響く言葉を選ぶことで、説得力のあるプレゼンテーションができます。また、社内でのブレインストーミングを積極的に行い、多様な視点からアイデアを出し合うことも有効です。
AIは、プレゼン資料作成の効率化をサポートするツールですが、人間ならではの創造性や共感能力が求められる部分も存在します。人間ならではの創造性やオリジナリティを加えることで、より説得力のある資料へと進化させることができるでしょう。
外部に漏れると困る機密情報は入力しない
AIツールは、入力された情報を学習データとして利用することで、より高度な機能を提供します。しかし、この仕組みは、企業の機密情報が外部に漏洩するリスクが潜んでいます。そのため、顧客情報や営業戦略、財務諸表など、企業にとって重要な情報は、安易にAIツールに入力すべきではありません。
特に、アイデア出しの段階や製品・サービスの開発初期段階のように、情報が外部に漏れると競合他社に利用される可能性があるようなケースでは、細心の注意が必要です。AIツールを利用する際は、必ず事前に会社の情報セキュリティポリシーを確認し、機密情報の取り扱いを徹底しましょう。
生成AIの悪用リスクについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
マニュアル作成をして社内で共有する
AIをプレゼン資料作成に導入する際には、社内全体でスムーズに活用できるよう、体制を整えることが重要です。特に、マニュアルの作成は、効率的な運用を確立するために重要な要素と言えるでしょう。まず、AIツールの操作方法や、どのような種類の資料作成に適しているのかといった情報を網羅したマニュアルを作成します。
このマニュアルがあれば、後から入社した社員でも、スムーズにAIツールを使いこなせるようになるでしょう。
マニュアルをAIで作成する方法については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
組織のセキュリティリテラシーを向上させる
先述したように、プレゼン資料制作におけるAIの導入によって、業務効率化が期待される一方で、情報漏えいや不正アクセスなどの新たなセキュリティリスクも浮上しています。組織全体でセキュリティ意識を高め、安全にAIを活用するためには、社員向けのセキュリティリテラシーを向上させる以下のような研修が重要です。
企業向けAI人材育成サービス
企業向けAI人材育成サービスでは、まず御社の抱える課題や目指す未来について、詳細なヒアリングを行います。ヒアリングに基づき、御社の状況に最適な課題設定を行い、具体的な目標と実現に向けたロードマップを策定します。
研修では、AIの基礎知識から、セキュリティリテラシーを向上させる応用事例まで、幅広い内容を網羅します。
STEP1 | ヒアリング及びご提案 |
STEP2 | カリキュラムやAI研修後のフォローのお打ち合わせ |
STEP3 | 研修後の実施報告書をご提出 |
当社のAI人材育成サービスでは、御社の業務内容や目標に合わせて、最適なカリキュラムを構築し、短期間で効果的にAIの知識とスキルを習得できるよう、実践的な内容に特化した研修を提供いたします。また、eラーニングにも対応しているため、社員は各自のペースで、好きな時間、好きな場所で学習を進めることができます。忙しい業務の合間を縫って、効率的に学習を進めることができるでしょう。
当社の講師陣は、10年以上のコンサルティング経験を持ち、製造業や建築業など、幅広い業界の知見を有しています。御社の業務内容を深く理解し、最適なカリキュラムを作成し、研修を提供いたします。
プレゼン資料制作にAIを活用して効率化に繋げよう!
今回は、プレゼン資料制作にAIを活用するメリットや最大活用するための注意点を解説しました。デザインスキルや専門知識が必要とされていたプレゼン資料作成が、AIを活用することで、誰でも短時間で高品質な資料を作成できるようになりました。
AIを活用したプレゼン資料の作成は、作成したい資料の内容を指示するプロンプトを入力するだけで、AIが自動的に資料を生成してくれるというシンプルな手順で行えます。しかし、AIが生成した資料をそのまま利用するのではなく、必ず内容の正確性を確認し、オリジナリティを加える必要があります。
AIはあくまでツールであり、人間の創造性を補完するものです。AIが生成した資料をベースに、自分の言葉で表現したり、独自の視点を加えたりすることで、より説得力のあるプレゼン資料を作成することができるでしょう。