音声認識技術を取り入れたAIプラットフォーム「THE VOICE JP」を提供するHmcommは、法人向けにAIを活用した音声認識や異音検知などの高度な音響処理・分析技術を提供することが明らかになりました。
音声会話をテキストに変換する音声認識技術だけでなく、工場の機械の異音検知や、トンネルなどのインフラ点検における打音検知など、様々な場面で発生する異常な音を分析し、故障を早期に発見できることが特徴です。顧客企業との共同プロジェクトを通じて、AI製品の開発から提供までをワンストップで支援し、具体的な成果に繋がるよう、顧客企業と密接に連携しながら取り組みを進めています。
今回は、AIを用いて音声分析を行う目的や音声認識との違い、導入する際のポイントを詳しく解説します。
AIによる音声分析とは
AIによる音声分析は、音声認識技術によって音声データをテキストデータに変換し、統計学的手法や機械学習、深層学習などの技術を用いて分析する技術です。コールセンターにおける顧客対応の品質向上やインタビューデータの定量的な分析など、幅広い分野で活用されています。
特に、近年ではAI技術の発展により、音声認識の精度が向上し、より複雑な内容の分析が可能となるなど、音声分析の応用範囲は広がりを見せています。
音声認識については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
AIによる音声認識と音声分析の違い
音声認識と音声分析は、どちらも音声データを扱う技術ですが、機能が異なります。音声認識は、音声データをテキストデータに変換します。例えば、音声入力による検索や文字起こしなどが、音声認識の代表的な活用例です。
一方、音声分析は音声認識で得られたテキストデータだけでなく、音声の波形や音高などの特徴を分析することで、話者の感情や性別、年齢、会話の内容やテーマまで特定することができます。音声分析は、コールセンターでの顧客対応の分析やマーケティング調査など、幅広い分野で活用されています。
音声認識 | 音声分析 |
人間が話す言葉をコンピュータが文字として認識する技術 | 音声データからより深い情報を引き出すための技術 |
音声認識と音声分析は多くの場合、両者を組み合わせることでより高度な音声処理を実現することができます。音声認識が音声データの「文字起こし」であるとすれば、音声分析は、その文字起こしされたデータや、さらに深いレベルの音声の特徴を分析し、そこから意味や価値を引き出すための「深堀り」と言えるでしょう。
AIによる音声分析の仕組み
AIを用いた音声分析は、ディープラーニングという技術を基盤として、音声データをテキストに変換し、その内容を理解するプロセスです。このプロセスは、大きく分けて以下の3つのステップから構成されます。
- 音響分析
- 音響モデル
- 言語モデル
それぞれのプロセスを詳しく解説します。
①音響分析
音響分析は、音声データをコンピュータが処理しやすい形に変換する最初のステップです。波形として捉えられている生の音声データから、音の強弱や周波数、音と音の間隔、時系列などの特徴を抽出します。特徴を数値化することで、音声に含まれるパターンや特徴をコンピュータに認識させることができるのです。
②音響モデル
音響モデルは、音響分析で得られた特徴量に基づき、その特徴がどの言語の音の最小単位(音素)に最も近いのかを特定し、テキストに変換する役割を担います。音声を構成する一つ一つの音素を聞き分け、それを文字として表現するのです。
③言語モデル
言語モデルは音響モデルで得られた音素列を、発音辞書と照らし合わせながら単語に組み立てる役割を担います。音素の並び方から、どの単語が最も適切かという判断を行い、最終的に意味のある文章として出力します。
言語モデルについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
AIを用いて音声分析を行う目的
AIを用いて音声分析を行う目的を以下で詳しく解説します。
顧客満足度が向上できる
AIを用いた音声分析は、顧客との最初の接点となるコールセンターにおいて、顧客対応の見直しを促すため、顧客満足度の向上にも大きく貢献します。音声分析によって、顧客の声のトーンや話し方から、顧客の感情や意図を的確に把握することが可能となるため、顧客一人ひとりに合わせた適切な対応を迅速に行うことができ、より高いレベルの顧客満足度を実現することができます。
さらに、大量の通話データを分析することで、どのような要因がクレームにつながっているのかを客観的に把握し、その原因を特定することもできるため、根本的な問題解決へと繋げることができ、クレームの発生件数を削減することが期待できるのです。
業務効率の改善につながる
AIを用いた音声分析は音声データをテキスト化し、そのデータを可視化することで、様々な業務の効率化を実現する技術です。例えば、会議の議事録作成においては、従来の手作業による文字起こしの手間を大幅に削減することができます。音声データをテキスト化することで、議事録の作成時間を短縮し、より迅速な情報共有が可能になります。
音声分析は、様々な業務において、検索や内容確認の効率化を図り、業務効率の向上に貢献します。加えて、入力ミスを減らし、人手不足の問題を解消するなど、多岐にわたるメリットをもたらします。
VOC分析ができる
VOCとは顧客の声を意味し、顧客からの様々なフィードバックを収集・分析することで、顧客のニーズや期待を深く理解するための取り組みです。VOC分析ではコールセンターの通話記録や問い合わせフォーム、口コミサイト、SNS投稿など、多岐にわたるデータソースから情報を収集します。
近年では、音声データからの情報抽出が容易になり、より精緻な分析が可能となっています。これらの技術を活用することで、顧客の声を数値化し、定量的な評価を行うこともできるため、企業は顧客のニーズに合致した製品やサービスの開発及び顧客満足度の向上に繋げることができるのです。
オペレーターの育成が強化できる
AIによる音声分析により、オペレーターが抱える問題点や改善すべき点を客観的に把握できるようになるため、効果的な指導が可能になります。例えば、評価の高いオペレーターの通話データを可視化することで、その優れた対応スキルや顧客とのコミュニケーションの仕方を具体的に分析できます。この分析結果を他のオペレーターと共有することで、良い事例を学び、自身のスキル向上に繋げることができるでしょう。
また、音声分析は通話内容からキーワードや感情を抽出することも可能です。これにより、オペレーターがどのような言葉遣いをしているか、顧客に対してどのような感情を抱いているかなどを評価できます。個々のオペレーターに合わせたフィードバックを行うことで、よりピンポイントな指導が可能になります。
音声分析を導入することで、オペレーターの育成はデータに基づいた客観的な評価ができるため、チーム全体のスキル向上が期待できます。
AIによる音声分析を導入する際のポイント
AIによる音声分析は、業務効率化や顧客満足度向上に大きく貢献する技術ですが、導入にあたっては、以下のような様々なポイントを考慮する必要があります。
必要な機能を明確にして目的を定める
AIによる音声分析は音声データをテキスト化するという基本機能に加え、様々な機能を搭載しています。この多機能性ゆえに、導入目的が明確でないままAIを選んでしまうと、機能を十分に活用できず、結果的に無駄な投資になってしまう可能性があるでしょう。
音声分析を効果的に導入するためには、まず自社の抱えている具体的な課題を洗い出し、それらの課題を音声分析によってどのように解決できるのか、そのためにどのような機能が必要なのかを明確にする必要があります。
音声認識の精度にも注目して選ぶ
AIによる音声分析には、音声データをテキストに変換する音声認識機能が搭載されています。しかし、音声認識の精度が低いと変換されたテキストに誤りが多く含まれ、データの信頼性が損なわれてしまいます。
音声認識は、音声分析の基礎となる重要な技術のため、AIを選ぶ際には、ノイズにどれだけ強く、どのくらいの言語に対応しているか、文脈を正しく理解できるかなどの音声認識の精度に特に注目する必要があります。
安全性の高さを確認する
音声データには、個人情報や機密情報が含まれることが多いため、取り扱いには細心の注意が必要です。万が一、情報が漏洩してしまうと、個人や企業にとって大きな損失につながる可能性があるでしょう。
そのため、AIによる音声分析ツールを選ぶ際には、セキュリティ対策が十分に行われているかどうかの確認が不可欠です。具体的には、プライバシーマークを取得しているか、データが暗号化されているかという点に注目しましょう。
プライバシーマークは、個人情報保護に関する取り組みが一定の水準以上であることを示す国家資格です。このマークを取得しているツールを選ぶことで、より安心して音声データを扱うことができます。適切なツールを選び、万全の対策を講じることで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えましょう。
サポート体制が充実しているか確認する
AIによる音声分析ツールを導入する際には、ツール自体だけでなく、導入後のサポート体制も重要です。ツールを運用していく中で、様々な疑問点や不明点が生じる可能性があります。これらの疑問に迅速かつ的確に対応できるよう、充実したサポート体制が整っているかどうかを確認することが大切です。
導入前に、ベンダーにしっかりと確認し、自社のニーズに合ったサポート体制が提供されているかを見極めるようにして下さい。
AIによる音声分析で業務効率化や顧客満足度を向上しよう
AIによる音声分析技術の進歩は目覚ましく、その活用は様々な業務に新たな可能性をもたらしています。今回は、AIを用いて音声分析を行う目的や音声認識との違い、導入する際のポイントを解説しました。
AI音声分析システムは、電話対応が中心となるコールセンター業務やテレアポなどの営業活動、会議の議事録作成などの業務効率化と顧客満足度向上を両立させるための不可欠なツールとなるでしょう。