DX・AIの実装が競争力の分岐点となる今、「新事業進出補助金」は事業転換や新分野展開を力強く後押しする資金手段です。
本記事では、新事業進出補助金の申請条件をはじめ、申請フローに沿った実務的な注意点やよくある失敗例を詳しく紹介します。さらに、生成AI導入やDX人材育成、IT設備投資といった具体的な活用ポイントまで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
新事業進出補助金とは?
「新事業進出補助金(中小企業新事業進出補助金)」とは、日本の中小企業等が既存の事業とは異なる分野・市場・高付加価値分野への進出を行う際に、設備投資やシステム構築などの経費を一部支援する補助金制度です。
補助対象と概要
新事業進出補助金は、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等が対象です。
※「中小企業等」の詳細の定義については「公募要領」をご確認ください。
主な申請要件の一覧表
以下の表は、申請を成功させるために押さえるべき基本的な要件をまとめたものです。申請前に詳細な条件や最新の情報については、公式資料や専門窓口で確認しましょう。
| 要件項目 | 内容 |
| 新事業進出要件 | 「新事業進出指針」に示す「新事業進出」の定義に該当する事業 ※新事業進出の定義は、「新事業進出指針」にてご確認ください |
| 付加価値額要件 | 付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定 |
| 賃上げ要件 | 以下のいずれかの水準以上の賃上げを行う ①一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させる ②給与支給総額の年平均成長率を2.5%以上増加させる |
| 事業場内最賃水準要件 | 毎年、事業場内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること |
| ワークライフバランス要件 | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表 |
| 金融機関要件 | 補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けている |
| <賃上げ特例の適用を受ける場合の追加要件> | 以下のいずれも満たすこと (1)給与支給総額を年平均6.0%以上増加させる (2)事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げる |
参考:中小企業新事業進出補助金
新事業進出補助金の概要
| 項目 | 内容 |
| 補助上限額 |
※補助下限750万円 |
| 補助率 | 1/2 |
| 事業実施期間 | 交付決定日から14か月以内 |
| 総予算 | 1,500億円 |
参考:中小企業新事業進出補助金
新たな事業展開を検討している方は、新事業進出補助金制度を活用しましょう。
下記ではDXで活用できる助成金や補助金についてまとめているので、ぜひ参考にしてください。
新事業進出補助金の申請フロー

新事業進出補助金の申請フローを紹介します。申請の具体的な流れや申請システムの利用方法についてわかりやすく解説します。
- 公募回ごとの募集期間と締切
- 申請から交付決定までのステップ
- ポータルサイト・申請システムの使い方
①公募回ごとの募集期間と締切
新事業進出補助金は回ごとに募集期間が設定され、公式サイトで公募開始日と締切日が公表されます。申請受付はすべて電子申請で行われ、締切日当日の18時までに申請しなければなりません。
締切直前はアクセスが集中しやすく、入力やファイルのアップロードに時間がかかるため、必ず締切前日までに申請を終わらせておきましょう。
②申請から交付決定までのステップ
申請から交付決定までのステップをまとめました。
- 申請開始後、公募要領に沿って事業計画書や必要書類を揃える。
- 電子申請システムにログインして申請情報を入力し、添付書類をアップロードする。
- 申請後は受付メールやシステム上のステータス画面で「申請済み」を確認。
- 審査を経て採択通知が届いた後は、「交付申請」を行い、経費明細や見積書など追加資料を提出。
- 交付申請が受理されると正式に「交付決定」となる。
- 実績報告や検査対応を行い、補助金が請求・入金される。
③ポータルサイト・申請システムの使い方
申請はすべて「jGrants2.0」という電子申請システムを利用して行います。ポータルサイト・申請システムの使い方を詳しく見ていきましょう。
会員登録とログイン方法
新事業進出補助金の申請にはGビズIDプライムアカウントが必須です。まず公式サイトでメールアドレスを登録し、ワンタイムパスワード付きの認証手続きを完了させます。
次に申請書をオンラインで作成し、実印を押した紙書類と印鑑証明書を郵送で提出します。審査に通過するとアカウントが発行されるので、メールに記載のURLからIDとパスワードを使ってログインします。
必要書類の提出手順
jGrantsへログイン後は、申請者基本情報を入力し、事業計画の概要を記載します。その後、認定支援機関の確認書、決算書、経営状況説明資料など、公募要領で指定された書類をPDFでアップロードします。
経費区分ごとに見積書や仕様書を添付し、広告費や研修費を申請する場合は詳細な計画や実施予定日を記載した資料も必要です。すべての入力と添付が終わったら、漏れがないかを必ず最終確認し、「申請する」を押して提出を完了させます。
申請後はステータス画面で受付状況を確認し、採択後に求められる交付申請や実績報告の段階でも同様の手順で必要書類を提出します。
新事業進出補助金申請時の注意点とよくある失敗

新事業進出補助金の申請を成功させるためには、書類作成や計画の内容において注意すべきポイントを押さえることが重要です。ここでは、新事業進出補助金申請時の注意点や失敗、対策についてわかりやすく解説します。
- 書類不備・ミスの典型例
- 事業計画書作成のポイント
- 審査落ちを防ぐための対策
①書類不備・ミスの典型例
申請書類における誤記や添付漏れは最も多い失敗例です。決算書の期日が最新でない、認定支援機関の確認書に代表者の押印がない、複数ファイルを1つにまとめず所定の様式から外れたフォーマットで提出するといったケースが多いです。
また、経費見積書の発行日が申請期間とずれている、必要な見積もり項目が抜けているといった小さな不整合も、事務局から修正依頼が来る原因になります。書類の内容チェックリストを1つずつ確認してミスを減らしましょう。必要書類や事前登録などは、申請等に時間がかかるものもあるため、早めの準備が大切です。
②事業計画書作成のポイント
事業計画書では、再構築の目的と効果を明確に示すことが重要です。曖昧なビジョンだけでなく、具体的な数値目標やスケジュールを盛り込み、実行可能性を審査員に納得してもらう必要があります。
DXやAI導入といった先進的な技術活用を盛り込む場合は、導入後の運用体制や教育計画を詳細に説明しましょう。
③審査落ちを防ぐための対策
審査員が最も重視するのは「計画の妥当性」と「実行可能性」です。事業に関係する数字やスケジュールは根拠資料とセットで提出し、専門用語は補足説明を加えて誰が読んでも理解できるようにします。
事前に第三者(認定支援機関や税理士)によるレビューを受け、指摘事項を反映させることで、書類の精度をさらに高めることが可能です。
新事業進出補助金に関する疑問点

申請を検討する際には、よく寄せられる疑問を事前に解消しておくことが重要です。ここでは「返済義務の有無」「従業員がいない場合の申請可否」について、それぞれ分かりやすく解説します。
補助金は返済不要?
新事業進出補助金は、原則として返済の必要がない「補助金」です。採択された事業計画に基づき適正に資金を活用し、必要な実績報告を期限内に提出すれば、交付後に返済を求められることはありません。
ただし、目標値未達の場合や実績報告の未提出、虚偽申請、不正受給が判明した場合には、補助金の一部または全額を返還しなければならず、ペナルティが科されることもあります。そのため、補助金を受け取ったあとの5年間は事業化状況報告が義務付けられています。
従業員ゼロの事業主も申請できる?
従業員を一人も抱えていない個人事業主でも、条件を満たせば新事業進出補助金に申請可能です。売上実績や経費の根拠資料を整え、認定支援機関による計画確認を受けることで、規模の小さい事業者でも採択のチャンスがあります。
DX推進やAIにおける新事業進出補助金の活用ポイント

新事業進出補助金はデジタル化やAI導入など、先進的な技術投資を補助対象としています。ここでは、生成AIやDX関連取り組みに補助金をどう組み込んでいるのか、その具体的なポイントを解説します。
DX関連・生成AIプロジェクトに活用
生成AIやデータ分析プラットフォームの導入費用は、システム構築費として補助対象になります。
例えば、自然言語処理モデルを活用した自動レポート生成システムや、画像認識AIを用いた品質検査システムなど、業務プロセスを高度化する投資を計画することで、審査時に「新事業進出補助金」と「付加価値額要件」を同時にアピールできます。
DX人材育成・IT設備投資・AI導入
ITインフラ整備や社員研修費用も補助の対象です。クラウドサービスの利用料やサーバー増設、セキュリティ強化のためのハードウェア購入も費用計上できます。また、データサイエンティストやAIエンジニアの育成を目的とした研修費用も申請可能です。
下記では、DX人材育成に使える補助金、助成金について紹介しています。ぜひ参考にしてください。
DX・AI人材育成研修サービス
企業がAIやDXを自社で実装し、持続的に活用するためには、専門知識を持つ人材の育成が不可欠です。「DX・AI人材育成研修サービス」は、生成AIやデータサイエンス、クラウド技術など企業に合わせたプログラムを構築します。実践的なスキルと導入ノウハウを体系的に習得できるサービスです。
新事業進出補助金まとめ
新事業進出補助金を活用することで、企業は新分野への挑戦や事業モデルの転換を加速し、DX・AI導入など未来志向の投資を実現できます。申請条件やフロー、事業計画の作成ポイントを押さえ、書類不備を防ぐことで採択率を高めましょう。





