デジタル化の波が押し寄せるなか、企業が生き残るためには「DX」をただの流行語で終わらせない姿勢が求められています。しかし現場では、「DXを進めたいけれど、社内に詳しい人材がいない」といった声が後を絶ちません。
そんな課題に対し、国や自治体が支援する補助金や助成金を活用する動きが広がっています。DX人材育成に取り組むための足がかりとして、知っておきたい制度や注意点を、この記事で解説します。
DX人材育成に活用可能な補助金・助成金
早速、DX人材育成に活用可能な補助金・助成金を解説していきます。国と地方自治体それぞれ、さまざまな内容の補助金や助成金が存在しますので、
- 国のDX人材育成補助金・助成金
- 地方自治体のDX補助金・助成金
と分けて、それぞれ見ていきましょう。
国のDX人材育成補助金・助成金
DX人材育成に活用できる「国の」補助金および助成金を一覧にすると、以下のようになります。
| 名称 | 種別 | 概要 | 支給額 | 支給条件 |
| 人材開発支援助成金 (人材育成支援コース) | 助成金(厚生労働省) | 新入社員研修など幅広い研修に使える基本的な助成制度 | 経費の45%(大企業30%)+賃金助成(最大760円/時) | 10時間以上のOFF-JT 事前計画の提出 |
| 人材開発支援助成金 (人への投資促進コース) | 助成金(厚生労働省) | 高度IT人材の育成向け、高助成率の制度 | 経費の75%(大企業60%)+賃金助成(最大960円/時) | 10時間以上 Reスキル講座受講 DX認定など要件あり |
| 人材開発支援助成金 (事業展開等リスキリング支援コース) | 助成金(厚生労働省) | 新規事業展開や社内DXに必要なスキル習得を支援 | 経費の75%(大企業60%)+賃金助成(最大960円/時) | 10時間以上 事業計画提出が必要 |
| キャリアアップ助成金 | 助成金(厚生労働省) | 非正規雇用の正社員化・処遇改善を支援 | 1人あたり最大57万円(正社員化) | 雇用保険適用 キャリアアップ計画の提出 |
| 人材確保等支援助成金 (テレワークコース) | 助成金(厚生労働省) | テレワーク導入に向けた機器導入・環境整備を支援 | 経費の30%+成果に応じた追加助成あり(上限100万円) | 新制度導入 テレワーク実績要件など |
| IT導入補助金 | 補助金(経済産業省) | 業務効率化やDX化のためのITツール導入費用を支援 | 費用の1/2~4/5以内、上限最大450万円 | 事業計画策定 事前診断 支援事業者との連携 |
| ものづくり補助金 | 補助金(経済産業省) | 革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善を支援 | 補助率2/3以内、最大1,250~4,000万円 | 事業計画の策定と実行 最低賃金要件あり |
| 事業再構築補助金 | 補助金(経済産業省) | 新分野展開・業態転換など大胆な事業再構築を支援 | 100万~最大7,000万円(枠により異なる) | 再構築指針への適合 事業計画、支援機関確認 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 補助金(中小企業庁) | 小規模事業者の販路拡大や業務効率化を支援 | 上限50~200万円(枠により異なる) | 商工会議所等の支援 経営計画の策定 |
| Go-Tech事業 (成長型中小企業等研究開発支援事業) | 補助金(経済産業省) | 大学・研究機関と連携した技術開発を支援 | 通常枠:最大9,750万円 出資枠:最大3億円 | 研究開発計画 対象技術テーマとの一致 |
上記の助成金は、企業が従業員のスキルアップや働き方改革を推進する際に活用できる制度です。デジタル技術の進展に対応するための人材育成や、新たな事業展開に伴うリスキリング、非正規雇用労働者の正社員化、テレワークの導入など、多様な取り組みに対して支援が行われます。
申請には、訓練計画の作成や制度導入の準備が必要となるため、早めの情報収集と計画立案が重要です。
地方自治体のDX補助金・助成金
一方で、人材育成のための補助金および助成金には地域限定のものもあります。一部をピックアップすると、以下のようになります。
| 名称 | 地域 | 種別 | 概要 | 支給額 | 条件 |
| DXリスキリング助成金(東京都) | 東京都 | 助成金 | 都内中小企業が従業員にDX関連の職業訓練を受けさせる費用を支援 | 経費の2/3 (最大64万円/年) | 都内事業所あり 他助成と併用不可、eラーニング可 |
| サイバーセキュリティ対策促進助成金(東京都) | 東京都 | 助成金 | 中小企業のサイバーセキュリティ設備導入費用を支援 | 経費の1/2 (最大1,500万円) | SECURITY ACTION★★ 宣言が必要 |
| 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(東京都) | 東京都 | 助成金 | デジタル設備を含む事業革新のための設備投資支援 | 最大1億円 (助成率2/3以内) | 都内で2年以上の事業実績など |
| デジタル人材育成支援補助金(山口県) | 山口県 | 補助金 | 山口県内企業のデジタル技術習得研修を支援 | 1人あたり3万円 (経費の30%) | 山口県内の事業所 短期民間研修の受講 |
| 函館市DX人材育成研修補助金(北海道函館市) | 北海道函館市 | 補助金 | DXスキル習得を目的とした研修を実施する中小企業に補助 | 最大30万円 (費用の1/2) | 函館市内企業 6時間以上のOFF-JT講座など |
| 富士見市中小企業チャレンジ支援事業補助金(埼玉県富士見市) | 埼玉県富士見市 | 補助金 | 富士見市内の中小企業によるDX化などの挑戦を支援 | 最大50万円 (経費の1/2) | 市内事業所 課題解決・DXなどがテーマ |
地域限定の人材育成の補助金・助成金は、都道府県や市区町村が独自に実施しており、対象や条件が異なります。地元企業にとっては費用負担を抑えてDX人材育成を行うチャンスになるでしょう。
助成金と補助金の違い
助成金と補助金はどちらも返済不要の制度ですが、支給までのプロセスに違いがあります。
助成金は厚生労働省などが提供し、一定の条件を満たしていればほぼ確実に受け取れる制度です。たとえば、人材育成や働き方改革を目的とした研修費用の補助などが該当します。
一方、補助金は経済産業省や自治体が行う公募制で、提出された事業計画をもとに選考が行われます。事業の中身や実現性が審査されるため、競争率が高い点が特徴です。
それぞれの違いを一覧にすると、以下のようになります。
| 提供機関 | 目的 | 支給条件 | 魅力 | 注意点 | |
| 助成金 | 厚生労働省 地方自治体など | 雇用の安定 職業訓練 人材育成など | 要件を満たせば原則支給される (審査なし) | 対象を満たせば高確率で受け取れる 申請期間が長い | 人気制度は予算終了が早い |
| 補助金 | 経済産業省 地方自治体など | 新規事業の立ち上げ 設備投資 地域活性化など | 公募・審査あり (事業計画の提出が必要) | 支援対象や制度が多く、内容に応じた選択が可能 | 審査に通らなければ受給不可 競争率が高い |
eラーニングでも活用できるか
最近では、DX人材育成の手段としてeラーニングの活用が広がっており、これに対応する助成金・補助金も増えています。たとえば「人材開発支援助成金」や「DXリスキリング助成金」は、条件を満たせばオンライン講座も支給対象となるケースがあります。
講座の内容や時間、提供機関が公開されていることなど、形式面の要件を満たしていれば問題ありません。忙しい業務の合間でも柔軟に学べるeラーニングは、支援制度とも相性の良い育成手段といえるでしょう。
DX人材育成補助金・助成金を選ぶコツ

DX人材育成の支援制度を使いこなすには、自社の目指す方向性と制度の特性を丁寧に照らし合わせることが欠かせません。業種や企業規模によって対象外となるケースもあるため、まずは制度の中身をしっかり確認しましょう。
そのうえで
- どのスキルを伸ばしたいか
- 強化したい部署はどこか
といった現場のニーズを整理します。例を挙げるなら、社員のIT基礎力を底上げしたいなら人材開発支援助成金、新たなツール導入とセットで学ばせたいならIT導入補助金が候補、といった形になります。
制度によって申請の難易度が大きく異なるため、事前に要件や審査のハードルを見極め、必要なら専門家の力を借りるのも良い判断です。
モダンで将来生の高いスキルを習得したいなら

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講義では、実務に直結する内容が豊富に盛り込まれており、AI時代に必要な思考法と技術を体系的に身につけられます。現場でのDX推進を本気で目指すなら、ぜひ以下のリンクから詳細をご確認ください。
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DX人材育成で補助金・助成金を使うメリット・デメリット
DX人材育成で補助金・助成金を使うことにおいては、メリットもあれば、一部デメリットもあります。この章でそれぞれを詳しく見ていきましょう。
メリット
DX人材育成で補助金・助成金を使うメリットとして、以下があります。
- DX人材育成にかかる費用を大幅に軽減できる
- 雇用拡大や人材強化のための制度を活用できる
- 自社のスキルギャップに合った育成プランが構築しやすい
- 助成制度の活用により、経営層の関心や社内理解が深まる
DX人材の育成には、一人あたり数万円~十数万円の研修コストがかかるケースも珍しくありません。補助金・助成金をうまく活用すれば、その負担を抑えながら効率的なスキル習得が実現できます。
とくに「人材開発支援助成金」などは費用の半分以上が戻ることもあり、社内のスキルアップに挑戦しやすくなります。経営戦略と連動した育成計画の推進にもつながる点が、金銭面以外の大きなメリットです。
自社に最適なDX人材育成をするなら

大きなコストがかかるDX人材育成を実施するのであれば、ぜひDX・AI人材育成研修サービスをご活用ください。DX・AI人材育成研修サービスは、企業のDX課題を丁寧にヒアリングし、短期集中型から中長期の育成計画まで幅広く対応しています。
教育レベルの可視化からカリキュラムの構築、研修実施後のアウトプット・ワークショップまでを一貫して支援しており、製造・建設など業種特化のノウハウも豊富です。実際にNTTやトヨタなど大手企業でも導入されており、DXリスキリング助成金にも対応している点が安心材料となっています。
現在、DX・AI人材育成研修の無料相談を受け付けているので、ぜひ気になる方は以下のリンクからお問い合わせください。
また、DX人材育成の成功ノウハウを知りたい方は、以下の記事もぜひお読みください。
デメリット
一方の、DX人材育成で補助金・助成金を使うデメリットを見てみましょう。
- 申請手続きに手間と時間がかかる
- 審査や報告義務があり、管理負担が大きくなる場合も
- 必ずしも希望通りの研修が対象になるとは限らない
- タイミングによっては申請締切や予算枠で利用できない可能性もある
補助金・助成金は便利な制度ですが、申請から受給までには事務作業が多く、実施後の報告義務なども発生します。また、対象となる研修や講座が制度ごとに限定されているため、自社が受けたいプログラムがカバーされない場合もあります。
さらに、申請のタイミングによっては募集が終わっていたり、審査に通らなかったりするリスクもあるため、制度選びとスケジュール管理には注意が必要です。
DX人材育成補助金・助成金を活用する3ステップ
ここでは、DX人材育成補助金・助成金を活用する3ステップを順に解説していきます。
- 補助金の条件に該当しているか確認する
- 必要な各種書類を準備する
- 電子申請システムを用いて手続きを行う
補助金の条件に該当しているか確認する
まずは、自社が人材育成の補助金・助成金の対象となるかを確認します。業種や従業員数、研修内容など制度ごとに細かい要件があります。
対象講座や実施方法(OFF-JTやeラーニングなど)も条件に含まれるため、事前に公式資料や相談窓口でしっかり確認しましょう。
必要な各種書類を準備する
自社に合った制度を見極めたら、人材育成補助金に必要な申請書・事業計画書・決算書類などを揃えて申請準備を進めます。書類によっては発行に時間がかかることもあるため、なるべく早めの準備が重要です。
不備があると差し戻されるため、スケジュールに余裕を持って丁寧に確認しましょう。
電子申請システムを用いて手続きを行う
人材育成補助金の多くの制度は「電子申請」で手続きを行います。申請後、採択されたとしてもすぐに受給されるわけではなく、事業完了後に実施内容と経費を記した報告書を提出する必要があります。
報告内容が認められてはじめて、人材育成補助金や助成金が正式に支給されます。
DX人材育成補助金・助成金を使う際の注意点

最後に、DX人材育成補助金・助成金を使う際の注意点として、以下の2つをピックアップしているので把握しておきましょう。
- 複数の補助金・助成金は同時に使えない
- 締め切りや予算が設けられているケースがある
複数の補助金・助成金は同時に使えない
一つの事業に対して、複数の補助金や人材育成助成金を併用することは原則として認められていません。たとえば、同じ研修に対して「IT導入補助金」と「人材開発支援助成金」の両方を受けることはできません。
事前に対象制度の併用可否や利用条件をよく確認する必要があります。
締め切りや予算が設けられているケースがある
人材育成の補助金や助成金には申請期限や予算枠があり、早めに枠が埋まってしまうこともあります。制度によっては年に複数回募集が行われるものもありますが、常に公募情報をチェックしておかないとチャンスを逃す可能性があります。
申請準備は早めに動くのが鉄則です。
DX人材育成のために補助金・助成金をうまく活用しよう
DXを推進したいと考えても、「人材育成の費用がネックで実践できない」という企業は少なくありません。そんなときに頼れるのが、国や自治体が提供する補助金・助成金制度です。
本記事では、代表的な支援制度とその活用ポイントを紹介しました。制度ごとに対象や条件は異なりますが、うまく活用すればコストを抑えて効果的なDX人材育成が実現できます。
早めの情報収集と計画立案が成功につながるので、ぜひ積極的に決断し、動いてみることをおすすめします。






