AIの進化は日々加速中なものの、一方でAIの人材不足に悩む企業も増えています。導入したくても社内にAIスキルの高い人材が少ない、育てようにも二の足を踏んだりと、現場の声は切実です。
AI人材不足は単なる採用の問題ではなく、企業全体の成長戦略に関わる大きな問題です。なぜここまで人材が不足しているのか、どうすれば解決できるのかを見ていきましょう。
AI人材不足の現状
経産省の「DX白書2023」によると、「AIに理解のある経営層がいる」と答えた企業は米国の70.5%に対し、日本はわずか27.8%。そして「自社でAI導入を推進できる従業員がいる」と答えた割合も、米国の60.9%に比べ、日本ではわずか11.3%にとどまっているなど、日本ではAI人材の不足が深刻化しています。
さらに企業における生成AI導入率も世界平均の40%に対し、日本は24%と出遅れている状況です。こうした背景から、企業がDXや生成AIを本格的に活用するためには、AI人材の育成と確保が最優先事項と言えるでしょう。
参考:経済産業省
AI人材とは
AI人材とは、人工知能(AI)技術を活用して業務の効率化や新たな価値創出を担う専門人材を指します。データサイエンティストやAIエンジニアなどが該当することが多いです。
また、AIを導入・活用するための戦略立案やプロジェクトマネジメントを行う人材も含まれています。
AI人材が不足している理由
なぜ今AI人材が不足しているのか、その原因として、次の3つがあります。
- 高度な知識やスキルが求められるから
- 優秀なAI人材は獲得競争が激しいから
- AI人材を社内で育てるのは難しいから
それぞれ見ていきましょう。
高度な知識やスキルが求められるから
不足の理由のひとつは、AI開発には高度な知識やスキルが求められるからです。たとえばPythonやR、Juliaなどのプログラミング言語はAI開発で広く使われていますが、これらの習得には数学的な素養や実装力が必要であり、初学者からすれば決して簡単といえるものではありません。
さらにディープラーニングを活用するには、ニューラルネットワークの理論や、TensorFlowやPyTorchといったフレームワークの扱い方まで理解する必要があります。加えて単にこういった技術を知るだけでなく、ビジネス課題を読み解き、AIで解決策を構築・運用する力も求められます。
こうしたスキルセットを短期間でバランスよく習得できる人材はやはり限られており、とくに中小企業では教育リソースや指導者の不足も相まって、社内での確保が難しくなっているというわけです。
優秀なAI人材は獲得競争が激しいから
優秀なAI人材はそもそも数が限られており、国内外の大手IT企業や外資系企業による獲得競争が激化しています。高い給与や柔軟な働き方、研究環境の充実などで差別化を図る中、中小企業や地方企業が対抗するのは簡単ではありません。
とくに前述でも触れたPythonやR、Juliaといった言語や、TensorFlow、PyTorchといったフレームワークを使いこなせるエンジニアは、AI領域だけでなく幅広いシステム開発にも対応できるため、引く手あまたの存在です。結果として、人材の確保は企業の規模や資金力に大きく左右されやすいのが現実です。
AI人材を社内で育てるのは難しいから
不足の理由3つ目は、AI人材を社内で育てるのは難しいからです。AI人材不足を補うべく自社で育成するには、時間・コスト・体制のすべてが必要ですが、多くの企業では教育プログラムの整備が不十分で、業務も忙しく、学習に集中できる環境がありません。
またAI技術の進化スピードが速く、社内の教育だけで追いつくのは難しい現実もあります。さらに、指導できる高度な人材も不足しています。
そのため、不足に対応して自社でゼロから人材を育てるには大きなハードルがあり、多くの企業が実行に移せずにいるのが実情です。
AI人材の社内育成が難しい理由
AI人材不足である今、社内で育てるやり方に注目が集まっています。しかし、実際に取り組もうとしても多くの企業が壁に直面しており、思うように成果を上げられていません。
その背景には、以下のような課題があります。
- AI人材を育てる環境や体制が整っていないから
- AI人材が育つ業務がないから
それぞれ見ていきましょう。
AI人材を育てる環境や体制が整っていないから
AI人材を社内で育成しようにも、十分な学習環境や指導体制を整えられない企業は少なくありません。通常業務と並行して学ぶ時間の確保が難しかったり、指導できる上位人材がいなかったりといった課題が背景としてあるからです。
また、どのような教育プランを導入すれば効果的なのかが分からず、育成のスタート自体が切れていないケースも多々あります。こうした状況では、社内での自己学習に頼る形になりやすく、結果的にモチベーションの低下や人材流出につながることもあります。
そこで有効なのが、実務に直結し、短期間で体系的に学べる「外部セミナーの活用」です。
Pythonセミナー
「まずはAIやデータ分析のベースとなるプログラミングスキルを身につけさせたい」といった企業におすすめしたいのがこちらです。Python基礎セミナーでは、未経験者でも文法やスクレイピング、画像処理、AI活用まで実践に基づいたスキルを学ぶことができます。
Python3エンジニア認定試験にも対応しており、将来の資格取得を見据えた育成にもぴったりです。全国に拠点を持つ企業でも導入しやすく、研修の内製化が難しい場合でも即戦力の育成が可能になります。
セミナー名 | Python基礎セミナー講習 |
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運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
価格(税込) | 27,500円〜 |
開催期間 | 2日間 |
受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
生成AIセミナー
「業務でChatGPTやCopilotを活用したいけど、社員の知識や使い方にばらつきがある…」このように悩む企業には、生成AIセミナーがいいでしょう。未経験者向けながら、LLMの基礎からプロンプト設計、業務への応用まで網羅的に習得できます。
CanvaやClaudeなど最新ツールの操作も体験できるため、現場に戻ってすぐに実践可能なスキルを身につけるのにおすすめの内容です。
セミナー名 | 生成AIセミナー |
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運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
価格(税込) | 27,500円〜 |
開催期間 | 2日間 |
受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
強化学習プログラミングセミナー
「すでに機械学習の基礎を理解している技術者がいるけど、もっと高度なスキルを習得させたい」という場合には、強化学習プログラミングセミナーがおすすめです。Q学習やDQNなどの理論、ロボット制御やゲームAIの実装まで、実務応用に直結する内容を学ぶことができます。
慶應義塾大学の栗原教授が特別技術顧問を務めているため信頼性も高く、自社開発の高度化や先進技術領域の育成にも効果的です。
セミナー名 強化学習プログラミングセミナー 運営元 GETT Proskill(ゲット プロスキル) 価格(税込) 35,200円〜 開催期間 1日間 受講形式 eラーニング
データサイエンティストセミナー
「データを活用して業務改善などに役立てたいけど、社内に分析のプロがいない」といった企業なら、データサイエンティストセミナーの活用はいかがでしょうか。こちらでは統計、Python、プロジェクト推進などを習得でき、技術職だけでなくビジネス部門の担当者にも対応できる構成となります。
データ分析はこの先長い目で見ても、企業の成長や業務最適化に絶対に欠かせない要素になります。こういったスキルをもつ人材を短期間で育てたい企業におすすめです。
セミナー名 データサイエンティストセミナー 運営元 GETT Proskill(ゲット プロスキル) 価格(税込) 41,800円〜 開催期間 2日間 受講形式 対面(東京)・ライブウェビナー・eラーニング
DXAI人材育成サービス
「複数の部署にまたがる中長期的なDX・AI人材育成を計画したい」という企業には、DX・AI人材育成サービスがおすすめです。こちらはDXスキルの可視化から、教育体制構築、助成金対応、研修実施後のアイデア実装支援まで一貫してサポートしています。
製造業や建築業にも強く、現場課題と紐づけて人材を育成できるのが最大の特長です。社内のDX推進プロジェクトの基盤づくりや、部門間の連携促進にもつながります。
組織的な育成を検討している企業は、ぜひ一度相談してみてください。
AI人材が育つ業務がないから
AI人材が成長するには、実務経験が不可欠です。しかしAIを活用できる業務自体が存在しない、あるいは不足している企業では育成の機会が生まれにくいのが現状です。
とくにAI導入の初期段階にある企業では、業務にAIを組み込む発想や仕組みが圧倒的に不足しており、せっかく知識を習得しても実践する場が与えられません。これでは人材のスキルが定着せず、不足を補うこともできなければ成長のチャンスも失ってしまいます。
社内のAI人材不足を解決する方法
AI人材不足の解消には、学習意欲を高める制度や、実践の場づくり、外部の専門力の活用など、現実的な取り組みを組み合わせることが重要です。
ここでは、社内のAI人材不足を乗り越えるための方法を紹介します。
- AI資格の支援や報奨制度を導入する
- AI危機やシステムを積極的に導入する
- 外部サービスを活用する
AI資格の支援や報奨制度を導入する
不足の対策として社内でAI人材を育てるためには、学習へのモチベーションを維持できる仕組みづくりが大切です。その一つが、AI資格取得を支援する制度の整備です。
受験料の補助や、資格取得時の報奨金の支給などは、学習意欲を高める効果があります。また、資格取得後に役割や給与面での評価を明確にすることで、キャリアパスの見通しが立ちやすくなります。
とくにAI未経験者にとっては、目標が可視化されていることで学習に踏み出しやすくなるでしょう。
AI危機やシステムを積極的に導入する
AI人材不足対策としては、知識だけでなく実際に手を動かして試行錯誤できる環境が重要です。そのためには、AI関連のツールやシステムを業務に取り入れ、日常的に触れられるようにすることが効果的です。
たとえばデータ分析ツールやAIチャットボット、画像認識APIなどを導入すれば、社員が自然とAI技術に触れる機会が増えます。小さな業務改善レベルからAIを使ってみることで、現場に負担をかけずに導入でき、学習と実務を結びつけやすくなるはずです。
外部サービスを活用する
AI人材不足で育成も難しいなら、外部の教育機関や専門サービスを活用するのも有効な手段です。法人向けのAI研修プログラムを導入したり、プロジェクト単位で外部のAIエンジニアと協業したりするなど、現代ではさまざまな選択肢とやり方があります。
自社内の十分な知見やリソースが不足している場合は、こうした外部の力を上手に借りることで、育成は圧倒的に楽になります。人材育成の方針や研修内容に迷っている場合は、「DX・AI人材育成研修サービス」がおすすめです。
企業のDX・AI推進力を可視化する「DXレベルチェック」を起点に、短期集中型から中長期的な研修プランまでを個別に提案。10,000社以上の導入実績を持ち、業界・職種問わず幅広い対応が可能です。
無料相談では現状の課題や導入事例をもとに、最適な育成プランを具体的にご案内しています。人材不足に悩んでいる方は、まずは資料ダウンロードまたはお問い合わせから、ぜひお気軽にご相談ください。
AI人材不足に向けて行われている取り組み
「AIを活用できる人材が不足している」そんな課題を抱える企業が増えている今、国も対策に乗り出しています。中でも注目されているのが、経済産業省が推進する人材育成支援策です。
ここでは、AI人材不足に向けた3つの取り組みについて紹介します。
名称 | 概要 | 特徴・ポイント |
ITスキル標準(ITSS) | AI・IT人材の職種ごとに必要なスキルや能力を整理・体系化した基準 | AIエンジニアやデータアナリストなど6職種を初級〜上級まで定義。育成計画や人材評価の軸として活用可能 |
第四次産業革命スキル習得講座認定制度 | AI・IoTなどの先端技術を学べる講座を、国が認定する制度 | ITSS準拠の信頼性ある講座が対象。修了証の発行によりスキル証明としても有効。未経験者にも適応しやすい |
デジタル人材育成プラットフォーム | 経済産業省とIPAが提供する学習支援プラットフォーム | 基礎から実践まで学べる「マナビDX」と、現場で課題解決力を鍛える「マナビDX Quest」で構成。現場力育成にも対応 |
ITスキル標準(ITSS)
AI人材不足に向けて整備されたのが、経済産業省が策定した「ITスキル標準(ITSS)」です。
これは、AI関連職種をはじめとするIT人材に必要な実務能力を職種別・レベル別に整理したスキルマップで、育成計画の軸として活用できます。とくにAI分野ではエンジニア、アナリスト、プロジェクトマネージャーなど6職種に分かれており、それぞれに初級から上級までの能力指標が明示されています。
この体系があることで、人材の成長を可視化しやすくなり、育成の方向性を明確にできるのです。
第四次産業革命スキル習得講座認定制度
AI人材不足に向けた取り組み2つ目は、第四次産業革命スキル習得講座認定制度です。
AIやIoT、ビッグデータなどの先端技術に関するスキルを効率よく学ぶには、質の高い学習環境が欠かせません。この制度では、ITスキル標準に準拠したカリキュラムを持つ講座を国が公式に認定し、受講後には修了証が発行されます。
認定講座は質が担保されており、教育内容の信頼性が高いため、未経験者でも安心して学習に取り組めます。とくに転職やキャリアチェンジを考えている社会人にとっても、履歴書に書ける実績の証明になるのも大きな魅力です。
デジタル人材育成プラットフォーム
不足だけでなく、「どこで学べばいいかわからない」「独学では限界がある」そういった声に応えるべく、経済産業省とIPAが構築したのが「デジタル人材育成プラットフォーム」です。基礎から応用まで幅広く学べる「マナビDX」と、地域企業と連携した実践型プログラム「マナビDX Quest」の2本柱で構成されており、初心者も実務経験者もそれぞれのレベルに応じたステップアップが可能な内容になっています。
とくにマナビDX Questでは、実在する課題にチームで挑む仕組みが整っており、単なる座学では身につかない「現場力」を育てることができます。地域のデジタル化推進にも貢献できる、実践型の学びの場として注目されています。
AIの人材不足を解消しよう
AI技術の進化に企業の体制が追いつかない現状では、人材不足は避けて通れない課題です。しかし、制度の整備や支援策の活用次第で、その壁を乗り越える道は必ず現れます。
採用に頼るだけでなく、社内育成の仕組みを整え、外部の力も借りながら、長期的にAI人材不足を軽減していくことが重要になります。まずはできる一歩から、今いる社員の学び直しやスキルの可視化に取り組んでみてはいかがでしょうか。
