ChatGPTなどの仕組みや解説を調べていると「LLM」という言葉をよく目にする方も多いと思います。「LLM」とは大規模言語モデルという意味で、生成AIの技術の一つです。
今回は、LLMの仕組みや種類・できることやビジネス活用例などをわかりやすく解説致します。
LLMとは?
LLMとは大規模言語モデルの一種で、Large Language Modelsの頭文字を取っています。大規模言語モデルは、ディープラーニング技術を用いて、インターネット上にある大量のテキストデータからパターンを学んでいます。
そのため、テキストを理解したり新しくテキストを生成する事が可能です。2023年現在ほとんどのLLMにはTransformerという機械学習モデルが使用されており、テキストの文脈を理解する事が可能です。
Transformerは以下の3種類に分類され得意なタスクが異なります。
エンコーダ・デコーダモデル
入力データを一定の規則に従って目的の情報に変換し、その情報を元に逆方向の変換を行って目的のデータを出力するモデル。文字通りエンコーダとデコーダ2つのシステム構成で成り立っています。
文章作成や翻訳・質問への回答など入力も出力もある程度の文章量が見込まれる場面で使用されています。
エンコーダモデル
入力データを何らかの形式に変換するモデル。Transformerのエンコードのみを使用しており、デコーダは存在しないため、複雑な文章を生成する場面では使われません。
エンコーダモデルは、主に入力データの特徴や文章の意味・構造・要点などを抽出する際に使用されます。
デコーダモデル
入力データに対し次に続く文章を予測するモデル。Transformerのデコーダのみを使用しており、エンコーダは使用しないため意味を分析する場面では使われません。
デコーダモデルは、主に抽出したデータを元に翻訳や要約・文章・質問への応答を出力する際に使用されます。
LLMの仕組み
LLMには様々な種類があるため、LLMにより多少異なりますが、具体的な仕組みは下記のような流れになります。
- テキストデータをコンピューターに入れ込む。
- テキストデータにある文章を単語や文などの細かい単位に分解する。
- 分解した単語や文の特徴を分析し、関連性やパターンを学ぶ。
- 単語や文から次に来る単語や文を予測する。
- 入力した文の次の単語や文の確率を出力し、単語や文を組み合わせて新しい文章を生成する。
LLMの種類
LLMには様々な種類が存在し、パラメータ数が異なるため学習されたテキストデータの量や特徴も異なります。パラメータ数の数が多ければ多いほど、多くのテキストデータなどを学習しており高性能です。
具体的なLLMの種類は以下になります。
GPT-3.5/GPT-4
Open AI社が開発したChat GPTに搭載されている大規模言語処理モデル。Generative Pretrained Transformerの略でTransformerがベースになったニューラルネットワークを用いて構成されています。
GPT3.5は3550億個のパラメータが使用されており、後継モデルのGPT-4は非公開ながら5,000億以上と言われています。GPT-3.5は、ユーザーからの疑問や質問に応答したり、文章の生成・要約・コード生成などのタスクが実行可能です。
GPT-4は、前モデルよりも多くのパラメータを持っているため、より様々なタスクを効率的に実行する事が可能になりました。そのため、より複雑な自然言語を理解し、想像力・表現力豊かな様々なコンテンツの生成ができます。
PaLM / PaLM 2
Google AIが開発したGoogle Bardに搭載されている大規模言語モデル。PaLMはPathways Language Modelの略で、GPT同様Transformerがベースになったニューラルネットワークを用いて構成されています。
PaLMには最大5,400億個のパラメータが使用されています。PaLM2は非公開ながら3,400億個と言われており、モデルの小型化でコスト効率が高くなりました。
入力されたテキストに対し最適な出力を選択し、Googleを介してインターネットにアクセスするため、最新情報を交えた出力が可能です。
LlaMA/LlaMA2
Meta AIが開発した大規模言語モデル。Large Language Model Meta AIの略でAI分野の研究をサポートする目的のため提供されました。
GPTやPaLM同様、Transformerがベースになったニューラルネットワークで構成されています。LlaMAは小型で高性能なモデルで、LLMのテストや活用方法の効率的な研究が可能です。
LlaMAのパラメータ数は最大650億個、後継版のLlaMA2では70億個・130億個・700億個と3種のモデルが存在します。LlaMA2の性能はChat GPTと互角と言われています。
OpenCALM
株式会社サイバーエージェントが開発した日本語大規模言語モデル。国内最大級のLLMで、ほぼ全て日本語のデータで学習されています。
OpenCALMのパラメータ数は68億個と少なめですが、オープンソースのため誰もが自由に利用・改変・再配布が可能になります。
Rinna-3.6B
株式会社Rinnaが開発した日本語大規模言語モデル。日本語に特化した言語モデルと対話型モデルの2種類のモデルをオープンソースで公開しています。
ユーザーは目的に応じて最適なモデルを選択することが可能で、36億個のパラメータ数を持っています。
LLMでできること
LLMはテキスト生成を実行するだけでなく、ユーザーの入力した言語を理解し、様々なコンテンツが出力可能です。LLMで実現可能なタスクを具体的に解説します。
文章の構成
LLMは様々な文章の構成方法を学習しています。そのため自然な文章を構成することが可能になります。また、人間の作成した表現や文章構造を理解した上で、様々な目的に合わせた柔軟な構成が可能です。
文章の作成
文章などのコンテンツ作成は、LLMの機能を最大限に引き出す技術です。ターゲットや目的に合わせた文章の作成ができるため、ビジネスで活用するメール文面や記事やニュースなどテーマに合わせた文章作成ができます。
翻訳
LLMは大量のテキストデータで学習されており、高度な言語理解能力があるため従来の翻訳機より正確かつ自然な翻訳が可能です。与えられた文章の文脈を理解して文章のニュアンスを捉え、様々な言語間の翻訳を行うことができます。
質問への回答
LLMは、ユーザーが入力した疑問や質問への回答を行うことが可能です。LLMは事実に基づく質問や意見を含む質問にも対応しており、様々な回答が得られます。
詩などの創造的なコンテンツ作成
物語や詩・台本などのクリエイティブなコンテンツ作成が可能です。LLMは、人間の文章の表現や構造を理解し、自然で独創的な文章の生成を行います。
人間が思いつかないような独創的なアイデアを得ることも出来るでしょう。
LLMの活用事例
LLMは、教育や研究・ビジネス・創作活動など様々な分野で活用されています。実際にどのようなシーンで活用されているのかその一部をご紹介します。
チャットボット
チャットボットの会話エンジンや学習データとして活用されています。LLMは膨大なテキストデータで学習されているため、自然なやりとりの会話や様々な知識やパターンを学習することができます。
また、教育の場面では、学生の理解度やスキルに合わせた学習コンテンツを生成することが可能です。
翻訳
LLMは、文化や文脈の違いを理解した上でニュアンスを捉え、自然な文章を作成することが可能です。これにより、従来の翻訳機より精度の高い翻訳が実現できるようになりました。
ビジネスの場面では、多言語を話す方との商談やプロジェクト・企業が国際市場に進出する際など多くのシーンで有用なツールになります。
情報検索
マイクロソフトが提供する「Bing」やGoogleが提供する「Bard」などは、AIチャットにLLMが活用されています。このようなLLMは検索エンジンと連携しており、より正確な情報をユーザーに提供しやすくなります。
多くの情報からユーザーが求めることを提供し、作業効率が捗ります。
マーケティング戦略のサポート
LLMは市場調査や競合・顧客の行動を分析し、ターゲット顧客に対して最適なメールマガジンやキャッチコピーなどを作成することができます。LLMの導入で市場での成功を追求し、効果的なマーケティング戦略が可能です。
オペレーション
従来の様な電話でのカスタマーサポートを人間が行う場合、24時間365日の対応は困難です。また、サポートの質も担当者によりばらつきが生じる傾向にありました。
LLMの導入により、顧客からの問い合わせに対する24時間365日の対応ができ、企業は人件費削減やサービスの質を向上させる可能性もあります。
LLMの注意点
LLMは様々なコンテンツが生成できる一方で、問題点もあります。LLMを使用する上での注意点をまとめました。
誤った内容を生成することがある
LLMはインターネット上にある大量のテキストデータを用いて学習しており、そのデータに基づいて新たなテキストを生成します。そのため、学習元のテキストデータの情報が誤っている場合、出力するテキストも誤った情報が反映される可能性があります。
LLMは完全に正確な情報のみを抽出し、情報の正誤を判断する能力を持たないため、誤った情報を提供する事があります。
データに偏りがある可能性がある
テキスト生成は、LLMが学習したデータに基づいて新たに出力します。どのようなテキスト情報を生成するのかは、学習したデータに大きく左右されます。
学習元のデータに情報の偏りがあると出力したデータにも偏りが反映され、個人の主観や特定の文化・人々の視点や偏見が過度に強調される可能性もあるでしょう。
最新情報は提供できない
一般的なLLMはリアルタイムで情報を更新する事ができないため、最新情報は提供できません。インターネットに連携しているモデル以外では、その情報を学習していない限り疑問や質問に応答する事は不可能です。
言語により精度が異なる
LLMを開発している使用言語はそのほとんどが英語であり、インターネット上で最も多い言語も英語になります。LLMはインターネット上にある大量のテキストデータを用いて学習されているため、他の言語よりも英語に対する文法や構文などを理解しやすい傾向にあるのです。
そのため、データ量の少ない他の言語では文法や構文などを学ぶためのデータも不足しており、LLMの精度が大幅に低下する可能性もあります。
機密情報流出の恐れがある
LLMは大量のテキストデータ学習以外に、ユーザーが入力したデータを用いて学習する事が可能です。従って、個人情報や機密情報などが含まれたデータで学習された場合、これらの情報を意図せず公開してしまう事があります。
LLMの対策としては、これらの情報が含まれる情報を学習しないよう設計したり、情報を事前に除去・公開を防ぐなどがありますが完全な対策とは言い切れません。特に機密性の高い情報を扱う業種では、重要なリスクと言えるでしょう。
LLMの特徴を理解して作業を効率化しよう!
今回は、LLMの仕組みや種類・できることやビジネス活用例などを解説致しました。LLMは、AIの進化において多くのシーンで活用されている技術です。
活用事例は幅広く、今後もLLMの発展と共に多種多様な場面で応用されることでしょう。解決すべき注意点は多く存在しますが、これらの特性を理解した上でLLMの技術を活用して作業を効率化しましょう。