米Amazonが、AIとロボットを駆使した次世代物流施設を米国で稼働させ、物流業界に新たな風を吹き込んでいます。
この取り組みは自動化を超え、在庫管理から配送までを一変させる「第二の物流革命」と位置付けられています。
新たに導入した物流施設では、数万台のロボットが連携し、AIの指示のもと、商品を迅速かつ正確に移動させるシステムにより、従来の物流施設と比較して配送コストを大幅に削減することに成功しました。
さらに、Amazonは2024年10月に、AIを活用した配送のラストワンマイルを効率化する新型配送車両も公開しました。
この車両は、AIによる高度なルート最適化や配送計画により、物流業界全体の効率化を加速させ、消費者により迅速かつ低コストな配送サービスを提供する可能性を秘めています。
今回は、AmazonのAI導入事例や提供する生成AIサービスをご紹介します。
AmazonのAI導入事例
Amazonは以下のようなAI技術の導入により、物流プロセス全体を自動化し、作業効率を大幅に改善しています。
- 在庫出荷の調整
- 倉庫内での商品の認識や品質検査
- 移動式産業ロボット
- 商品の仕分けのサポート
- 推奨ルートの最適化
- パーソナライズされたショッピング体験
このような取り組みで、顧客への商品配送時間を短縮し、より高いレベルの顧客満足度を実現しています。以下で、AmazonのAI導入事例を詳しく解説します。
在庫出荷の調整
Amazon独自の「サプライチェーン最適化テクノロジー(SCOT)」は、ディープラーニングという高度なAI技術と膨大な量のデータを組み合わせることで、1日の商品の需要を予測します。
この予測を基に、世界中の何百万もの販売事業者から商品を仕入れ、Amazonの各拠点に最適な商品を最適な数量で配置します。
このテクノロジーの導入により、Amazonはより多くの商品を取り揃え、顧客への配送スピードを大幅に向上させることに成功しました。
倉庫内での商品の認識や品質検査
AmazonがAIを積極的に導入した物流の効率化の一例として、マシンビジョンを搭載したAI対応ロボットの活用が挙げられます。
マシンビジョンとは人間の視覚を模倣した技術で、カメラで捉えた画像データをコンピュータで解析し、そこに含まれる形状や色、動きなどの情報を認識します。
マシンビジョンを搭載したロボットは、多種多様な商品が混在する倉庫内において、商品の認識や品質検査などの作業を自動で行うことで、人手を介さずに迅速かつ正確な処理を実現しています。
さらに、合成データを作成することで、需要が急激に高まる時期に発生する可能性のある様々なシナリオをシミュレーションしています。
このシミュレーションデータを用いて、ロボットの機械学習モデルをトレーニングすることで、ロボットは予測不能な状況にも対応できるようになり、より高いレベルの自動化を実現しています。
機械学習については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
移動式産業ロボット
Amazonが世界最大級の規模で運用している移動式産業ロボットも、AIによって高度に制御されています。顧客が商品を購入すると、中央制御システムが数多くのロボットの中から最適なロボットを選択し、商品を取りに行くよう指示を出します。
各ロボットは、他のロボットが学習した効率的な移動経路を共有することで、施設内をスムーズに移動し、商品をピッキング作業を行う従業員の元に迅速に運びます。
商品の仕分けのサポート
Amazonの物流拠点では、商品が梱包されラベルが貼られると、AIで強化された視覚システムを搭載したロボットが活躍し、人間の作業をサポートしています。
商品が配送拠点であるデリバリーステーションへと運ばれる前の仕分け作業で重要な役割を担っており、積み重ねられた様々な形状や大きさの商品の中から、どの商品をピックアップすべきかを正確に判断します。
例えば、大小様々な箱や柔らかい梱包材、重ねられた封筒などが混在する状況でもAIによる高度な画像認識技術を用いて、それぞれの商品を識別して最適な掴み方を計算し、商品の形状や重量に合わせて、吸盤の数を調整します。
吸盤の数が多すぎると、複数の商品を一度に持ち上げてしまい、作業効率が低下したり、商品を破損してしまう可能性がある一方で、吸盤の数が少なすぎると、商品をしっかりと掴みきれず、落下させてしまうリスクが高まります。
これらの状況を事前に予測し、最適な数の吸盤を選択することで、安全かつ効率的なピッキング作業を行っています。
推奨ルートの最適化
Amazonは、日々多様な商品が数多く注文されるという複雑な状況下において、最適な配送ルートを設計し、配送効率を最大化するという課題解決のため、多くの機械学習モデルを連携させた高度な配送ルート最適化システムを構築しています。
特に、ラストマイルデリバリーにおいては、生成AIと大規模な言語モデルの技術を用いて、ドライバーが配送中に迅速かつ正確な判断を下せるよう、様々な支援を行っています。
例えば、配送先の建物に関する詳細な情報をAIが生成し、ドライバーに提供することで、大規模な建物での配送において、正しい配送場所を素早く特定できるようになります。
また、建物の外観や道路からの入り口などの物理的な特徴を言語で表現し、ドライバーが実際の状況と照らし合わせながら配送を進めることができるようサポートします。
パーソナライズされたショッピング体験
自然言語処理の分野で大きな進歩をもたらした「トランスフォーマー」という技術を先述したSCOTに導入することで、顧客がどのような商品を好むのかをAmazonの膨大な商品カタログの中から詳細に分析し、より正確な予測ができます。
これにより、Amazonは長期的な視点で、お客様のニーズに合った商品を揃えることができるようになりました。
ディープラーニングをはじめとするAI技術の進化により、SCOTはますます高度化し、Amazonのサプライチェーンはより効率化され続けています。
Amazonが提供しているAIサービス
Amazonは配送の効率化だけでなく、以下のような生成サービスも提供しています。
Amazon Bedrock | 生成AIモデルを開発するためのプラットフォーム |
Amazon Polly | 合成音声による読み上げサービス |
Amazon Q | 生成AIを搭載した業務アシスタント |
Alexa | スマートスピーカー |
バーチャルメイク機能 | AIとAR技術を活用したバーチャルメイク機能 |
また、Amazonは生成AIの技術開発だけでなく、エコシステムの構築にも力を入れており、ChatGPTのライバルとして知られるAnthropicへの巨額投資は、その一例です。
Amazonは、スタートアップ企業との連携を通じて、生成AIの技術革新を加速させ、自社のサービスをさらに強化していくことを目指しています。
生成AIの分野において、技術開発からサービス展開、エコシステム構築まで、幅広い領域で積極的に取り組んでおり、今後もどのような改革を生み出すのか、注目が集まっているのです。
以下で、主なAmazonにおけるAIサービスを詳しく解説します。
Amazon Bedrock
Amazon Bedrockは、様々な基盤モデルをクラウド上で手軽に利用できる開発プラットフォームです。チャット形式の直感的なUIを通じて、プロンプトや大規模言語モデルを試したり、RAGやファインチューニングなどの高度なカスタマイズを行うことができるため、生成AIを活用した開発を効率的に進めることが可能です。
Amazon Bedrockの最大の特徴は、有名企業からニッチなモデルまで、幅広い生成AIモデルを試せる点にあります。
各モデルには、利用量に応じて料金が発生する従量課金制が採用されており、入力されたデータが学習に再利用されないという高いセキュリティも備えているため、安心して各社の基盤モデルを試すことができるでしょう。
Amazon Polly
Amazon Pollyは、テキストを音声に変換するサービスです。APIとして公開されているため、他のツールやアプリケーションと連携させることで、様々な用途で活用できます。
Amazon Pollyの最大の特徴は、テキストを元に、まるで人間が読んでいるかのような自然な音声を生成できる点です。
この機能はText-to-Speech(TTS)と呼ばれ、Amazon Pollyは、このTTSの分野において高い評価を得ています。
Amazon Q
Amazon Qは、大規模言語モデルを搭載した業務アシスタントです。MicrosoftのCopilot for Microsoft 365やGoogleのGemini for Google Workspaceと同様、外部ツールとの連携により、コンテンツの生成や質疑応答などの機能を提供します。
業務やコーディングの分野において強力な支援ツールとして注目されています。
Alexa
AlexaはAmazonが開発した音声認識エンジンであり、AIアシスタントとしての機能も備えています。Amazonのスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズに搭載されていることで知られており、音声による操作が可能な点が特徴です。
さらに、大規模言語モデルを搭載した「Alexa LLM」が登場しており、より人間らしい自然な対話が可能なAIへと生まれ変わりました。
これらの機能の向上により、Alexaはユーザーの生活に寄り添い、様々なニーズに応えることができる真のパーソナルアシスタントへと進化を遂げつつあります。
アレクサAIについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
バーチャルメイク機能
Amazonは、AIとAR技術を活用したバーチャルメイク機能を導入しており、ユーザーは化粧品を購入する前に、まるで実際に試しているかのように、様々なメイクアップ製品をバーチャルで試すことができるようになりました。
この技術は、ロレアルグループのモディフェイス社が開発したAI・AR技術を基盤としており、ユーザー自身の顔の画像や動画をアップロードするだけで、選んだ化粧品をバーチャルに試すことができます。
AIが商品の色を瞬時に読み取り、AR技術によって、その化粧品を使った時の仕上がりをリアルに再現します。
これまで、インターネットでのショッピングでは、実物を手にとって試すことができないため、特に化粧品のような色の選び方や肌への合う合わないが重要な商品は、購入に不安がつきまとっていました。
しかし、このバーチャルメイク機能は、そんなインターネットショッピングの課題を解決し、ユーザーは安心して商品を選ぶことができるようになったのです。
気になる商品のページで自分の顔の画像や動画を選択するだけで、バーチャルメイクを試すことができるため、鏡を見ているように、自分の顔にその化粧品がどのように映るかを確認できます。
気に入った商品があれば、そのまま購入手続きに進めることができるため、スムーズなショッピング体験ができるでしょう。
ユーザーは、自宅にいながら、まるで実店舗で試しているかのような感覚で、様々な化粧品を試すことができるのです。
AmazonはAIを積極的に活用している
今回は、AmazonのAI導入事例や提供する生成AIサービスをご紹介しました。AmazonがAIの活用に積極的な姿勢を示すことで、私たちの日常生活はますます便利になってきています。
近年では、AIをレンタルするようなサービスも登場し、より多くの企業や自治体が気軽にAIを導入できる環境が整いつつあります。
少子高齢化による人手不足が深刻化する中、AIはその解決策の一つとして、多くの企業で注目を集めていますが、まだまだ発展途上の技術であり、今後も新たな可能性を秘めています。
Amazonは、そうしたAIの最先端を走り、新たなシステムやサービスを生み出す企業の一つと言えるでしょう。同社が今後、どのような形でAIを導入・提供していくのか、私たち消費者はもちろん、ビジネス界全体が注目しているのです。
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