日立製作所は、2024年4~6月期決算において、ITサービスと送配電網の主力2事業がAI技術の普及により大幅な成長を遂げ、純利益が前年同期比2.5倍の1,753億円と過去4年ぶりの高水準となりました。空調事業の再編など、DXを軸とした積極的な事業も奏功し、今後のAI需要のさらなる拡大に向けて、同社は更なる成長戦略を推進していく方針を示しています。
そこで今回は、DX事業の概要やIT化との違い、DX事業が注目される理由、メリットを解説します。また、成功しやすい企業の特徴やそのポイントも合わせて参考にしてください。
DX事業とIT化の違い
DX事業とはデータやAIなどのデジタル技術を駆使し、企業の組織構造や業務プロセス、顧客への価値提供のあり方を根本から見直して革新することです。また、DXと類似した意味を持つ言葉に、「IT化」が挙げられます。
DX事業とIT化は、デジタル技術を活用するという点で共通点がありますが、その目的は大きく異なります。以下でDX事業とIT化の違いを詳しく解説します。
DX事業 | IT化 | |
目的 | 企業全体のデジタル化で、サービスやビジネスモデルを根本から変革する | 特定の業務プロセスをデジタル化し、効率化を図る |
DX事業とは
DX事業は、デジタル技術やデータの活用によって、製品・サービスやビジネスモデルに変革をもたらすものです。ビジネスモデルそのものを刷新し、新たな価値を創造することがDXの最終目標です。企業全体の変革を目的にしています。
IT化とは
IT化とは既存の業務プロセスを維持しつつ、その効率化のためにデジタル技術やデータを活用することです。具体的には、既存の業務をより効率的に行うことを目指し、業務のスピードアップやコスト削減を図ります。そのため、IT化はDX事業を推進するための手段にあたるもので、業務プロセスそのものを大きく変えるものではありません。
DX事業が注目される理由
DX事業は、ビジネス界で非常に注目を集めています。その背景には、経済産業省が警鐘を鳴らしている「2025年の崖」問題の存在があるようです。
2025年の崖とは、IT人材の不足や企業が長年使い続けてきた基幹システムの老朽化といった問題が深刻化し、これらが改善されないまま2025年を迎えると、日本経済に大きな打撃を与える可能性があるというものです。
DXを積極的に推進することで、企業は新たなビジネスモデルを創出し、生産性を向上させることができるため、注目されているのです。以下で、DX事業が注目される理由の具体的な要素を解説します。
コスト削減ができる
ITツールの導入は、人件費削減に直結します。書類作成やデータ入力などのルーティンワークの効率化により、従業員の作業時間を大幅に短縮することが可能です。さらに、会議や商談をリモート化することで、交通費を削減し、生産性の向上も期待できるでしょう。
請求書やDMの電子化も進み、郵送費や広告費の削減にもつながります。このように、DXの推進は、企業のコスト構造を根本から変え、多岐にわたるコスト削減を実現します。
ヒューマンエラーを削減できる
DXの導入により、データの入出力作業が自動化され、人為的なミスが大幅に減少します。そのため、社内のあらゆる情報をデジタル化し、社外からも必要なデータにアクセスしたり、過去の事例を容易に検索できるようになります。結果的に、不具合やクレーム発生時の対応も迅速かつ正確に行うことが可能となり、業務効率の向上に繋がります。
リスク回避が期待できる
DXはレガシーシステムからの脱却や事業継続計画の強化など、ビジネスにおけるリスク回避に大きな期待を集めています。レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みで構築された旧型のシステムのことです。
レガシーシステムは、陳腐化していることが多く、他のシステムとの連携がスムーズに行えなかったり、運用にかかる費用が嵩んでしまったりといった課題を抱えています。DXを推進することで、システム間の連携がスムーズになり、業務効率化やコスト削減が期待できます。
また、DXでは緊急時の安否確認や被害状況の確認をスムーズに行えるITツールの導入や、クラウド上でのデータバックアップなどが推進されます。自然災害や大規模なシステム障害などの緊急事態が発生した場合に、早期復旧を実現するための事業継続計画を強化することにもつながるでしょう。
DXはビジネスを最新化し、緊急事態への備えを強化することで、企業が抱える様々なリスクを効果的に回避するための手段として、ますます注目されているのです。
従業員の負担が減る
DXの進展により、従来アナログで行われていた業務や繰り返し行う必要があった業務にかかる時間は、大幅に削減される傾向にあります。特に、AIの導入による自動化は、これまで人手で行っていた業務を効率化し、さらなる時間短縮を実現します。
そのため、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになり、企業全体の生産性向上に繋がることが期待されます。
DX事業のメリット
DX事業によって、企業は市場の変化に迅速に対応し、生産性を飛躍的に向上させるなど、多岐にわたるメリットを得られます。以下で、具体的に解説しましょう。
DX戦略の手順については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
消費行動の変化に迅速に対応できる
時代や環境は常に変化し、それに伴い消費者の行動や市場も刻々と変化しています。企業が生き残り、成長を続けるためには、このような変化に柔軟に対応できることが不可欠です。
従来のビジネスモデルでは、変化のスピードに対応しきれず、営業利益の低下や企業存続の危機に直面するケースも少なくありません。しかし、DX事業を推進することで、新たなビジネスモデルを構築し、消費者の行動変化に対して迅速に対応できるようになります。
DXは企業のあらゆる業務プロセスをデジタル化し、データに基づいた意思決定を可能にすることで、市場の変化をいち早く捉え、それに合わせた戦略を実行することができます。そのため、企業は消費者のニーズを的確に把握し新たな価値を提供することで、競争優位性を確立し、持続的な成長を実現することができるでしょう。
生産性が向上する
DX事業におけるITツールの活用は、業務の自動化やデータ分析の効率化を促進し、生産性を大幅に向上させます。そのため、企業はより多くのサービスや製品を迅速に開発・提供することが可能となり、市場における競争優位性を確立することができるでしょう。
また、業務効率化によって生まれた余剰リソースを新たな事業領域への投資に充てることで、企業の成長を加速させることも期待できます。
事業継続計画が充実する
事業継続計画とは、企業が災害やシステム障害など、突発的な事態に直面した際に、事業の継続性を確保するためのものです。従来の事業継続計画は、オフィスへの復旧や紙ベースの資料の管理など、物理的な環境に重点を置いていました。
しかし、DX事業ではテレワークの導入やクラウドサービスの利用など、ビジネスのあり方が大きく変化しています。DXを考慮した事業継続計画では、従来の計画に加えて、以下のような点が重要となります。
- テレワーク環境の整備
- データの分散化とバックアップ
- クラウドサービスの活用
- サイバーセキュリティ対策の強化
DXの観点を事業継続計画に盛り込むことで、より具体的かつ実践的な計画となり、企業の回復力を強化することができます。
DX事業が成功しやすい企業の特徴
DX事業において、ITツールやデジタル技術の導入は手段の一つに過ぎません。真の目的は、それらを用いてビジネスモデルそのものを革新し、事業の成功を収めることです。
以下で、DX事業が成功しやすい企業の特徴をくわしく解説します。
デジタル技術に精通した人材を配置している
DX事業の成功には、事業目標に最適なデジタル技術を選定し、導入がシステム全体に与える影響を的確に予測できる人材の存在が不可欠です。そのため、豊富なデジタル技術導入経験やデータ分析・AIに関する深い知識を持ち、デジタル変革を牽引できる人材を配置することが重要です。
DX社内研修の重要性と効果については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
ITリテラシー教育への投資を行っている
DX事業の成功には、組織全体のデジタル化が不可欠です。そのために、デジタル技術に精通した人材だけでなく、現場で日々業務を行う従業員もITリテラシーを習得し、デジタル技術を効果的に活用できる力が求められます。デジタル人材の育成は、ITリテラシー教育への投資を通じて実現され、DX推進の基盤となるのです。
ITリテラシーは、以下のような講座やセミナーなどで身につけることができます。
企業向けDX・AI人材育成サービス
AI研究所の「企業向けDX・AI人材育成サービス」では、まず企業様のご要望をじっくりとお伺いし、抱えている課題を明確にします。企業様の理想とする未来像を踏まえ、最適な育成プランをご提案し、具体的な方向性と解決策を示し、AIを効果的に活用するための道筋を一緒に見つけていきます。
また、研修後にはアイデア創出の場を設け、AIをどのように業務に活かしていけるのかを具体的に検討します。現場で発生する様々な課題に対して、AIがどのように貢献できるのかを考え、実践的な支援を行います。
従来の学習重視の研修とは異なり、企業が本当に求めるDX・AI人材を育成することを目指しています。単に知識を身につけるだけでなく、AIをビジネスに活かすための実践的なスキルを習得し、企業の成長に貢献できる人材へと育成します。
ITツールを業務で活用している
ITツールを業務に取り入れ、システムの更新を定期的に行っている企業は、DX事業において成功しやすいと言えるでしょう。DX事業は、ITツールの活用と市場環境の変化への迅速な対応が不可欠です。
このような企業は、すでにITツールを使いこなす土台が整っているため、新たなデジタル技術の導入やシステムの改修がスムーズに進みやすいと言えるからです。
新たな働き方を取り入れている
DX事業は技術の導入だけではなく、企業のビジネスモデルそのものを変革する取り組みです。このような変革を成功させるためには、企業文化の根底から見直し、新たな働き方を定着させることが不可欠です。
働き方改革を進めることで、企業は変化の激しいビジネス環境において、迅速かつ柔軟に対応できるようになり、DX事業の成果を最大化することが可能になるでしょう。
DX事業を成功させるポイント
DX事業を成功させるためには、経営陣の積極的な姿勢やユーザー視点が不可欠です。企業が成長を遂げるために、DX事業を進める上で特に注意すべき点を以下で詳しく解説します。
経営陣DX事業に携わる
DX事業を推進するには、資金や人材など多岐にわたるリソースが必要不可欠です。さらに、組織全体が共通の目標に向かって一丸となるためには、トップによる強力なリーダーシップが不可欠です。
そのため、経営陣が積極的にDX事業に関与し、その推進を牽引することが成功の鍵となるでしょう。
ユーザー視点に立った事業活動を行う
DX事業において最も重要なことは、ユーザーが真に求めているものを理解することです。市場調査を通じて、最新のトレンドや顧客のニーズを徹底的に分析し、その知見に基づいて顧客の課題を解決し、新たな価値を提供するビジネスモデルを構築することが不可欠です。
これにより、企業は持続的な成長を遂げることができるでしょう。
様々な変化に対応できるようにする
DX事業計画を成功させるためには、ビジネス環境やユーザーの価値観の変化を早期に捉え、迅速に対応することが不可欠です。そのためには、以下の仕組みを構築することが有効です。
- 様々なデータ分析の強化
- 顧客との密なコミュニケーション
- 競合調査の強化
DX事業は、変化の激しいビジネス環境において柔軟性と迅速な対応が求められます。組織全体の意識改革を進めることで、変化に対応し、持続的な成長を実現することができるでしょう。
自社でいかにDX事業を推進するかが重要
今回はDX事業の概要やIT化との違い、DX事業が注目される理由、メリット、成功しやすい企業の特徴やそのポイントを解説しました。DXが急速に進む現代において、多くの企業が自社の事業にDXを取り入れようとしています。しかし、社内に最新のデジタル技術やITツールに精通した人材が不足しているという課題を抱えている企業も少なくありません。
そのような状況下で、DX事業の第一歩として効果的なのが、AI研究所の「企業向けのDX・AI人材育成サービス」です。このサービスは、組織のそれぞれのステージやレベル・部署に合わせて最適な人材の育成プランのサポート・コンサルティング・トレーニングを組み合わせるというメリットがあります。
貴社のDX推進を後押しするためにも、ぜひ一度、弊社の企業向けDX・AI人材育成サービスについてお問い合わせください。