【2024】自治体のAI導入状況とは?導入する理由や成功させるポイントも詳しく解説

東京都練馬区は、富士通Japanと共同で開発したAIを活用し、住民税や国民健康保険料の滞納問題解決に乗り出しました。全国初の試みとなる「未納対策支援AI」は、滞納者の財産調査における膨大なデータを分析し、効率的な調査ルートを提示します。

練馬区独自のノウハウをAIに組み込むことで、より精度の高い調査が可能となり、2024年4月から運用を開始しているようです。そこで今回は、自治体のAI導入状況や自治体がAIを導入する理由、AI導入手順、事例、成功させるポイントを詳しく解説します。

自治体のAI導入状況

総務省の「自治体におけるAI・RPA活用促進」調査によれば、令和4年末時点でのAI導入率は、都道府県・指定都市が100%であるのに対し、その他の市区町村は50%と差が見られます。ただし、令和元年から5年にかけて、その他の市区町村の導入率は8%から50%へと大幅に伸長しており、AI導入が急速に進んでいることがわかります。

AI導入割合
令和元年8%
令和2年21%
令和3年35%
令和4年45%
令和5年50%

引用:地⽅⾃治体におけるAI・RPAの導⼊状況(AI導⼊状況)

自治体にAIを導入する理由とは

自治体にAIを導入する理由とは

少子高齢化が進み、自治体職員の数が減少する中、住民サービスの質を保つことが大きな課題となっています。2040年には自治体職員が半減するという予測もあり、このままでは住民の期待に応えることが難しくなるでしょう。

そこで注目されているのがAIです。AIを活用することで、様々な業務を自動化し、少ない人員で効率的にサービスを提供できるようになります。ChatGPTのような生成AIの登場により、その可能性はさらに広がりました。

ChatGPTについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

ChatGPT-4とは?機能と3.5との違い

今後、ますます多くの自治体がAI導入を進め、住民にとってより便利で快適な生活を実現していくことが期待されます。例えば、AIを活用したチャットボットによる問い合わせ対応や、ビッグデータ分析による地域課題の解決などが考えられます。

自治体におけるAI導入手順

AI導入は、自治体の業務効率化や新たな価値創造に繋がる可能性を秘めています。しかし、成功させるためには、計画的なアプローチが不可欠です。以下で、自治体におけるAI導入手順を解説します。

①事前検討・計画立案

自治体におけるAI導入を成功させるためには、事前の計画が非常に重要です。AI導入プロジェクトの最初の段階では、目的や課題の設定から始まり、必要なデータの確認と初期費用の見積もりを行います。

まず、人手不足の解消や住民サービスの向上、業務効率化など、解決したい課題を具体的に特定し、目的を明確化します。この目的が、AI導入の成功を測るための羅針盤となるでしょう。

次に、目的達成のために必要なデータの確認を行います。現在保有しているデータの整理から始め、AI分析に適した形式に加工します。データはAIの精度を左右する重要な要素であり、継続的なデータ収集と管理体制の構築が求められます。

AIで得られた予測結果をどのように業務に活用するのか、具体的なイメージを固めることも重要です。例えば、住民からの問い合わせ対応の自動化や地域の防災計画策定への活用、予算編成への活用など様々な可能性が考えられます。

最後に、初期費用を見積もることで、プロジェクト全体の計画を立てることができます。AIの導入には、システム開発費用やデータ収集・分析費用、人材育成費用などがかかります。

検証期間を設定し、その期間に必要な最小限の費用を見積もることで、予算計画を立てることができるでしょう。事前検討をしっかり行うことで、AI導入プロジェクトを成功させる基盤を築くことができます。

②AIの導入

AI導入プロジェクトが実用段階に入ると、AIモデルの実際の導入が開始されます。そのため、AIモデルを業務にスムーズに統合し、その性能を継続的に維持するための取り組みが不可欠です。

AIモデルを実際の業務に導入する際には、現場の職員への丁寧な説明が重要です。AI導入が必要な理由やその背景、目的を具体的に示し、現場の理解と協力を得ることが不可欠です。また、AIモデルを既存の業務システムにどのように組み込むか、詳細な検討が必要になります。

現場担当者と連携し、AIが業務の流れに自然に溶け込むような設計を心掛けることが求められます。

③運用

AIは一度導入すれば終わりというわけではありません。外部環境の変化やデータの蓄積などにより、モデルの精度が低下したり、新たな課題が浮上したりすることが考えられます。そのため、定期的にAIモデルの性能を評価し、必要に応じて再学習を行う必要があるのです。

AIの運用が安定してきたら、適用範囲を徐々に拡大し、他のシステムとの連携を強化することで、AIの活用による効果を最大化していくことが重要です。

自治体のAI導入事例

自治体の業務は住民からの問い合わせ対応、福祉サービスの提供、地域開発など多岐にわたります。AIは自治体のどのような業務に導入されているのでしょうか。以下で、自治体のAI導入事例をご紹介します。

問い合わせ対応

沖縄市では、住民からの多様な問い合わせに迅速かつ効率的に対応するため、AIチャットボットを導入しました。市役所への問い合わせは、窓口や電話での対応が一般的でしたが、受付時間が限られているため、仕事や育児に忙しい住民にとっては、気軽に質問することが難しい状況でした。そこで、時間や場所に縛られず、いつでも問い合わせができるAIチャットボットの導入に踏み切ったのです。

導入後、チャットボットは医療や福祉、都市計画、各種手続きなど、幅広い分野の問い合わせに24時間365日対応しています。住民は、チャット形式で気軽に質問でき、AIが自動で回答するため、迅速な対応が可能です。

起動時間のデータを見ると、全体の40%が役所の受付時間外となっており、住民が時間外に問い合わせをしたいというニーズが非常に高いことが明らかになりました。また、来所や電話をせず、気軽に問い合わせをしたいという住民が多いことも示していました。

AIチャットボットについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】AIチャットボットの仕組みとは?導入で失敗しないためのポイントも詳しく解説

議事録作成

青森県では行政の効率化を目的として、会議の議事録作成にAIを導入しました。従来、会議の議事録作成は、音声データをテキストに起こすという手間のかかる作業であり、職員の大きな負担となっていました。

しかし、AIの導入により、音声データをテキストに自動変換する機能を活用し、議事録作成にかかる時間を大幅に削減することに成功しました。作業時間の4割削減を実現しており、職員の業務負担を軽減しました。

AIによる議事録作成は、音声データをテキスト化するという基礎的な作業を自動化することで、職員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を創出したようです。

青森県ではAIの活用をさらに発展させ、様々な分野への応用を目指しています。例えば、聴覚障害のある児童生徒向けの授業補助や職業訓練校での学習支援、外国人観光客向けの多言語翻訳支援など、AIの活用範囲を拡大することで、より多くの県民に貢献したいと考えているようです。

インフラ管理

愛知県豊田市は、AIを用いて水道管の漏水問題解決に大きく前進しました。衛星画像をAIで解析することで、漏水の可能性が高い場所をピンポイントで特定できるようになり、効率的な調査が可能になりました。

その結果、従来の5年という長期にわたる調査期間をわずか7ヶ月に短縮しています。また、調査費用も大幅に削減され、コストパフォーマンスの優れたシステムとして注目されています。

自治体のAI導入を成功させるポイント

自治体のAI導入を成功させるポイント

自治体におけるAI導入を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。以下で詳しく解説します。

AI導入の予算確保

AI導入は、自治体の抱える課題解決の切り札となる一方で、導入や運用には大きなコストがかかるという課題があります。この課題を克服するためには、自治体のトップをはじめ、職員や住民の理解と協力を得ることが不可欠です。

自治体職員に対しては、AI導入による業務負担の軽減や、より創造的な業務へのシフトが可能になることを説明し、住民に対しては、AIを活用した新たなサービスの提供、行政の透明性向上など、具体的なメリットを訴求することが重要です。

また、他の自治体との連携により、導入コストを削減し専門知識の共有を図ることで、よりスムーズな導入が可能となるでしょう。

AI人材の確保

人手不足が深刻化する中、多くの自治体がAI導入に意欲を示しつつも、人材確保の難しさから具体的な取り組みが進まない状況にあります。そのため、複数の自治体が共同でAI導入プロジェクトを立ち上げ、人材やノウハウを共有することで、人的負担を軽減し、効率的な導入を実現できます。

また、AI開発企業やIT企業と連携することで、専門知識や技術力を補完し、より高度なAIシステムを導入することが可能になるでしょう。また、企業の持つデータやノウハウを活用することで、より効果的なAI活用を実現できるケースもあります。

さらに、AIに関する基礎知識や業務で活用できるスキルが学べる以下のようなセミナーを活用することで、専門人材の不足を補うことができるでしょう。

AIチャットボット入門セミナー

AI研究所の「AIチャットボット入門セミナー」は、AIチャットボットの作り方と活用法を学ぶことができるセミナーです。このセミナーは、東京大学松原教授監修のもと開催されており、eラーニング形式で行われるため、いつでも自分のペースで学習することができます。

未経験者でも受講でき、1日で基礎から応用レベルまで完全制覇できる点が特徴です。実務で使える知識と活用術を習得することができ、日常会話ができるAIチャットボットの作成やFAQに対応したAIチャットボットの作成、AIチャットボットをホームページやSNSで活用する方法なども学ぶことができます。

DX完全攻略ハンズオンセミナー

AI研究所の「DX完全攻略ハンズオンセミナー」は、DX(デジタルトランスフォーメーション)について学ぶためのセミナーです。DXとは、デジタル技術を活用して、ビジネスや社会を変革することです。

セミナーではDXの基礎知識から具体的な導入事例まで、幅広く学ぶことができます。会場受講やライブウェビナー、e-ラーニング形式で開催されるため、自分のニーズに合わせて選択可能です。

DX完全攻略ハンズオンセミナーは、未経験でも1日でDXの基礎と応用が学べ、実務で使える知識や活用術も身につきます。機械学習アルゴリズムの種類と特徴や作業自動化ロボットの作成方法なども学べるため、自治体のAI導入に役立つでしょう。

これらの戦略を組み合わせることで、人材不足という制約の中でも、AI導入を成功させることが期待できるでしょう。

自治体のAI導入は課題への対策を考えながら進めよう

今回は、自治体のAI導入状況や自治体がAIを導入する理由、AI導入手順、事例、成功させるポイントを詳しく解説しました。人材不足や採用難が深刻化する中、自治体は限られた資源で住民へのサービス提供を維持していくことが求められています。

近年、多くの自治体がAI導入を進めていますが、AI導入を成功させるためには、AI導入によってどのような課題を解決したいのか、明確な目標を設定し、既存のシステムや業務フローとの整合性を考慮して段階的な導入を進めることが求められます。

また、AI人材への確保も欠かせません。人材やノウハウの共有はもちろん、AIの知識やスキルが学べるセミナー活用でAI人材を補うことができるでしょう。AI導入の実現には、課題を克服するための継続的な努力と、関係者間の連携が不可欠です。

自治体のAI導入状況とは?導入する理由や成功させるポイントも詳しく解説
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