【2024】次世代トレンド「AI エージェント」とは?その仕組みや特徴・生成AIとの違いを詳しく解説

KDDIアジャイル開発センターの御田稔氏は、2024年6月に開催されたイベントJAWS-UGで、「AIエージェント」が生成AIにおける次の大きな動きになるとの見解を示しました。御田氏は、RAG(検索拡張生成)が注目を集める中、AIエージェントがその可能性をさらに広げると考えています。

このイベントでは、生成AI開発の最先端を行く米新興企業アンソロピックの社員を招き、AIエージェントの将来性について活発な議論が行われました。今回は、AIエージェントの仕組みや特徴、種類、生成AIとの違いや活用例を解説します。

AIエージェントとは

AIエージェントは、複数のAIモデルを統合した目標達成のために自律的に行動する高度なソフトウェアシステムです。 深層学習などの技術を活用することで、複雑なタスクを遂行し、人間に代わって意思決定を行うことができます。

例えば、顧客からの問い合わせに自動で応答したり、商品の在庫管理を行ったり、さらには新たなビジネスチャンスを発見したりすることも可能です。AIエージェントは、生成AIの発展に伴い、より高度な機能を実現し、ビジネスの様々な場面で活用されるようになってきています。

深層学習については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】機械学習と深層学習は何が違う?関係性や活用事例を紹介!

 

AIエージェントの仕組み

AIエージェントの仕組み

AIエージェントは、以下の4つの要素から構成されるシステムです。

環境AIエージェントが活動する舞台となる場所や状況
センサーAIエージェントが環境から情報を得るための「目」や「耳」のような機能
意思決定メカニズムどのような行動を取るべきかを決める「脳」のような部分
アクチュエーターロボットのアームやPCのキーボード操作など、実際に何かを行うための部分

これらの要素が相互作用することで、AIエージェントは複雑な環境の中で、目標達成に向けて自律的に行動することができます。

AIエージェントの特徴

AIエージェントには以下のような特徴があります。

  • 自律的な実行
  • 継続的な学習
  • 複数のエージェント連携

それぞれについて詳しく解説します。

自律的な実行

AIエージェントは、プロジェクトの進捗状況を常に監視し、遅延が発生した際は自動的に対策を行います。 また、複数のタスク間の優先順位を調整し、全体の効率を最大化することも可能です。

また、顧客からの問い合わせに自動応答したり、製品の品質管理を行ったりすることができるため、人材の負担を軽減し、業務の質を向上させます。

継続的な学習

AIエージェントは強化学習などの手法を用いて、自身のモデルを更新し、パフォーマンスを向上させます。例えば、顧客との対話を繰り返すことで、より適切な回答を生成できるようになります。

まるで人間のように経験を通して成長し、より賢くなっていく存在です。

複数のエージェント連携

​​AIエージェントは、単独だけではなくチームで働くこともできます。 複数のエージェントが協力することで、より複雑な問題を解決できます。

例えば、工場の生産ラインにおいて、それぞれの工程を担当し、全体として製品を完成させることが可能です。

AIエージェントと生成AIの違い

「AIエージェント」「生成AI」は、どちらも人工知能の分野で注目される技術ですが、その目的や機能は異なります。以下でAIエージェントと生成AIの違いを具体的に解説します。

AIエージェント生成AI
目的目標達成に向けたタスクコンテンツ生成
動作原理環境からのインプット大規模なデータセット
相互作用性環境と双方向にやり取り一方向の処理
活用範囲汎用的な能力専門的な能力

目的

生成AIは、文章作成や画像生成などの様々なコンテンツを生成する技術です。一方、AIエージェントは、顧客対応や業務自動化など特定の目標達成に向けた具体的なタスクを実行します。

AIエージェントは、行動が直接的にビジネス成果に結びつくため、投資対効果を測りやすいという特徴があります。

動作原理

生成AIは、大規模なデータセットに基づいて、確率的なモデルを用いてコンテンツを生成します。一方、AIエージェントは、環境から得られた情報を基に、強化学習などの手法を用いて、目標達成のための最適な行動を学習します。

AIエージェントは、意思決定過程を可視化することで、ビジネスにおける説明責任を果たすことが可能です。

相互作用性

生成AIは、与えられた情報をもとに新たな情報を生み出しますが、AIエージェントは、環境からのフィードバックを受けながら、状況に合わせて自ら行動し変化に対応できます。 AIエージェントの柔軟性は、動的な環境下においても自律的に学習し、適応することで、ビジネスの不確実性を低減します。

活用範囲

生成AIは、文章や画像といった特定のものを作り出すことに特化していますが、AIエージェントは、様々な状況に対応できるよう、幅広い能力を持っています。 例えば、AIエージェントは、スマートホームの制御や工場の生産管理など、様々なタスクを同時にこなすことが可能です。

AIエージェントの種類

AIエージェントの種類

AIエージェントは、アーキテクチャや学習方式によって、様々な種類に分類されます。 各タイプは、異なるタスクや環境に適しているため、適切なエージェントを選択することで、より効果的なAIシステムを構築することができます。

以下で詳しく解説します。

単純反射エージェント

単純反射のAIエージェントは、ルールベースシステムとも呼ばれ、あらかじめ定義されたルールセットに基づいて動作します。 過去のデータからの学習は行わず、入力された情報と一致するルールを検索して対応する出力を生成します。

学習エージェント

学習エージェントは、まるで人間が経験を積んで成長するように、繰り返し学習することで、どんどん賢くなっていきます。 例えば、囲碁のAIは過去のプロ棋士の対局データをたくさん学習することで、人間には思いつかないような新しい手筋を編み出し、世界最強の棋士に勝つことができるようになりました。

強化学習と呼ばれる手法を用いることで、試行錯誤を繰り返しながら、最適な行動を選択できるようになります。

強化学習のアルゴリズムについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

AIのアルゴリズムとは?その種類と特徴、仕組みについて解説

モデルベース反射エージェント

モデルベース反射エージェントは、人間が経験から学ぶように、過去の情報をもとに状況を判断し行動を決めます。例えば、お気に入りの音楽を沢山聴いている音楽アプリは、ユーザーの好みを学習して、ユーザーにぴったりの曲を推薦してくれるでしょう。

​​モデルベース反射エージェントは、内部状態モデルと呼ばれる環境の状況を表すモデルを構築しており、現在の状況を予測することで、最適な行動を選択することができます。

目標ベースエージェント

目標ベースのエージェントは、与えられた目標を達成するために、最適な行動経路を探索します。 例えば、自動運転車は「安全に目的地まで着く」という目標に向かって、周りの車の動きや信号を見て、一番安全で速いルートを選んで運転します。

現在の状態や可能な行動、目標状態をモデル化し、将来の状態を予測することで、最適な行動を選択することが可能です。

効用ベースエージェント

効用ベースのエージェントは、目標を達成するだけでなく、最も良い結果をもたらす行動を選びます。例えば、自動掃除ロボットは、部屋をきれいにするという目標だけでなく、「できるだけ早く、効率的に静かに掃除する」といった複数の要素を考慮し、最適な掃除ルートを選びます。

このように、その価値を最大化するような行動を選択可能です。

階層エージェント

階層エージェントは、大きな仕事を小さな仕事に分割し、それぞれを専門のチームに任せるような仕組みです。 各チームは自分の仕事に集中し、全体の指揮官がチームの仕事を調整することで、大きなプロジェクトを成功させることができます。

例えば、工場の生産ラインでは、部品の組み立てや検査、梱包といった作業をそれぞれ異なるロボットが担当し、全体の生産計画を管理するロボットが全体の動きを指示しています。

AIエージェントの活用例

AIエージェントは、様々な分野で新たな価値を提供しています。 以下では、その中でも特に注目を集めている5つの活用例を詳しく解説します。

データ分析

AIエージェントは、金融機関の投資判断をサポートしています。 金融データマイニングを通じて、市場の潜在的なリスクや機会を検出し、アルゴリズム取引などの高度な投資戦略の実現を支援しているのです。

バーチャルアシスタント

自然言語処理技術を活用したAIによるバーチャルアシスタントは、顧客との自然な対話を可能にしたチャットボットでお客様からの質問にすぐに答え、まるで人と話しているような感覚を提供します。 そのため、24時間365日の対応やよりパーソナライズされた顧客サポートを提供でき、顧客エンゲージメントの向上に貢献しています。

チャットボットを利用したAIによる問い合わせ業務については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】AIによる問い合わせ業務とは?仕組みや導入するときの注意点を解説

自動運転

自動運転車に搭載されたAIエージェントは、周囲の状況を常に把握し、安全な運転経路を瞬時に判断します。例えば、前方の車との車間距離を保ち、歩行者を検出して回避するなど、安全運転に必要な様々なタスクを遂行することが可能です。

会話型AI

自然言語処理技術を活用した会話型AIは、患者の症状を正確に把握し、適切な医療機関への紹介やセルフケアに関するアドバイスを提供することが可能です。また、医療データの分析を通じて、よりパーソナライズされた医療サービスの実現に貢献しています。

レコメンド生成

レコメンデーションエンジンと呼ばれるAIエージェントは、機械学習を用いてユーザーの行動パターンを学習し、パーソナライズされたレコメンドを提供します。 そのため、顧客体験の向上と収益性の改善が期待できるのです。

例えば、ネット通販サイトや動画配信サービスでは、AIが一人ひとりの過去の購入履歴や視聴履歴を分析し、ユーザーにぴったりの商品やコンテンツを提案してくれるため、より多くの商品に興味を持ってもらい、購入につながる可能性が高まるのです。

AIエージェントの今後の動向に注目!

今回は、AIエージェントの仕組みや特徴、種類、生成AIとの違いや活用例を解説しました。AIエージェントは、企業の業務効率化や私たちの生活をより便利にするための新たな可能性を切り開いています。

近い将来、AIエージェントは、私たちのビジネスパートナーとして、あるいは生活のサポート役として、不可欠な存在となるでしょう。

次世代トレンド「AI エージェント」とは?その仕組みや特徴・生成AIとの違いを詳しく解説
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