DX(デジタルトランスフォーメーション)は、今や企業が取り組むべき喫緊の課題として扱われるようになりました。
しかし、多くの組織でDX推進を阻んでいるのが人材の不足です。
DX人材の確保は、円滑なDXの実現に不可欠なプロセスであるため、外部から新たに雇い入れたり、既存社員をリスキリングしたりすることで不足をカバーするのが有効です。
今回は、そんなDX時代に備えて多くの企業が導入しているDX研修の主な研修内容や主なDX研修を紹介します。
DXとは
そもそも、DXは「Digital Transformation」の略称で、最新のデジタルツールを活用し、事業の生産性を高めていこうという一連の取り組みを指すものです。
元々は一般生活にも使われることばとして誕生しましたが、近年は主にビジネス領域でのデジタル活用を指すことばとして用いられています。
DXにおいて重要になるのは、最新のデジタル技術を活用することです。
20年以上前に行われたIT革命によって、各企業は業務のデジタル化を実現しましたが、最新のデジタル技術を新たに導入することで、従来とは比較にならないレベルの業務効率化を達成することも可能です。
DXを通じて最新のテクノロジーを使いこなし、企業の生産性向上や社員の負担軽減を実現し、働きやすい組織や社会へとシフトすることが求められています。
DX研修が必要な理由
DXは、デジタルツールを導入すれば実現できると思われていることもありますが、実際にはそれは誤りです。
具体的には、DXの実現にはDXのためのツールと、最新技術を扱える人材の確保が欠かせません。
そんなDX人材の拡充に向けたDX研修が各企業で行われていますが、ここではDX研修が必要とされる理由について解説します。
DX人材が不足しているため
一般的に、DX研修は既存社員に向けて行われるもので、社員の再教育によってDX時代でも活躍できる人材を自社で補填するものです。
新しい技術を持った人材確保は外部から行うことが最も手っ取り早い方法ではありますが、現状、DX人材はその需要が急激に高まっており、確保することが困難な状況です。
最新のITに対して知見があったり、相応のスキルセットを持ったりする人物は元々その数が少ないこともあり、近年のDX需要へ十分に答えられるほどの供給が進んでいません。
そのため、DX人材を確保するためには相応の待遇や給与を提示する必要があり、人件費の圧迫は免れないのが現状です。
外部から新たにDX人材を確保するよりも、自社社員を再教育し、DXの推進力とする方がコスト面での効果が期待できることから、DX研修は全社的に各企業で行われています。
全社的なデジタル活用が必要なため
企業のDXを成功に導くためには、従来のようにシステム部門だけがITの知見を持っているのではなく、会社に属するすべての社員がデジタル技術に対して知見を有している必要があります。
程度の差こそ生まれるのは仕方ありませんが、全社員が各々の業務を遂行するために最低限必要なDXへの知見を有していることが求められています。
そのため、アナログな方法での業務を撤廃し新しい様式に一本化することで、高い生産性の向上が期待できます。
そのため、DX研修は専門性の高いカリキュラムだけでなく、これまでデジタルを積極的に活用してこなかった社員に向けても行われているため、総合職の人物でも安心して受講することができます。
技術革新のスピードは高速であるため
DXは最新のデジタル技術を駆使して実行するものですが、最新のテクノロジーは常に更新されています。
新技術の導入が完了したと思ったら、最先端の領域では新しい技術開発が進んでいるということは珍しくなく、もはや日常茶飯であるといえます。
このような技術革新のスピードはますます高速化しており、今後も加速していくことが予想されます。
このような情報やトレンドの変化が激しい中で企業が存続していくためには、できる限り最新の技術にキャッチアップする努力を継続的に行うことが大切です。
特定のスキルを取得したことに安心せず、定期的にDX研修やITの知見を深める機会を設けるようにしましょう。
そうすることで新しいビジネスチャンスを見出したり、業務効率化のヒントを得たりするきっかけを得られます。
おすすめDX研修4選
次に企業に採用されているおすすめのDX研修サービスを紹介していきましょう。
1.日立アカデミー
日立グループが運営している日立アカデミーは、日立グループが培ってきたDXノウハウを一般企業にも共有するために設立されたDX研修サービスです。
AIの導入によって企業やそこで働く社員はどのように変化するのか、というリテラシー教育を一から受けることができるため、DXやハイテクに対しての知見を広め、苦手意識を克服することができます。
2.TechAcademy
大手e-ラーニングサービスを手掛けるTechAcademyでは、DXに特化した研修プランがスタートしています。
50を超える研修が目的に応じて用意されていることや、これまでに導入した企業の数は900を超えていることなどから、あらゆる組織の悩みに柔軟に応えてくれるサービスであることがわかります。
研修設計のサポートから手がけ、受講者のレベルに応じて指導要領を柔軟に変更できるため、どういった企業でも安心して利用できるサービスです。
3.NEC DX人材育成
NECグループが提供するDX人材育成プログラムは、ニューノーマル時代に対応できるDXの能力を磨ける人材育成を進めています。
DX推進の企画を担当する人、マネジメントを担当する人、エンジニアの人など、受講者の活動領域に応じた研修プランを用意し、それぞれの強みや弱点にフォーカスした能力育成を後押しします。
4.企業向けDX・AI人材育成研修サービス
企業向けDX・AI人材育成研修サービスはその名の通り法人向けのDXやAIの人材育成研修サービスです。
法人向けの研修サービスなので、新入社員や中途社員の強化に利用することができます。
育成プランまでフォローしてくれるので、DXやAIに詳しくない役員の人でも利用しやすい研修です。
DX人材を研修で育成するメリット
研修を通じてDX人材を社内で育成することは、外部から人材を新たに雇う場合とは異なるメリットが期待できます。
外部からまったく人材を雇わない場合、DXのノウハウを新たに獲得できないといった問題も起こり得るため、人材育成のメリットをうまく活用しながら併用することが大切です。
採用コストを削減できる
自社でDX人材を育成する場合、最も大きな利点は採用コストを削減できることです。
DX人材を確保するためには、DXの知見を持った人物に対して相応の給与や福利厚生を提示する必要があり、人件費の高騰は避けられないでしょう。
また、そもそも自社のDXに必要な人材かどうかを見極めるための専門要因を発掘する必要があり、外部のDXコンサルタントを別途頼ることにもなると考えられます。
DX人材を外部から見つける際には、ただ求人広告を載せるだけで良いというわけにはいかない点が重要です。
自社業務の知見がある
自社社員にDXのスキルを学んでもらうことで、既存業務への理解がすでにある人物を現場に配属できるため、効率的なDXの推進が可能です。
外部のDX人材を確保する場合、既存業務への理解を深めてもらうところからスタートしなければなりません。
しかし、既存社員がDX担当となることで、会社が抱える課題を深く理解し、どんなソリューションが必要なのか肌で理解しているため、速やかかつ効果的なDX施策を実現できます。
一貫性のあるDXを進められる
外部のDX企業やDX人材を複数起用する場合、お互いに連携を取ってDX施策を実践してもらわなければ、相性の悪いシステムが部門ごとに構築され、非常に使いづらい環境となってしまうリスクを抱えています。
社内人材がDX担当となることで、内部での連携を十分に取った上で施策を進めることができるため、全社的に一貫性の取れたDXを容易に実現できるでしょう。
DXの新人研修を行うメリットや将来性に関しては下記記事で解説しています。
DX人材を効率よく研修で育てるコツ
DX人材を育成する上では、次の3つのポイントに注目して研修を実行すると良いでしょう。
自社のDX課題を把握しておく
まずは、自社でどのようなDXの課題が残されているのか、あらかじめ把握するところからはじめることが大切です。
自社のDX課題がわかっていないと、どんな能力を持った人材が必要なのかもわからず、DX研修の時間を有意義に過ごすことができません。
自社の課題を解決できる人材育成に向けたDX研修の利用を検討しましょう。
中長期的な育成を想定する
DX研修は、簡単なリテラシー教育であれば短期間でも相応の成果を期待できますが、DXを推進できる能力を養うためには、中長期的な教育が必要です。
DX研修は実践的な能力を磨ける機会ではあるものの、短時間でトップクラスのDX人材へ導くことは困難であるため、気長な人材育成を想定しておきましょう。
常にスキルや知見のアップデート機会を設ける
DX研修は「一度実施すれば終わり」ということではなく、定期的に長期にわたって実行することで成果を発揮するものです。
短期間で終了できるカリキュラムもありますが、常に最新の情報をインプットし、スキルを養える環境を定期的な研修によって確保できるため、一度行って終わりとするのでは勿体無いものがあります。
社内では養うことのできない新しい知見を確保するための機会として、DX研修を定期的に行うことをおすすめします。
DXのおすすめ研修についてまとめ
今回はDX研修が必要とされている理由や、研修を行う上で心がけておきたいポイントについて解説しました。
DX研修を社員に受講してもらうことで、外部からDX人材を確保するコストを削減できたり、スムーズなDXを実現できたりと複数のメリットを期待できるでしょう。
ただ、DX研修は継続的に実施し社員のスキルアップにつなげることで効果を発揮する取り組みでもあります。
研修を実施する場合には、基礎的なリテラシー教育以外は長期で社員を参加させ、ハイレベルなスキルセットの習熟に力を入れることをおすすめします。
DX研修のカリキュラムも、研修サービスによってさまざまなものがあるため、自社の課題に適した研修選びを心がけることが大切です。