データ分析を行う分野では、さまざまなプログラミング言語が利用されています。その中でも、「R言語」は統計解析やデータ可視化に特化した強力なプログラミング言語です。今回は、R言語の概要やできること、Pythonとの違い、実際にインストールを行う際の方法などを詳しく解説していきます。
R言語とはどんな言語?
「R言語」は、統計学やデータの解析などに特化しているプログラミング言語の一つで、オープンソースでフリーのソフトウェアとして開発されました。この言語は1996年、ニュージーランドのオークランド大学の統計学者たちによって生み出されたことが始まりです。R言語の開発背景には、統計処理に特化した「S言語」や、データの処理に強い「Scheme」といった言語の影響があり、これらをもとにC言語などが使用されています。
この言語の最大の特徴は、統計学者によって開発されたことです。ソースコードが比較的シンプルでありながら、高度な統計処理を実現できるように設計されました。R言語は、ビジネスの世界だけでなく、教育分野での利用も広がっています。非ITエンジニアや学生など、統計分析ツールの操作に不慣れなユーザーでも容易に扱える点が評価されているのです。
また、R言語はオープンソースであるため、誰もが無料で使用できることも特徴の一つです。さらに、Windows、macOS、UNIX、Linuxなど、さまざまなオペレーティングシステムに対応し、幅広い環境で利用が可能になっています。日本語にも対応しており、関数名や変数名に日本語を使用できることも、国内での利用が増加している一因でしょう。R言語は、実際にFacebook・Google・Uber・Airbnbなどの世界的な有名企業でも利用されており、とても高く評価されている言語です。日本国内でも、DeNAなどの企業がR言語を活用している例があります。
R言語のもう一つの重要な特徴は、その拡張性の高さです。開発者のコミュニティによってさまざまなパッケージが提供されており、これを使うことによりユーザーは自身のニーズに合わせたカスタマイズができるようになっています。
R言語の人気は、TIOBE Softwareが行なっているプログラミング言語における人気・トレンド調査においても反映されています。2023年の「TIOBE Index」では、200以上のプログラミング言語が存在している中で19位にランクインしており、専門分野に特化しているR言語がこの位置にいることは、機械学習やビッグデータを活用した解析が高い注目を集めている証拠ともいえるでしょう。このランキングは、GoogleやAmazonなどの主要なサイトの検索結果をさらに分析して作成されているため、信頼性の高い数値といえるでしょう。
R言語でできることは?
R言語は、多様な分野でのデータ分析や統計処理に利用されていますが、具体的にはどのようなことが得意とされているのでしょうか。この章では、R言語を使用してできることの具体的な例を5つ紹介します。
統計解析
前述した通り、R言語は統計解析などを行うために特化している言語です。そのため、データセットの操作、分析、モデリングなどが容易に行えるでしょう。たとえば、市場調査データや医療研究のデータ分析などができます。他にも、R言語には多数の統計パッケージが用意されており、これらを利用することでさまざまな統計手法を簡単に利用できます。
機械学習の実装
R言語は、機械学習の分野にも広く用いられています。たとえば予測モデリングやクラスタリング、分類などが挙げられます。R言語には、機械学習に特化したパッケージも豊富に用意されており、これらを使えば複雑なアルゴリズムを簡単に実装できるでしょう。これによって、顧客の購買行動を予測するモデルを作成したり、大量のテキストデータからパターンを抽出したりすることが可能になります。
データの可視化
R言語は、データの可視化にも役立つでしょう。「Ggplot2」や「Plotly」などのライブラリを利用することで、複雑なデータセットを分かりやすいグラフやチャートに変換することができるのです。これにより、データの傾向や異常値を瞬時に見分けることができます。たとえば、販売データのトレンドを可視化したり、企業アンケートの結果を一目で理解できる形で表示することが可能になるでしょう。
テキストマイニングと自然言語処理
R言語は、テキストマイニングや自然言語処理にも利用されています。「MeCab」や「RMeCab」といった形態素解析エンジンを使用して、大量のテキストデータを分析してパターンを見つけたり、感情分析などを行ったりすることが可能です。これを利用すれば、カスタマーサポートのフィードバック分析や、売れ筋の商品から市場動向の把握なども行なえるでしょう。
R言語とPythonの違いは?
データ分析や機械学習などの分野で広く使用されている「R言語」と「Python」には、それぞれ違った特徴があります。この章では、R言語とPythonの違いについて解説します。
開発目的の違い
R言語は、統計解析とデータの分析にほぼ特化しています。また、統計学者によって開発された言語であるため、統計的手法の実装がシンプルで直感的です。
一方、Pythonは汎用プログラミング言語であり、Web開発やソフトウェア開発など幅広い用途に使われます。つまり、Pythonはオールマイティにさまざまな使われ方をするのに対して、R言語はとくに統計やデータ分析を目的とした言語であると言えるでしょう。
学習のしやすさの違い
Pythonはそのシンプルな文法と直感的なコーディングから、初心者にも比較的学習しやすい言語といわれています。一方で、R言語は統計学的な知識がないと難しい部分があり、とっつきにくいと感じる人も多いかもしれません。
コミュニティとサポートの違い
Pythonは使用している人が世界中に多くいるため、非常に大きな開発者コミュニティを持ち、多岐にわたる分野で使用されています。そのため、わからないことがあった場合でも質問・問題に対するサポートが豊富です。R言語も活発なコミュニティを持っていますが、主に統計分析やデータサイエンスの専門家で構成されているため、どちらかというとプログラミングよりもデータ解析を専門としたい人に向いていると言えるでしょう。
R言語のインストール方法
R言語のインストールプロセスは、WindowsとMacの両方で簡単に実行できます。ここでは、それぞれのOSでのインストール方法や動作確認方法について解説します。
WindowsでのR言語のインストール方法
まず、インストールファイルのダウンロードをおこないましょう。CRANのWebページにアクセスして「Download R for Windows」をクリックします。一番上にある最新バージョンのRパッケージをダウンロードしてインストーラーを起動したら、画面に表示される指示に従いインストールを進めていきます。インストールが完了したら、Rを起動して初期画面が表示されることを確認しましょう。
Mac OSでのR言語のインストール方法
Mac OSでも、インストールの手順は基本的にWindowsと同様です。CRANのWebページにアクセスして「Download R for (Mac) OS X」をクリックし、最新バージョンをダウンロードしたらそれをインストールしましょう。画面の指示に従いインストールを進めて、インストールが完了したらRを起動して初期画面が表示されることを確認して完了です。
動作確認
インストール後は、Rのコンソールに基本的なコマンドを入力して動作確認を行います。例えば、以下のようなコマンドを入力してみましょう。
plot(cars)
plotは散布図を作成する関数で、carsはR言語にもとから入っている車のスピードのデータです。散布図が表示されれば、問題なく動作しているでしょう。
R言語の特徴についてまとめ
R言語はPythonと比べると利用者が少ないものの、統計解析などの分野では広く使われている実績あるプログラミング言語です。誰でも無料で利用することができるため、統計やデータ可視化などの分野でエンジニアを目指している方は、ぜひ一度R言語に触れてみてはいかがでしょうか。