【2024】AIによる人材評価の活用事例とは?メリットやデメリットも詳しく解説

三井住友信託銀行は、AI人事評価企業Institution for a Global Societyと業務提携し、顧客に提供し、人事制度のコンサルティングを行うと発表しました。法人向けサービスを差別化して顧客獲得につなげるようです。

近年は、AI技術の進化に伴い、人材評価の分野でも活用が注目されています。今回は、AIで人事評価を行うメリット、デメリットや活用事例、注意点を解説します。

AIでの人事評価が注目されている

AIでの人事評価が注目されている

近年は、AI技術が進化しているため、人事評価の分野でもAIを活用した取り組みが活発化しています。国内で導入している企業はまだ少ないものの、海外ではAIによる人事評価の導入が進み成果を出しているようです。

従来、人間が行っていた人事評価では、評価の不公平性や評価者による差などが課題となっていました。しかし、人事評価でAIを活用することで、従来の課題を克服し、より客観的かつ公正な評価を実現することが期待できます。

AIでの人事評価の活用事例

AIによる人事評価は、人事制度改革の新たな可能性を示すため、大きな注目が集まっています。実際に、AIを活用した人事評価を行っている企業や機関をご紹介します。

約37万人の従業員の評価を支援

IBMはAI人事評価「IBM Watson」を積極的に活用し、人事領域の改革を推進しています。中でも約37万人の従業員の評価業務をAIが支援していることです。

ただし、AIはあくまでもマネージャーの判断を支援するツールであると位置付けています。AIは、膨大なデータを分析し、客観的な評価結果を提示することができますが、最終的な評価判断はマネージャーが行っているようです。

新卒採用選考の採用プロセスに導入

ソフトバンクはAI人事評価を積極的に活用し、新卒採用選考の効率化を推進しています。2017年から採用プロセスにAIを取り入れ、AIの自然言語処理技術を活用することで、採用担当者の業務負担を大幅に削減し、応募者にとっても利便性の高い選考環境を実現しています。

一次選考システムでは、応募者が提出したエントリーシートをAIが分析し、応募者の志望度や適性を自動的に評価します。従来は、採用担当者が膨大な数のエントリーシートを確認する必要がありましたが、AI導入により業務時間を4分の1に削減することに成功したようです。

さらに、2020年には新卒採用選考の動画面接にAIを導入しています。AIが動画の内容を分析し、応募者のコミュニケーション能力などを自動的に評価しているようです。

個人個人の頑張りを可視化

食肉加工やスーパーを手掛ける株式会社なかやま牧場は、AI人事評価ツールを導入しました。社員の頑張りを可視化することで、個々の社員の貢献度を客観的に評価することができ、評価結果への納得感を高めることができます。

そのため、企業理念の浸透と早期離職防止を実現しているようです。また、従来の紙ベースの人事評価制度は、工数や手間がかかっていましたが、AI人事評価ツールを導入することで、人事評価業務を効率化しています。

生産性が高い組織への取り組み

明治安田生命保険は2024年度に、AI技術を人事異動に活用する革新的な取り組みを開始する見込みです。この取り組みでは、AIが社員一人ひとりの適性や能力を分析し、最適な人員配置や組織構成を提案することで、生産性の高い組織の実現を目指します。

明治安田生命は、人事情報を網羅したシステムの運用を開始しました。このシステムには、電通国際情報サービス「POSITIVE」が導入されており、個人のキャリア、研修履歴、評価などの様々な人材情報が一元管理されています。

蓄積された人材情報とAIを組み合わせることで、個々の社員に最適な教育やキャリアパスを提案する仕組みを構築するようです。

防衛省でもAI人事評価を導入

保守的なイメージが強い公官庁も時代の変化に合わせ、AIを活用した人事評価・人事異動システムの導入に積極的に取り組んでいます。防衛庁では2020年に、AIを活用した人事評価・人事異動に関するシステムの導入に2億7000万円を計上しています。

約4万人の幹部自衛官を対象としており、評価結果はあくまで参考情報として活用され、最終的な判断は人間が行う仕組みです。AIによる人事評価を取り入れることで、より公平かつ効率的な人事評価・人事異動を実現することが期待されています。

ちなみに、海外の軍隊ではすでにAIを人事に取り入れている事例もあるようです。

AIで人事評価を行うメリット

AIで人事評価を行うメリット

先述したように、AIで人事評価を行うと従来の人事評価では実現できなかったことが実現できます。以下で、主なAIで人事評価を行うメリットをいくつか解説します。

評価精度が向上する

AIによる人事評価は、主観的な判断や偏見の影響を受けることなく、公平な評価を実現することができます。評価対象者のデータなどを分析することで、一人一人の能力や貢献度などを正確に評価することができるためです。

先述したように、従来は主観的な判断や限られた情報に基づいた評価を行っていたため、評価結果に誤差が生じる可能性がありました。しかし、AIで人事評価を行うことで膨大な量のデータを分析でき、より客観的な評価ができます。

業務負担が軽減できる

AIでの人事評価を導入することで、人事担当者や評価者の業務負担が大幅に軽減されるというメリットがあります。AIで行う人事評価は、評価対象者の情報を収集でき、評価結果の集計やレポート作成などの業務を自動化することが可能です。そのため、従来人事評価に携わっていた担当者は、従来行っていた様々な事務作業から解放され、より付加価値の高い業務に注力することができます。

また、従来の人事評価では、評価対象者のデータを手作業で収集し、エクセルなどで集計・分析していました。しかし、AIでの人事評価であれば作業も自動化することができるため、評価にかかる時間の短縮ができるでしょう。

人材育成の強化につながる

AIによる人事評価は、評価対象者の強みや弱みを分析することで、キャリア目標を明確に設定し、効果的な人材育成を支援することができます。そのため、一人一人の潜在能力を引き出し、組織全体の業績向上に貢献することが可能です。

従来では、一人一人の強みや弱みを把握することが難しかったため、似たり寄ったりな人材育成が行われていた可能性がありました。しかし、AIによる人事評価であれば、一人一人のニーズに合わせた育成プログラムを提供できます。

従業員のモチベーションを向上させることができる

AIによる人事評価は、客観的なデータに基づき評価を行うため、結果の透明性が向上します。従来では評価基準が曖昧だったり、評価者により評価基準が異なったりしていたため、従業員が評価結果に納得できないという問題も考えられました。

しかし、AIでの人事評価であれば、すべての評価対象者が同じ基準で評価されるため、より公平な評価を実現することができ、従業員は評価結果に納得しやすくなります。

AIで人事評価を行うデメリット

AIでの人事評価には様々なメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。以下で詳しく見ていきましょう。

評価担当者がAIに依存する可能性がある

AIによる人事評価は、過去のデータや定型的な評価基準に基づいた評価を行うため、評価者担当者がAIの判断に任せきりになってしまうことも考えられます。従来、評価担当者は一人一人の能力などを総合的に判断し、コメントを記述していました。

しかし、AIに依存してしまうと個々の従業員の特徴や潜在能力を見逃してしまう可能性も考えられます。AIによる人事評価はあくまでもサポートで活用し、評価対象者とコミュニケーションを取ることが大切です。

ブラックボックス化する可能性がある

AIによる評価は、どのように評価が行われているのかが評価対象者が分かりにくいことも考えられます。人事担当者がAIの評価基準などを評価対象者に、しっかり説明できないとブラックボックス化してしまい、評価への信頼が損なわれる可能性があるでしょう。

AIで人事評価を行う際の注意点

AIで人事評価を行う際の注意点

AIで人事評価を行うことで、評価精度の向上や業務効率化、従業員のモチベーションを向上させるなど様々なメリットがあります。しかし、一方でAIによる人事評価には、思わぬ落とし穴が潜んでいることも事実です。

以下では、AI人事評価を導入する際に絶対に押さえておくべき注意点を解説します。

事前に評価対象者に説明する

AIは複雑なアルゴリズムに基づいた人事評価を行うため、判断基準がブラックボックス化しやすいです。そのため、評価を受けた対象者にとっては、不透明な存在になりがちです。

万が一、評価結果に納得できない場合は、具体的な根拠の説明がなければ、人事評価への不信感に繋がってしまうでしょう。AIを用いて人事評価を行う際は、事前に評価基準を明確化し、AIの判断過程をある程度可視化するなどの工夫が必要です。

また、人事担当者と評価対象者の双方がコミュニケーションを図り、評価結果を個々の成長に繋げるためのフィードバックに活用したり、評価制度を定期的に見直したりしましょう。

スモールスタートで開始する

AIによる人事評価システムは、従来の人事評価とは仕組みが大きく異なります。そのため、いきなり本格導入してしまうと、多くの課題に直面して失敗してしまう可能性もあるでしょう。

そのため、以下のようにスモールスタートで開始するのがおすすめです。

  • 一部の部署や職種を対象に導入して、テストを行い問題がないかを確認する
  • 人事評価システムの特徴を把握し、経験を積んでから段階的に拡大する

また、AI人事評価システムを導入する前には、導入目的を明確にすることが重要です。目的を決めておくことで、導入後の評価指標や運用方法を具体的に検討することができるでしょう。

AIの人事評価を導入して課題を解決しよう

今回は、AIで人事評価を行うメリット、デメリットや活用事例、注意点を解説しました。従来の人事評価では、評価の精度や公平性の低さ、評価業務の非効率性など様々な課題がありましたが、AIによる人事評価を導入することで、これらの課題を解決することができます。

また、人材育成の促進や組織全体の活性化にもつなげることができ、多くのメリットをもたらすことができるでしょう。導入を検討する際には、メリット・デメリットをしっかりと理解し、自社の状況に合致しているかどうかを慎重に判断することが重要です。

AI人事評価は、従来の人事評価制度では解決できなかった課題を克服し、より公平で効率的な人事制度を実現することが期待されています。

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