【2024】教育DXと教育のデジタル化の違いとは?教職員側と生徒側のメリットやDX化する上での課題を解説

政府は2024年6月、教育DX化を推進する一環として、生成AIの活用に言及しました。生成AIは、教育現場における新たな学習支援ツールとして期待されており、個別最適な学習や創造性を育む教育の実現に貢献すると考えられています。

そこで今回は、教育DXの概要や教育のデジタル化との違い、教育DXが必要とされる理由、教育DXが与える教職員側と生徒側のメリットを解説します。

教育DXと教育のデジタル化の違い

教育DXと教育のデジタル化の違い

教育DXと教育のデジタル化は、どちらも教育にデジタル技術を取り入れる取り組みですが、その目的や効果などが異なります。以下で詳しく解説します。

教育DX教育のデジタル化
範囲教育の全プロセスにデジタル技術を導入特定の業務や教材のデジタル化
目的デジタル技術を活用し、教育そのもののあり方を変えること教育現場にデジタルツールを導入すること
効果学習効果の最大化、教育の質向上効率化、省力化

DXとデジタル化の違いを理解しないデメリットについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

【2024】DXとデジタル化の違いは?目的が異なる!

教育DXとは

教育DXは、デジタル技術を使って学校教育を根本から変革する取り組みです。文部科学省は、AIやビッグデータなどを活用し、一人ひとりの生徒に合った学習を可能にするなど、より良い教育の実現を目指しています。

文部科学省のGIGAスクール構想によって、多くの学校で一人一台の端末が整備され、デジタル教材やオンライン学習が身近になりました。今後は、生徒が端末を自由に使いこなせるようにし、教員も新しい教材や教え方を積極的に取り入れることが求められています。

参考:GIGAスクール構想|文部科学省

DXの特徴については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

DXとは?活用事例やDXを学習する方法などを徹底解説

デジタル化とは

教育のデジタル化とは、学校がデジタル技術を活用して教育のあり方を変えることです。中でもICT教育は、パソコンやタブレットなどのデジタル機器やインターネットを授業に取り入れることで、従来の教育にはない新たな可能性を開きます。

学習支援ツールなどを活用することで、視覚的に分かりやすい授業展開が可能になり、生徒の理解度が深まります。また、生徒一人ひとりの学習進度や興味に合わせて、最適な教材や学習方法を提供することも可能になります。

教育DXが必要とされる理由

教育DXが必要とされる背景には、以下のような理由があるとされています。

  • デジタル社会に活用できる力を身につけるため
  • 多くの生徒に学習機会を確保できるため
  • 教員の負担を軽減することができるため
  • 生徒の個別の状況を把握できるため

それぞれの項目を詳しく解説します。

デジタル社会に活用できる力を身につけるため

現代社会は、スマートフォンやタブレットが手放せない存在となり、SNSやインターネットが生活に浸透しています。このようにデジタル化が急速に進む中、学校教育でも変化が求められています。

社会で活躍できる人材を育成するためには、学校教育からデジタル技術に慣れ親しみ、活用できる力を育むことが不可欠です。教育DXは、そのようなニーズに応え、学校教育をデジタル化し、生徒一人ひとりの学びを最大限に引き出すための取り組みなのです。

多くの生徒に学習機会を確保できるため

パソコンやネットワーク環境の整備により、入院中や災害時など、学校へ通えない児童生徒でも、自宅にいながらリアルタイムで授業に参加できるようになりました。そのため、学習の機会を途絶えさせることなく、安心して学べる環境が実現します。

また、遠方の専門家や海外の講師を招いての授業も可能になり、生徒たちはより多様な知識や視点に触れることができるようになりました。その結果、教育の質が向上し、生徒たちの学びの選択肢が大きく広がっています。

教員の負担を軽減することができるため

学校DXを推進することで、教員の多くの事務作業が大幅に軽減されます。例えば、成績の入力や出席管理などのルーティンワークが自動化され、教員はより多くの時間を子供たちとの直接的な関わりに充てることができるようになります。

また、児童生徒の学習データが一元管理されることで、一人ひとりの成長を細かく追跡し、最適な学習指導を提供することが可能になります。

生徒の個別の状況を把握できるため

学習管理システムにより、生徒の毎日の学習状況を詳しく把握できるようになります。授業の理解度や取り組んでいる課題など、具体的なデータに基づいて生徒の学習をサポートできるのです。

例えば、苦手な科目を特定して学習計画を立てたり、達成できた目標を褒めたりすることで、学習の質の向上にもつながります。

教育DXが与える教職員側のメリット

教育DXが与える教職員側のメリット

教育DXは教職員の働き方や教育のあり方を大きく変えようとしています。教育DXの導入により、従来の教育のような膨大な量の事務作業や準備に追われることもなく、本来の教育活動に十分な時間を割くことができ、教育活動に集中できるようになります。

以下では、教育DXが教職員にもたらす具体的なメリットを具体的に解説します。

通勤を減らすことができる

新型コロナウイルス感染症の拡大のように、学校での対面授業が困難になる事態が発生した場合、事前に端末とネットワーク環境を整えておけば、リモート授業へ迅速に切り替えができます。そのため、生徒の学習の継続が途絶えることなく、教職員も自宅から授業やテストの出し入れや各種事務手続きを行うことが可能になり、通勤による感染リスクの軽減にもつなげることができます。

生徒へ最適化された指導ができる

1人1台の端末を活用することで、生徒は自分のペースで学習を進め、理解が深まるまで繰り返し学習することができます。特に、数学や英語など、個人差が出やすい教科では、この効果は顕著でしょう。また、コンピューターを利用して実施するCBT試験というコンピュータでの試験結果を分析することで、生徒の誤答パターンを特定し、原因を究明することができます。

そのため、生徒は自分の学習方法を見直し、より効率的に学習を進めることができるようになるでしょう。

業務負担を軽減できる

事務作業のデジタル化は、教員の業務負担を大幅に軽減し、より創造的な活動に集中できる環境をもたらします。プリントや書類の作成、出欠確認といったルーティンワークが自動化され、作業時間が大幅に削減されます。

さらに、児童・生徒の学習データがデジタル化されることで、一人ひとりの成長を可視化し、個別最適な学習指導が可能になります。AIを活用した自動採点や分析により、教員の負担は一層軽減され、得られたデータを基に、より効果的な教育プログラムの開発も期待できます。

教育DXが与える生徒側のメリット

教育DXは、学校教育のあり方を根本から変えるため、教職員側だけではなく生徒や学校、保護者にもそれぞれに大きなメリットをもたらします。生徒は、AIを活用した個別学習によって、自分のペースで効率的に学習を進めることができるでしょう。

以下で、教育DXが与える生徒側のメリットを具体的に解説します。

IT関連の知識が身につく

プログラミングやデータ分析など、ITスキルは今後の就職活動はもちろん、仕事で活躍するために不可欠な要となっています。また、SNSの利用やオンラインサービスの利用など、ITは私たちの日常生活に深く根付いています。

学校でITを学ぶことで、社会に出てからの活躍の幅を広げ、より豊かな未来を築くことができるでしょう。

勉強の進み具合が確認しやすい

生徒は自分の学習進度をリアルタイムで可視化し、苦手な部分を重点的に学習することができます。保護者も子供の学習状況をいつでもどこでも確認でき、学校との連携を密に行うことで、より効果的な学習サポートが可能になります。

また、欠席・遅刻の連絡や学校行事への参加申し込みなどの事務手続きがオンラインで完結するため、保護者の負担を軽減することができます。さらに、学校側と保護者が、児童生徒の行動や健康状態を共有できるプラットフォームを構築することで、不登校やいじめなど、緊急事態への対応にもつながります。

教育DXを行う上での課題

教育DXを行う上での課題

教育DXはAIなどのテクノロジーを活用し、教育の質を向上させ、よりパーソナライズされた学習体験を提供することを目指す取り組みです。しかし、教育DXにはいくつかの課題も存在します。

以下で具体的に解説します。

デジタル端末やシステムなどのインフラ整備

教育DXを成功させるためには、学校全体でデジタル環境を整備することが不可欠です。生徒一人ひとりに学習用端末を配備し、安定したインターネット接続環境を確保することはもちろん、教職員がスムーズにデジタルツールを活用できるよう、研修やサポート体制を整える必要があります。

さらに、自宅学習にも対応するため、家庭での学習環境についても配慮し、必要に応じて支援を行うことが求められます。

端末を安全に使うための対策

学校で利用するモバイル端末やインターネットは、子供たちの個人情報はもちろん学校の機密情報を取り扱うため、厳重なセキュリティ対策が不可欠です。インターネットには、ウィルス感染によるデータ漏えいや、不正アクセスによる情報の改ざん、フィッシング詐欺による個人情報窃取など、様々なセキュリティリスクが潜んでいます。

これらのリスクは、学校全体の信頼失墜や、生徒・保護者への被害につながる可能性があります。具体的な対策としては、端末へのセキュリティソフトの導入やパスワードの定期的な変更、多要素認証の活用、ファイアウォールの設定などが挙げられます。

また、教職員へのセキュリティに関する研修の実施も重要です。

生徒たちの個人情報の取り扱い

学校でデジタル機器やツールを使う際も、生徒や保護者の個人情報など、大切な情報を守るためのセキュリティ対策が不可欠です。もし、情報に関するルールがしっかり守られていないと、大切な情報が外部に漏れてしまう危険性があるでしょう。

そのため、情報に関するルールを明確にし、教職員全員がそのルールを守ることが大切です。文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」では、具体的な対策が示されていますので、ぜひ参考にしてください。

参考:教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン|文部科学省

教職員の知識や経験の不足

教職員は授業の準備や生徒指導など、多忙な日々を送っています。その中で、IT技術の習得やセキュリティ対策にまで手が回らないという現状があります。

しかし、教職員のITリテラシー向上は切迫した課題です。セキュリティに関する知識を身につけることで、教職員の負担軽減と生徒の安全な学習環境の両立を目指すべきです。教職員のITリテラシーを向上させるためには、以下のような人材育成サービスがおすすめです。

企業向けDX・AI人材育成研修サービス

AI研究所の企業向けDX・AI人材育成研修サービスは、短期的な研修カリキュラムから中長期的なプランまで、企業に合ったDX・AIの人材育成の研修プランをご提案するサービスです。DXを実現するために、以下のスキルを組織のそれぞれのステージやレベルに合わせて最適な人材の育成プランのサポート・コンサルティング・トレーニングを組み合わせてご提案いたします。

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今後も教育DXの取り組みは推進が期待されている

今回は、教育DXの概要や教育のデジタル化との違い、教育DXが必要とされる理由、教育DXが与える教職員側、生徒側のメリットを解説しました。教育DXは、デジタル技術を活用して、学校教育を革新する取り組みです。

教員は一人ひとりの子どもの学習状況をデータで把握し、最適な指導を提供できるようになります。子どもたちは、場所や時間に縛られずに学習でき、自分のペースで知識を深めることができます。また、保護者も子どもの学習状況をリアルタイムで確認し、学校との連携を強化できるでしょう。

教育DXと教育のデジタル化の違いとは?教職員側と生徒側のメリットやDX化する上での課題を解説
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