【2025】AI研究とは?基礎知識から課題までわかりやすく解説

AIの基礎を築いたとされる甘利俊一・東京大学名誉教授が1972年に発表した論文は、ノーベル賞を受賞することができませんでした。甘利氏の論文は、ニューラルネットワークの基礎理論を分かりやすく、かつ数学的に丁寧に解説していました。

しかし、当時は、ニューラルネットワークの研究と人工知能AIの研究は、ほぼ独立した無関係の研究分野であり、相互の交流もほとんどなかったようです。

甘利氏の研究はAI研究全体への貢献という点で評価されたものの、甘利氏の業績はAI研究の発展に不可欠なものであり、彼の研究がなければ、今日のAI技術は存在しなかったかもしれません。

そこで今回は、AI研究における分野などの基礎知識やAI研究における課題を解説します。

AI研究とは

AI研究とは

AIの歴史は計算機の登場と同時に始まったとされ、人間の知能を理解するという目標を掲げています。人間の知能を理解するための研究アプローチは多岐にわたりますが、大きく分けると以下の2つの流れがあります。

脳神経科学的アプローチ脳の信号処理や情報処理の仕組みを解明しようとする
認知科学的アプローチ人間の行動や意思決定のプロセスを分析し、メカニズムを理解しようとする

近年、機械学習やディープラーニングなどの人工知能の発展に伴い、様々な観点からの研究が活発に進められています。これらの技術革新は、AI研究を新たな段階へと導き、その可能性を大きく広げています。

AIの研究分野

AIの研究分野

AIの研究分野は、実用化されているものから最先端技術として研究されているものまで多岐にわたります。以下で、AIの研究分野を詳しく解説します。

アルゴリズム

アルゴリズムとは、コンピューターが問題を解決するために使う、一連の手順や計算ステップのことで、与えられたデータから規則性やパターンを見つけ出し、効率的に処理を行い、最適解を導き出します。

より効率的に良い答えを出すために、優れたアルゴリズムを開発することがアルゴリズムの研究です。例えば、Googleで何かを検索した際は、どの投稿が表示されるかはアルゴリズムによって計算されています。

一般的にアルゴリズムは「計算方法」を意味しますが、広い意味では「問題解決の手法や手順」と言えます。AIを計算処理を基盤とした現実的な機能として考えた場合、アルゴリズムによって解決できる範囲には、以下のようなものがあります。

  • 数値
  • 言語
  • 音声
  • 静止画や動画

AIのアルゴリズムは構造化されたデータを扱うため、音声や画像などは数値に置き換える必要があります。数値化されたデータは機械学習で特徴の抽出とパターンやモデルを構築し、その後は自動的に認識処理をします。

AIは、人間と同じようにデータにより言語や空間などをパターン化して認識していますが、統計学などの計算が用いられている点で人間とは異なります。

アルゴリズムについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。

【2025】AIのアルゴリズムとは?その種類と特徴、仕組みについて解説

自然言語処理

自然言語処理とは、人間が普段使っている「自然言語」をコンピュータが理解したり生成したりするための技術です。ちなみに自然言語の反対は、プログラミング言語などの人工言語です。

自然言語処理は、チャットボットや機械翻訳、ChatGPTなどの技術に活用されていますが、音声認識や画像認識と比べると、その正確性はまだ高くなく、今後も研究の余地が大きい分野と言えるでしょう。

画像認識

画像認識とは、コンピューターや機械が画像に写っているものを識別する技術です。色や形などの特徴を画像から読み取ることで、新たな画像を認識できるようになります。

これはパターン認識技術の一つであり、画像検索やディープラーニングとの組み合わせにより、猫や犬などの生物の画像を認識する技術など、様々な分野で活用されています。

例えば、人間の写真であれば、目や鼻などの顔のパーツ情報から顔だと認識する技術があり、スマートフォンの顔認証技術は、この画像認識技術を応用したものです。

音声認識

音声認識は、人間が発する音声を解析し文字に変換する技術です。人間の音声は、空気の振動として測定され、波形データが解析されます。

この波形データは、音素や単語などの言語情報に変換されて、最終的に文字データとして出力され、以下のような様々な分野で活用されています。

  • スマートデバイス
  • 議事録作成
  • 医療現場
  • コールセンター

また、音声認識技術と自然言語処理や画像認識の連携により、より高度なサービスが生まれる可能性も広がっています。

機械学習

機械学習は、コンピューターが大量のデータを学習し、そのデータに基づいて分類や予測などのタスクを自動的に実行するためのアルゴリズムやモデルを構築する技術です。

人工知能を機械学習の側面から整理すると、以下の4つに分類できます。

教師あり学習正解データ(教師データ)を提供することでコンピューターに学習させる
教師なし学習学習データに正解データを与えずに学習を行う
強化学習AIが環境と相互作用しながら、試行錯誤を通じて最適な行動を学習していく
ディープラーニングコンピューターが大量のデータから特徴を抽出して学習する

機械学習は現在のAIの中核技術であり、ディープラーニングも機械学習の一部です。AIの主な役割はグループ分けです。例えば、画像を見せて「これは猫だ」「これは猫ではない」といったようにグループ分けを行います。

このグループ分けをコンピューターに自動的に学習させる方法が機械学習です。AIが適切にグループ分けできるようになれば、新たなデータに対しても「これは猫だ」と判別できるようになる仕組みです。

教師あり学習と教師なし学習の違いについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。

【2025】教師あり学習と教師なし学習の違いとは?それぞれの特徴やメリットを比較

感情分析

感情分析とは、人間の感情を表情や声、文章などから読み取る技術です。この技術の導入先として考えられるのが、コールセンターです。

コールセンターでは、オペレーターと顧客の会話中のイントネーションや声の高さなどをAIに分析させることで、顧客の満足度やオペレーターのストレス度を把握することができます。

感情分析はまだ研究段階の分野ではありますが、機械も人間の気持ちを読み取れるようになってきています。これまで人間にしかできないと思われていた個別対応も、AIが担う未来はそう遠くないかもしれません。

予測

予測とは、過去のデータをAIに学習させ、未来を予測する技術です。例えば、スーパーの売上予測では、過去の売上データに加え、天気予報や近隣店舗の売上データなどをAIに学習させることで、翌日の売上を予測することが可能です。

AIによる予測は、スーパーの売上予測の他にも天気予報や病気の発症予測、将棋やチェスなどのゲームなど、様々な分野で活用されています。

データマイニング

データマイニングとは、大量のデータから有益な情報を見つけ出すための様々な手法をまとめた言葉です。AIを使ってデータを有効に活用するには、大量のデータの中から本当に価値のあるものを探し出す必要があります。

例えば、テキストマイニングという手法では、単語の使用頻度や単語同士の関係性を明らかにすることで、データから有益な情報を得ることができます。

AI研究を行う主な企業

AI研究を行う主な企業

AIの研究開発は、世界中の企業によって日々精力的に進められており、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えています。

各企業は、独自の強みや戦略に基づき、AI研究の最前線を走っています。以下で、AI研究を行う主な企業をご紹介します。

Google

Googleは、世界的に見ても有数のAI研究者を抱えており、AIのサービスへの活用はもちろん、研究開発においても世界を牽引しており、多大な資金を投入しています。

2014年には、AI開発を手掛けるイギリスの企業「DeepMind」を4億ポンドで買収しており、2015年にプロの囲碁棋士に勝利した囲碁プログラム「AlphaGo」を開発したことで一躍有名になりました。

AlphaGoの最大の特徴は、ニューラルネットワークを応用し、プログラム自身が数千万回にも及ぶ自己対局を繰り返すことで学習していく点にあります。

GoogleのAI研究は、これまでのAIとは異なる手法で高い精度を実現したAlphaGoの開発企業を買収したことで、さらに勢いを増し、その後もアフリカや中国、インドなど多くの地域にAI研究所を設置し、AI研究の世界トップを走り続けています。

NEC

NECは「認識AI」「分析AI」「制御AI」という3つの技術領域に焦点を当て、社会に新たな価値をもたらすための研究開発を積極的に行っています。

特に、顔認証技術においては、米国国立標準技術研究所の評価試験で世界トップの座を何回も獲得しており、その技術力の高さが証明されています。

NECの顔認証技術は、キャッシュレス決済などのFinTech分野や公共交通機関、Digital IDなど、高精度な認証が求められる大規模なシステムで活用されています。

サイバーエージェント

サイバーエージェントは、デジタルマーケティング全般に関わる幅広いAIの研究開発を目的とした、「AI Lab」を設立し、機械学習や計量経済学、コンピュータビジョン、自然言語処理、HCIなどを専門とする研究者が所属しています。

AI Labでは、AIを活用したCGアバターの生成を研究する、デジタルヒューマン研究センターを設置しました。デジタルヒューマン研究センターは、人物の多様な動きを自動生成し高精細なデジタルヒューマンを生み出すべく、モーションやエフェクトまで幅広く研究対象を広げた組織です。

現実の人間と比べ違和感のないCGモデルを作り、広告やテレビ・CMなど映像における活用をはじめ、オンライン接客など様々な事業に技術を展開し、人間が稼働をすることなく、あらゆる場面でデジタルヒューマンが活躍できる世界の実現を目指しています。

また、音声合成や音声認識といった分野を専門に研究する、完全自動対話研究センターを設置しており、音声合成や音声認識に加え、自然言語処理や声質変換、感情認識、話者の識別といった分野の研究を強化し、ユーザーの意図や会話の文脈を理解して対話できる完全自動会話の成立を目指しています。

AI研究における課題

AI研究は目覚ましい発展を遂げていますが、同時に様々な課題も抱えています。これらの課題解決に向けた取り組みは、世界中で活発に進められています。以下で、AI研究における課題を見ていきましょう。

学習データを軽量化する

AI開発においては、一般的に大量の学習データが必要となり、適用領域が増加・細分化するにつれて、各領域ごとにデータ収集・蓄積・解析のコストが爆発的に増加する課題があります。

この学習データ軽量化の手段として、転移学習が注目されています。転移学習とは、ある対象で学習させたモデルを別の対象に適応させる手法で、サンプルデータ数が限られていても精度向上が見込めます。

ホワイトボックス化させる

AIの処理過程は人間には理解しづらく、AI内部の処理がブラックボックス化するため、結果を信用することが難しいという問題があります。

この問題を解決するためには、出力された結果に至るまでの過程が理解できるホワイトボックス化が求められています。

この課題に対し、アメリカ国防総省国防高等研究所は2016年にAIの透明性と信頼性を高める説明可能なAI(XAI)の実現に向けた研究開発投資プロジェクトを開始しました。

AIのブラックボックス化は、その複雑さゆえに避けられない側面もありますが、XAIのような取り組みを通じ、AIの意思決定プロセスを人間が理解できるようになれば、安心してAIを活用できるでしょう。

高性能なハードウェアが必要になる

高度なAIの実現には、それを支える高性能なハードウェアが欠かせません。AIの処理は、複雑な計算を組み合わせた大量の演算を同時並行的に実行する必要があります。

従来のCPUやGPUでは、このような処理に求められる性能を満たすことが難しいだけでなく、必要な計算機資源も膨大になってしまうという問題があります。

そのため、今後はAIの演算に特化したフレームワークや専用のアーキテクチャの開発が、重要になっていくと考えられます。

AI研究の重要性は今後ますます高まる

今回は、AI研究の基礎知識や主な企業、AI研究における課題を解説しました。AIの研究は急速に進んでおり、社会や企業から大きな期待が寄せられているものの、日本のAI技術は世界に比べてまだ遅れているのが現状です。

それでも、企業がAIを効果的に活用することで、実績を上げられる可能性は大いにあります。特に、日本では労働人口減少による人手不足を解消し、業務効率を向上させることができます。

これは日本企業にとって大きなビジネスチャンスとなり得ます。AIの活用は、日本が抱える課題解決の糸口となるだけでなく、新たな価値を生み出す可能性も秘めていると言えるでしょう。

AI研では、AI活用の無料相談を実施しております。貴社のご要望に合わせた最新の市場動向や具体的な活用アイデア、他社事例に加え、貴社の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。

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