AIソフトウェアの比較と選び方、各ソフトウェアの特徴まとめ

2021年2月、米国のInternational Data Corporation (IDC)が、全世界の人工知能(AI)市場について発表しました。
それによれば、2020年のAI市場では、ソフトウェア、ハードウェア、サービスの3部門のうち、ソフトウェアの売上が全体の88%を占める結果になっています。
このように、AI市場で注目されているソフトウェアですが、この記事では、AIを活用したソフトウェア開発ツールを紹介し、選択する際の参考になるように各開発ツールの特徴をまとめてみました。

ローコードプラットフォームとクラウドプラットフォーム

「ビッグデータ」と呼ばれる大量データからAI自身が学ぶ「機械学習」の実用化や「知識を定義する要素」である特微量をAI自らで学ぶディープラーニングが登場し、デジタル変革を支援するスキルを持った開発者へのニーズが高まっています。
AIの開発やビジネスプロセスの自動化に携わる開発者の需要が急速な伸びを示しているにもかかわらず、多くの企業が人材不足に悩んでいます。
AI開発ができるエンジニアは、一朝一夕で増えるものではありませんし、今まで開発をしてこなかった企業に開発チームをすぐに構築するのも難しい話だからです。
そのため、複雑なコーディングを必要とせずに、AIの学習やアプリ作成などを行える「ローコード開発」に注目が集まっています。

ローコードプラットフォームのメリット、デメリット、おすすめ製品

ローコードプラットフォームを簡単に表現するならば、コードを極力書かずにアプリなどの開発がおこなえるというものです。ローコードプラットフォームでは、テンプレート、パーツなどがあらかじめ用意されているので、それらをドラッグ&ドロップするだけで、システムやアプリケーション開発をおこなうことができます。

ローコードプラットフォームのメリット

視覚的な記述による仕様決定や、自動生成によるプログラミングなどにより、工程省略でかなりの時間短縮が可能です。さらに、コーディング部分では、最小限のプログラミング知識が要求されるだけなので、素早く、効率的に開発ができ、かつエンジニアの工数削減が可能なため、人件費削減につながります。

ローコードプラットフォームのデメリット

プラットフォーム内の開発ツールを利用しておこなう場合、従来のプログラミングによる開発に比べ、開発内容が制限され、自由度が低くなってしまいます。そのため、大規模開発などは対応できない場合があるかもしれません。また、コードを全く書かないわけではないので、最小限のプログラミングの知識が必要になります。

ローコードプラットフォームのおすすめ製品

OutSystems

ローコードプラットフォームの代表的なツールです。開発から運用や保守にいたるまで、すべてをカバーし、一括管理しています。ビジュアリングによる開発に加え、各分析機能においても視覚的な使用が可能になっているので、ライフサイクルにおける生産性を向上させます。また、初めての人でも安心して使用できるように、トレーニングマニュアルを種々用意しています。

Mendix

アプリケーションの設計、製造、テストなど、すべてをオールインワンで提供しています。また、要件があいまいなプロジェクトなどにも対応可能です。2013年からローコードツールを採用しているため、数々の実績を積み重ねています。Mendixの特徴は、1つのプラットフォームでノーコードとローコードの両方を提供している点にあります。クラウド上で稼働し、SAP CloudやIBM Cloudのプラットフォームを使用しています。

Appian

定型的なビジネスプロセスをシステム化することが主力になっています。特徴としては、ワークフローマネジメント、ビジネスルールの実装、ケースマネージメントなどの機能を備えている点です。また、2019年からは、プロセスの自動化や判断をAIで行っています。基本的には、大企業向けのサービスを提供しています。

選び方のポイント

OutSystemsは、高度なエンタープライズ機能を持ち、ユーザーからも高評価を受けるなど、安定した人気を誇っています。また、Mendixは、比較的に早い時期からローコードによるサービスを提供しているため、実績がある点において信頼につながるでしょう。

クラウドプラットフォームのメリット、デメリット、おすすめ製品

ロ―コード開発を基にしたクラウドプラットフォームは、さまざまなアプリケーションの構築に用いられています。

クラウド上のロ―コードプラットフォームのメリット

クラウド上で稼働するため大量のデータを蓄積できます。さらに、それらを高速処理し学習モデルを作成することが可能です。

クラウド上のロ―コードプラットフォームデメリット

インターネット経由なので、リアルタイム処理が難しくなります。また、セキュリティ面に不安があります。しかし、クラウドのセキュリティ対策は、提供している各社ともに以前よりも向上しているため、そのリスクはゼロでとは言えませんが、信頼できるものになりつつあると言えるでしょう。

クラウドプラットフォームのおすすめ製品

Salesforce Lightning Platform

アプリケーション構築のクラウドプラットフォームとして高い評価を得ています。特に、Sales Cloud、Service Cloudで実績があり、PaaSとして提供しています。人事、財務などのあらゆる部署に対応可能です。

SPIRAL

株式会社パイプドビッツが提供するクラウドプラットフォームです。Webフォーム作成、メルマガ配信などさまざまなアプリケーションを提供しています。他システムとの連携も可能で、業界、業種を問わず、多くの企業に人気のあるプラットフォームです。

ここからは、エンタープライズAIプラットフォームと呼ばれるクラウドプラットフォームを紹介します。上記の従来のクラウドプラットフォームに比べて高度なエンタープライズ機能を持ち、クラウド上だけでなく、さまざまな環境で稼働が可能です。

RapidMiner

計算量の多いモデル作成は、オンプレミス、クラウドの環境で実行可能ですが、サーバーにアクセスできない場合は、RapidMiner AI Cloud(SaaS)を利用できます。また、Amazon AWS MarketplaceとMicrosoft Azure Marketplaceにログインすることで、イメージを数分でデプロイできます。クラウド上で気軽にモデル作成できる環境と、機密情報を安心して活用できるオンプレミスの両方が利用でき、クラウドとオンプレミス間でのモデル移行も可能です。

DataRobot

マネージド AI クラウド(SaaS)を利用し、わずか数分で予測モデルを構築できます。また、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud Platform などを含むマルチクラウド戦略をサポートしているため、ベンダーに縛られることがありません。クラウドでありながら、エンタープライズグレードのセキュリティと利便性の両方を確保し、さらには、オンプレミスのLinuxサーバー、高い拡張性を誇るHadoopにも導入できます。オフライン環境にデプロイすることで特定のセキュリティ制御もおこなえます。

Prediction One

ソニーのR&Dセンターの開発で、2019年にWindowsにインストールできるデスクトップ版を、そして、2021年5月にクラウド版サービスの提供を開始しました。クラウド版では、Windowsに加えMac OSでも利用可能です。

選び方のポイント

従来のものに比べると、エンタープライズ機能を持つクラウドプラットフォームのセキュリティやプライバシーは、かなり改善されていると言えるでしょう。中でも、DataRobotはセキュリティ対策が充実しています。しかし、従来型でも、高性能のサービスを有するものが多く、まだまだ需要は高いでしょう。ちなみに、Prediction Oneは、まだスタートしたばかりで今後のパフォーマンスに注目が集まっています。

AIを活用したソフトウェア開発ツールは、どれも「どんぐりの背比べ」?

ローコード、クラウドなど、各ベンダーがさまざまなサービスを競うように発表し、それぞれが自社のAI機能の方が他社よりも優れていると主張しているように見えますが、実際には、あまり大きな違いはないと言えます。AIを活用したソフトウェアの開発ツールを選択する際には、利用目的や好みの利便性など重視する点を考慮したうえで、どれが最も妥当なのかを考えるのが良いでしょう。

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