「Java SpringやSpring Bootを使いたいけど、どこから始めればいいのか分からない」「データベース接続やセキュリティの設定が複雑」といった悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、Java Springの主要な機能やSpring Bootの導入方法について解説します。初心者エンジニアでも理解しやすい内容になっていますので、これからJava Springを使った開発を行いたい人は参考にしてください。
Java Springとは?
Java Springは、正式にはSpring Frameworkという名前で、効率的にアプリケーションを開発できるようサポートしてくれるフレームワークです。企業向けの業務アプリやWebアプリがスピーディに作成できるため、多くの開発現場で採用されています。
Java Springには、依存性注入(DI)、アスペクト指向プログラミング(AOP)、Spring MVCなどの機能が備わっており、モジュール化された開発ができる点が最大の強みです。特にSpring Bootを利用することで、設定の手間を省いて最小限のコードでWebアプリを作成することができます。
Java SpringがJava開発において注目されている理由
Java Springが注目される理由の一つは、Javaの持つオブジェクト指向の特性を活かしつつ、開発の生産性を高めてくれる点にあります。
中でもJava Springは、以下の点が重要視されています。
| 注目ポイント | 内容 |
|---|---|
| 開発効率の向上 | 依存性注入やアスペクト指向プログラミングによるコードの再利用で開発が簡易化 |
| Spring Boot | Webアプリの作成が容易になり、設定が最小限で済む |
| 機能が豊富 | データベース操作やセキュリティ認証など便利機能が標準で搭載 |
Java Springを扱う際は、Javaプログラミングの基礎がある状態で扱うことをおすすめします。理由として、Java言語の基本を知らない状態でJava Springを使ってもオブジェクト同士の繋がりや呼び出しなどが理解しづらいためです。
以下の記事では、Java言語の基礎知識について学べます。ぜひ、参考にしてみてください。
Java Springの主な特徴
Java Springには大きく5つの特徴があります。
- 依存性注入(DI)
- アスペクト指向プログラミング
- WebアプリケーションのためのMVC
- アプリケーションのセキュリティ管理
- データベース操作の簡素化
それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
依存性注入(DI)
依存性注入(DI)は、Dependency Injectionの略です。
あるオブジェクトが他のオブジェクトに依存している場合、その依存関係を外部から自動的に提供してくれる仕組みのことを指します。これにより、開発者はオブジェクトの生成や管理を手動で行う必要がなくなります。
例えば、Springでは、@Component や @Autowired などのアノテーションを使って、必要なクラスを自動的にインスタンス化して依存関係を解決します。イメージとしてはアノテーションを使って紐づけを行うことで、Springがクラス間の依存関係を管理・解決するという考えで問題ありません。
アノテーションの使い方について詳しく知りたい人は、以下の記事で解説していますので参考にしてください。
アスペクト指向プログラミング
アスペクト指向プログラミングは、さまざまなアプリケーションで必要になる共通処理をメイン処理とは別の場所で管理する手法のこと。AOPと略されることがありますが、正式名称はAspect Oriented Programmingといいます。
アスペクト指向プログラミング(AOP)を活用することでコードの重複を避けることができ、可読性と保守性を向上させられます。例えば、何かしらのメイン処理を実行する前に「メソッドAの実行を開始します。」というログを表示したいとします。
通常は、各メソッドの冒頭にログ出力のコードを書く必要があります が、この方法だとメソッドの数が増えるたびにログ出力の記述が増えてしまいますよね。そんなとき、Java SpringのAOPを使えば、@Aspect アノテーションを使って特定のメソッドが呼び出される前にログを出力する処理を、共通処理として一箇所にまとめて設定することが可能です。
こうすることで、ログ出力のコードを毎回書く必要がなくなり、コードの保守がとても楽になります。
WebアプリケーションのためのMVC
Java Springは、Webアプリケーション開発のために、MVC(Model-View-Controller)アーキテクチャを採用しています。MVCとは、Webアプリを以下の3つの役割に分けて設計する手法のことです。
- モデル(Model)
- ビュー(View)
- コントローラー(Controller)
Spring MVCを使うことで、リクエストの処理、データの受け渡し、画面表示を分かりやすく管理でき、保守性の高いコードの実現が叶います。さらに、Springの@RestControllerアノテーションを使用することで、Web APIも簡単に作成できます。
アプリケーションのセキュリティ管理
Java Springには、Spring Securityというセキュリティフレームワークが搭載されています。これを使うことで、アプリケーションの認証を簡単に実装できます。
例えば、会員制のWebアプリでユーザーごとにログインが必要な場合でも、Spring Securityを使えば少ないコードでログイン機能を作れます。また、企業向けの業務アプリでも、安全な認証・アクセス制御を実現できるのが強みです。
データベース操作の簡素化
通常、データを保存・取得・更新・削除(CRUD処理)するには、SQLを書いてデータベースに問い合わせる必要がありますよね。Spring Data JPAを使えば、リポジトリインターフェースを作るだけで、CRUD処理が自動で生成されるため、SQLを書く必要がほとんどありません。
データベースとの接続設定もapplication.propertiesに簡単な設定を記述するだけで済むため、データベース操作のコードがシンプルになり、開発スピードが向上するメリットがあります。
Java Spring Bootを使った簡単なアプリケーションの作成方法
Spring Bootを使うと、基本設定でWebアプリケーションを作成できます。組み込みサーバーであるTomcatや自動設定機能が備わっており、初心者でも簡単にアプリを作ることが可能です。
ここでは、Spring Bootのセットアップから簡単なアプリケーションの作成方法を紹介します。
Java Spring Bootのインストールとセットアップ方法

Spring Bootのプロジェクトを作成する方法で、もっとも簡単なのはSpring Initializrを使う方法です。
- Spring Initializrにアクセスします。
- 以下の設定でプロジェクトを生成します。
Project項目は、Mavenを選択
Language項目は、Javaを選択
Spring Boot項目は、最新のものを選択
Dependencies項目は Spring Webを選択 - 生成されたプロジェクトをダウンロードし、Eclipseなどの開発ツールでインポートして開きます。
これで、Spring Bootを使ったプロジェクトのセットアップは完了です。
Java Spring Bootのアプリケーションを作成
Spring Bootのセットアップが完了したら、実際にアプリケーションを作成しましょう。Application.javaに以下のコードを記述します。
public class DemoApplication {
public static void main(String[] args) {
SpringApplication.run(DemoApplication.class, args);
}
}
次に、Controllerパッケージ内にあるHelloController.javaに以下のコードを記述してみましょう。
@RequestMapping(“/api”)
public class HelloController {
@GetMapping(“/hello”)
public String sayHello() {
return “Hello, Spring Boot!”;
}
}
内容としては/api/helloという要求がきたときに「Hello, Spring Boot!」というメッセージを表示するというプログラムです。
開発ツールであるEclipseで「mvn spring-boot:run」コマンドを実行することでアプリを動作させられます。その後、http://localhost:8080/api/helloにアクセスすることで「Hello, Spring Boot!」というメッセージの確認が可能です。
Java Springでデータベースと連携する方法
Java Springでデータベースを連携するのに役立つ機能がJava Spring Data JPAになります。ここでは、Java Spring Data JPAを使ったデータベースの操作方法について紹介します。
Java Spring Data JPAを使ったデータベース操作
Java Springでデータベースと接続する際には、application.propertiesを使って接続設定を行います。
例題として、application.propertiesにおけるMySQLデータベースへの接続設定を紹介します。
spring.datasource.url=jdbc:mysql://localhost:3306/データベースを指定
spring.datasource.username=ユーザー名を設定
spring.datasource.password=パスワードを設定# JPAの設定
spring.jpa.hibernate.ddl-auto=update
spring.jpa.show-sql=true
spring.jpa.properties.hibernate.dialect=org.hibernate.dialect.MySQL8Dialect
spring.datasource.driver-class-name=com.mysql.cj.jdbc.Driver
設定ファイルが完了したら、次はJava Spring Data JPAを使ったデータベースの操作を実行しましょう。
Java Springでのデータベース接続設定
Java Spring Data JPAを使ったデータベースの操作手順は次のとおりです。
- 設定ファイルのpom.xmlに、mysqlのJDBCドライバーを設定します。
- Spring Data JPAを使ってエンティティクラスに定義します。
- データ操作を行うためのリポジトリクラスを定義します。
- サービスとコントローラークラスを作成し、アプリケーションを起動します。
- リクエストを送信することで、テーブルにレコードを追加できます。
上記の手順を実施することで、空だったテーブルにレコードが1件追加されます。このように、Java Spring Data JPAを使えば設定とクラスの定義を行うだけでSQLを使わずにデータベースの操作が可能です。
Java Springのメリット
Java Springのメリットは次の4点が挙げられます。
- モジュール化と柔軟性
- 多岐にわたる機能のサポートが充実
- ドキュメントが充実
- テストのサポート
それぞれのメリットについて詳しく紹介します。
モジュール化と柔軟性
Java Springの持つメリットの1つがモジュール化と柔軟性です。アプリケーションの機能をモジュールごとに分けて作ることができるため、開発者は必要な機能だけを選んで組み合わせることができます。
例えば、ログイン機能であったりデータベース操作、画面表示の処理をそれぞれ独立したパーツとして作成し、必要に応じて追加や修正が可能になります。Java Springはこの強みがあるので新しい機能であっても既存のシステムに追加しやすい点がメリットです。
多岐にわたる機能のサポートが充実
2つ目のメリットは、さまざまな機能が標準サポートされていることです。
Java Springには本記事の特徴として紹介したSpring MVC、Spring Security、Spring Data JPAなど、Webアプリケーション開発に必要な機能が標準で備わっています。これらの機能を組み合わせることで、Web APIの開発から認証・認可、データベースの操作まで、一貫した開発をスムーズに行えます。
ドキュメントが充実
豊富な公式ドキュメントが整備されているため、初心者から上級者までの開発者にとって使いやすいフレームワークです。公式ガイドやサンプルコードが充実しており、Spring Bootを活用した簡単なアプリケーション開発方法もネットで学べる点がメリットでしょう。開発中に直面する問題を解決するための情報も多く集まっているので、もしトラブルが発生したとしても解決しやすいです。
Java Springの書籍も豊富にあり、Amazonや楽天市場で購入できます。初心者なら「Spring Framework超入門やさしくわかるWebアプリ開発」という書籍がおすすめです。
テストのサポート
Java Springには、Spring Testという機能が搭載されており、テストを簡単に実行できる環境が整っています。例えば、JUnitと組み合わせて@Test アノテーションを使うことで、アプリケーションのユニットテスト結合テストを実施できます。
これにより、開発中にアプリケーションが想定通りに動作するかを確認しやすくなり、品質を高めながら開発を進められます。また、バグを早期に発見・修正できるため、リリース後の不具合といったトラブルを最小限に抑えることが可能です。
Java Springのデメリット
次に、Java Springが持つデメリットは大きく分けて3つです。
- 学習のハードルが高い
- 抽象化が多い
- 設定が複雑
それぞれのデメリットについて詳しく紹介します。
学習のハードルが高い
Java Springは多機能で使いこなせれば便利なフレームワークですが、その分学習コストも高い傾向にあります。特に、依存性注入(DI)やアスペクト指向プログラミング(AOP)などの概念を理解するには時間がかかりますし、参画する現場によって使う機能はさまざまです。
Java言語とは別にフレームワークの勉強が必要になるので、現場で使う機能を中心にJava Springを学び始めることをおすすめします。
抽象化が多い
Java Springは、多くの機能を自動で処理してくれる半面、内部の仕組みが見えにくくなるというデメリットもあります。たとえば、エラーが発生したときに「なぜこの問題が起きたのか?」を理解するのが難しいことも。
原因の調査に時間がかかってしまったり、対策方法をどうすればよいのか悩むこともあるのでJava Springの仕組みの理解が求められます。
設定が複雑

Java Springを使ったWebアプリケーション開発では、機能によって細かい設定が必要になることがあります。例えば、Spring Securityを使って認証・認可を設定する場合、デフォルトの設定だけでは要件を満たせないことが多く、独自のカスタマイズが必要になることも。
また、Java Springではapplication.propertiesやapplication.yml といったファイルに設定を記述しますが、プロジェクトが大きくなると設定の数が増えていき、どこに何の設定があるのか把握しづらくなる傾向が高いです。設定漏れがないように共通設定をまとめたり、環境別で設定ファイルを用意しておくことをおすすめします。
まとめ
本記事では、Java Springの特徴からデータベースの操作方法、メリット・デメリットについて解説しました。Java Springは便利機能が詰まったフレームワークですが、機能が豊富だからこそ使い方や仕組みの理解が重要になってきます。
アプリ開発をスムーズに進められる一方で、不具合の原因追及に時間がかかってしまうリスクもあるので、これからJava Springを使った開発を行う人は書籍やネット情報、YouTubeなどの動画から情報を取得して活用することをおすすめします。






