アクセンチュアと日経BPの調査では、多くの企業が「守り」のDXに偏り、「攻めのDX」へ進めていない現状が示されています。こうした停滞を打開するには、まずDXのメリットとデメリットを正しく理解し、DXの方向性をつかむことが重要です。
この記事では、DXのメリット10選・デメリット5選、DXのメリットに対する経産省の見解も紹介します。この機会に、メリット・デメリットを押さえ、自社にとって本当に必要なDXの形を見つけていきましょう。
DXのメリットとは?

DXのメリットは、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現できる点にあります。例えば、
- SNSや自社サイトを活用した新規顧客の獲得
- 顧客データを基にしたサービス改善
- オンライン販売やサブスク
など新たな収益モデルの構築が挙げられます。
しかし現在、多くの企業は業務効率化やコスト削減といった「守りのDX」にとどまり、新たな価値創出によって事業成長を促す「攻めのDX」へ踏み出せていません。DXのメリットは、この「攻めのDX」に到達してこそ最大化されます。
メリットを最大化するにはDXの理解が必要
DXのメリットを最大化するにあたり、重要になるのがDXそのものへの正しい理解です。総務省はDXを以下のように定義しています。
デジタル・トランスフォーメーションは、デジタル技術の活用による新たな商品・サービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していくような取組を指す概念である。
まずは、DXの意味を正しく理解し、自社に合った目的を明確にするところから始めましょう。DXについて知りたい方は、以下の記事がおすすめです。具体例を挙げて、初心者向けに分かりやすく解説しています。
経済産業省が示すDXのメリット
経済産業省は、DXのメリットについて「市場変化への対応」と「新たな成長機会の獲得」にあると示しています。ここでは、経済産業省が挙げた2つの事例をご紹介しましょう。
デジタル化で市場が一気に変わる事例
音楽配信サービスの普及により、かつて街中にあったレコード店は急速に姿を消しました。これは、デジタル技術が既存ビジネスの前提を短期間で覆してしまうことを示す代表的な例です。
経済産業省は、このような市場構造の変化を踏まえ、「今のやり方のままでは生き残れない」という危機感こそがDX推進の出発点になると指摘しています。
デジタル活用で新しい市場にアクセスした事例
デジタルを活用することで、中小企業でも新たな市場へ参入できます。例えば、SNSや自社サイトを通じて情報発信を行えば、これまで接点のなかった遠方の顧客にも商品やサービスを届けることが可能になります。
中小企業は意思決定が速いため、環境変化に柔軟に対応できる点も強みです。地域密着型のビジネスであっても、デジタルを取り入れることで全国、さらには海外へと販路を広げられます。
つまり、DXは「生き残るための守り」であると同時に、「成長のための攻め」でもあるということです。
参照:経済産業省「デジタルガバナンスコード 実践の手引き」
労働人口から見るDXのメリット

DXのメリットとして「人手不足の解消」が挙げられますが、そもそも現代日本の労働力不足はどれほど深刻なのでしょうか。ここでは、DXのメリットを知るために、詳しく見ていきます。
労働力関連データの推移
総務省の労働力調査によれば、15〜64歳の生産年齢人口は1989年の8,552万人をピークに減少を続け、2019年には7,510万人まで縮小しています。
一方で、労働力人口、就業者数ともに増加しており、限られた人口の中でより多くの人が働かざるを得ない状況が浮き彫りになっています。
| 指標 | 1985〜1989年 | 2019年 | 増減 |
| 生産年齢人口(15〜64歳) | 8,552万人 | 7,510万人 | -1,042万人 |
| 労働力人口 | 5,963万人 | 6,886万人 | +923万人 |
| 就業者数 | 5,807万人 | 6,724万人 | +917万人 |
つまり、日本は「働ける人が減っているのに、働く必要のある人は増えている」という構造的なギャップを抱えています。このデータからも、DXを推進するメリットが浮かび上がってきます。
参照:総務省「労働力人口・就業者数の推移」
DXのメリット・デメリットを徹底比較!

経済産業省の見解から「成長機会の拡大」というメリットが分かり、総務省の調査では「明らかな人手不足」の実態も見えてきました。
ここからは、こうした視点、現状を踏まえつつ、DXのメリットをより多角的にお伝えします。メリットと同時に、見落とされがちなデメリットについても触れ、両面から徹底比較していきましょう。
DXのメリット10選
まずはDXのメリットから確認します。ここでは、企業の成長を加速させる「攻め」のメリットから、経営基盤を支える「守り」のメリットへと順を追って解説します。
- 新しい売上のチャンスが広がる(攻め)
- 顧客体験が変わり、選ばれる企業になる(攻め)
- 勘に頼らない経営ができる(攻め)
- 非接触のニーズを価値に変えられる(攻め)
- 変化に強い経営基盤をつくれる(攻め+守り)
- ムダな仕事が減り本来の業務に集中できる(守り)
- 「働きやすさ」が競争力になる(守り)
- 古いシステムに縛られなくなる(守り)
- 不測の事態でも事業を継続できる(守り)
- 人手不足の課題が解消する(守り)
①新しい売上のチャンスが広がる(攻め)
DXのメリットは、以前まで存在しなかったビジネスモデルを生み出せることです。例えば、
- オンライン販売
- サブスクリプションサービス
- モバイルオーダー等の導入
などのサービスは、収益手段そのものを根本から変えました。経済産業省のメリットが示す通り、DXは地域や店舗の制約をなくし、世界中へサービスを届ける力を企業に与えます。
②顧客体験が変わり選ばれる企業になる(攻め)
DXのメリットは、顧客がサービスをより快適に利用できる点も挙げられます。例えば、
- スマホから空き状況を見てすぐ予約
- レジに並ばずキャッシュレスで支払いが完了
- 来店前に注文を済ませて待ち時間を解消
といった状況です。こうした小さな満足が積み重なることで、「ここなら安心して使える」「また選びたい」という気持ちが生まれます。
③勘に頼らない経営ができる(攻め)
DXのメリットは、データを蓄積し、経営判断の精度を大きく高められることです。例えば、
- どの商品が売れているのか
- どの顧客層に支持されているのか
- 次に打つべき手は何か
これらを感覚ではなく、根拠あるデータから導けるようになります。意思決定の質が変わることは、企業の競争力そのものを底上げします。
④非接触のニーズを価値に変えられる(攻め)
DXのメリットは、非接触のニーズをそのまま新しい価値に変えられる点にあります。コロナ禍で広がった非対面のニーズは、DXによってビジネスチャンスへと転換されました。例えば、
- インナーウェアのバーチャル採寸
- 来店せずに受け取れる食事の宅配
- 不用品のオンライン買取
など、距離や接触を前提としないサービスが次々に生まれています。こういった「対面が必要」という常識を、成長の機会へと変えられることこそDXの大きなメリットです。
⑤変化に強い経営基盤をつくれる(攻め+守り)
DXのメリットは、変化の激しい市場へ即座に対応できることです。具体的にいえば、
- 店舗情報の即時変更(営業時間、予約枠の増減など)
- 顧客の問い合わせをリアルタイムで共有
- 生産ラインの稼働スケジュール変更
などがその一例です。デジタル基盤があれば、状況変動へのスピーディーな対処が可能となり、攻守両面でメリットを得られます。
⑥ムダな仕事が減り本来の業務に集中できる(守り)
DXのメリットは、非効率な作業から解放されることです。例えば、
- フォーム入力内容を自動でシステムに反映
- チャット指示で議事録や要点を自動生成
- 担当者に依存しがちな手順をAIで統一
といった形で、業務の流れを圧倒的にスムーズにします。これにより、本来の業務に集中できる環境が整うため、企業の底力の引き上げに大きく貢献します。
⑦「働きやすさ」が競争力になる(守り)
DXのメリットは、働く環境そのものを改善し、企業の魅力を高められることです。例えば、
- オンライン会議で移動時間をゼロ
- 電子契約で紙の押印作業を廃止
- チャットツールで離れていても情報共有
といった感じで、働き方自体がスマートになります。これにより従業員の採用力と定着率を高め、ひいては企業の競争力につながります。
⑧古いシステムに縛られなくなる(守り)
DXのメリットは、老朽化したシステムが抱える課題から解放される点にあります。例えば、
- クラウド化によるサーバー保守不要
- API連携で古いシステム依存から脱却
- データ移行で将来の拡張性を確保
などです。2027年問題(SAPの保守期限終了)を控えた現在、これらのリスクを解消できるのは、DXの大きなメリットです。
⑨不測の事態でも事業を継続できる(守り)
DXのメリットは、予測不能な事態でも柔軟に対応できることです。例えば、
- クラウド環境でどこからでも業務継続
- データバックアップで復旧時間を最小化
- オンライン対応で顧客接点を維持
などで対応できます。災害やパンデミックでもサービスが止まらない会社は、顧客や取引先の満足度を高めるというメリットにつながります。
⑩人手不足の課題が解消する(守り)
DXのメリットは、少人数でも回る仕組みを作れることです。例えば、
- Zapierでツール間のデータ連携を自動化
- CopilotがExcelの集計表を自動作成
- GeminiでGoogleカレンダーのスケジュールを変更
といった形で、これまで人手で行っていた作業を大幅に削減できます。人材不足を前提にしても企業が前進できるのは、DXならではのメリットです。Zapierは以下の記事で詳しく解説しています。業務フローの自動化に興味がある方は、ぜひご一読ください。
DXのデメリット5選
DXには多くのメリットがありますが、そのメリットを十分に発揮するためには、同時に向き合うべき課題も存在します。ここでは、企業がつまずきやすい5つのデメリットを、DXのメリットとの関係性を踏まえて解説します。
- 推進できる人材が足りない
- コスト負担が大きい
- セキュリティリスクが高まる
- 老朽化システムから抜け出しにくい
- 導入しても活用できない
①推進できる人材が足りない
DXのメリットを享受するには、デジタルツールを使いこなせる人材が必要です。しかし多くの企業では、実務で動けるDX人材が不足しており、プロジェクトが前に進まないケースが目立ちます。人材不足は、DXのメリットを阻む代表的なデメリットの一つです。
②コスト負担が大きい
DXは業務効率化や売上拡大といったメリットを生みますが、導入・運用・人材育成まで含めると一定のコストが必要です。短期的な費用だけを見ると負担に感じやすく、メリットが見えにくくなる点が課題です。
③セキュリティリスクが高まる
一般的に、DXが進むほど用いるデータの量は増えますが、その一方で情報漏えいなどのリスクも増加します。ひとたび情報が漏えいすれば、データだけではなく企業への信頼も失います。メリットの裏側に潜むリスクを理解し、適切な対策を講じることが必要です。
④老朽化システムから抜け出しにくい
DXのメリットを最大化するには最新の柔軟なシステムが必要です。しかし、古い基幹システムは複雑で刷新が難しく、DXの足かせになっている企業も少なくありません。この「抜け出しにくさ」は、多くの企業でDX推進を阻害するデメリットとなっています。
⑤導入しても活用できない
DXのメリットは、導入後に現場で活用されてこそ得られます。しかし、ITリテラシーの差や現場の抵抗感からツールが使われず、形骸化する例も少なくありません。こういった場合、研修などでスキルを底上げし、活用が定着する環境づくりが求められます。
DXのメリットを最大化するには?
ここまで見てきたように、DXには多くのメリットがあります。一方で、DX人材の不足や運用の負担、ツールが定着しないといったデメリットも浮かび上がってきました。つまり、DXのメリットを最大化するには、社内で使いこなせる人材と仕組みを育てられるか、の一点に集約されるのです。
DX研修・人材育成サービスは、まず「DX技術知識・技能レベルチェックサービス」で現状を把握し、そのうえで、各企業に最適化した育成プランを設計します。
研修期間は短期から中・長期まで柔軟に調整し、対面からオンライン、eラーニングまで多彩な学習形式をご提供いたします。ご相談は随時無料で受け付けておりますので、「DXは何から手を付けたらいいかわからない」という企業様にも最適なサービスです。
DXのメリットについてまとめ
DXのメリットとして、今回は代表的な10の事例をご紹介しました。しかし、実際に得られるメリットは企業ごと・業種ごとにさらに広がります。
一方で、人材不足やコスト負担、そして自社に合ったDX推進方法が分からないといった「DXの難しさ」そのものが、多くの企業でDXのメリットを阻害していることも見えてきました。
自社に最適な進め方に迷ったときは、まず専門家に相談してみましょう。最適なプランでDXを着実に進めていくためにも、正しい方向性で進めることが重要です。

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