現在、多くの企業がAIを活用していますが、中でも、他のAIでは実行できない処理を可能にするマルチモーダルAIへの期待が高まっています。
本記事では、マルチモーダルAIの概要や生成AIとの関係、シングルモーダルAIとの違い、マルチモーダルAIが実現できることなどについて紹介します。
また、分野別のマルチモーダルAIの活用方法や今後の課題なども解説しますので、ぜひ参考にしてください。
マルチモーダルAIの基礎知識
まず、マルチモーダルAIの基礎知識について紹介します。
- マルチモーダルAIの概要
- 生成AIとマルチモーダルAIの関係
- シングルモーダルAIとマルチモーダルAIの違い
- マルチモーダルAIとLLMの違い
マルチモーダルAIの概要
マルチモーダルAIは、さまざまなモダリティ(データ)を一度に分析して組み合わせられるAIで、多様なデータを理解して処理することに特化した技術です。
利用されるモダリティには以下のようなものがあります。
- テキスト
- 音声
- 画像
- 動画
- センサー情報
マルチモーダルAIは、幅広い領域への応用が期待されており、複数のデータを活用して新しい課題解決の手段やビジネス上の価値創出に貢献できる点が注目されています。
生成AIとマルチモーダルAIの関係
生成AIは、新しいコンテンツを作り出すことに特化したAIです。機械学習モデルを活用し、1つのプロンプトからテキストや画像、動画などの多様なコンテンツを生成できます。
生成AIはAIの一分野であり、マルチモーダルAIはその機能の一形態です。両者は目的や特性がそれぞれ異なる技術であり、相互に連携すればより大きな成果が得られる技術です。
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シングルモーダルAIとマルチモーダルAIの違い
シングルモーダルAIは、シングルの言葉が表すとおり、一種類のデータだけを処理対象とするAIです。音声データからテキストを生成する、テキストを画像に生成するなどのケースが該当します。
シングルモーダルAIとマルチモーダルAIの違いを表にすると以下のとおりです。
| シングルモーダルAI | マルチモーダルAI | |
|---|---|---|
| 扱うデータ | ひとつのデータのみ | 複数のデータを統合できる |
| 処理方法 | 単一データを新しい成果物に生成・変換する | 多様なデータを照合して関連性を導き出す |
| 実現できること | 1種類のモダリティに限定されるため相互補完が働かず、表現の幅が狭い | 複数の種類のデータを活用して相乗効果を生み出し、従来より精度の高い表現を可能にする |
上記のように、シングルモーダルAIが単一データに基づいた出力を行うのに対し、マルチモーダルAIは多様なデータを統合して複雑な判断や高度な処理を行える点が特徴です。
マルチモーダルAIとLLMの違い
LLM(大規模言語モデル)はテキストデータの処理に特化したAIです。高度な言語理解や自然な文章生成に強みを持っています。
マルチモーダルAIは多様な情報を扱える汎用性を備えるのに対し、LLMは言語の処理に限定して高い専門性を発揮するという違いがあります。
マルチモーダルAIが実現できること

マルチモーダルAIでできる主な内容は以下のとおりです。
- 効率的で精度の高いデータ変換
- 行動の把握
- 想定外の動きや状況の検出
- 専門性の高い知識や技術を身に付ける
効率的で精度の高いデータ変換
マルチモーダルAIは、多様なデータを読み取って瞬時に処理できるため、効率的で精度の高い処理が得意です。
ディープラーニングで動作データを学習すれば、次に必要となるアクションも予測できます。
マルチモーダルAIは、人間に近い認識力と迅速な判断力で高度な予測までできるため、さまざまな分野で活用されることが期待される技術です。
行動の把握
マルチモーダルAIは、複数のモダリティを統合的に処理できるため、人や動物、車両などの行動を把握することが可能です。
たとえば、防犯カメラの映像だけでは会話か口論かを判別しにくいケースでも、音声データを組み合わせれば、状況を正確に把握しやすくなります。多様なデータを活用して多角的に情報を処理できれば、判断速度や精度も高まり、より正確な行動の把握が可能となります。
想定外の動きや状況の検出
マルチモーダルAIは、異常や想定外の動きを検出する分野でも高い効果を発揮します。
製造現場では、生産ラインで画像認識による不良品検知が一般化していますが、画像だけでは判別に限界があります。そこで、温度や湿度、振動などのセンサーデータを組み合わせれば、不良品検知の精度を大幅に向上することが可能です。
具体的には、温度異常から不具合を早期に察知する、振動から内部構造の異常を把握する、などの効果が期待できます。
専門性の高い知識や技術を身に付ける
マルチモーダルAIは人間に近い高度な判断を瞬時に行えるため、専門性の高い技能を効率的に習得することが可能です。高度な動作データをディープラーニングで学習すれば、次に必要な行動も予測できます。
マルチモーダルAIは、習得した知識や技術を瞬時の判断と予測に結び付けられるため、活躍できる領域は今後さらに広がることが期待できます。
マルチモーダルAIの分野別活用事例
マルチモーダルAIは、さまざまな分野で活用されています。
以下では、活用されている主な分野について紹介します。
- 自動車分野
- 医療分野
- 防犯分野
- 教育分野
- 製造分野
- スポーツ分野
自動車分野
自動車分野におけるマルチモーダルAIの代表的な活用例として、自動運転技術が挙げられます。
人間は五感を使って車両や歩行者、信号を認識しますが、マルチモーダルAIはドライブレコーダーの映像やマイクの音声、GPSなどのデータを統合して状況を判断します。これにより、道路状況を人間に近い精度で把握することが可能です。
マルチモーダルAIは自動運転の安全性向上に大きく貢献しており、海外・国内を問わず、マルチモーダルAI搭載の自動運転の導入が進んでいます。
自動運転について詳しく知りたい方は以下の記事がおすすめです。
医療分野
医療の現場では、以下のようなさまざまなデータを扱います。
- 超音波検査やMRIなどの画像データ
- 心音データ
- 問診票
- カルテ
マルチモーダルAIを活用すれば、上記のような複数のデータを統合的に扱うことが可能です。これにより、医師の診断精度が向上し、過去の症例データとの照合も容易になるため、病気の早期発見・早期予測が実現します。
診断だけでなく検査も早く完了するようになるため、患者の待ち時間削減も見込めるでしょう。
また、遠隔診断の精度向上も期待できるため、過疎地域の高齢者にも、適切な診断や定期検診などを提供できます。
防犯分野
マルチモーダルAIをセキュリティシステムや防犯カメラに搭載すれば、映像と音声を統合した分析が可能になるため、犯罪の予防や早期発見につながります。
蓄積したデータをマルチモーダルAIで分析すれば、不審者の侵入パターンなども予測できるため、建物全体のセキュリティリスクを軽減することも可能です。
防犯にマルチモーダルAIを活用すれば、警備の強化と人員負担の軽減を両立できます。
ビルやオフィスで利用される生体認証においても、マルチモーダルAIによって静脈認証と顔認証を組み合わせれば、防犯対策の精度を高められます。
教育分野
教育分野ではマルチモーダルAIを活用して、複数のモダリティを組み合わせた教育支援ツールや教材が開発されています。これらツールや教材を用いれば、学習者に多角的な学習体験を提供することが可能です。
また、映像で撮影されている受講者の表情を解析して理解度を把握する機能、講師の講義内容を自動的にテキストに変換する機能なども開発されています。
マルチモーダルAIを教育分野に活用すれば、教職者の業務の生産性も向上します。
製造分野
先述のとおり、製造分野では、マルチモーダルAIが製品や設備の異常検知で活用されています。また、マルチモーダルAIを搭載した産業用ロボットの研究・開発も進んでいます。
今後は、部品の研磨や弁当の盛り付けといった繊細な作業から、従業員の勤怠管理やシフト管理まで、幅広い業務でマルチモーダルAIが活用されていくでしょう。
スポーツ分野
スポーツ分野においてもマルチモーダルAIの活用は進んでいます。
主な活用例は以下のとおりです。
- 試合中の情報収集・分析
- 選手の体調管理
- 試合での戦略立案
上記のような作業を、ドローンによる俯瞰映像やGPSデータ、フィールド上のセンサー、対戦相手の情報などを組み合わせて行います。
また、選手への個別指導や全体トレーニング、健康維持などもマルチモーダルAIを搭載したデバイスが活用されています。
マルチモーダルAIの課題

マルチモーダルAIには多くの可能性がある一方で、いくつかの課題も存在します。
たとえば、シングルモーダルAIとくらべると、マルチモーダルAIは処理するデータ量が多いため計算時間も長くなります。大量のデータを効率的に処理するには高度な技術や基盤が不可欠です。
また、複数の種類のデータを補完し合う形で扱う手法も確立途上であり、引き続き研究や開発が必要です。
性質や特性が異なるデータを複数扱うため、分析や解析で出された結果の判断根拠が分かりにくいのも課題と言えます。これからもマルチモーダルAIを活用していくなら、「なぜAIはこのように判断したか」を説明してくれるAIツールや技術も求められるでしょう。
マルチモーダルAIのまとめ
マルチモーダルAIは、テキスト・音声・画像・動画・センサーデータなど複数の情報を同時に統合・分析できるAI技術です。シングルモーダルAIよりも精度の高い処理や予測を行えます。
生成AIとも連携でき、幅広い分野で活用の領域が広がっており、自動運転や医療、防犯、教育、製造、スポーツなどさまざまな分野で導入されています。
ただ、大量のデータ処理をできる技術や基盤が必要といった課題もあり、今後さらなる研究開発が求められる分野です。






