現代のAI(人工知能)ブームにおいて、機械学習やディープラーニングといった言葉を目にすることが多くなってきました。
その中でも、機械学習の中の1つであり、ディープラーニングの基礎となっているニューラルネットワークも注目が集まっている手法です。
本記事では、私たちの生活の中でニューラルネットワークがどのように使われているのか、その応用例や活用方法を紹介したいと思います。
ニューラルネットワークとは
ニューラルネットワークとは簡単に言うと、人間の脳の働きをコンピュータ上で模倣したものです。
人間の脳の中には神経細胞(ニューロンまたはユニット)と呼ばれる細胞が、多数張り巡らせてネットワークを構成しています。
神経細胞に電気信号が伝わることで、脳内の情報処理が行われています。
この電気信号の伝達を数理モデル化したものが、ニューラルネットワークと呼ばれています。
ニューラルネットワークの構造は、
- 入力が行われる「入力層」
- 出力が行われる「出力層」
- 間に「隠れ層(中間層)」
を加え、そのつながりを「重み」でパラメーターとして調整したものになります。
ニューラルネットワークをベースにして応用された手法がディープラーニングであり、ニューラルネットワークとディープラーニングは今とても注目されています。
では、このニューラルネットワークは身近な生活の中でどのように応用されているのでしょうか。
ニューラルネットワークの分野別応用例
ニューラルネットワークはインターネット関連サービスはもちろん、金融や医療など実にさまざまな分野で応用されています。
インターネット関連サービス分野での応用例
株式会社ドワンゴが運営しているニコニコ動画では、動画に投稿されるコメントの解析にニューラルネットワークが適用されています。
投稿されるコメントは、普通の言い回しではない表現や、絵文字なども多数使われています。
これらのコメントは、量が膨大な上に、コメントの荒らし、誹謗中傷、殺害予告など不適切なコメントは早く削除する必要があります。従来の方法は、コメントの監視を人力で行っていました。
しかし、ニューラルネットワークを導入することによって、全体の75%程度のコメントの人力目視を不要にすることに成功しました。
これは、学習によってコメントの監視の必要性を3段階に分類し、「監視必要なし」と分類されたコメントを除外する手法になります。
その他、オンラインショッピング上の画像商品検索や音楽ストリーミング配信サービス上のレコメンド機能などがあげられます。
IT分野においてもニューラルネットワークは活用されています。
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翻訳分野での応用例
Googleがニューラルネットワークに基づく機械翻訳を導入したことで、翻訳精度が劇的に向上しました。このシステムは文章をパーツごとでなく、ひとつの文として翻訳します。
文章全体を把握することで、より正確な訳語の候補を見つけることができます。そして、文法を整えることで、より人の言葉に近づいた翻訳ができるようになりました。
システム開発時は、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、日本語、韓国語、トルコ語の計8言語を対象に提供が始まりました。
現在では、すでに108言語にまで対応しています。
※近年では、「DeepL翻訳」というドイツのDeepL社による翻訳サービスにも注目が集まっており、対応言語は少ないものの精度が高いと言われていたりします。
参考:Keywalker
金融分野での応用例
みずほ証券の株取引システムでの応用例を見てみましょう。
東証取引のうち7割はコンピュータによる株式売買(アルゴ取引)が行われています。
みずほ証券ではこのシステムでニューラルネットワークを応用しています。
このシステムは、ある時刻に株価が上昇するか下落するかを予測する株取引システムになります。
2つの指標となる「予測時刻」と「予測時間(どれだけ先を予測するか)」にそれぞれ専用のニューラルネットワークを作っています。
このシステムの導入により、従来の手法より平均で+2,48%も正解率が改善するという成果が得られました。
参考:TECH+
自動車分野での応用例
自動車業界では今、自動運転開発が急速に進められています。
自動運転開発においては、画像認識は欠かせない技術になります。
ドライバーの代わりに、より速く正確に周囲の物体を認識するためにニューラルネットワークを使った画像認識システムがすでに使われています。
自動運転を実現するための様々なニューラルネットワークが、一つのパッケージとして連携し構成されています。
例えば、他の自動車や歩行者などの障害物を検出し、その障害物までの距離を計算するものがあります。
他には走行レーンを検出し境界を認識するものや運転可能な場所や経路を検出するものなどがあります。
また、情報(データ)を得るための様々なセンサー、カメラやレーダーなども組み合わされています。
自動車の自動運転には多くのニューラルネットワークが組み合わさって安全性を高める技術が開発されています。
参考:ユピスタ
AIにおける自動運転の詳細は以下の記事をご参考ください。
医療分野での応用例
胃がんを検出することは、胃炎に類似していることもあり、経験豊富な医師でも難しいことがあります。
そんな中、ニューラルネットワークを活用し、内視鏡画像から胃がんを検出することが可能になりました。
このシステムでは6㎜以上の胃がんを熟練の内視鏡医と同じレベルの精度で発見しました。
この時、1画像の診断にかかる時間は約0.02秒という解析速度でした。
その他にも、大腸内視鏡検査や網膜剥離判定などにもニューラルネットワークが応用され始めています。
また、製薬における研究開発やゲノム解析分野での遺伝子と病気との関係の解明などにもニューラルネットワークは用いられ、研究が進められています。
インフラ分野での応用例
2012年の、中央自動車笹子トンネル老朽化天井版崩落事故をきっかけに、2013年に法改正が行われました。
現在は「5年に1回の近接目視による点検」が義務付けられています。
これらの点検にもニューラルネットワークは応用されています。従来では、橋やトンネルの表面にある傷や汚れなどをひび割れとして誤検出することがよくありました。
そこで、2つの手法を組み合わせる技術が考えられました。
1つは、ひび割れに特有の特徴パターンを効率よく検出する画像解析です。
そしてもう1つは、その特徴パターンを高精度に識別する畳み込みニューラルネットワークという手法です。
この技術により、80%以上の精度で検出することに成功しました。
その他には、舗装道路の損傷判断や橋梁内部の損傷度合いの推定、送電線の異常検知などにもニューラルネットワークは応用されています。
参考:no+e
農業分野での応用例
農業分野では高齢化により、今後離農する農家が増加することが予想されています。
農業のプロセスの中で作業者に大きな負担がかかる収穫や仕分け作業は、労働力不足という問題に正に直面しています。
これらの作業を支援する収穫ロボットの研究が進められており、その中でニューラルネットワークの技術が活用されています。
例えば、画像認識技術を用いて、重なり合って見にくい野菜の検出において、検出率向上の結果を出しています。
また、畑に農薬を散布する際に点在している害虫を狙って散布できれば、農薬を減らし生産コストも減らすことができるという取り組みにも活用されています。
その結果、農薬量を従来の1/10以下に抑えながらも、収穫量や品質は保つことに成功しました。
上記の動画ではニューラルネットワークと技術革新の展望について詳しく解説しています。
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ニューラルネットワークとは まとめ
このように様々な分野で、すでにニューラルネットワークは多くの功績をあげています。
本記事では、ニューラルネットワークが私たちの生活の中でどのように応用されているのか、その活用方法について紹介しました。
今回紹介した応用例は、一部の事例に過ぎません。生活の中で、ニューラルネットワークが活用されている場所を自分で探してみるのも面白そうですね。
最後までご覧いただきありがとうございました。