多くの可能性を秘めたAIは、いくつもの工程を重ねて運用できる状態となるのです。
この記事では、そんなAIを構築する必要性や基本ステップ、AIモデルの訓練方法、AI構築で注意することなどをまとめて解説していきます。
AI構築の必要性とは何か
AI構築の必要性とは、目的にあったAIを作り出し運用できる状態にすることです。
AIを導入すれば、様々な業務を効率化でき、少ない労働力でも大きな成果を挙げることができるでしょう。
しかしながら、どのようなAIでも期待通りの結果を出せるわけではありません。
用いるAIモデルの違いや学習するデータなどによって、精度が変わります。AI構築をするときには、解決する課題や使用する場面に合わせてAIを作っていく必要があります。
AI構築とはそのために必要なことであり、十分なスキル、資金、人材、計画性などが必要です。
AI構築の基本ステップ
AIの構築のプロセスは、
- 構想
- PoC
- 実装
- 運用
という4つのフェーズで構成されます。
それぞれのフェーズを詳しく見ていくと、基本ステップが明らかになるでしょう。
最初の「構想」ですが、ここではAIを構築するにために必要となる準備をするフェーズです。
このフェーズでのステップは、まずAIで解決したい課題の洗い出しが挙げられます。
AIがあれば実現できること、自動化できる業務などを検討していくことで、課題が見えてくるでしょう。なお、検討した結果、AIは不要という結論に至ることもあります。
続いてROI(投資利益率)の検討を行い、AI構築で利益が出るのかを見極めます。
費用や費用回収までの期間など、具体的な数字を出して検討をしなければいけません。
さらに、AI構築を行うプロジェクトチームの編成、場合によっては外部の会社と協力して取り組むこともあります。プロジェクトチームのメンバーには、これまでに明らかになった課題などを必要な情報をすべて共有することが重要です。
最後は、AI構築の承認を得て次のフェーズへと移ります。
「PoC」は、概念実証という意味でAIが解決したい課題や達成するべき目的に有効なのか、有効だとすれば実現可能なのかといったことを検証するフェーズです。
本格的にAIを構築してからでは手遅れになるので、このフェーズで確認するべきことを確認します。そのために、プロトタイプを構築し学習や運用のテストを行います。
「PoC」でやるべきステップは、まず
- プロトタイプの構築
- 学習させるデータの準備
- データの学習と検証
といったことです。プロトタイプを運用した結果、得られたデータから質と量、効果などを確認して問題がないかを明らかにします。
問題がないようであれば、正式な開発計画やROIを検討し、開発スケジュールを立てます。
「PoC」でプロトタイプから得られたデータを元に、AI構築を行うのが「実装」です。
「実装」のステップは、システム開発と同様にAIの目的や実装しなければいけない機能や性能を明らかにする要件定義から始めます。要件定義が正しく出来ていれば、作業はスムーズに進みますし、進捗状況などを把握しやすくなるでしょう。
続いて要件定義の内容に基づく設計、そして開発とテストというステップになります。
正式にAIを運用するときには、大量のデータを取り込み処理をしていかなければいけないので、その負荷に耐えられるように設計・開発をしていくことが重要なポイントです。
なお、AIの基礎知識と言えることですが、「実装」ではウォーターフォール型とアジャイル型という2つの手法が用いられます。
ウォーターフォール型というのは、要件定義から運用までのステップを、順番通りに進めていくものです。
水が上流から下流へと流れる様子に似ていることから、このような名称となっています。
ウォーターフォール型は、ゴールが明確なのでスケジュール管理や資金管理のしやすさや高い品質を維持できる事が魅力です。
一方でアジャイル型は、機能ごとに計画、設計、実装、テストというステップを短期間で繰り返していきます。優先順位の高い機能から取り掛かることができ、仕様変更があっても柔軟に対応しやすいというのが魅力です。
しかしながら、最初にゴールを決めていないので、完成までに作業時間が長引いたり、費用が増えるなどの問題点があります。そのため、主流となっているのは、ウォーターフォール型です。
「実装」で問題がなければ最後の「運用」というフェーズになります。
「運用」でやるべきステップは、AIの保守点検と、モニタリングをしながら調整をしていくことです。実際にAIを利用すると微調整が必要となる部分があります。
また、学習したデータの中に、不正確なデータが混ざっていれば、精度が落ちて期待していた効果を得られません。AIをモニタリングして、KPI(重要業績評価指標)をチェックし必要な部分に手を加えていくことで、AIの精度を高めていきます。
用途に合わせたAIモデルの訓練方法
AIモデルは、大量のデータを学習していくことで共通点や特徴を自動で抽出し、課題を解決するための判断基準とします。そのための訓練方法としては、
- CNN(畳み込みニューラルネットワーク)
- RNN(再帰型ニューラルネットワーク)
- LSTM法(Long Short Term Memory)
などがあります。
CNN(畳み込みニューラルネットワーク)は、画像認識などに向いており、画像の特徴からパターンを学ぶ手法です。
RNN(再帰型ニューラルネットワーク)は、音声認識などに向いており、時系列データの処理方法を学ぶことができます。
LSTM法(Long Short Term Memory)も、同様に時系列データの処理方法を学ぶことができるのですが、RNNよりも長期の時系列データに対応でき、人間の言語(自然言語)の処理に活用されます。
用途にあった訓練をしていくことで、期待通りのAIを作り出せます。
AI構築で注意しておくこと
AIを構築する際、注意しておくことがあるので事前によく確認しておきましょう。
データセキュリティの確保
AIが学習するデータには、企業や個人の重要なデータも含まれます。
もし、そのデータを狙って悪意ある攻撃が外部から行われたり、内部の人間が誤ってデータの流出をさせたりすれば、多くの企業や個人が深刻な被害を被ることになるでしょう。
被害の程度によっては、被害者から損害賠償請求されることになり、社会的な信用だけでなく多額の金銭を失うことになります。そうしたことが起きないように、外部からの攻撃からデータを守るためのセキュリティを施すこと、また、データをUSBなどに保存できなくする、権限のない人間がデータを扱えないようにするなどのセキュリティ対策も必要です。
継続的なモデルの更新と改善
AIの運用を始めたあとに、社会や業務の変化が起きれば、過去のデータを元にした予測が通用しにくくなります。常にAIの精度を高めるためには、変化に対応できるようにAIモデルの更新と改善を継続的に行うことが必要です。
そのためには、AIを常に監視しなければいけません。
監視対象となるのが、CPUなどのハードウエアの使用量、入力データ、出力データです。
もし監視によってAIの精度が低くなっている事実が明らかになったら、原因を調査し更新・改善を行います。
例えば、学習するデータの追加や削除などの対策で、変化に対応できる予測ができるようになります。それでも状況が変わらないときには、他のAIモデルに切り替えることも考えましょう。
AI構築の基本ステップと継続的な更新及び改善の重要性を理解しよう
AI構築は、4つのフェーズで進められていくものです。
フェーズごとの基本ステップを順番に行えば、目的にあったAIを作り出せるでしょう。
そんなAIは継続的な更新と改善を行うことで、高い精度を維持できます。
AIを長く活用したいのであれば、運用開始後も手を抜いてはいけません。